コンピュータ&エデュケーション
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51 巻
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特集「小学校からのプログラミング教育がひらく新しい学び」
  • 鹿野 利春
    2021 年 51 巻 p. 14-19
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     新学習指導要領では,すべての教科・科目で情報活用能力を育むことになっている。これは,情報活用能力がこれからの時代を生きるために必要なものであり,教科横断的に身に付けなければいけないという認識があるからである。実際に,文字入力やファイル操作,一般的なソフトウェアの使い方を学べば,それは,以後の学校生活全体で活用されていく。これはプログラミングについても,データの活用についても同様である。また,新学習指導要領の学びは情報端末が1人1台使えることが前提といってよい。協働的な学びも,個別最適な学びも情報端末が手元にあることが前提である。GIGAスクール構想により,小中学校はこれを達成し,高校もそれに続いている。GIGAスクール構想と合わせて情報活用能力の育成が適切に行われることにより,すべての教科に良い影響が出るようになるだろう。

  • ―その現状と課題―
    阿部 和広
    2021 年 51 巻 p. 20-26
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     2020年4月,プログラミング教育を含む新しい小学校学習指導要領が実施された。しかし,新型コロナウイルス感染症の影響もあり,プログラミングを体験する授業はあまり行われていない。そうなった経緯について,過去の小学校のプログラミング教育を振り返り,産業界や官邸,文科省の思惑,新しい教育や学校の在り方などが交錯する中で進められた取り組みから読み解く。そして,それを受けて移行期間中に多くの学校で実施されたコンピューターを使わない「アンプラグド」を用いた授業を紹介し,その問題と背景にある「プログラミング恐怖症」に対する解決法を提案する。

  • 栗山 直子, 齊藤 貴浩, 森 秀樹, 西原 明法
    2021 年 51 巻 p. 27-32
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     公立小学校へのプログラミング学習の出前授業を小学校8校33クラスの児童1026名を対象に広く行い,児童と担任教諭に対してアンケート調査を行った。児童のプログラミング学習をすることへの動機と批判的思考の関係の検証を行った結果,「充実志向」や「実用志向」が動機として高い児童は,「論理的思考への自覚」「探究心」「証拠の重視」などの批判的思考についても高いという傾向があることが明らかになった。また,実践事例として「電気の流れ」の授業実践(5年生1クラス21名)をとりあげ,教科教育においてプログラミングを用いることで,児童が電子の流れという目に見えない現象をモデル化することの意義を理解していることが確認された。

  • ―プログラミング的思考力を育てるための取り組み事例―
    森棟 隆一
    2021 年 51 巻 p. 33-38
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     現行の学習指導要領では,小・中・高等学校を通じたプログラミング教育の充実が示されており,小学校でのプログラミング教育では,「コンピュータに意図した処理を行うよう指示することができるということ」を体験させながらプログラミング的思考力を育んだり,コンピュータ等を上手に活用して身近な課題解決をしたり,よりよい社会を築いたりしようとする態度を育むことを目的としている。そこで,小学校でのプログラミング教育の目的を達成するため,ViscuitやScratchなどのビジュアル型言語を用いて発達段階に応じた取り組みを行なってきた。授業実施後のアンケートからは,プログラミングによって情報社会が支えられていることにも多くの児童が気づき,その重要性を感じ,自らが継続的にプログラミングを学び続けたいという態度が涵養されていることが明らかになり,プログラミング教育の目的が一定程度達成されていることが示された。一方,小学校段階では身に付かない能力や資質などや課題も見出され,中学・高等学校を通した継続的なプログラミング教育の充実のためには何が必要となるかを論じていく。

  • ―どのように数学的思考をプログラミングにつなげるかを考える―
    吉田 賢史, 篠田 有史, 松本 茂樹
    2021 年 51 巻 p. 39-45
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     COVID-19の流行によりひとり1台のPC / タブレットの環境が,GIGAスクール構想(GIGA:Global and Innovation Gateway for All)を立ち上げた時期のロードマップより早く実現しようとしている。しかしながら,平成29年に告示された新学習指導要領の数学科においては,プログラミング的思考に関する記述はなく,適切なPCの活用に留まっている。そこで,本稿ではプログラミング的思考のコアとなる思考をComputational Thinking(CT)と捉え,中学数学を中心とした解法の中に潜むCTについて述べる。数学の教材を例に,教科書などで示されている解答をCTの視点で解釈し直すことで,中学校の技術や高校の情報のプログラミングに繋がると考えられる。さらに,数学をCTの基盤となるような指導法について考える。

