昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
10 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 中山 裕人
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 4 号 p. 67-74
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    従来,日本では北海道と本州から知られていたヒメシカシラミバエを北部九州の犬鳴山系で発見した.本種は九州から記録される唯一のシカシラミバエ類の種である.2004年から2006年にかけての犬鳴山系の調査で本種有翅成虫が多数採集されたが,犬鳴山系には約700頭のニホンジカが生息しており,ヒメシカシラミバエはニホンジカに寄生していると思われた.ヒメシカシラミバエ有翅成虫は犬鳴山系では5月から12月に現れたが,これは本州の既産地に比べると出現終了期が遅く,結果的に長い出現期間だった.本州ではヒメシカシラミバエに加えてクロシカシラミバエが同所的にニホンジカに寄生しているが,ヒメシカシラミバエ有翅成虫は春から秋に出現する一方,クロシカシラミバエ有翅成虫は晩秋から初冬に出現している.犬鳴山系でヒメシカシラミバエ有翅成虫が晩秋から初冬にかけても現れていたのは,犬鳴山系にはクロシカシラミバエが生息していないため,ヒメシカシラミバエとクロシカシラミバエの生態的競合がないからではないかと推察された.また,ヒメシカシラミバエ有翅成虫はしばしば捕虫網の外側に飛来したが,捕虫網の色が白でも青でも飛来傾向に差は認められなかった.加えて,ヒメシカシラミバエは,ヨモギの葉を入れたシャーレ中で120〜135時間(丸5日以上)生きた個体がいたことから,羽化後未吸血のまま5,6日生きる個体も存在しうることが示唆された.
  • 村田 浩平, 土屋 守正, 増島 宏明
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 4 号 p. 75-87
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    太平洋上空を浮遊する昆虫相に関する調査をこれまで報告例のない1月から3月にかけて東海大学海洋調査実習船望星丸により1999年,2002年,2003年の3航海実施するとともに,独立行政法人海洋研究開発機構が運行する海洋地球研究船みらいにより2005年に1航海実施し,以下のような結果を得た.1.全航海で得られた海上を浮遊する空中移動性昆虫の目別個体数は,多い順にハチ目,ハエ目,カメムシ目,チャタテムシ目,アザミウマ目,コウチュウ目であり,そのほとんどが体長1mm前後の微小な昆虫であった.2.得られた昆虫の個体数は,主な分散源と考えられるオーストラリア大陸やニューギニア島近海で多かった.また,陸地から400km以上離れた海上で得られることもあったが,多くが陸地から数十キロ以内で得られた.3.海洋上空で昆虫が得られる条件として,最も近い島から風が吹いていること,海洋上空で昆虫が得られる傾向が見られた.また,風速との関係では無風時,強風時には得られない傾向が見られた.4.航路によって得られる昆虫の個体数には違いが見られ,日本から南東への往復航路では他の航路に比べて少ない傾向が見られた.5.イチジクコバチ科の1種は,ニニーゴ島沖120kmの海上で得られ,コバチ上科の1種,アザミウマ科の1種は,ニューギニア島から40km離れた海上で生存状態で得られていることから,これらの種は,島嶼間を分散する可能性があることが示唆された.6.港に停泊中に得られた昆虫の目構成は,海洋上空とは異なり,ハエ目,カメムシ目,ハチ目の順で多く,環礁で少なく火山島で多い傾向が見られた.7.甲板では,アカアシホシカムシ,ヒメアケビコノハ,トゲハネバエ科の1種,ツヤウミアメンボ,ハネアリなどが得られ,これらは海洋島が点在する海域では,島嶼間を分散する能力を持つことが示唆された.
  • 那須 義次, 村濱 史郎, 坂井 誠, 山内 健生
    原稿種別: 本文
    2007 年 10 巻 4 号 p. 89-97
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    2002年から2006年にかけて,日本各地の鳥類の巣・ペリットおよび哺乳類の糞を調査し,ヒロズコガ科ヒロズコガ亜科に属する4種の蛾の発生を確認した.イガが島根県出雲市と大阪府河内長野市のツバメの巣,ウスグロイガが大阪府寝屋川市のハイタカのペリット,マエモンクロヒロズコガが愛媛県宇和島市のシジュウカラの巣,長野県飯綱町のノスリのペリット,小笠原諸島父島のイエネコの糞および鹿児島県奄美大島のイエネコかイヌの糞,アトキヒロズコガが和歌山県橋本市の雑木林に設置したハイタカのペリットを用いたトラップから羽化した.本報告は,日本においてシジュウカラの巣,鳥類のペリットおよび肉食哺乳類の糞から発生した蛾の初めての記録となった.幼虫はいずれも巣・ペリットおよび糞中のケラチン源(羽毛,毛など)を摂食していると考えられた.今回の調査結果と文献記録から市街地に造られたスズメ,コシアカツバメ,ツバメとカワラバトの巣が毛糸や毛織物害虫のイガの野外における重要な発生源であり,こられの巣からイガが家屋内に侵入することが推察された.
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