鱗翅目の絹糸腺には色々の形状のものがあり, また構成型式にも2細胞型と多細胞型とがあるが, 前部糸腺はすべて同じ形をしていると考えられる。しかるにオビヒトリの成熟期の前部糸腺は著しく肥大して他のものと著しく異つた形態を示しているので, これについて研究したところ次のような成績を得た。
1) I令かちVII令2日目までの前部糸腺はカサンなど一般のものと変りがない。
2) VII令3日目すなわち成熟期になると, 前部糸腺の後牛の39-49対の紬胞は肥大し始めて中部糸腺と同じくらいの太さになる。
3) 前部糸腺の肥大は各期構成細胞が外側に伸長して内膜と離れ, その間に腺腔を形成するためである。
4) したがつてオビヒトリの絹糸腺は中・後部糸腺の形成する腺腔の外に前部糸腺の腺腔をもつ複合管状腺となり, 且各腺腔には液状絹糸物質を充たしている。
5) 前部糸腺のキチン管は螺旋状構造で無数の細隙が観察される。これを通つてその腺腔内の液状絹が吐糸されると考えられる。
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