高知リハビリテーション学院紀要
Online ISSN : 2433-4553
Print ISSN : 1345-5648
9 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 中野 良哉
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 1-7
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では言語聴覚士養成校に在籍する学生の実習期間中における不安の継時的変化を捉えると共に,不安から立ち直る力の個人差についてSTAI及びレジリエンス尺度を用い検討を行った.対象は言語聴覚士養成校に在籍する学生39名であった.その結果,1.状況不安の実習前後での変化が認められた.2.実習後の状況不安には低減がみられたが,レジリエンスの高い者と低い者では,その低減に差が認められた.すなわち,レジリエンスの高い者ほど,実習後の状態不安は低減する傾向が認められた.これらのことから,実習後の学内活動に取り組む上でも,レジリエンスの低い者のサポートが重要となることが示唆された.
  • 講義型受動的学習型から能動的学習型への展開
    中野 良哉
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 9-16
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,学生による授業評価を前期授業で行い,その評価結果に基づいて後期授業の改善を行うことによって,学生の授業評価,自己評価,満足度,成績に変化が見られるかについて検討を行った.後期授業における改善方法としては,学生参加型授業の方法が用いられた.具体的には,1)プレゼンテーション・ソフトウェアによる講義時間を削減,2)学生による実演形式の学習を導入,3)実演後にビデオフィードバック及び学生相互による評価を行う,の3点である.その結果,授業評価の「わかりやすさ」「授業進度」「授業の構成」「学生への対応」,自己評価の「学習内容の理解」,「授業に対する満足度」の評価が有意に高まった.このことから,講義型授業に学生参加型の能動的学習型授業の要素を取り入れることで,学生の授業評価は改善することが示された.
  • 横山 仁志, 森尾 裕志, 平木 幸治
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 17-21
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究の目的は,人工呼吸器装着下における肺コンプライアンス測定の再現性を明らかにすることである.対象は人工呼吸器を装着した呼吸不全患者19例であり,肺コンプライアンスの測定は,人工呼吸器を用いて動的肺コンプライアンス(Cdyn)と静的肺コンプライアンス(Csta)について実施した.各測定は,1症例につき2名の検者が行い,測定の検者内および検者間の再現性について検討した.その結果,Cdyn,Cstaにおける検者内および検者間の級内相関係数は,いずれも0.9を上回る良好な値を示していた.人工呼吸器装着下における肺コンプライアンスの測定は,検者内,検者間とも極めて良好な再現性があり,臨床場面において活用可能なものと考えられた.
  • 足部クリアランスの改善を目的として
    桂下 直也, 山崎 裕司, 神谷 高志, 千葉 直之, 遠藤 晃祥, 太田 誠
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 23-27
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    歩行器歩行において足部クリアランスが不良な対象者6名(女性5名,男性1名,平均年齢79.5歳)に対して光フィードバック装置を用いた歩行訓練を実施し,その効果について検証した.まず,通常の歩行器歩行において側方からのビデオ画像から足部クリアランスが確保される股関節屈曲角度を設定した.次いで,10mの歩行器歩行において開始時,5m通過時にセラピストが「脚を高く挙げてください」という口頭指示のもと歩行器歩行訓練を行った.最後に,光フィードバック装置を歩行器に取り付け,適切な股関節屈曲角度が得られた場合にLEDが発光する状態で歩行器歩行を10m行った.その後,ビデオ画像より,足部クリアランスが目標高に達した回数を数え,全歩数に対する達成率を算出した.その結果,全症例において光フィードバック装置を用いた歩行訓練後,達成率に有意な改善(介入前31.2±8.7%,フィードバック82.7±13.2% : p<0.05)を認めた.以上のことから,光フィードバック装置を用いた歩行訓練は,即時的に足部クリアランスを確保させる上で有用なものと考えられた.
  • 行動分析的コーチングの効果
    山崎 裕司, 松下 恵子
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 29-33
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,行動分析学の技法を用いた車椅子キャスター上げの指導方法を考案し,その効果について口頭指示による試行錯誤型の操作練習と比較検討した.対象は,キャスター上げ経験の無い健常女性13名で,無作為に2群に分類された.A群(7名)には,最初に試行錯誤型のコーチングが行われ,次に日を変えて行動分析的コーチングが行われた.B群(6名)では,A群とは逆の順でコーチングが行われた.目標行動は,1分以内に標準型車椅子のキャスターを上げ,その状態を30秒間保持することとした.行動分析的コーチングは,シェイピングや連鎖化,身体的ガイド,プロンプト・フェイディングなどの技法を取り入れて形成された.課題の難易度が段階的に設定され,練習中の失敗ができるだけ少なくなるように配慮された.試行錯誤型のコーチングでは,キャスター上げ,およびその保持の方法が口頭で教示された.いずれも練習時間は30分とした.行動分析的コーチング後,13名全員が30秒以上のキャスター上げに成功した.試行錯誤型コーチングを一日目に導入した7名中,30秒以上のキャスター上げができた症例はなかった.以上のことから,シェイピングや身体的ガイド,プロンプト・フェイディングを用いたキャスター上げ練習は,口頭指示のみによる試行錯誤型練習に比較してより有効なものと考えられた.
