コンピュータ&エデュケーション
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46 巻
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
特集「ロボットを活用した教育実践と可能性」
  • -特別支援学校の生徒のパフォーマンスに着目して-
    岸 磨貴子
    2019 年 46 巻 p. 12-20
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     本稿は,分身型ロボットを活用した特別支援学校の実践を事例として,ロボットを含む情報通信技術(Information and Communication Technology)のある学習環境が,生徒の主体性や協働性を含む「パフォーマンス」をいかに生み出すかについて考察する。本稿で用いる「パフォーマンス」は,パフォーマンス心理学における概念で,ヴィゴツキーの考え方から引き出され,俳優が舞台で演劇活動を行うように,今の自分の限界を超えて,それまでとは違う自分になること(becoming)を意味する。本研究では,分身型ロボットが配置された教室環境において,特別支援学校の生徒が「なりたい自分」をイメージしながらパフォーマンスすることを発達と捉え,それを促す学習環境を考察する。

  • 坂田 信裕
    2019 年 46 巻 p. 21-29
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,ロボットの中でも,とくにコミュニケーションロボットの医療や介護分野における活用とその展開について焦点を当てた解説を行う。その中で,このような新たなテクノロジーであるコミュニケーションロボットをどのように考え,活用していくのかについて,その存在感が及ぼす影響や,2つのユーザー層の関係性,さらにテクノロジーリテラシーや,活用事例などを交えて説明をしていく。その中から,コミュニケーションロボットがユーザーインターフェイスとして特徴のある存在であり,医療や介護分野においても活用や展開が可能であることを述べたい。

  • 柏原 昭博
    2019 年 46 巻 p. 30-37
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     ロボットを学習支援に用いる場合,学習支援メディアとしてのロボットの適性を見極めることが重要である。本論文では,主体的学習を支えるエンゲージメントに着目し,エンゲージメント促進にロボットが適していることを示した上で,ロボットによる学習支援をいかにデザインするかについて論じる。また,エンゲージメントが学びの鍵となる文脈として,(1)コミュニケーションを要する英文読み合い,(2)学習者の注意・集中を要する講義を取り上げ,それぞれの文脈におけるエンゲージメントの要因を分析し,エンゲージメントを引き出す支援を実装した英文読み合いロボットパートナーおよび講義ロボットについて論じる。

  • 林 雄介, 福井 昌則, 平嶋 宗
    2019 年 46 巻 p. 38-45
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     コンピュテーショナル・シンキング,日本では「プログラミング的思考」という言葉をキーとしてプログラミング教育に注目が集まっている。そして,日本では既存の教科の中にプログラミング教育を組み込むクロスカリキュラムとなっているため,どのようにプログラミング教育を実施していくかが問題となっている。本稿では,ベン図,Yes/Noチャート,ビジュアルプログラミング言語,対話型ロボットを利用したプログラミング的思考の育成モデルを紹介し,その実践事例やそれに基づく学習環境を紹介する。この特徴は,分類を対象として教科の中で学習する内容の理解を深めることを目標としてプログラミングを行うこと,プログラムという抽象的なものをロボットとのインタラクションという具体的なものにすることである。

事例研究
  • 奥原 俊, 田中 雅章, 武藤 晃一, 鈴木 浩子, 菅原 良, 伊藤 孝行
    2019 年 46 巻 p. 46-51
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,キャリア教育に向けた求人票の読み方に関する学習支援システムを開発した。学習支援システムはグループ学習における学生同士の議論において,キャリアに関する用語(以下,求人用語)の説明を行う対話エージェントを用いる。グループ学習では,課題に対する学生の知識の差が議論の結果に影響し,正しい回答に到達しないことがある。そのため,指導者は,議論に必要な知識を学生に教示し,学生の知識を一定水準に引き上げることが求められる。しかし,多数のグループ学習が並行する場合,少数の教員が全てのグループに適切に介入して単語の説明を行うことは現実的に困難である。そこで,本研究では,学生の知識を一定水準に引き上げるため,求人用語の重要単語を抽出し,その単語の説明を行う対話エージェントによる学習支援システムを試作した。本研究では,試作したシステムを用いて実験を行い,評価・分析したところ,学習支援への有効性が確認できた。

