昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
11 巻, 4 号
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  • 善養寺 聡彦
    原稿種別: 本文
    2008 年 11 巻 4 号 p. 159-167
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    ナミテントウが晩秋の暖かい日に,明るい色の標的に向かって飛来集合することは,一般によく観察される.しかし,飛来集合する特定の日がどのように決まるかに関しては,これまで明らかにされていなかった.千葉市内の2か所における9年間の観察記録をもとに,この飛来集合を引き起こす環境条件を検討したところ,日長の短縮あるいは低温のわずかな経験では不十分であることがわかった.それよりはむしろ,ある基準温度以下の低温にさらされる経験が累積してはじめて,この行動が引き起こされると推察された.集められたデータを分析した結果,もっとも妥当性がある基準温度は14.0℃で,これ以下の累積低温量が257.8を超え,さらにその後の好気象条件(12時の気温が16.2℃以上,風力4以下,晴天あるいは薄曇り)の日に,ナミテントウの飛来集合が起こると考えられた.
  • 大野 豪, 佐々木 智基, 佐藤 幸恵, 浦崎 貴美子, 原口 大, 小濱 継雄
    原稿種別: 本文
    2008 年 11 巻 4 号 p. 169-178
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    イモゾウムシの簡易な人工飼育法を開発する過程で,卵を通じたバクテリアによる人工飼料の汚染が問題となった.そこで,従来本種の卵消毒液として用いられてきた70%エタノール(以下エタノール)と5%ホルムアルデヒド液(以下ホルマリン)への卵の浸漬時間,およびこれら2種類の消毒液を組み合わせた処理が,飼料のバクテリア汚染と虫の生存・発育に及ぼす影響を調べた.エタノールあるいはホルマリンへの浸漬時間を60分まで延長すると,孵化率の有意な低下なしに,汚染を十分に抑制できた.しかし,エタノール60分間浸漬は,羽化成虫数を有意に減少させた.エタノール40分間浸漬は,虫の生存・発育に悪影響はないものの,汚染抑制力が弱かった.エタノールに5分間浸漬後ホルマリンに20分間浸漬する処理は,虫の生存・発育への悪影響なしに,汚染を十分に抑制できた.卵のホルマリン60分間浸漬,あるいはエタノール5分間浸漬後ホルマリン20分間浸漬が,イモゾウムシの人工飼育における卵消毒法として使用可能と結論した.
  • 山口 卓宏, 小西 和彦, 水谷 信夫, 守屋 成一
    原稿種別: 本文
    2008 年 11 巻 4 号 p. 179-184
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    茨城県つくば市ならびにつくばみらい市において,2006年と2007年の5月に,レンゲソウまたはカラスノエンドウで採集したアルファルファタコゾウムシ蛹から羽化した寄生性天敵を調査した.その結果,ヒメバチ科のシンクイトガリヒメバチ,マツケムシヒラタヒメバチ,アカハラタコゾウヤドリヒラタヒメバチ,ミイロトガリヒメバチ,Bathythrix kuwanae,タコゾウアカヤドリバチ,Gnotus sp.の7種とコバネコバチ科のTrichomalopsis shirakii,Dibrachoides sp.の2種,ならびにヤドリバエ科のBessa parallela 1種が認められた.このうち,ミイロトガリヒメバチとT.shirakiiの2種は,アルファルファタコゾウムシに対する寄生は初記録であった.寄生性天敵の寄生率は2006年が2.8%,2007年が4.3%であった.シンクイトガリヒメバチとマツケムシヒラタヒメバチの2種が優占種であった.
  • 昆野 安彦, 村松 祥太
    原稿種別: 本文
    2008 年 11 巻 4 号 p. 185-192
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    環境省レッドリストの準絶滅危惧種であるヒメギフチョウの青葉山における産卵適地選好要因を明らかにするために,青葉山のヒメギフチョウ棲息地を包括する広さ約60ha,海抜80m〜160mの森林を林相によって54の区画に分け,各区画の卵密度を外的基準とする数量化I類による分析を行った.その結果,分析に使用した5種類の環境要因(アイテム)の重要度をアイテムレンジの大小によって判断すると,もっとも重要なのはウスバサイシンの密度で,以下,林相,地形,林床植生,傾斜面の方角の順であった.また,各アイテムの中でもっともカテゴリ数量が高かったのは,ウスバサイシンの密度では「普通」,林相では「落葉樹林」,地形では「斜面」,林床植生高では「30cm以下」,傾斜面の方角では「北向き」であり,理論上の最適な環境下において期待できる卵密度の最大値は337個/haであった.
  • 岸田 竜, 鈴木 信彦
    原稿種別: 本文
    2008 年 11 巻 4 号 p. 193-201
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2018/09/21
    ジャーナル フリー
    モンシデムシ属Nicrophorusでは,親が小型脊椎動物の死体を子供の餌として利用し,捕食者や他の腐食者から子供や資源を防衛する.モンシデムシ類にとって他の昆虫,特にハエ類やアリ類は重要な競争者であると考えられている.本研究では,アリ類の豊富な九州において,野外に設置した鶏肉を経時的に調べることによって,モンシデムシ類とアリ類やハエ類の資源利用様式を解析した.鶏肉設置直後からアリ類が集まったが,2日目以降はアリ類の個体数は激減した.これはアリ類が腐敗の進行した鶏肉を利用しないためと考えられる.モンシデムシ類は鶏肉設置後3日目から4日目に出現したが,この時期までにアリ類が鶏肉を完全に消費することは少ないため,モンシデムシ類とアリ類は直接の競争をすることなしに資源を使い分けている.一方,設置3日後の鶏肉には,ハエ類の幼虫が多数みられ,モンシデムシ類にとってハエ類は重要な競争者であることが示唆された.
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