  • 膝屈曲の静止画と動画での比較検討
    重島 晃史, 山﨑 裕司
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 35-38
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    関節可動域(以下,ROM)の目測能力は,臨床でROMテストや動作分析をする理学療法士にとって不可欠な能力である.今回,我々は膝屈曲における静止画と動画の目測の精度について比較検討した.対象は本学院理学療法学科2年生70名である.全員がROM測定の授業は未修了であった.目測能力の測定にはプレゼンテーション用ソフトを用いて作成したテストバッテリーを用いた.目測対象は膝屈曲の静止画および動画の2パターンから成り,基本軸が水平,垂直,斜めの3パターンを用意した.目測対象は全部で静止画は12通り,動画は6通りの映像から成る.静止画は同じ映像を5秒間表示し,動画は同じ映像を3回繰り返して表示した.そして,見積もった角度を10°間隔で記録用紙に記入させた.データ解析では実際の表示角度と目測角度との測定誤差に対して点数を割り付けた.すなわち,誤差0°は3点,誤差10°は2点,誤差20°は1点,誤差30°以上は0点とした.静止画の得点の中央値は,基本軸が水平,垂直,斜めの順に,10点,9点,8点(満点12点)であった.動画の得点の中央値は水平,垂直,斜めの順に8点,8点,8点(満点12点)であった.静止画と動画との得点を比較した場合,基本軸が水平条件で,動画において低値を示した.また,各条件で20°以上の誤差を生じた学生の比率は,静止画において基本軸が水平,垂直,斜めの順に9.3%,13.6%,15.7%,動画では15.0%,15.0%,25.7%であった.動画の場合,静止画に比較して誤差が生じやすいことが示され,運動する被写体を分析することの困難さが確認できた.
  • 筋力の実測値フィードバック施行の効果
    小松 弘典, 片山 訓博, 熊谷 匡紘, 平賀 康嗣, 山﨑 裕司
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 39-43
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,徒手抵抗感の妥当性に対して,ハンドヘルドダイナモメーターによる筋力の実測が与える影響について検討した.対象は高知リハビリテーション学院在籍の理学療法学科2年次生70名(以下,PT2年生)と,徒手筋力検査法(以下,MMT)の学習経験を有する3年次生35名(以下,PT3年生),さらに臨床実習経験を有する4年次生40名(以下,PT4年生)である.PT2年生に対してのみMMTの授業開始から8週間,毎週の授業で徒手筋力測定とハンドヘルドダイナモメーターによる筋力測定を実施し,徒手抵抗感に対して実測筋力値をfeed-backした.各学年ともに筋力の予測値と実測値には相関を認め,相関係数は肘伸展筋・膝伸展筋の順で,PT2年生0.61・0.68,PT3年生0.52・0.57,PT4年生0.49・0.63であった.肘伸展筋,膝伸展筋ともに相関係数は2年生が最も高かった.筋力の予測値と実測値の差を各学年間で一元配置分散分析したところ,肘伸展筋では有意差を認めなかったが,膝伸展筋では有意差を認め,PT2年生の実測値との差が最小であった.以上のことから,徒手抵抗感は筋力の実測値フィードバックを実施することにより妥当性が高まることが示唆された.
  • 川村 明範, 山﨑 裕司
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 45-48
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,ストレッチ前のオリエンテーション内容がストレッチ中の不安感や疼痛に与える影響について検討した.対象は健常成人25名(男性19名,女性6名,年齢21.3±4.0歳)である.実験手法はクロスオーバーデザインを採用した.対象は無作為に次の2群に分類した.1回目に具体的情報を含まないオリエンテーション,2回目に具体的情報を含めたオリエンテーションを行うA群(13 名)と,1回目に具体的情報を含めたオリエンテーション,2回目に具体的情報を含まないオリエンテーションを行うB群(12名)である.ストレッチ終了後,不安感,痛みの程度をVisual analog scaleを用いて評価した.1回目のストレッチで具体的情報を含まないオリエンテーションを行ったA群に比較し,具体的情報を含めたオリエンテーションを行ったB群において不安感は有意に低値を示した.痛みについては群間で差を認めなかった.ストレッチング1-2回目間における不安感の変化を見た場合,2回目に具体的情報を含めたオリエンテーションを行ったA群において不安感は有意に減少した.一方,B群では有意な変化は認めなかった.本研究結果から,具体的情報を含むオリエンテーションは,ストレッチ時の不安感を低減する上で有効なものと考えられた.
