日本蚕糸学雑誌
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23 巻, 5 号
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  • 松尾 卓見, 桜井 善雄
    1954 年 23 巻 5 号 p. 271-277
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本報告には白紋羽病破害桑苗の温湯消毒と桑園に於ける本病遮断溝の位置に関する知見を記載した。
    1) 白紋羽病菌の白色菌糸は38℃の温湯では90分でも死滅せず, 42℃では60分, 45℃では10分でそれぞれ死滅する。黒色菌核状菌糸は白色菌糸よりも温湯に対しやゝ弱いようである。
    2) 根際の直径10mm前後の桑苗は, 温湯42℃では150分, 45℃では120分, 47℃では90分, 50℃では30分で何れも悪影響なく, 55℃では10分で死にいたる。但し根際の直径4.0-6.0 (平均4.8) mmの如く極く細い桑苗は45℃で90分, 47℃で40分迄の実験では悪影響はなかつたが, 50℃では10~20分で悪影響があらわれた。なお桑苗の内部組織が温度上昇する迄に要する時間は, 根際の直径20mmの如き太い根でも長くとも10分以内であることがわかつた。
    3) 以上の結果からみて, 本病被害桑苗の温湯消毒を実施すべき温度と時間は, 45℃で60分 (又は47℃で40分) 位が適当と思われる。
    4) 上田地方に於ける52例についての調査結果からみれば, 白紋羽病の根刈桑園に於ける1年の拡大速度は周囲の全方向に概ね1株宛であるが, 時には2株宛枯込むこともある。この速度は, 筆者等の調査範囲では, 桑品種や土性などにはあまり左右されないようである。又被害桑園を掘起して菌糸の分布状態を調査した結果によれば, 本年枯死した株に隣接の株は外観健全にみえても地下部は殆んど被害を受けており, 更にその次の健全株でも根系の一部に菌糸のみられるものが多い。この結果から, 根刈仕立に於ける遮断溝は外観健全な株を2株通り含めて堀らねばならないといゝうると思う。
  • 東城 功
    1954 年 23 巻 5 号 p. 278
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 特に葉柄細胞液に於ける測定意義
    田口 亮平, 手塚 昭三, 園原 好美
    1954 年 23 巻 5 号 p. 279-285
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    春切及び夏切後伸長した改良鼠返・一の瀬の枝条に着生する桑葉を実験材料として, 葉柄及び葉身の細胞液屈折率並にその他の生理的性状の着生葉位による変化を測定比較して, 次の結果を得た。
    1) 細胞液搾汁前の材料予措法として加熱法と磨砕法とを採用した場合, 葉身では前者に依らなければ搾汁出来ないが, 葉柄は後者によるも搾汁が可能であり, 従つて葉柄に於ける細胞液屈折率の測定は野外で簡単に行うことが出来る。
    2) 葉柄細胞液に於て, 材料予措法として磨砕法によつた場合と加熱法によつた場合並に搾汁法として圧搾器を用いたときと手圧によつたときとの屈折率を比較すると, それぞれ屈折率の絶対値には幾分の開きがあるが, この値の着生葉位による変化の模様は何れの方法によるも略同様である。従つて葉柄は磨砕法でしかも手圧による搾汁によつても, 細胞液屈折率の比較の場合相当信頼し得る値が得られる。
    3) 葉柄細胞液の屈折率は若葉に低く, 着生葉位が下つて成熟した葉になるに従つて次第に値が大となり, 更に下方の老葉になると再び低下する。葉柄の細胞液屈折率は葉身のそれよりも各葉位共明かに低く, また生長を完了した成葉では葉身の細胞液屈折率は各葉位に於ける値の変化が少く比較的安定した値を示すのに, 葉柄では成葉でも葉位が下れば次第に上昇する。
    4) 葉柄の組織含水量は葉身のそれに比して著しく多く, 葉柄の組織含水量の着生葉位による変化をみると, 生長期にある若葉に少く, しかも葉位が下るに従つて次第に上昇し, 生長を終つた成葉では高い値を示し, 更に葉位が下つて老葉となると次第に低下し, 葉柄組織含水量の着生葉位による斯る変化は葉身のそれと殆ど逆である。これ等の実験結果は葉柄が一種の水分貯蔵器官として働いていることを示している。
