本研究の目的は虎蠶遺傳子をW染色体へ轉座せしめ, 以て蠶兒の雌雄分離に利用するにあつた。まず虎蠶の雌蛹にえきす線をあて, これを無處理の正常型雄に交雜し, 得たる次代虎蠶雌をd油蠶雄に交雜した。かかる交雜312組合せを調べたるに1組合せの交雜において, 虎蠶遺傳子の行動に異常をみた。この交雜は虎蠶と正常型の二表現型を分離し, 虎蠶は雌, 正常型は雄であつた。異常の原因は虎蠶遺傳子のW染色体への轉座にありと考え, その後代を調査した。その結果, この虎蠶遺傳子は雌親からF
1雌へ, F
1雌からF
2雌へと傳わり, 雄の子孫へは遺傳しないことがわかつた。これを限性虎蠶となづけた。性限虎蠶は蠶兒の雌雄分離に用いることができ, 虎蠶は雌, 正常型は雄である。
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