コンピュータ&エデュケーション
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45 巻
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特集「AI時代における教育と学習について考える」
  • 山田 誠二
    2018 年 45 巻 p. 12-16
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     現在の第3次AIブームを牽引しているのは,機械学習を中心とした人工知能AIの応用である。そこでは,医療・ヘルスケアを中心に様々な分野でAIの社会導入が始まっているが,現在注目されているのが教育へのAI応用である。これまで,知的教育システムITSを中心にAIベースの教育システムが研究・開発されてきているが,現在アダプティブラーニングの発展と共にAIと教育のコラボレーションが一層活性化することが期待されている。本稿では,AIの現状,今回のブームの特徴,背景について触れ,これまでの教育へのAI導入であるITSを概観する。続いて,教育におけるIT導入,あるいはe-learningのホットトピックであるアダプティブラーニングをAI研究の視点から眺め,筆者の専門領域でもあるHAIヒューマンエージェントインタラクションに密に関連するペダゴジカルエージェントを初めとする教育のAI化について考察する。

  • 小宮山 利恵子
    2018 年 45 巻 p. 17-22
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,諸外国の教育領域におけるAI(人工知能)活用の政策や事例を紹介し,世界で教育がどのように変化しているかを俯瞰する。日本においてAIの教育利用は始まったばかりだが,AI領域の二強とされる米中以外にも,「途上国」と呼ばれている国においても政策としてAIを積極的に取り入れている国がある。世界で起きていることを俯瞰しつつ,AIの教育利用の課題について考える。

  • -大規模オンラインテスティングシステムを用いた事例から-
    廣瀬 英雄
    2018 年 45 巻 p. 23-30
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     大規模オンラインテスティングシステムによって蓄積されるデータを用いることで実際に教育改善に役立つラーニングアナリティクスを行うことが可能になる。例えば,毎授業で実施されるオンラインテスティングの結果を蓄積し,それを項目反応理論によって習熟度を推定し,そのトレンドを分析することで,学生の期末試験の合否を予測することが可能になる。これは,ドロップアウトのリスクの可能性のある学生を早期に特定することにつながり,早い段階でその学生を支援することができる。本論文では,ドロップアウトリスクの危険性を取り除くために,ラーニングアナリティクスを指向した教育改善方法論が提案できることについて述べている。パラメータ推定には機械学習の方法も取り入れている。

  • 宮崎 佳典, 相馬 あおい, 厨子 光政, 法月 健
    2018 年 45 巻 p. 31-36
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     e-Learningシステムの発展と普及により,学習者の解答状況の把握や,解答に至るプロセスを履歴情報として残すことがより容易になってきている。マウス軌跡も,単位時間ごとのX,Y座標値による離散的なもので補間すればよいと考えれば,その取得は難しいものではない。そこで我々は,解答中にマウスが頻繁に移動する英単語並べ替え問題を取り上げ,マウス軌跡ならびにその他の履歴データを取得・分析するWebアプリケーションを開発している。その主たる目的は,学習者が解答を導き出すまでの過程で迷いが発生したかどうかを推定することであり,ランダムフォレストを用いた機械学習(教師あり)により,約82%の推定精度を得た。さらに本論では,複数の英単語をまとめて移動する「グループ化」に関する調査も行い,グループ化された単語群は句や熟語生成に能動的に使用されていた可能性が示唆された。

  • 亀田 久雄
    2018 年 45 巻 p. 37-40
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     近年では話題を目にしない日はないほど,“AI・人工知能” は注目のキーワードとなっている。教育の業界においても,AIを用いた未来的な授業のビジョンが数多く描かれている。本稿では,AIを利用する教育の現状にフォーカスし,実際に塾や学校で活用されているe-learning教材「すらら」と,「すらら」の一機能として,生徒に対してコーチング・モチベーティングを行う機能である人工知能「AIサポーター」についての事例を紹介する。また,「AIサポーター」を利用する生徒の学習量を,そうでない生徒の学習量と比較したとき,有意な差が見られ,その効果測定結果についても共有する。

