昆蟲.ニューシリーズ
Online ISSN : 2432-0269
Print ISSN : 1343-8794
最新号
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巻頭言
原著論文
  • 楠原 弘己, 西谷 光平, 上野 高敏, 紙谷 聡志
    2025 年 28 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2025/03/25
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー

    表皮の色彩多型とその遺伝的背景は多くの昆虫分類群で研究されてきたが,半翅目ヨコバイ科若虫における知見はEupteryx属種に限られていた.我々はクロミャクイチモンジヨコバイ若虫の胸腹部背板に,帯状の色素沈着が生じるBanded型と色素沈着が生じないPale型という二型を認めた.二型は若虫期の2齢から5齢にかけてのみ発現し,中間形質は見られず,また羽化後は二型を判別できなかった.これらの遺伝的背景を交配実験により検証したところ,Banded型同型交配のF1分離比は有意にBanded型に偏重し,Pale型同型交配のF1は全てPale型で,異型交配のF1の分離比はほぼ等しかったことから,二型はメンデル遺伝則に従う一対の対立遺伝子により発現すると予想された.また,Banded型純系とみられるF1の生存率は異型交配及びPale型同型交配のF1と比べ有意に低下した.続いて二型の適応的意義を検討するため,若虫期間の比較を行ったところ,背部紋様の有無は若虫期の発育速度に有意な影響をおよぼさなかった.背部紋様の二型の遺伝様式の全容と適応的意義を明らかにするためには,室内と野外両方でのさらなる試験が必要である.

短報
新記録ノート
連載: ABS時代の生物多様性研究の新たなる地平
  • Ballarin Francesco, Alexander Toshima, Dang An V., 菅原 弘貴
    2025 年 28 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2025/03/25
    公開日: 2025/03/26
    ジャーナル フリー

    遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)を定めた名古屋議定書は,国外で採集された標本を研究で使用する際に順守する必要性があることから,研究者の間で近年注目されている.しかしながら,遺伝子資源提供国間で規制内容や運用方法において統一された基準がないため,国によって順守すべき手順が異なっており,海外産の標本を用いた研究を進める際,研究者の間で混乱が生じているのが現状である.前稿では,インドネシア,ラオス,そしてフィリピンの動植物において,ABS関連の手続きを適切に完了し,サンプルを国内へ輸入できた事例を報告した。本稿では,ベトナムとスリランカにおいて,ABS関連の手続きを適切に完了したうえで,国内にサンプルを輸入できた事例を報告する.同時に,各事例における,必要書類,許可申請先の機関に関する情報に加え,ABSに関する手続き全体を示したフローチャートを提供する.本報告によって,将来の研究者が複雑化するABS手続きに直面した際,可能な限り迅速に必要な手続きを進めることが可能になると期待される.

    前稿と同様,本稿の内容について不明な点や更に詳しく知りたい点がある場合は,本稿の責任著者(Francesco Ballarin: ballarin.francesco@gmail.com),あるいは本連載の企画者である東京都立大学牧野標本館ABS支援チームの江口克之(antist2007@gmail.com/antist@tmu.ac.jp)へご連絡いただきたい.

    ABSを取り巻く状況は変化している。ここで提供する情報の軽微な更新は、国立遺伝学研究所ABS学術対策チームのABS事例集(https://idenshigen.jp/database/genetic-resource-casestudies2/)で、大幅な更新は本連載の関連記事で報告する予定である。

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