コンピュータ&エデュケーション
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18 巻
選択された号の論文の21件中1~21を表示しています
特集 デジタル・アーカイヴズと歴史研究・教育
  • 樫村 雅章
    2005 年 18 巻 p. 12-20
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    デジタル・アーカイヴでは,対象となる文化遺産を忠実にデジタル化することが重要となる。これは貴重書を対象とする場合には,本を直接閲覧する代わりに用いることのできるような,高精細で品質のよい全ページ分のデジタル画像群を制作することにあたり,そのような画像群をデジタルファクシミリと呼んでいる。慶應義塾大学HUMIプロジェクトでは,ブック・クレイドルなどの特殊な装置を開発し,貴重書デジタル化の手法を確立してきた。ここではまず,貴重書のデジタル化に用いられる画像の取得方式についてとりあげ,続いて,冊子本と巻物それぞれの撮影手法を概説する。さらに,撮影で得られた画像をデジタルファクシミリとして完成する手順を説明し,最後にHUMIプロジェクトが構築に関わってきた貴重書デジタル・アーカイヴのいくつかの例を紹介する。
  • ―大原社研での公開作業をめぐって―
    野村 一夫
    2005 年 18 巻 p. 21-26
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    大原社研では非定型資料の公開を行ってきた。戦前期のポスター資料の公開をめぐって試行錯誤した結果,冗長性とオープン性を主軸とするポリシーが固まり,順次,昭和初期と労働運動を中心とするデジタル・アーカイブスを公開している。本稿では,その際の実践的問題についてまとめた。
  • ―学術ポータルサイト開設の必要性―
    鵜飼 政志
    2005 年 18 巻 p. 27-33
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    1990年代後半,いくつかの歴史資料館や博物館が,ウェッブサイトを開設したことを契機に,日本史研究の世界でもインターネットに対する関心が高まっていった。ただし,これらサイト開設の背景には,行政改革や大学改革などが関係していた。情報公開・経費削減の観点からインターネットによる情報発信が促進されたのである。その後,多くの日本史関係サイトが開設されていったが,日本語の異体字をシステムフォントでは表現できない問題点や,高解析度の画像を閲覧する場合の接続上の難点は解決されていなかった。今日では,閲覧ソフトの技術革新やインターネット回線の高速化により,日本史関係のサイトも容易に閲覧できるようになった。ただし,歴史資料に関するサイトの構築には,かなりの人員や予算を必要とすることもあり,現在の状況が将来も続くかは不透明である。また,日本史研究者のインターネットに対する関心は,総じて,ネット上の歴史資料情報に限定されがちであり,インターネット全般を研究や教育に利用しようとする学界的な合意はなされていない。そこで筆者は,筆者はインターネット上における日本史関係の諸情報を網羅し,適切なサイトへの接続を可能にする学術ポータルサイト開設の必要性を提言した。
  • ―漢文表現へのXMLの適用―
    内海 淳
    2005 年 18 巻 p. 34-39
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    漢文のデジタル・アーカイヴズはこれまで漢文の出力形式に関して限られた選択肢しか持っていなかったため,非専門家を排除する形になっていた。本稿では,XML(eXtensible Markup Languge)の技術を漢文に適用し,XML技術に基づいたシステムを使用することにより,単一の漢文ソースから,5段階の読みやすさのレベルに対応した,5つの出力形式へと変換できることを示す。このシステムを用いることにより,様々な非専門家の利用者が容易に漢文を利用することができるデジタル・アーカイヴズを構築することが可能になる。
  • 中田 平
    2005 年 18 巻 p. 40-45
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    1937年に開催された名古屋汎太平洋平和博覧会は,第二次世界大戦の前夜に開催されたことにより,昭和史に埋もれて忘れ去られてしまった。筆者はゼミのテーマとしてこの国際博覧会を取り上げ,2003年10月から2005年2月までゼミ学生と共同で,Web上で再現するプロジェクトを遂行してきた。プロジェクトの目標はWebアーカイヴ・コンテンツのオーサリングとそれを配信するサーバーの構築である。またコンテンツは3D-CGによる静止画および動画,QuickTimeストリーミング映像,などである。本論文はこのプロジェクトの記録と報告である。
