コンピュータ&エデュケーション
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47 巻
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特集「教育研究における統計的手法の有効活用」
  • 統計手法の改革は進んでいるか?
    大久保 街亜
    2019 年 47 巻 p. 12-17
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     帰無仮説検定への過度の依存が問題となっており,改革が求められている。『コンピュータ&エデュケーション』においてその改革が進んでいるか検討するため,2014年から2018年に掲載された論文における統計に関する記述を精査した。推測統計を行った論文の90%で帰無仮説検定が行われたものの,効果量やサンプルサイズ設計について記載がほとんどなかった。これは帰無仮説検定におけるp値に依存した状態であるにもかかわらず,そこから脱するための改革が進んでいないことを示唆する。効果量を記載するなど改革を行うことにより,統計処理の適切性が増し,結論の妥当性が高まる。教育で特に重要である実用的有意性に関する情報を得ることができる。より良い実証研究のために今後の改革が期待される。

  • ―同時布置の仕組みと読み取り方を中心に―
    樋口 耕一
    2019 年 47 巻 p. 18-24
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,計量テキスト分析における一連の手順の中で,対応分析という統計手法を利用する利点について述べる。さらに,対応分析における同値布置の仕組みと読み取り方について,理解しやすい平易な解説を提示する。これを通じて,対応分析がより有効かつ適切に利用されるようになれば,計量テキスト分析を用いた研究の水準向上に寄与すると期待される。

  • 小野島 昂洋, 椎名 乾平
    2019 年 47 巻 p. 25-30
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     教育データの分析場面では,Likert尺度のような順序つきのカテゴリカルデータが得られることがしばしばあるが,そうして得られたデータから計算されたPearsonの相関係数にはバイアスがかかることが知られている。本稿は,離散化により生じる相関係数のバイアスの実態を概観するとともに,バイアスの大きさへ影響を与える要因を紹介する。また,カテゴリ得点に整数値を与えるLikert尺度とは異なる様々なカテゴリ得点の与え方を紹介し,それらのカテゴリ得点から計算された相関係数の値はどのように異なるのかを検討する。

  • ―『コンピュータ&エデュケーション』掲載論文をてがかりに―
    寺尾 敦
    2019 年 47 巻 p. 31-36
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,『コンピュータ&エデュケーション』で公刊された論文をレビューし,適切な統計グラフの提示,統計的仮説検定の前提条件の吟味,効果量や信頼区間の報告など,教育研究における統計的手法の適切な使用について議論する。ヒストグラムと散布図はデータのよりよい理解を読者にもたらすことができる。統計的仮説検定の前提条件を考慮すると,適切なデータ分析法を選択するのに役立つ。効果量や信頼区間に基づいて,教育的介入の実質的な効果を検討することができる。

研究論文
  • 久保 洸貴, 住友 千将, 中北 敦史, 岳 五一
    2019 年 47 巻 p. 37-42
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     先行研究[1]によって構築したGPS機能を利用したオープンキャンパス(以下,OC)見学サポートシステムにおける諸課題に対し,本研究では,システムに対して,(1)ID・パスワードの登録と入力が不要なCookieを用いた認証機能とOC情報の通知機能を実装し,より手軽にシステムを利用できるよう改善を図る。(2)高精度リアルタイム位置測位が可能なBeacon端末(以下,BC)を併用する位置測定補正法を提案し,建物内における位置情報の測定精度低下に関する問題解決を図る。(3)BC機能とLINEアプリを有機的に協働させ,利用者がシステムから提供している学部,学内施設,イベントなどの情報の能動的な送受信を可能にし,情報の送受信の効率性の向上を図る。そして,システムに関する実証実験を行い,提案の位置測定補正法の有効性を明らかにする。さらに,甲南大学で行われた2回のOC参加者を対象に本システムの利用に関する性能評価を行い,システム性能の改善を明らかにする。最後に本システムによる位置測位および動線分析を行い,時間と重ね合わせた学内施設の有効利用に活用できることを示す。

  • 守屋 俊, 柴田 千尋, 安藤 公彦, 稲葉 竹俊
    2019 年 47 巻 p. 43-48
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     近年,大規模な教育データを対象に分析を行うラーニング・アナリティクスへの関心が高まっており,深層学習技術を活用する研究も行われるようになってきた。本研究チームも,協調学習データに自動的かつリアルタイムにコーディングラベルを付与するAIモデルを構築し,その精度と有用性を模索してきた。しかし,大規模なデータから教師データを作成するには膨大な人力と時間を要することが課題となっている。まして,研究課題や教育的実践のニーズごとに新たな教師ラベルを付与するとなるとさらなるコストがかかる。そこで,本研究では転移学習として言語モデルの事前学習を本学習の前に行うことで,どの程度人力によるラベリング作業量を削減しうるかを検証した。

実践論文
研究ノート
  • 村上 睦美, 塩田 真吾
    2019 年 47 巻 p. 61-64
    発行日: 2019/12/01
    公開日: 2020/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,ソーシャルゲームの適切な利用に関する効果的な教育方法の開発に向け,学校種及び進学状況の異なる高等学校2学年を対象にソーシャルゲーム利用実態を踏まえた消費生活におけるアンケート調査及び分析を行った。その結果,次の2点が明らかになった。

     ①学校種及び進路希望の違いによる消費生活における意識及び行動と知識の差はほとんど見られず,どの学校においても高頻度及び高額な課金のソーシャルゲーム利用は一部の生徒であること。

     ②衝動的な課金をする者はそうでないものと比べて,ソーシャルゲーム利用頻度及び利用額が大きい傾向にあり,適切な消費行動をしていないことや正しい知識を習得できていないことを認識していない。

     この結果から,高校生のソーシャルゲーム利用についての指導において,消費者として身に付けるべき知識と判断能力及び適切な金銭感覚を習得させる教育の充実が必要であることが示唆された。今後はソーシャルゲーム利用における指導の実態を調査及び分析し,より効果的な教育方法を検討していきたい。

実践報告
編集後記
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