日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
22 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 神岡 四郎
    1953 年 22 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    頭部交感神経系に属する3種の神経すなわち前走神経(仮称), 逆走神経及び連絡神経(仮称)のそれぞれ前腸, 後腸及び背脈管の運動に対する作用をしらべ, つぎのような結果を得た。
    1) 逆走神経は咽頭の收縮運動に対してかなり大きな支配力をもつているから, 咽頭運動は神経原性のもののように考えられるが, 逆走神経切断後約20時間で一旦停つた運動がある程度恢復するところからみればこの運動は筋原性のようにみえるから, ここでは結論を出すことはできない。
    2) 逆走神経の後腸及び背脈管の運動に対する支配関係は明かでない。
    3) 前走神経及び連絡神経と咽頭, 後腸及び背脈管の運動との間には関係がないらしい。
    4) 背脈管の運動は筋原性のようである。
    5) 逆走神経を切断した蚕の斃死する原因を論じた。
  • (II) 家蚕幼虫の数種の生化学物質について
    有賀 久雄, 吉武 成美, 石原 廉
    1953 年 22 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 蚕児の皮膚におけるメラニン, プテリン及び尿酸の相互関係について研究し, つぎの結果を得た。
    (a) 外皮にメラニンが多量に存在する部位の眞皮細胞中には, ロイコプテリンBが多く存在するが, pS, U等の場合キサントプテリンBは殆んど存在しないか(pSlem), あるいは少くなる (Ulem, pMlemの場合)。
    (b) 油蚕のように尿酸が眞皮細胞に僅かしか存在しない場合には, キサントプテリンBもまた殆んど存在しない。しかしロイコプテリンBは尿酸の多寡に前者ほど影響されない。
    (c) 外皮にメラニンが多量た存在する部位の眞皮細胞には尿酸が少ない。
    2) メラニン, プテリン及び尿酸の間にみられる上記の因果関係について, 生理遺伝学的見地から考察を行つた。
    3) 脂肪組織における尿酸, プテリン, キヌレニン及び3・ヒドロオキシキヌレニンの消長を幼虫期から蛹にかけて調べた結果, 変態に伴つてこれらの物質の一部は皮膚あるいは血液から脂肪組織へ移行することを認めた。しかしてこれらの生理機能の変化は, 脂肪組織の形態的変化と全く一致している。
  • 加藤 勝, 浜村 保次
    1953 年 22 巻 1 号 p. 19-21
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    眼色, 卵色についてのトリプトフアン代謝正常型, 異常型の家蚕蛹期における遊離型総 niacinamide の消長を求めたところ, これらの時期における呼吸量, 脱水素酵素作用の消長と大体同様な傾向を有することが見出された。
    正常型は蛹期の初期から逐次 niacinamide 量が増加するが, 異常型は中頃から増加する。その理由については不明であるが, 両型を通じて niacin 代謝は蛹の変態代謝に密接な関連を有するものと思われる。
  • 室賀 政邦
    1953 年 22 巻 1 号 p. 22-24
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 0.5%及び1%濃度の尿素液を桑樹に撒布し夫々12時間, 24時間, 72時間及び120時間を経過した時に採桑し, これを第4,5令に亘つて13日間毎日蚕児に給与した。
    2)体重, 経過日数, 病蚕数と健蚕歩合, 蔟中斃蚕数と結繭蚕歩合及び繭重と蛹重についてみるに, 0.5%液において撒布後12時間を経過した桑葉を給与したものが最も良好で, ついで24時間, 1%の120時間, 0.5%の72時間の順となつた。その他のものは対照に比して幾分劣る。
  • 向山 文雄
    1953 年 22 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5令起蚕の唾腺分泌部を摘出して絹糸腺重の増加について調べたところ, つぎのような結果を得た。
    1) 唾腺分泌部を摘出すると絹糸腺重ゐ増加は劣り, また繭層重は減少した。
    2) この傾向は雄よりも雌のほうが著しい。
  • (II) 病原菌の抵抗力について
    横川 正一
    1953 年 22 巻 1 号 p. 29-31
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    培養1ヵ月内外の Helicobacidium Mompa TANAKA の菌糸を用い, 種々の理化学的障害に対する抵抗力を調べた結果はつぎのとおりである。
    1) 乾熱には60℃, 3分及び50℃, 17分で死滅し, 湿熱には60℃, 1分内外及び50℃, 10分間で生存力を失つた。
    2) 温湯では60℃, 1分内外及び50℃12分間で死滅した。
    3) 水中に於ては僅かながら発育を認め, 350日に至つてもなお生存力を有していた。
    4) 太陽灯紫外線照射では, ペトリ皿無蓋で20分間で死滅した。
    5) 直射日光下では眞夏―温度の影響もあるが―乾燥條件で2~3時間, 冬季では乾燥及び湿潤両條件下で4時間で生存力を失つた。
    6) 種々の化学薬剤に対する抵抗力をも併せてしらべた。
  • (III) 主として含硫物質に就いて
    渡辺 忠雄
