本稿の目的は,“Deglobalization”が懸念される今日,改めて“Globalization”の概念を検討することである。分析単位をGVCに設定し,分析方法として弁証法的類推を用いる。これによって,「21世紀の資本主義国際社会」「アメリカン・グローバリゼーション」「世界労働の異質性と分断・不均等発展」を順次分析し,GVCを「断層線」とする「人間の異質化と分断・不均等発展」の不可避性を明らかにする。最後に以上の主張が6命題にまとめられる。
世界における地政学リスクの高まりとともに,経済安全保障を考慮したサプライチェーンの構築が求められ,そのために国内産業育成のための大規模な産業政策が様々な国で実施されるようになった。本論文では,近年のサプライチェーンの強靭性や産業政策の有効性に関する理論的・実証的研究成果を基に,経済安全保障を踏まえたサプライチェーン構築のための政策や産業政策のあり方について議論する。
本稿では米中対立と現下の米国の関税政策に対して第3国とりわけASEAN諸国で生産ネットワークを展開している民間企業はどのように反応してきたか,また今後はいかなる対応が有効かにつき議論する。サプライ・チェーン関連政策を経済学の立場から再整理した上で,関税とハイテク輸出管理強化を取り上げその第3国への影響を分析する。さらに,第3国同士の国際協調の可能性,ルールに基づく国際貿易秩序の保全の必要性について論ずる。
本稿は,リーマン・ブラザーズの経営破綻時に明らかになったCCPに関する英米の対立した立場が,G20を舞台とした店頭デリバティブ取引規制の構築過程に与えた影響を明らかにする。くわえて,CCPの規制・監督をめぐるEUによる同等性評価やブレグジットといった英米関係の外部的要因が,店頭デリバティブ取引規制に関わる相互依拠の交渉において,英米が対立から協調へ推移することを促したことを明らかにする。
第一次石油危機からの半世紀で,エネルギー供給構造を取り巻く状況は変化し,気候変動問題やSDGs・ESG等への対応が余儀なくされている。代替エネルギーの動向は電力分野で再生可能エネルギーを前提としたエネルギーシステムの構築が進むが,蓄電池や水素等の非発電分野での社会実装は途上にある。そこで,本稿はコストや国際政治経済学的背景,技術開発段階の観点から,非発電分野における代替エネルギーの動向を考察する。
本稿は,アメリカの対中半導体輸出管理の効果をめぐる議論を分析する。輸出管理は自国からの製品や技術の移転を規制して相手国の研究開発や生産を封じ込める政策だが,政策の効果やコストについては異論も存在する。そこで,本稿では輸出管理に関わる政策専門家の議論を整理し,政策の効果やコストについてはボールドウィンの「政策・有事の枠組み」の観点から正当化しうることを明らかにする。
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