本研究では,オオルリシジミを中心としたクララ上の昆虫相と捕食関係を解明するとともに,野焼きや放牧の有無による草原環境の変化が,本種やクララ上の昆虫やクモにどのような影響を及ぼすのかについて調査を実施し,次のような結果を得た.
1.クララ上には,本種の幼虫や随伴アリであるクロヤマアリFormica japonica,クロオオアリCamponotus japonicusを中心とした41科56種以上の昆虫による特徴的な昆虫相が形成されていた.
2.クララ上には,10科19種のクモが生息し,カニグモ科,コガネグモ科の順で個体数が多かった.
3.生息地において本種に対する捕食を確認したクモは,タナグモ科のクサグモAgelena limbata,エビグモ科のシャコグモTibellus tenellus,カニグモ科のカラカニグモXysticus ephippiatus,ハエトリグモ科のネコハエトリCarrthotus xanthogramma,サラグモ科のシロブチサラグモLinyphia radiata,コガネグモ科のドヨウオニグモNeoscona adianta,カニグモ科のハナグモMisumenops tricuspidatusの合計6科7種になった.
4.未野焼き区や休牧区では,本種やクロヤマアリ,クロオオアリの個体数は少なかった.一方,クモの個体数やウスベニオオノメイガUresiphita prunipennisなど,クララの花穂を占有する昆虫やクモの個体数は多かった.
これらのことから,休牧は,本種と随伴アリの個体数を減少させ,本種の生息しにくい環境へと徐々に変化させていくと考えられ,本種の生息環境の保護には,野焼き同様,継続的な放牧が重要であることが示唆された.
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