接着は, 今日, 物体を接合する有用な方法として普及しているが, その起源は遠く古代エジプト時代にさかのぼる.当然のことながら当時の接着剤は,動植物膠あるいはアスファルトで,人類はこれらの天然物を利用して紙,木,石を接合する方法を発見した.この比較的単純な接合法は,その後数世紀にわたって踏襲されつつ発達し,今日,われわれは,古い時代のすぐれた職人の技量によって製作された多くの精巧な接着製品を見ることができる.注目すべきことは,これらの接着製品は,接着に使用した物質の化学組成や構造についての知識を全くもたず,完全に経験的な基礎の上につくられたことである.近代における高分子化学の発展は,これらの天然物のすべてが高分子であることを明らかにしたことにより,合成高分子物質の利用がその後の接着剤に一大革新をもたらしたことは周知のとおりである.本文では,重要な接着剤における新しいポリマーに加えて硬化剤,接着剤促進剤など,主として化学の領域における最近の進歩の動向,開発の現状について述べる.
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