高分子固体の微細構造として, 結晶の厚さ, 大きさ, 完全度, 形態などを研究する場合は各種の手段がある。しかし, 結晶, 結晶間の分子鎖がどうなっているのか, なかでも結晶と結晶をつないでいる tie molecule は力学的性質に密接な関係があり, 延伸物の微細構造として重要な意義をもっていると考えられるにもかかわらず, これらを研究する方法が十分に確立されていない。示差熱分析や示差走査熱量測定により融解現象を測定する際に, 昇温速度が速すぎると, 本来融解すべき温度より高温側に融解の吸熱ピークが観測される, いわゆる superheating の現象があるが,この現象が上述の tie molecule と密接な関係をもっていることが最近明らかになってきた。本展望では両者の関係についての各種の例を最近の研究から紹介するとともに, superheating 現象の解明がtiemolecule の本質を知る有力な一手段であることを示唆する。
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