昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
17 巻, 1 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
巻頭言
〈原著論文〉
  • 小林 純子
    2014 年 17 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2014/01/05
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    1.日本産トンボ目2亜目5科10属15種の卵巣形態を観察し,その詳細な形態や構造を明らかにした.

    2.トンボ目の卵巣前端は,中胸後背板前縁の内突起下から生じ,その末端は第8腹節の産卵管または産卵弁に開口する.

    3.これまでトンボ目の卵巣で「側輸卵管」と呼ばれてきた部分は,その機能及び構造から,他の目の昆虫でcalyxと側輸卵管と呼ばれる2つの器官に分けられる.

    4.卵巣小管は,calyx腹面のほぼ全面にわたって規則的に配列し,開口する.

    5.卵巣小管の平均数は著しい種間差および種内変異がみられるが,均翅亜目やアカネ属といったグループにおいては,他のグループよりも平均数にまとまりが見られた.

    6.卵巣全体は,一部のハエ目において成虫期にも観察されるperitoneal sheathと構造的に類似した膜質で覆われる.

  • 船越 進太郎
    2014 年 17 巻 1 号 p. 10-22
    発行日: 2014/01/05
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,寄主植物の生息環境がガ類幼虫の個体群に及ぼす影響を明らかにするために,ツゲの葉を専食する鱗翅目6種に注目し,異なる生育環境でその群集構成および密度を比較した.また,同じ資源を利用する複数種の餌利用様式を明らかにすることを目的とした.ツゲ葉は陽がよく当たる円原調査地のものが大きくて堅く,新芽や硬化した葉のいずれもタンニン量が勝っていた.幼虫の総個体数は陽が当たらない伊往戸調査地が勝り,新芽の季節と葉が硬化した季節で差が小さかったが,陽のよく当たる円原調査地では葉が硬化した季節は幼虫の個体数が減少した.また,光条件の異なる河畔と林床ではツゲ群落上の優占種が異なる時期があった.越冬幼虫や早春の孵化幼虫,その後の世代幼虫と生息場所や季節が異なるツゲ葉の性質との関連が示唆された.寄主植物の生息環境がガ類群集に影響を与えているのかもしれない.また,エチゴハガタヨトウは,春の羽化,産卵後に孵化が始まるのでその間,幼虫期が遅れる.本種の幼虫は一時ツゲを独占するが,他種との競争を避け硬化したツゲ葉に適応していると考えられた.以上のことから,ツゲを専食する鱗翅目6種は,多くが新葉の展開する時期に幼虫個体数を最も増加させるが,環

    境への適応や幼虫期のずれなどにより共存していると判断された.

  • 萬屋 宏, 荻野 暁子
    2014 年 17 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2014/01/05
    公開日: 2019/04/25
    ジャーナル フリー

    チャの難防除害虫であるチャノミドリヒメヨコバイに抵抗性を持つチャ品種の育成にむけて,育種素材となりうる遺伝資源を探索した.前年の調査で本種の吸汁被害の程度が小さく,吸汁痕数が少ないチャ遺伝資源3系統を選抜した.これら3系統は,吸汁痕数だけでなく実際の吸汁量も少ない可能性がある.そこで,吸汁量の指標として甘露排出量を比較する飼育実験を行った.その結果,これら3系統における甘露排出量は,最も普及している品種「やぶきた」上における排出量よりも顕著に少ないことがわかった.また,採取した甘露のアミノ酸含有量を高速液体クロマトグラフィーを用いて調べた.その結果,吸汁性昆虫にとって重要な栄養素であるアミノ酸は,これら3系統で吸汁した場合,甘露中にほとんど含まれておらず,十分に摂取出来ていないことがわかった.これら3系統は,餌資源として十分な利用がされておらず,顕著な抗寄生性があり,抵抗性育種素材として有望であることがわかった.

〈短報〉
〈新記録ノート〉
〈フォーラム〉
feedback
Top