日本蚕糸学雑誌
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20 巻, 3 号
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  • 仲野 良男
    1951 年 20 巻 3 号 p. 169-179
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    壮蚕期の幼虫の食桑中に口部から吐液する遺傅子突然変異が発現し, これを吐液蚕と名すけてその生理, 解剖及び遣傅学的研究を行つた。
    1) 吐液蚕は稚蚕期には異常なく第4令4日目以後に給桑後30分を経て吐液するものが多く, その吐液は健蚕の胃液と何等異ならない。
    2) 吐液蚕の吐液開始時期は個体的に変異があり, 第4令4日目-第5令末期である。
    3) 吐液蚕は神経系, 中胃の構造には異常を認めないが, 賁門弁が開け放しの状態を呈し, さらに口器とくに大顋に異常が認められる。すなわち壯蚕期の大顋はその鋸歯数に異常はないが, 全体の形状並びに各鋸歯の状態が著しく正常蚕と異り, これを内面からみると非常に凹形をなし且つ両大顋の重なりも浅い。またこれに附着する内転板も小さく, 外側縁と一直線に附着し且つ内転筋も弱小となつている。
    4) 吐液蚕の大顋は, 第3令までは正常蚕と異ならないが, 第4令になれば著しく異常となり, 第5令にはさらに甚しくなる。食桑による吐液蚕の大顋の鋸歯の磨滅は正常蚕にくらべて比較的少いが, 第5令末期になつて吐液を始めるものでは正常蚕と同じくらい磨滅している。しかし大顋全体の形はやはり半楕円形で, 左右の重なりも悪く正常蚕と著しく異つている。
    5) 吐液蚕が食桑の際に大顋を動かす速度は正常蚕の約半分すなわち1分間93回くらいで, しかもその動かし方も異常である。また食下された食片は長さ4-5mmの長方形をなし, 1片の歯刻の数は16箇で, 1歯刻の大きさは大体正常蚕の1食片に相当する。
    6) 大顋の異常により食下された葉片が非常に細長くなつているので, 賁門弁の閉塞を妨げる。したがつて給桑後30分たてば中胃に梢々多量の食片が溜まるので胃液の分泌も旺盛になり, 胃液は責門弁を通つて逆流して口部から吐出される。
    7) 吐液開始時期の早晩及び給桑後吐液までの時間の長短には, 大顋の形態的異常の個体的差異の外に環境とくに漁気の多少, 給与桑葉の硬軟が関係する。
    8) 吐液蚕は幼虫期の食桑中には斃死するものは少いが, 営繭の時期になつて多数殪れる。しかも早期に吐液を始めた体躯の矮小な蚕はこの時期にとくに多く斃死する。一般に繭質も正常蚕にくらべて悪く, とくに体躯の小さいものの成繭は一層貧弱である。
    9) 吐液性遺傳子 (exとする) は正常性に対して劣性であり, かつ性染色体中にも, また今までに連関群の明かになつた4つの常染色体中にも座位を有しない。
    10) 遺傳子exの主な発現作用は蚕の大願に異常を起させるのであつて, 吐液現象はこの異常に起因する第2次的作用に外ならない。このように一見生理作用に関係のあるようにみえる遺傳子でも, これをさらに精細に探究すると根本的には形態的に異常を起させる遺傳子の働きによることが明かにされ, さらにその遺傳子の発現時期が第4令から発現することを明かにしたので, ここに遺傳子の作用発現とそれによつて起る形質との間の機構を究明したわけである。
  • 福田 宗一
    1951 年 20 巻 3 号 p. 180-181
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 入戸野 康彦
    1951 年 20 巻 3 号 p. 182-185
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    リボヌクレアーゼを併用したピロニン・メチル緑複染色法及びフォイルゲン反応によつて, 催青中の越年蚕卵内の核酸の組織化学的観察を行つた。その大要はつぎのとおりである。催青初期の胚子細胞及び口部細胞塊の静止細胞に於ては核はDNAを, 細胞質及び仁はRNAを含むが, 核分裂中期の細胞には仁がなく且細胞質中のRNAの濃度も低下するが, 染色体はDNAを, 紡鍾糸はRNAを含む。口部細胞塊から遊離した細胞は形も大きくなり, 遊離直後は細胞質中のRNAの濃度も大きくRNA反応の強い仁を2個有するものが多いが, 遊離後時間を経たものは漸次RNAの濃度を減じ, 細胞内に多数の蛋白粒及び脂肪粒が形成され, いわゆる卵内血球の形をとるころには細胞質中のRNAは殆んど認められなくなり, 仁のRNAも途には消失する。卵黄紬胞も核はDNAを, 細胞質はRNAを含むが, 反転後の胚子中腸内にあつて形態的にも崩壌してゆく卵黄核のDNAは重合度が落ち分解してゆく。また卵黄細胞質中のRNAも認められなくなる。有糸分裂前期の胚子細胞の細胞質中に強いDNA反応を呈する小顆粒, 強いRNA反応を呈する小顆粒の認められる場合がある。また卵黄細胞内, 口部細胞塊から遊離した細胞内の細胞質及び反転期前の胚子の内側の部分にはDNA反応の強い小顆粒, これを内部に含むDNA反応の強いやふ大形の顆粒及びRNA反応の強い小顆粒が存在する。このうち胚子の内側にあるものはその数も多く, 時には数十個が集団をなして球状を呈するが, その存在する部分が將來細胞が増殖分化して諸種の器官・組織が形成される場所であることから, これらの顆粒に含まれる核酸またはその分解生成物に一種の誘導作用があるのではないかと思われる。なお胚子細胞と卵黄細胞との間に橋状の原形質の連絡が生じDNA反応の強い小顆粒の移動しているのが観察され, また前記の核酸反応の強い小顆粒は有糸分裂中あるいは細胞頽壌の際に胚子の細胞から放出されたものではないかと考えられる。