  • ―『Wave 中国語“游”』,『小游』の開発と教育設計―
    湯山 トミ子, 篠塚 麻衣子, 武田 紀子
    2019 年 46 巻 p. 52-57
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     モバイル端末の普及,SNS の隆盛は,日々のコミュニケーション活動に広く浸透し,外国語を学ぶ学習者の資質,学習スタイル,学習目的,学習上のニーズにも少なからぬ影響を及ぼしている。本稿は,モバイル普及,SNS隆盛時代の外国語学習のツールとして,モバイルアプリに着目し,教育利用の可能性と教育設計について考察することを目的とする。具体的には,学習者の主体的利用に依拠する非構造的な学習活動を,外国語習得に必要な構造的な言語学習活動に結実させる効果的な教育設計について検討することにある。考察対象には,筆者が開発中の『Wave 中国語“游”』とSNS を利用したクイズ形式の双方向学習アプリ『小游』を取り上げ,中国語教育の事例を通して検討し,これからの初修外国語教育と言語教育研究の一助としたい。

研究論文
  • 長澤 直子
    2019 年 46 巻 p. 58-63
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     本稿では“PCが使えない大学生”の問題を文字入力の観点から論じる。大学生を対象としたアンケート調査によると,2,000文字のレポートをPCで作成する際にすべての作業をPCですると回答した人は約80%であった。一方で,約6%が先にスマートフォンで入力すると回答し,手書きまたはスマートフォンで下書きをする人が約13%存在した。また,PC以外のツールを用いて作業をする人は,将来へ向けてのICT利活用に対する自己評価が低いということが明らかになった。この評価を高めるには,初等中等教育からPCを使う頻度を増やし,キーボードにも慣れておくことが必要だと考えられる。

  • 佐藤 和彦, 服部 峻, 佐賀 聡人
    2019 年 46 巻 p. 64-69
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     筆者らは,プロジェクトベース学習(Project-based Learning)と問題ベース学習(Problem-based Learning)という2つのPBLの特色を学部2年生のソフトウェア開発演習に取り入れ,集団ソフトウェア開発による実践力の向上と,未知の知識・技術を学生が主体的に学習する機会を同時に与えられる演習として2010年度より実践している。与える前提知識を厳選し,未知の状況を作る学習効果は高い一方で,学生に対する負荷が高く,作業時間も圧迫するために成果物の完成度は高いものとは言えない。本稿では,学生らに与える前提知識の見直しなどの改善により,学生の主体的活動に効果的な変化が確認できた検証結果についてまとめる。

  • 金井 猛徳, 谷岡 由梨, 中野 長久, 小山 修平
    2019 年 46 巻 p. 70-75
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     管理栄養士・栄養士養成課程における調理実習工程は,まず教員が模範を見せ,それを学生は見ながら教材にメモをとる。その後,各自の班に分かれ実習を行うという形式である。しかし,実習の工程は複雑であること,衛生的な観点からも教材を確認することが困難な場合があるため,非接触で操作可能な教育支援システムを導入することで学習効果が高まると考えられる。そこで,本研究では調理実習において3次元深度センサを利用したジェスチャ操作を可能とするデジタル教材システムを開発した。本システムは,操作者の動作をモニタする3次元深度センサ(Kinect),ディスプレイモニタおよびそれらを制御するアプリケーションが導入されたPCで構成した。また,本システムは,栄養士養成課程の学生を対象に実際に操作を体験した上でアンケート調査を実施し,システムの有用性について検証した。

実践論文
  • 勝井 まどか, 福島 耕平, 下村 勉
    2019 年 46 巻 p. 76-81
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     「音声付きカード」とは,文節に分けた文字画像ファイルに音声での読みを組み合わせたカードである。本研究では,特別に支援を要する児童の文作り学習のため,音声付きカードを活用した文作り学習アプリ『ことばならべ』を開発した。開発したアプリでは,複数枚の音声付きカードをつなぎ,一文の音声として再生できる機能を実装した。また,完成した文の正誤を判定する機能を付加した。『ことばならべ』を活用した実践では,文字の認識が苦手な児童でも,文作り学習に自主的に取り組むことができた。

  • -全学年で実施できるフィジカルプログラミング教材の検討-
    髙瀬 和也, 塩田 真吾
    2019 年 46 巻 p. 82-87
    発行日: 2019/06/01
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー

     小学校におけるプログラミング教育の必修化を踏まえ,ScratchやVISCUITといったプログラミング教材を活用した実践が行われている。しかし,初めてプログラミングを扱う学校や教員にとっては,操作方法や指導方法が理解しやすく,スムーズに授業へ導入できるプログラミング教材を検討することが大きな課題になると言える。また,活用事例や先行研究を分析していくと,個人作業が中心となりグループ学習に応用しづらい点や人数分・グループ分のタブレットやキットなどの学習環境を整えるコストがかかる点が,プログラミング教育の導入における課題として指摘されている。そこで本研究では,小学校のどの学年でも容易に扱えるフィジカルプログラミング教材を開発し,実践を行った。児童や教員へのアンケート調査の結果,当教材が小学校におけるプログラミング教育の導入教材として有効であることが示唆された。

実践報告
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