  • ―3Dblogによる動的アーカイヴの制作―
    西尾 吉男, 横井 茂樹
    2005 年 18 巻 p. 46-51
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    建築物,万博などの知られざる歴史的な遺産やイベントを可視化またはインタラクティブに経験することは非常に重要である。1937年名古屋で開催された汎太平洋平和博覧会を題材としたバーチャルシステムを制作したので,これについて述べる。本バーチャル汎太平洋平和博覧会は,我々が提案し開発を行ってきた3Dblog技術を用いることにより構築されている。3Dblogを用いることにより,プロではないユーザが3次元オブジェクトを作ることが簡単にできるだけではなく,制作者とユーザの両方が制作プロセスで協調しあう仮想環境に参加できる。このことは文化遺産を経験できるバーチャルシステムの新たな可能性を含んでいる。我々は,バーチャル汎太平洋平和博覧会に付与した数多くのきわめて重要な機能について解説する。
活用事例
論文
  • ―閻魔―
    田中 久美子, 筧 一彦, 武市 正人
    2005 年 18 巻 p. 69-75
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    閻魔は,プログラミング教育を支援するために,Webを利用し二つの特徴的な機能を有したレポートシステムである。第一の機能は,プログラミング教育上の自動化を進めている点である。学生の投稿したプログラムが自動的にコンパイルおよび実行されることで,実行結果を学生自身で確認できる。プログラム検証の負荷の一部を学生が担うこととなり,教員はアルゴリズムなど本質的な内容の検証に集中できる。第二は,教員と学生の対話を支援する機構である。学生は課題解答とともに疑問や問題点を提出することで,教員からの回答を採点結果と併せて得ることができる。また,優秀答案は教員や学生に対して公開することができる。このような細かな個別および全体指導は,学生の学習意欲の向上に有用である。本システムを用いて,3年間にわたり五つの異なる学生集団に対して行った運用報告を行う。
  • 布施 雅彦, 大河原 麗偉, 湊 淳, 小澤 哲
    2005 年 18 巻 p. 76-83
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    ワープロ・表計算ソフトなどのビジネスソフトの基本的利用法とその応用技術をVODで視聴して学習できるWBTシステムを開発した。このシステムは,学習項目をマウスを使って簡単に検索操作ができ,正規の授業以外に,自宅学習のツールとして自由にネットからアクセスして利用できるシステムである。学習者のペースで自由に学習可能であるために,学生の学習意欲が向上し,効率よく短期間に学習できるようになった。このシステムを実際に授業で利用して,学生の学習効率が向上することを確認した。
  • ―VR資料館コンテンツ開発―
    布施 雅彦, 大河原 麗偉, 湊 淳, 小澤 哲
    2005 年 18 巻 p. 84-89
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    バーチャルリアリティーとマルチメディア技術を利用した資料館サイトを制作し,インターネットから疑似体験学習が可能なシステムを開発した。実際訪問してもできないような体験をコンピュータならではの機能を組み込み,ゲーム感覚で体験できる学習システムで,学習者の興味・関心を引き出すことができた。
  • ―読解方略SQ3R法の適用を促進するWebインターフェースの開発と評価―
    八木 龍平, 國藤 進
    2005 年 18 巻 p. 90-98