  • 大場 治男
    1951 年 20 巻 3 号 p. 186-187
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    麹かび菌を蟻蚕に塗沫接種し, 一定時間ごとに蚕体消毒を行つて蚕体侵入までの時間を見出し, 蟻蚕消毒の適期について試驗した。
    1) 麹かび菌を蟻蚕に塗沫した場合26-27℃, 90%以上の條件下に於ては7時間以内では蚕体侵入を認め難いが, 10時間以後では明かに侵入を認め, 20時間を経過すればほとんど全部が侵入を受けることを明かにした。
    2) したがつて蟻蚕浩毒ば菌が蚕体に附着してから7時間以内に行えばよい。
    3) しかし接種直後よりも3-5時間経過した後に浩毒するほうが効果が高い。この原因は明かでないが, おそらく適当條件下に於て胞子が発芽から侵入までの間に薬劑に対する抵抗性が弱わまる時期があるためであろう。
  • 倉沢 美徳, 小山 長雄
    1951 年 20 巻 3 号 p. 188-190
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    杵蚕蛾は雌の割合が少いのが常であつて, 本報ではこのような雌雄差が何時から発現し, また何に原因するか等について考察した。
    1) 柞蚕の性比は第5令初期までは1: 1であるが, 第5令盛蚕期から営繭期にかけてその均衡が破れて雄の割合が多くなる。しかして発育時期がすすむにしたがつて雌雄差を増加する。
    2.雌雄差のできろ原因は勿論雌が雄よりも斃死率が高いためであつて, 雌が雄よりも肥大生長をし, 経過が一般に長く, 種々の不良環境因子の影響を多く受けるからと思われる。しかもこの影響は体内組織の変態過程にある第5令盛蚕期から営繭期にかけて著しいものと考える。
    3) 第5令期の経過を早めるような飼育は飼育成績を良好にし, 雌雄差を小にする1方法と考えられる。
  • 田中 義麿
    1951 年 20 巻 3 号 p. 191-201
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 著者は1930-1936年の7年間, 満鉄の委嘱による柞蚕の品種改良に從事し, 満鉄1号及びH系の2品種を育成して満鉄農事試驗場に委譲した。
    2) 満鉄農事試驗場が満州国に移管された後は前記両種もまた同国政府の管理に移され, H系は万家種と命名の上全満の柞蚕を同種を以て統一する方針が樹立され, 終戰の年までにほぼその目的が達成された。
    3) 一化性品種の育成は1937年に出発したが, 越年性に関する淘汰の結果完全な一化性に近い品種を育成することができた。
    4) 上記一化性系統から1941年に出発して新しい二化性品種を育成した。
    5) 一化系と二化系との累年越年率には顯著な差異が見られる。
    6) 一化性品種の繭質は不越年繭にくらべて著しく優れ, かつその飼育期は作柄安定, 飼育容易な特徴があるから地方的に利用の範囲が広いと思われる。
  • 桑名 壽一
    1951 年 20 巻 3 号 p. 202-207
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) この虫は1年1世代, 4, 5, 6月に蛹, 成虫, 卵の時期があり, 1年の残りの10ケ月近くは幼虫ですごす。幼虫には普通の意味の休眠はなく, 常に運動し食物をとる。
    2) 自然状態の幼虫を25℃に移すと, 12月までのものは化蛹せず, 翌年2月になると全部が直ちに化蛹する。
    3) 幼虫を連続同一温度で飼うと, 30℃ではほとんど蛹にならす少くとも1.5年は幼虫として生きる。25-15℃だと8ヶ月くらいから後化蛹がおこる。20℃で最も早く化蛹がおこり最も短期間に化蛹しおわる。
    4) 5月孵化の幼虫を9月 (7令) から5-20℃に1-5ヶ月おき25℃に移した。5℃では化蛹なく, 10-20℃では3ヶ月処理以後化蛹があつた。15-20℃では4ケ月で化蛹率100%に近い。
    5) 各温度の効果は15°, 20℃が最高でこの両側に低くなり, 5及び30℃でほぼ0となる。
    6) この幼虫には休眠に似た化蛹のブロックがあつて, これからの離脱には特殊範囲の温度が効果をもち, その強さは5) のようなものである。
  • 鈴木 三郎