  • 小田 理代, 登本 洋子, 堀田 龍也
    2021 年 51 巻 p. 46-51
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本稿では,諸外国と日本のコンピュータサイエンス(以下,CS)教育のカリキュラムのタイムラグに関する状況を調査することで,今後発生する新たな社会的要請や研究成果をCS教育のカリキュラムにタイムラグ少なく導入していくための改善の方向性について日本が示唆を得ることを目的とした。その結果,カリキュラムの変更時期であることを認識した後実際に改訂カリキュラムを起草するまでに要する時間である意思決定のタイムラグに関して,日本は課題があることが示唆された。日本のような定期的なカリキュラムの更新サイクルは,持続性や効率性の観点から多くの国で採用されているものの,新たな社会的要請や研究成果への迅速な対応が難しいとされる。日本においては,継続的な部分改訂を可能にするカリキュラム・フレームワークの仕組みの設計が,社会的要請や研究成果をカリキュラムにタイムラグ少なく導入していくための改善の一つの方向性として示される。

研究論文
  • 住友 千将, 岳 五一
    2021 年 51 巻 p. 52-57
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,大学の魅力をより効率的に伝え,大学への興味と関心度が一層深まるよう,周辺の地域資源を活用するWeb情報自動抽出・発信機能を備えた地域融合型キャンパス見学サポートシステムを構築し,その実証実験を行う。そのため,(1)位置情報に応じ,道沿いのカフェやレストラン等のPoint of Interest(POI)データとともに,各POIに関連する画像や動画をWeb上から自動抽出して提示する機能,及びキャンパス内の施設間での経路案内をはじめ,キャンパス最寄り駅から利用者ニーズに応じ,現在位置から経路選択が可能な案内機能を開発する。さらに,(2)撮影したキャンパス内の主要施設や風景動画に対して,大学のオリジナルキャラクターによる音声案内を交えた動画コンテンツを発信し,コロナ禍の社会生活にも適用できるインターネットを駆使したオンラインによるリアルなオープンキャンパス(以下,OC)見学の機能を開発する。次に,(1)と(2)の機能をOC見学サポートシステムに実装し,オープンキャンパス当日に実用化する。さらに,本システムの性能を検証するために実証実験,及びそれに関するアンケート調査を行い,システムの有効性と有用性を明らかにする。

実践論文
  • 板垣 翔大, 浅水 智也, 佐藤 和紀, 中川 哲, 三井 一希, 泰山 裕, 安藤 明伸, 堀田 龍也
    2021 年 51 巻 p. 58-63
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,中学校技術・家庭科技術分野におけるAIを活用したプログラミングを取り入れた授業を実施し,生徒のAIに対する意識の変容から授業を評価した。授業は3単位時間で行い,ビジュアル言語に,AIによる画像認識を組み合わせることができるツールを用いて,身近な問題解決の活動に取り組ませた。授業前後のAIに対する意識を比較したところ,AIの進歩に対する不安の軽減やAIを活用して身近な問題を解決できる自信の高まりなどが確認された。

  • 吉川 遼, 阿部 美里, 青山 太郎
    2021 年 51 巻 p. 64-69
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,オンライン会議システムを活用した対話型鑑賞ワークショップをデザインし,その効果を検証した。ワークショップのタイムラインとして,映像作品を繰り返し鑑賞し,他者と議論する活動を組み込んだ。事後アンケートの分析より,他者の意見を踏まえ,自身の作品の見方に影響があったとする例がみられたことから,本研究でデザインしたワークショップは,オンラインでの対話型鑑賞を成立させる上で一定の効果があったことが示唆された。

  • 山本 朋弘, 横山 誠二
    2021 年 51 巻 p. 70-74
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     小学校体育において,タブレット端末でのゲームアプリを活用してゴール型ボール運動の授業を実践し,ホワイトボードの作戦板を活用した授業と比較して,動きのイメージ化や動き方の理解にゲームアプリが有効であるかを検証した。児童向け意識調査等を分析した結果,動きや作戦の理解や教え合い等に関する項目でゲームアプリが有意に高い結果であった。本実践において,ゲームアプリの活用が,ゲームでの動きを可視化させることができ,動きや作戦への理解を高め,グループでの教え合いを促進することを明らかにした。今後は,検証する学級や種目を増やして,ゲームアプリの有効性をさらに検証する予定である。