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    過去の多くの研究において,電子テキストは紙テキストよりも読みやすさの面で劣ることが指摘されてきた。電子テキストの読みやすさが劣る一因として,各種読解方略の使用が紙テキストに比べて制限されてしまうことが考えられる。そこで本研究では,各種の学習技能を体系化した読解方略として知られているSQ3R法の適用を促進するWebテキスト読解支援システムを開発し,そのシステムの有用性を検証した。評価実験では,三つのメディア(提案システム,一般的なWebインターフェース,印刷された紙)の読みやすさを比較した。その結果,提案システムの有効性・満足感は他の二つに比べて,統計的に有意に高いことが示された。よって,体系的な読解方略の適用を促進する我々のシステムは,Webテキストの読みやすさを向上させることが確認できた。
  • 関口 隆司, 湊 淳, 小澤 哲
    2005 年 18 巻 p. 99-105
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    高等学校の力学の分野で学ぶ「運動量」,「運動量の保存」は,ベクトルとしての取り扱いが必要であるため,指導が難しい。実験を交えて講義を進めることができれば,指導の難しさを改善できるが,講義の合間という限られた時間内に,解析に耐える実験を行うことは困難であった。そこで,2つのエアーパックが平面内で分裂する運動を映像化し,これをコンピュータを用いて画像解析して,運動量の保存を検証しながら展開する授業を開発した。シミュレーションではなく実際の運動そのものを提示し,提示した映像から位置データを求めるなど,提示と測定と処理をリンクさせたため,生徒が興味・関心を持って授業に参加するようになった。ベクトルの演算についても,コンピュータの画面上でベクトルを動的に取り扱うことにより,生徒が容易に理解するようになった。また,自作したエアーパックと滑走台を使って,極めて摩擦が少ない状態での分裂運動を映像にしたため,十分な精度で運動量の保存を検証することができる。これにより,運動量の保存を納得とともに理解させることができるようになった。
  • 多喜 賢一郎, 稲葉 竹俊, 松永 信介
    2005 年 18 巻 p. 106-111
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    eラーニングには,学習者の関心や能力に応じた学習環境が生成・提供できる点や学習者が自ら学びの順序やペースを制御できる点など,個々の学びの差異を許容するという大きなメリットがある。しかし,eラーニング教材のデザインにおいて拠り所となっている“インストラクショナル・デザイン”は,基本的に“One-size-fits-all",即ち「同じ設計方法の教材を学習者に画一的に配信する」というアプローチの域を出ていない。本研究では,個々人の先天的な情報の捉え方や思考の道筋の多様性を類型化した認知スタイル理論に着目し,各人の認知スタイルがeラーニング教材のデザインや学習効果とどのように関連しているのかを,教育工学的手法に基づき調査・実験した。その結果,各人の認知スタイルに適合すると想定されるデザインを採用したeラーニング教材の学習効果がより高いことが示唆され,今後のeラーニングの個別化に向け,認知スタイル理論の導入が1つの重要な契機になり得るという知見が得られた。
  • ―高校生と大学生の比較実験を通しての知見―
    福島 健介, 小原 格, 須原 慎太郎, 生田 茂
    2005 年 18 巻 p. 112-120
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    Web上から適切なサイトを探し出し目的の情報を素早く的確に探し出す能力(情報検索能力と定義する)は,図書の適切な利用とともに,現在の高度通信情報社会において,子ども達に身に付けさせたい能力の一つとなっている。しかしながら,現状では,系統的な指導がなされないままに,学習者は経験に基づく自己流の検索技術を用いている。そのため,情報検索能力には個人差が大きく,それが学習者の学習能力や学習効率に影響を与えている。本研究では,効果的な検索能力の体得に向けて必要な教授内容についての知見を得るために,情報検索能力に及ぼす要因をあきらかにすることを目的とした。高校生と大学生に同一の検索テストと情報環境に関するアンケートを実施した。また,高校生においては,情報の探索過程の詳細な解析を行った。その結果,男女間で情報検索能力に差があること,大学生の方が高校生より情報検索能力に優れていること,高校生と大学生では情報検索能力に及ぼす要因が異なること,高校生ではPC環境や利用状況・検索実行頻度とともに「言語に関わる知識・理解」が情報検索能力に及ぼす重要な要因となっていることがあきらかとなった。
  • ―サイト開発の現場から―
    古金谷 博
    2005 年 18 巻 p. 121-127