    1953 年 22 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 蚕蛹の水蒸気蒸溜液中にはエーテルに移行して来ない一種の腥臭があるので, これを水銀塩として沈澱させて分離を試みた。
    2) 水銀塩として沈澱したもののうち1つはピリヂンに溶解し窒素, 硫黄を含まずC20H38O3 の組成を有する脂肪酸の一種と考えられる。他は窒素, 硫黄を含み殆んどすべての溶媒に溶解しない。水銀を遊離すると強い腥臭を発し実験式はC5H9NSと推定される。
  • (II) 簡易判定法の応用上に於ける吟味
    高田 一夫, 梅津 雅裕
    1953 年 22 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    以上の実験結果から本法により桑葉中の遊離還元糖を実用的に定量するには, つぎの諸点に注意することが必要である。
    1) 桑葉の煮沸時間な10分とする。
    2) 桑葉の煮沸水量は桑葉10gに対し150ccとする。
    3) 桑葉を煮沸して得た糖液は濃縮せずに定量する。
    4) 定量に用いる FEHLING 液は5ccでよい。
    5) 加熱はなるべく強い熱源で行い, 2分以内で糖液が沸騰するようにする。
    6) 指示薬として用いるメチレンプリユー液は毎回2~3滴を限度とし, それ以上は添加しない。
    上記の諸点に留意して本法を施行するときは, 桑葉中の還元糖は比較的簡易にしかも迅速に定量することができ, かつ前報1)に於て還元糖と全糖分とは略々並行して増減することを知つたから, 今後の研究に於ては桑葉中の遊離還元糖の多少と蚕作との関係を再検討すれば, 本法による桑葉の熟度判定は略々その目的を達するものと思われる。
  • (II) 納豆菌プロテアーゼの分別セリシンA及びBに対する作用
    西沢 一俊, 小河原 茂
    1953 年 22 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    The action of protease in Bacillus Natto on the sericin fractions A and B, prepared by means of MOSHER'S method, has been investigated under the same plan as in the previous report. The results obtained are, as the following, considerably different from those on the latter.
    1) Although the activity-pH-curves of both fractions resemble each other in their form, they do not overlap, i. e. the maximum of the A curve lies on pH 7.8 and that of B on pH 7. 2.
    2) The curves of activity-substrate concentration of both fractions show, contrary to the case of sericinase, a bell form, and moreover they are different from each other. The maximum zone of the curves of A and B lies on the concentration of the total nitrogen of about 40mg% and 50mg% respectively.
    3) The extent of hydrolysis of A and B fractions by Natto-protease is almost the same at the respective optimal pH and substrate concentration of fractions, therefore the conclusion of the splitting ability of one fraction should not be immediately drawn, whatever it may be attached preferably under a certain condition.
  • 妹尾 計一
    1953 年 22 巻 1 号 p. 42
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • (III) 家蚕絹糸と天蚕絹糸との染色性の比較に就いて (その1)
    会田 源作, 遠藤 恒久, 清水 滉, 山崎 寿
    1953 年 22 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1953/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    直接染料の天蚕絹糸への direct affinity を, 家蚕絹糸の場合と比較した結果次のことが認められた。
    1) Dis-azo 系染料よりも Tris-azo 系染料のほうが, 天蚕絹糸では良好な吸收量を示した。
    2) 家蚕絹糸・天蚕絹糸ともに生糸のほうが練糸よりも染料吸收量は良好であつた。
    3) 家蚕絹糸に比較して天蚕絹糸への染料の結合力は弱いと見做される。
    4) 天蚕絹糸では生糸のほうが練糸よりも染料との親和力は大きい。
feedback
Top