水田内におけるミズギワカメムシの発生消長,捕食行動,餌動物の種構成,ならびに実験室内での生涯産卵数と産卵行動に関する調査を実施し,以下のような結果を得た.
1. ミズギワカメムシ成虫の個体数のピークは,両年とも6~7月と10月であったが,2013年の個体数のピークは2012年に比べ明瞭ではなかった.これは,ミズギワカメムシが湿った環境を好むことと関係していると考えられ,2012年のように落水すると水田内で見られなくなるが,2013年のように浅水管理をすれば,本種が確認される期間が長くなるようであり,浅水管理は本種の生息に好適な環境維持に寄与すると考えられた.
2. 水田内および畦畔において本種の成虫と幼虫が共に確認されたことから,本種は水田内と同様に畦畔も繁殖の場として利用していることが示唆された.
3. 畦畔において本種の成虫が1月上旬と2月下旬に確認できたことから,本種は畦畔において成虫で越冬すると考えられる.
4. 本種の食性については不明な点が多かったが,本研究においてヨコバイ科の1種の成虫,トビイロウンカの成虫,ユスリカ科の1種の成虫,ミギワバエ科の1種の成虫の合計2目4科4種を捕食することを確認した.また,水田面においてキクヅキコモリグモによるミズギワカメムシに対するギルド内捕食を確認した.
5. 野外においてミズギワカメムシが口吻を泥に突き立てつつ歩行する餌の探索行動を確認した.また,餌動物を発見すると近づいて餌動物の胸部側面に口吻を刺し体液を摂取する捕食行動も確認した.
6. 本種の産卵は,プラスチック容器の底に敷いた濾紙に卵を埋め込むように行われた.産卵期間は,全ての温度区(23°C,25°C,28°C)において飼育温度が高くなるにつれ産卵期間は有意に減少した.また,生涯産卵数は温度区間で違いが見られなかった.
これらの結果から,本種は気温が温暖な春と秋に活動を活発化し,この時期は水田内において捕食者としてふるまうといえる.
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