関節可動域(以下,ROM)の目測能力は,臨床でROMテストや動作分析をする理学療法士にとって不可欠な能力である.今回,我々は膝屈曲における静止画と動画の目測の精度について比較検討した.対象は本学院理学療法学科2年生70名である.全員がROM測定の授業は未修了であった.目測能力の測定にはプレゼンテーション用ソフトを用いて作成したテストバッテリーを用いた.目測対象は膝屈曲の静止画および動画の2パターンから成り,基本軸が水平,垂直,斜めの3パターンを用意した.目測対象は全部で静止画は12通り,動画は6通りの映像から成る.静止画は同じ映像を5秒間表示し,動画は同じ映像を3回繰り返して表示した.そして,見積もった角度を10°間隔で記録用紙に記入させた.データ解析では実際の表示角度と目測角度との測定誤差に対して点数を割り付けた.すなわち,誤差0°は3点,誤差10°は2点,誤差20°は1点,誤差30°以上は0点とした.静止画の得点の中央値は,基本軸が水平,垂直,斜めの順に,10点,9点,8点(満点12点)であった.動画の得点の中央値は水平,垂直,斜めの順に8点,8点,8点(満点12点)であった.静止画と動画との得点を比較した場合,基本軸が水平条件で,動画において低値を示した.また,各条件で20°以上の誤差を生じた学生の比率は,静止画において基本軸が水平,垂直,斜めの順に9.3%,13.6%,15.7%,動画では15.0%,15.0%,25.7%であった.動画の場合,静止画に比較して誤差が生じやすいことが示され,運動する被写体を分析することの困難さが確認できた.
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