  • モノクロシンボルとカラーシンボルのイメージ測定
    稲田 勤, 野々 篤志, 本田 梨佐, 吉村 知佐子, 石川 裕治
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 49-53
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    シンボルコミュニケーションの研究では,表出障害をもつ人々(発信者)が,他者(受信者)に対しシンボルで意志を伝えるという発信者側が主体の研究は多く見受けられるものの,受信者側が主体の研究はあまりみられない.そこで本研究では,シンボルの受信者側が,モノクロシンボルおよびカラーシンボルから受けるイメージを比較するために,成人を対象として,形容詞,動詞,名詞に相当するシンボルのイメージ測定を行い,シンボルコミュニケーションを行う上で,より妥当なシンボルの選定を行うことを目的とした.結果,形容詞,動詞,名詞の30語中27語でモノクロシンボルよりカラーシンボルの方が,対象となる語をより的確に表していると評価された.また,シンボル全体でのイメージ評定では,7語中7語全てに有意差が認められ,モノクロよりも配色されたカラーシンボルの方が,肯定的イメージを持たせやすい可能性が考えられた.今後は,色に加え多様な評価基準を加えた検討が必要となる.
  • 吉村 知佐子, 稲田 勤, 石川 裕治
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 55-60
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では高知県における訪問言語聴覚療法についてアンケート調査を行い,現状を把握し,その課題を検討した.訪問言語聴覚療法は,アンケートに回答のあった88名のうち7名が実施しており,アンケート調査では,(1)言語聴覚士や病院数は高知市に集中しているものの,訪問言語聴覚療法は郡部の実施率が高い,(2)訪問言語聴覚療法の対象者は,発症から1年以内に訪問言語聴覚療法が開始される件数が多い,(3)訪問言語聴覚療法が普及するためには,言語聴覚士の増員,言語聴覚士について関係者の認知向上,言語聴覚士自身の知識向上・教育が必要,(4)訪問言語聴覚療法は,同施設の理学療法士・作業療法士の実施の有無に関わらず,実施されている,という結果が得られた.今後の課題として,介護保険法や医療保険法の制度の改正や訪問言語聴覚療法についての啓発活動,言語聴覚士の増員などがあげられ,住み慣れた在宅での訪問言語聴覚療法が提供できる環境整備が必要である.
  • 機能再編成法に基づいて
    本田 梨佐, 大塚 裕一, 宮本 恵美, 橋本 幸成
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 61-66
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    発症より10年が経過した失語症例に対して認知心理学的分析を行い,仮名文字形態想起能力向上を目的に訓練を実施した.訓練内容は,漢字及び仮名ともに日常使用頻度が高い語を用い,その語に対応した仮名文字を文字列として想起させた.その結果,仮名文字単語の書称,書取,仮名1文字の書取において改善が認められた.訓練方法は従来のキーワード法に類似しているが,漢字単語を利用して,それの語頭音に対応する仮名1文字の想起を促すのではなく,仮名文字単語を文字列として想起可能にし,それらの語数を増やしていくことに相違点がある.またこの方法は,仮名1文字ずつの文字形態想起能力にも影響を及ぼしたのではないかと考えられた.
  • 新卒者と経験者の違い
    野々 篤志, 稲田 勤, 石川 裕治
    原稿種別: 本文
    2008 年 9 巻 p. 67-72
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2018/09/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究は,高知リハビリテーション学院(以下,高知リハ)を卒業した言語聴覚士(以下,ST)の業務内容や卒後教育の現状といった業務形態についての意識調査を実施した.対象は,本学院言語療法学科卒業生53名(5〜6年目26名,1年目27名)である.郵送法によって32項目からなるアンケート調査を実施し,経験年数の違いに着目し検討を行った.その養成校OB会への参加・不参加,歯科医師との連携,ベッドサイド訓練頻度及び検査用具の充足度において有意差が認められた.今後,STの領域は医療・福祉・保健・教育などへ幅広く進展することが予測され,STは多くの専門性及び多様性を求められるであろう.
feedback
Top