  • ―広島工業大学とペトロナス工科大学との国際交流―
    松本 慎平, 中島 亨輔, Azelin Mohamed Noor
    2021 年 51 巻 p. 75-80
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     広島工業大学で留学を経験した学生のアンケートを参照すると,英語が苦手な学生であっても,留学後ほとんどの学生が英語に対して前向きになっている。しかし,諸事情により留学の機会を得られない学生もいる。そこで本研究では,海外の工学系大学と連携し,オンラインの国際交流活動をコミュニケーションツールDiscordで実践する。それにより,日本人学生に英語を活用する機会を与え,国際交流に関連する学びの動機付けや学習意欲の促進を目的とする。工学系の大学であり日本との時差の少ないマレーシアのペトロナス工科大学との交流を実現し,専門科目,特にプログラミングに関わる交流活動(ハッカソン)を英語で行う。本研究の活動では,次の2点を狙いとする。1つは,専門教育と英語教育の融合教育を行うことで,専門や英語の両方の学びに良い影響をもたらすことである。もう1点は,ピアティーチングによる交流を行い,異文化理解やコミュニケーションに関する意欲を向上させることである。ハッカソン実施後にARCSモデルで実践の内容を分析した結果,動機付けを適切に行えていたことを確認した。次に,実践前後でいくつかの学習意欲の差を調査した結果,異文化交流やグループワーク,理工系に関するいくつかの項目で学習意欲の向上が示唆された。

  • 中澤 一亮
    2021 年 51 巻 p. 81-86
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,自作のAR学習教材を中級日本語学習者に二学期間課題として取り組んでもらい,彼らのAR教材の受け止め方や知覚する学習効果が使用期間の長さによってどのように変化するのかを探った。各学期後に自由記述で回答する質問紙を用いてデータ収集を行い共起ネットワーク分析した結果,AR学習教材は日本語学習に役立つ新しいツールであり,使用期間が長くなるにつれ,会話・聴解能力や文法理解を助ける効果を学習者が感じていることが分かった。

  • 篠崎 文哉
    2021 年 51 巻 p. 87-92
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,4人グループでの英語プレゼンテーションの活動準備において,ICT端末を1人1台使用することと,4人に1台使用することの両方を経験した中学生にアンケート調査を実施し,自由記述による回答を分析することにより,端末数の違いや1人1台環境下で活用した共同編集機能が,生徒の準備への参加態度に及ぼす影響を検討した。主に,1人1台環境では作業を効率的に行えたり,英語学習においても肯定的な影響を与えたりするが,コミュニケーション不足になりがちになる一方,4人に1台環境では作業効率は前者ほど高くないが,グループ内でのコミュニケーションが活発になり,よりグループの協力体制を築きやすくなることが分かった。結果を総合し,英語プレゼンテーション活動時の端末使用について例示した。

実践報告
  • 小林 渓太, 髙瀬 和也, 塩田 真吾
    2021 年 51 巻 p. 93-96
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     本研究では,360度カメラを活用し環境配慮行動が必要な場面を映し出した360度画像を用いることで,環境教育における新たな評価手法の開発を行った。本評価手法は,子どもに360度画像の中から環境配慮が必要な箇所を探索させることで,環境配慮行動に繋がる能力の1つである「認知力」の観点からの評価を試みた点に特徴がある。360度画像を保存したタブレット端末を使用して本評価手法を実践したところ,小学生でも問題なく操作可能であり,子どもごとに認知できる数に差があることが確認できた。

  • ―Googleスプレッドシートによる管理と入力率向上の工夫―
    宮城島 雅史
    2021 年 51 巻 p. 97-100
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2022/06/02
    ジャーナル フリー

     多くの学校ではコロナ等感染症対応の一環として,職員及び生徒に毎日の検温や健康観察を実施している。生徒の検温や健康観察については健康観察表のような紙で行われている学校が多く,教員の負担増やペーパレス化が進んでいないという課題はあるが,手法や運用における情報共有は十分にされていない。2021年になって検温アプリやサービスが増えてきた印象はあるが,広く浸透もしていない。そこで本研究では,Google Workspaceを用いた検温及び健康観察システムの開発を行い,入力率向上の工夫を考察した。この手法は,学校現場における様々な提出物の管理にも応用可能であり,教員の集計業務の効率化向上が期待できる。

ソフトウェアレビュー
誤植のお詫びと訂正
  • 寺尾 敦
    2021 年 51 巻 p. 131
    発行日: 2021/12/01
    公開日: 2021/12/01
    ジャーナル フリー

    『コンピュータ&エデュケーション』Vol.50 のp.56 からp.59 に掲載された特集論文「グローバル企業と連携した異文化間コミュニケーションについて学ぶ出張授業のオンライン化」明石萌子・藤川大祐・阿部学・和田翔太・植木久美において,2 名の著者の所属に誤りが生じました。事務局での編集作業におけるミスが原因です。著者所属は特集論文でのみ表示しています。そのため,著者から提出された原稿には所属の記載がないことが多く,事務局での編集段階で所属先を入れています。この際に著者への確認を行うのですが,今回はその確認が抜けてしまっておりました。誠に申し訳なく,著者にお詫びいたします。

     当該論文での著者所属先を,以下に示すように訂正いたします。該当する著者は,明石萌子さん,和田翔太さんです。

    (誤)NPO 法人企業教育研究所

    (正)NPO 法人企業教育研究会

編集後記
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