高分子の物理的研究はゴムの熱弾性に関するGoughの実験(1806)にさかのぼることができる。1930年ころStaudingerらによって高分子構造が明らかにされて以来,高分子の物性論的研究が急速に発展しはじめた。ここでは過去一世紀半にわたる高分子物理発展の歴史を次の3期間に分けて記す。1)黎明期からStaudingerの高分子説の出現まで,2)Staudingerの高分子説から終戦まで,3)終戦から1960年まで。なお,戦前から戦後にかけての国内の歩みと生体高分子の物理的研究については項を改めて記した。高分子物性論はゴム弾性,高分子溶液,粘弾性をはじめさまざまな物性を対象とし,また種々の実験的方法を駆使して,各種高分子物質の個性を解明しつつある。本文記事の正確を期するために文献をつけておいたが,あまり量がふえるので原則として1945年までに止めた。
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