  • -人とロボットの心を考えた小学校2年生道徳の授業-
    面川 怜花, 松浦 執
    2018 年 45 巻 p. 41-47
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     小学校2年生の4ヶ月にわたる道徳の授業で,教室にコミュニケーション・ロボットを交え,命とは何か,ロボットに命はあるのかについて児童が話し合い学習を重ねた。本研究の第1の目的は,道徳教育として,自他の命を認識し命のかけがえなさを理解することである。第2の目的は,知能機械との共生の観点で,自らの命のかけがえなさに立脚してロボットに生命性を見出し共感できるかを明らかにすることである。授業実践では次のような児童の変容が見られた。児童はロボットのコミュニケーション機能に着目するようになり,会話プログラミングの体験などを通じ,人の自律的な意識に着目できた。ロボットに命はあるのかという討論を通じて,生命の自己認知性と自己決定性への気づきが生まれた。さらに本実践を通じて,児童は,自らの生活感情に共感するロボットのあり方を描き出した。

事例研究
  • 福井 昌則, 萩倉 丈, 黒田 昌克, 森山 潤, 平嶋 宗
    2018 年 45 巻 p. 48-54
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,数学的ゲーム・パズルを題材に高校生のプログラミングに対するモチベーションを高めるワークショップ型プログラミング講習の実践を行い,その効果を実践的に検討することである。「正規の教育課程で学習」→「ワークショップで学習」→「自宅で学習」と連続性を持ったアルゴリズム学習に焦点を当て,学習内容は現行の高校情報科の教科書5誌を元に設定し,題材として数学的ゲーム・パズルを採用した。その題材を用い,高校生の有志38名を対象に4日間のワークショップ型プログラミング講習を実施した。毎回の授業後にモチベーションを把握する調査(SIEM尺度)を行なったところ,「自発性因子」「双方向性因子」「参加性因子」の平均値の向上が有意または有意傾向を示した。また,モチベーション・レベルの全体的な向上が認められ,本講習の効果が確認された。

  • ―反転授業の事前学習用コンテンツに着目して―
    上村 英男, 藤井 厚紀
    2018 年 45 巻 p. 55-60
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,反転授業における学習者のニーズの多様性に対応するために,UDLの理論に基づき,複数の事前学習用コンテンツを提供する授業デザインを構築した。コンテンツの種類として,パワーポイントによる視聴コンテンツと,授業者が映る実際の授業に近い形の視聴コンテンツを準備し,授業を実践した。学生のコンテンツの選択や嗜好に関する調査の結果から,学生は実際の授業に近いコンテンツを好んで視聴する傾向はあるものの,いずれの種類のコンテンツも一定数の学生が選択したことが認められた。この結果から,学生の視聴コンテンツに対するニーズは一様ではないことが示され,反転授業のコンテンツに対してUDLの枠組みが適用可能であることが考えられた。一方で,当該授業デザインにおいてもなお事前学習用コンテンツを視聴しない学生が存在した。それらの学生の内的状態や授業内活動について更に詳細に検討することが課題となった。

  • Scratchを活用した旋律づくりの試み
    福島 耕平, 勝井 まどか, 下村 勉
    2018 年 45 巻 p. 61-66
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,小学6年生音楽科「和音の音で旋律づくり」の単元において,プログラミングソフトScratchを活用した授業実践をおこなった。実践では児童が和音進行に合わせて,4分の4拍子で4小節の旋律をつくり,出来上がった後,友達とつくった作品を聴きあった。質問紙による意識調査の結果,旋律づくりに対する意欲の向上,及びつくった旋律を一人で演奏することに対する苦手意識の軽減がみられた。また,児童が操作するタブレット端末の画面録画をおこない分析した結果,児童が旋律づくりにおいて多数回の操作をおこなっていたことが確認できた。

  • ―選択と分岐を取り入れた動画教材を用いて―
    阿部 学, 藤川 大祐, 山本 恭輔, 谷山 大三郎, 青山 郁子, 五十嵐 哲也
    2018 年 45 巻 p. 67-72
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラム「私たちの選択肢」の開発を行った。授業においては,クラスの雰囲気といじめ抑止の関係について学んでもらうことをねらい,選択と分岐という工夫を取り入れた動画教材を活用した。実践結果についての考察から,本授業の有効性が概ね示された。