    5) 成葉の各葉位に於ける組織含水量・細胞液屈折率及び修正細胞液濃度の測定値の平均値を求めると, 葉柄の組織含水量は葉身のそれに比し著しく大で, 細胞液屈折率は明かに低い。これは葉柄では組織中の可溶性物質が多量に含有される水分の為にうすめられている為と推定される。組織含水量の影響を除外した修正細胞液濃度は葉柄の方が葉身より明かに大で, 葉柄組織の水分保有力が著しく大であることが示されている。
    6) 葉柄細胞液屈折率の絶対値並に着生葉位による変化は葉身のそれと幾分趣を異にするが, 両者は共に若葉に低く, 成葉に高く, 老葉に低いこと, 及び生育の階段を異にする桑樹の成葉に於ける測定値を互に比較した場合, 成葉葉身の細胞液屈折率が高い場合には, 葉柄のそれも高い。従つて葉柄に於ける屈折率によつて或る程度葉身のそれを推定することが出来る様である。
    以上により, 桑葉葉柄に於ける細胞液屈折率の測定は圃場で簡単に行うことが出来, 桑葉葉質判定の一方法として利用し得る様であるが, この場合葉柄が水分貯蔵器官的に働いていることを考慮において, 葉柄細胞液の測定結果を考察すべきである。
  • 用法と伝播について
    布目 順郎
    1954 年 23 巻 5 号 p. 286-291
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 筆者は甞て紡糸を巻く道具「〓」の最古のものが我が国弥生時代の遺物である銅鐸の或るものの面に鋳出されていることにつき報じたが, その後〓及びその類品の用法に第2図に示す如く数種類あることを知つた。
    2. 甞て〓は日本に, 又その類品は大陸の華北から東シベリヤへかけて分布していたらしいが, 我が国の〓は恐らく銅鐸文化を造りあげた民族によつて銅鐸時代以前の弥生時代の或時期に上記分布地域の何れかの土地から弥生式文化と一しよにもたらされたものと考えられる。
    3. 大陸における「〓の類品」の渕源や伝播経路等については明らかでないが, 殷代甲骨文等から考えて或は華北がその渕源でなかつたかと思われる。
  • 和田 昭治
    1954 年 23 巻 5 号 p. 291
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 有賀 久雄, 川瀬 茂実, 江口 正治
    1954 年 23 巻 5 号 p. 292-295
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕の数種の斑紋系即ち黒縞 (ps), 虎蚕 (Ze) 及びひので (U) 等の蚕児とその比較のための対照として形蚕(+p)及び姫蚕 (p) 等の蚕児皮膚のカタラーゼ作用力を比較したところ, 斑紋系が対照系に比べて明かに強いことを見出した。
    2. 皮膚に於けるカタラーゼ作用力の相違は, 同一個体中の斑紋部と無斑紋との間に於ても認められ, 斑紋部が無斑紋部に比して明かに強い。
    3. 黒縞と姫蚕とを供試して, その真皮と外皮のカタラーゼ作用力を別々に測定し, このようなカタラーゼ作用力の差異は, 眠の時期を除いては常に外皮中のカタラーゼ作用力の相違に由来するものであり, 真皮中のこの酵素の作用力は殆んど差がない事を知つた。
    4. このカタラーゼ作用力に於ける差異の原因を知るために, 阻害物質その他に関する1, 2の実験を行つた。
  • 川瀬 茂実
    1954 年 23 巻 5 号 p. 296-298
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕の卵中に Cytochrome c oxidase の作用力が存在することを確かめた。
    2. この酵素作用力の消長は, 卵の酸素消費量, 琥珀酸脱水素酵素作用力の消長等と類似し催青後期に活性度が特に増加する。
    3. 正常蚕とod-油蚕との間では, 卵の酸素消費量及び Cytochrome c oxidase 作用力に差異は見られなかつた。
  • (III) 3 Hydroxykynurenine の新微量定量法
    稲神 馨
    1954 年 23 巻 5 号 p. 299-303
