昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
22 巻, 2 号
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〈短報〉
〈特別寄稿〉
  • 加藤 徹
    2019 年 22 巻 2 号 p. 56-65
    発行日: 2019/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    本稿は,Scaptomyza属ショウジョウバエの系統進化に注目し,これまでの系統学研究の結果を概説するとともに,筆者らの最近の研究で得られた知見を紹介した.Scaptomyza属のショウジョウバエは,これまで269種が記載されているが,そのうち,約160種がハワイ列島に固有で,残りは世界中に分布することから,これらはハワイ固有のIdiomyia属とともに,顕著な適応放散の例として有名である.Scaptomyza属の系統的位置については,従来の形態形質を用いた研究から,本属がIdiomyia属と姉妹群を形成し,そのクレードがHirtodrosophila属の姉妹群として位置付けられることを提唱したThrockmorton(1975)の仮説,および,Scaptomyza属とIdiomyia属は姉妹群を形成せず,それぞれ独立に分化したことを提唱したGrimaldi(1990)の仮説の二つがある.しかしながら,分子系統学的手法を用いた一連の研究は,本属がIdiomyia属と姉妹群を形成する点でThrockmortonを支持するが,そのクレードがHirtodrosophila属ではなくSiphlodora亜属と姉妹群を形成する点で,Throckmortonとも異なる見解を与える.また,筆者らの最近の研究により,Scaptomyza属とIdiomyia属の共通祖先は大陸で分化し,それらが別々にハワイに移住したこと,そして,Scaptomyza属においては,大陸からハワイへの移住が複数回生じたことが示唆された.

〈連載〉
〈グラビアシリーズ〉
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