  • -特別支援学級におけるパイロットスタディ-
    本間 優子
    2018 年 45 巻 p. 73-78
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では特別支援学級に在籍する男児1名を対象に,児童自身が主体的に役割取得能力トレーニングを行うことができる教材として,タブレット端末を用いたトレーニング用デジタル絵本を作成し,その効果を検証した。対象児は5日間連続で計5つの物語課題について担任教諭と共にトレーニングを行った。その結果,パイロットスタディの段階ではあるが,1)対象児の役割取得能力の1段階上の発達段階への向上 2)教諭の自由記述による対象児のポジティブな行動変化 3)対象児の主体的なトレーニングへの参加が確認された。

  • 三井 一希, 八代 一浩, 水越 一貴, 佐藤 和紀, 萩原 丈博, 竹内 慎一, 堀田 龍也
    2018 年 45 巻 p. 79-84
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,小学校のプログラミング教育において,学習状況の共有化ツールを活用して児童のプログラミングの状況をクラス内で共有した場合の効果について検討した。その結果,学習状況の共有化ツールを活用すると,プログラミングに使用するブロックの数や種類が増える,他グループの工夫に気付きやすくなるなど効果的に学習できる傾向が見られた。また,児童は見やすさなどの理由から,共有化ツールを活用する授業を好意的に評価していることがわかった。

  • -証拠に基づくカリキュラム・マネジメントを目指して-
    松波 紀幸, 永井 正洋
    2018 年 45 巻 p. 85-90
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     近年,学校を取り巻く社会環境が,地域によって多様であることや,学校に「結果」を求める風潮が見られることなどから,各学校では独自に学校経営計画を作成するとともに教育課程を編成し,実施,評価,改善していくことが求められている。しかしながら,各学校では,学校が保有するデータを十分に生かしきれず,経験則,慣習に基づき経営や指導されている嫌いがある。そこで,本研究では,この問題について,小学校においてどのように解消していけばよいか,具体的な分析事例を交えながら,提言を行うことを目的とした。その結果,十分に生かされていないデータを詳細に分析することで,自校の弱点を見出せること,流布している教育言説について検証できることなど,科学的な知見に基づいて児童を指導できることが示唆された。一方で,教員養成段階や現職教員の研修の必要性,管理職への啓発などが今後の課題と考えられる。

  • 金 義鎭, 門傳 賢治, 金 惠鎭
    2018 年 45 巻 p. 91-96
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,既存の論理回路実験における潜在的ARCSモデルの4要因を活性化させる新たな教授法が,学生の学習意欲向上に有益であることを分析的に示すことである。分析には,現状と提案した教授法を各々講じた異なる2グループの学生からの評価データを利用した。統計分析は2グループ間の評価に着目した分割表によるχ2検定を用いた。その結果,潜在的ARCSモデルの注意,関連性,満足感の3要因と自信の一部の活性化を引き出したので,提案した教授法が現状と比べて,学生の学習意欲向上に効果があることが示唆された。

  • 酒井 郷平, 塩田 真吾
    2018 年 45 巻 p. 97-102
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     近年,インターネットの普及に伴い,インターネット依存傾向に該当する子どもが増加している。この課題を解決するため,学校現場において情報モラル教育が行われているが,こうした指導方法の多くは,危険性を煽ることにより,子どものインターネット利用を抑制させる,大人が決めたルールを子どもに守らせることによりトラブルにあわせない等の観点から指導されており,子どもたちにとっては他者から行動を制限される「他律的」な指導である。

     そこで,本研究では中学生を対象にした質問紙調査を行い,インターネット依存傾向の改善における「自律的な利用」について着目し,その有効性について検証を行った。

論文
  • 田島 貴裕, 大津 晶
    2018 年 45 巻 p. 103-108
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     LMSとクリッカーを積極的に活用して大規模講義での学生間コミュニケーションの活性化と効率的な授業運営を両立させるアクティブラーニング手法を開発し,初年次キャリア教育科目に導入した。授業アンケートの結果,当該科目の受講学生は多数の学生との交流やグループワークに満足していることが示された。また「学生の理解を促す工夫」「学習資料の提示」「私語や遅刻への対処」「教室環境」は,他の初年次共通科目群の平均値よりもやや高い値を示し,同手法を用いた大規模クラスの参加型講義運営には大きな問題が無いことが分かった。他方「学生に合わせた対応(質問等への対応や進度調整)」の平均値は相対的に低い評価となり,事前課題・事後課題の頻度や回数の設定に課題がみられ,改善の必要性が示された。

