一事例を通じて, 学校スタッフへのコンサルテーションに関する若干の臨床上の工夫について検討した。特に, 学校スタッフへのコンサルテーションから, クライエントとのカウンセリングへと展開する場合の介入点について整理した。クライエントと会っていない段階でのコンサルテーションでは, 直接対応している学校スタッフが, 何に一番困っているのか, その本音を確認する手続きに工夫が必要である。また, カウンセリング導入においては, カウンセリングをどのように紹介するか, また学校スタッフとカウンセラーの役割分担について, 充分な話し合いが求められる。特に役割分担は, クライエントに対しても充分納得できる形になるように調整されるべきである。コンサルテーションに続くクライエントとのカウンセリングにおいては, 学校スタッフの援助がより充実したものとなるような働きかけが重要である。たとえば, 「相談する能力」の強調や学校スタッフのアドバイスに対する補足などである。また, 学校スタッフとカウンセラーとの連携を充実させるためにも, カウンセリングで得たクライエントの情報を, どの程度まで学校スタッフと共有してよいかについて, 率直にクライエントと話し合っておくことが重要となろう。つまり, プライバシー保護の具体的内容について, 充分なインフォームドコンセントを得る作業である。クライエントにカウンセリングを行った後のコンサルテーションにおいても, 専門家としての意見を伝えることに加えて, クライエントと学校スタッフとの関係を取り持ったり, 両者の役割分担の再確認が重要な介入となる。これらの臨床上の工夫によって, 学校スタッフ個大ではなく学校システム全体でのサポート体制が作られ, そのことがクライエントに対しても精神的な大きな安心となることを示した。
抄録全体を表示