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    プログラミング言語の実習環境をWebサイト上に実現した。これにより指導者は指導内容だけに専念でき,学習者も時間的場所的な制約から解放される。導入は容易であり運用上発生する各種の負担が軽減される。しかし明白なように,学習者が入力したプログラムコードをサーバ上で実行することはサーバ環境にとっては非常に危険なことである。筆者らはサーバ環境保全の仕組みを考案した【特許出願中】。ここに報告する最初の実現例ではC言語を対象としたが,スクリプト言語も含め他のプログラミング言語への応用も可能である。
  • ―その歴史的考察から見る教室におけるコンピュータ・インターネットの限界と可能性―
    松下 慶太
    2005 年 18 巻 p. 128-135
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    現代の情報化社会において,文部科学省はこれまでの「画一」で「均質」な教育を反省し,「主体性」の育成を重視するようになった。その一環としてコンピュータ・インターネットの教育利用は積極的に推進されている。教育における「画一性」,「均質性」は明治以降から構築されていった教室における近代的時空間そのものが密接に関連している。しかし,これまでのコンピュータ・インターネットの教育活用研究の多くは,それらが利用される学校・教室まで視野に入れていない技術決定論的なものであった。今後は,学校・教室までを視野に入れたコンピュータ・インターネット活用が求められ,それによって「主体性」を育成しうる可能性を提示できると考えられる。
  • 曽我 聰起, 塩谷 浩之, 杉岡 一郎
    2005 年 18 巻 p. 136-144
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    今日,日本の大学の教室は多人数で,かつ学生の素養には開きがある。このような大学教育の変化に伴い,学生への学習支援が重要である。我々は,そのような変化に対応するコンピュータリテラシー教育のための学習支援システムの構築と実践を行った。まず,コンピュータリテラシー教育における授業モデルにより,その授業が,細かな学習ステップとその理解を前提としていることを示す。そこで,SMILジェネレーターを用いたオンデマンドサービスによるコンピュータリテラシーのための学習支援システムを構築した。このシステムにより,学習者にオンデマンドサービスを提供する実験を行い,サービスの有効性について検証する。
  • 菅谷 克行, 狩野 紀子
    2005 年 18 巻 p. 145-151
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    情報検索能力は,大学において勉学を進めたり論文を書いたりする際,必要不可欠である。近年のインターネット技術の普及により,従来の図書館の文献目録に代わり,WWW情報検索の機会が増えてきている。それにともない情報検索には,より多様な知識やスキルが求められるようになってきた。しかし最近,授業や研究指導の場を通して,学生の情報検索能力の個人差が大きくなってきていると感じられる。この個人差の要因を明確にし,情報教育に生かすことが重要である。本稿では,WWW上での情報検索能力に焦点を絞り,日常のPC利用状況がWWW情報検索能力に影響を与える要因を,探索的手法―データマイニングの一手法である決定木学習―を用いて探索的に分析した結果を報告する。分析の結果,1)論理式に関する知識,2)自宅でのインターネットへのアクセス,3)WWW利用歴,4)入力キーワード数,という四つの分類条件属性を,WWW情報検索のNovice群とExpert群を分ける要因として抽出することができた。
  • 石田 崇, 後藤 正幸, 平澤 茂一
    2005 年 18 巻 p. 152-157
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2014/12/01
    ジャーナル フリー
    大学の授業改善への取り組みがますます重要課題となってきている。本研究では,学生アンケートの分析結果を授業改善に活用する手法の開発を目的とする。まず,学生の特性と満足度,成績などの関係をモデル化する。次に,モデルに基づいてアンケートを設計する。さらに,得られたアンケート結果を統計的手法を用いて解析し,授業改善に有用な情報が得られることを示す。
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