    1951 年 20 巻 3 号 p. 208-210
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • (II) 石鹸精練した繭糸の表面
    後藤 四男, 黒川 正隆
    1951 年 20 巻 3 号 p. 211-213
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    Raw silk and undried cocoons were degummed by soap-suds. Replicas were made by the methylmethacrylate-aluminium method and the Meth ylmethacrylate-silica method. The electron-microscopic observations on changes in the surface structure of fiber, caused by the degumming of raw silk and undried cocoons with soap-suds, may be summarized as follows:
    1) In the case of 10 minutes' degumming, sericin is slightly dissolved; irregular creasings (short lines) can be observed.
    2) In the cases of 20, 30 and 40 minutes' degumming, sericin is largely dissolved ; irregular creasings (short lines) can be clearly observed.
    3) In the case of 50 minutes' degumming, sericin is almost completely dissolved; irregular creasings (short lines) can be more clearly observed and, moreover, straight streaks (lines) can be observed in the lengthwise direction.
    4) In the case of 60 minutes' degumming, sericin is completely dissolved away; crepelike creasings (short lines) and straight streaks (lines) in the lengthwise direction can be observed more distinctly.
    5) As to the surface structure of cocoon fibers obtained by degumming undried cocoons throughly with soap-suds, thus sericin being removed completely ; crepe-like creasings and straight streaks in the lengthwise direction can be more fairly observed.
  • 附水前寺公園の樹木の膏藥病
    勝又 藤夫
    1951 年 20 巻 3 号 p. 214-215
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • (II) 桑條培養基上に於けるSporodochia並びに子嚢殻子坐形成度
    松尾 卓見
    1951 年 20 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 1951/06/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    当研究室保存桑芽枯病菌40培養系の桑條培養基上に於けるSporodochia形成度並びに子嚢殼子坐形成度について実驗し, つぎのような結果を得た。
    1) 培養基上に於けるSporodochia形成度については, 形成多量のもの, 形成中位のもの, 形成僅少のもの及び形威のみられないものの4型に分類される。
    2) また桑條培養基上に於ける子嚢殼子坐形成度についても, 形成多量のもの, 形成中位のもの, 形成僅少のもの及び形成のみられないものの4型に分類される。
    3) これら両性質の「種」または「生態種」分類上の意義については後報にゆずる。
  • 1951 年 20 巻 3 号 p. e1
    発行日: 1951年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
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