  • 張 莉, 石井 皓太, 北 英彦, 高瀬 治彦
    2018 年 45 巻 p. 109-114
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     著者らは2015年度に,日本語学習における誤りの共有と学びあいによる協同学習法を開発し,日本に留学している日本語上級の中国人日本語学習者11名を対象にして実践を行なった。学習者たちによる誤りの検出率が約80%と誤り探しによる学びあいができ,また,学習者の満足度は高かった。現在は日本語の上級ではなく中級の学習者にこの協同学習法を適応できるようにJasmineという協同学習支援システムを開発している。以前の実践では日本語作文を題材としていたが,中級の学習者にとって作文は難しいため与えられた中国語の文を日本語に翻訳する形式に変更した。また,中級者のみのグループの場合は自分たちで誤りを見つけることが難しいため,Jasmineが学習者に誤りやすいところを指摘するように開発する。指摘する誤りやすいところは,これまでの実践によって誤りデータベースに蓄積された誤りを用いる。指摘するときに学習者が正誤を判断できるように教材を用意してJasmineが提供する。Jasmineのプロトタイプが完成したので,Jasmineの運用の可能性とこの学習法の効果を確認するために試行実践を行なった。その結果,実装のバグを除いてJasmineの運用上の問題はなかった。また,Jasmineが誤りやすいところを指摘し,誤りかどうかを議論するための教材を提供することで学習者による検出率が高くなった。

  • -学校における情報セキュリティリスクに対する自覚意識の向上を目指して-
    髙瀬 和也, 酒井 郷平, 塩田 真吾
    2018 年 45 巻 p. 115-120
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     近年,校務が電子化・情報化されている一方で,教員が児童生徒や保護者の個人情報を漏洩する事故も頻発している。学校が情報セキュリティ対策をどう行っていくかは急務であるが,情報セキュリティリスクへの対策においては,「気をつけていれば大丈夫だろう」と他人事に終始してしまうといった課題が挙げられる。

     そこで本研究では,ヒューマンエラー対策のm-SHELモデルを援用し,「学校の情報セキュリティリスクへの自覚」をテーマとした研修教材を開発し,実践を行った。受講した教員を対象としたアンケート調査の結果をt検定により検証したところ,個人情報漏洩の当事者に感じる過失の割合と,「自分もやってしまうかもしれない」と感じる割合について,有意に差が見られた。

  • 村上 睦美
    2018 年 45 巻 p. 121-126
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     近年,スマートフォン利用率の上昇に伴ってインターネットにおけるSNSなどのコミュニティサイトによる被害児童数が増加傾向にあり,今後の情報モラル教育の充実が求められている。本研究では,高等学校家庭科の「学校家庭クラブ活動」で実施した小学生対象の情報モラル教育の出前講座において教育方法と評価の工夫を図り,出前講座による学習効果を検討した。その結果,継続的な情報モラル教育及び充実した学校と家庭の連携教育の必要性,グループワーク導入の有効性が示唆された。

  • ―英語とITをインフラとして捉える教育実践―
    木村 修平
    2018 年 45 巻 p. 127-132
    発行日: 2018/12/01
    公開日: 2019/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,BYOD体制で実施されているプロジェクト型大学英語プログラムが学生のITスキルの伸長にどのように影響しているかを,約200名の自己評価調査にもとづいて報告する。プログラムに含まれる授業タスクをリサーチ,オーサリング,コラボレーションの3種に大別し,各タスクに対応するITスキルの具体的な関係性を考察した結果,高頻度に経験したタスクに紐づくスキルほど自己評価が高くなる傾向が見られた。全国的に高等教育機関でのBYODの実施が進む一方でパソコンが使えない大学生が増加傾向にあるという報告が相次ぐ今日的状況において,英語と情報技術を知的生産インフラとして捉え,ITをタスクベースで目的合理的に活用する機会を組み込んだ大学正課授業のあり方を論じる。

編集後記
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