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕卵のトリクロール酢酸抽出液にNO2を加えれば黄色を呈し, これが 3 Hyroxykynurenine の Diazo-oxide であることを知つた。ある濃度の範囲ではこれの吸光度と 3 Hydroxykynurenine の濃度は比例していたので, これを利用して 3 Hydoxykynurenine の定量法を確立した。この方法は操作が簡易で, しかも特異性に富んでいる。又感度が良いので微量の試料で測定出来る。
  • (III) 蛋白質の電気泳動像について
    稲神 馨
    1954 年 23 巻 5 号 p. 304-307
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    未だ家蚕体液の明確な電気泳動像が得られていないので, この測定法について吟味し, 得られた像から体液中の蛋白質の種類並びにそれらの量比について検討した。その結果次の如き興味ある事実を知つた。
    1) 昆虫の体液は放置するとメラノーゼを起し泳動像を得ることが出来ないが, CNの極少量を透析液に入れることによつてメラノーゼを防ぎ明瞭な像を得た。
    2) 哺乳動物の血液の場合には一般に透析液として燐酸緩衝液が用いられているが, 蚕の体液では沈澱を生じ使用出来なかつたので, 種々検討の結果, 沈澱を生じない0.05M Na2CO32: 0.05M NaHCO3 8の緩衝液を見出し透析に用いた。
    3) 蚕の体液にはアルブミン, αグロブリン, βグロブリンの3種の蛋白質がみられるのみで, 哺乳動物でみられるフイブリノーゲン, γグロブリンはみられなかつた。このことは蚕の免疫性が弱いことと何等かの関連があるものと考えられる。
    4) これらの3種の蛋白質の量比は雄と雌 (5令7日目) では非常に違つてい, 雄ではαグロブリン, βグロブリン共にアルブミンの半量程であつたが, 雌ではαグロブリンがアルブミンよりも多く含まれていた。
    又膿病ビイルスを注射した蚕の体液ではα, βグロブリン共に著しく増加し, あたかも哺乳動物にみられるγグロブリンの如き行動をとつていた。
  • 中村 巖, 大島 義光
    1954 年 23 巻 5 号 p. 308-313
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    昭和28年晩秋蚕期に於て本県蚕業技術指導所のうち, 湖東, 湖西の2箇所に飼育を依託し飼料桑, 上族温湿度とセリシン溶解性並に含量, 及び繰糸成績を比較試験した結果次の結果を得た。
    1. 上蔟室の高温多湿は繭層セリシンの溶解性を小ならしめセリシン含量も幾分少なく繭解舒悪く, 生糸量歩合を減少する。また繭1粒の重量重く生100匁粒数は少い。
    2. 飼料桑として野生立木を使用したものは改良鼠返を使用したものより, 生100匁粒数多く繭解舒は良いが生糸量歩合は少く, また同一蚕品種に於て繭糸繊度は細くなる。
    3. 繭糸長の絶対値は高温多湿室に上蔟せしめたものの方が普通上蔟させたものより梢長くなる。以上の如く飼料桑の相違による繭層セリシン溶解性並に含量と繰糸成績特に解舒と生糸量歩合, 及び上蕨室の温湿度の差異による繭層セリシンの溶解性並に含量と繰糸成績中の解舒, 生糸量歩合等夫々の間には夫々大なる相対性のあることが認められた。
  • 1954 年 23 巻 5 号 p. 314-318
    発行日: 1954/10/29
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    凍結条件に於ける葉温と気温
    単離細胞による植物の組織培養
    リンゴ樹のマグネシウム欠乏についての観察
    苧麻白紋羽病菌の酵素
    蚕の膿病ゥイルス・ゥイルス包埋膜・多角体の化学的組成
    植物性食昆虫に於ける食性の進化
    吸血性のサシガメの胸腺と脱皮におけるその役割
    ナナフシ1種に於けるマルピギー管内への水の移動
    絹フイブロインにおけるアミノ酸排列, gly-ala-gly の存在について。
    糸スライバー等の斑線図から斑の計量化について (I~III)
    織物の静電気
  • 1954 年 23 巻 5 号 p. e1
    発行日: 1954年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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