日本におけるサリドマイド胎芽病患者の精神衛生状態を把握するため, 認定患者296名に対してGHQ28項目版を用いて検討した。有効回答数は170名 (男85名, 女85名), 有効回収率は57.4%であり, 平均年齢は, 31.7±1.1歳であった。性別や総合的障害程度, 四肢障害群, 聴力障害群別によってGHQ得点には有意な差はみられなかった。配偶者の有無別では差はみられなかったが, GHQ下位尺度の「抑うつ状態」では差があり, 未婚群の方が高得点であった。職業の有無別では, 無職群の方がGHQ得点が高く, 精神衛生面での配慮の必要性が示唆された。
一方, 昭和51年~昭和58年にサリドマイド健康管理委員会が精密検診を行った者は, 137名, 平均年齢17.0±2.3歳であった。検診では面接, 各種の検査を行ったが, そのうちのYG性格検査, 及び昭和58年に実施したMPI性格検査の結果を中心に, 今回のGHQ結果との関連を検討した。YG性格検査の受検者のうち, 今回GHQの回答が得られた者は, 76名であった。YG性格検査の類型別結果による群分けのGHQ得点では, B群, E群が高い得点を示しており, D群は最も低い得点を示していた。また, MPI性格検査の受検者のうち, 今回GHQの回答が得られた者は, 116名であった。MPIのN尺度でGHQ得点との間で関連がみられ, N
+群のGHQ得点が高く, 逆にN-群のGHQ得点が低い値を示していた。すなわち, 青年期に「情緒的不安定」(YG性格検査でB型, E型を示した群), 及び「神経症的」傾向 (MPIでN
+が高い群) を示した群が, 十数年後の成人期におけるGHQで高得点の傾向を示していた。
これらより, サリドマイド自体によってひきおこされた身体的な障害が精神健康に及ぼす影響は, 比較的早期に克服され, その後の通常の社会的な状況の不利が精神健康に影響を及ぼすという一般的なパターンが残っているものと考えられた。
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