1.本研究は桑の人為的分布を現池踏査と1953年12月調査の農林省蚕糸局統計を資料として行つたものである。
2.栽培桑の垂直分布の最高限界あたりや標高500m以上に栽培される品種数の比率をそれぞれ気温の区分毎に見るとその分布の状態は概ね年平均気温によつて区切られた平面分布の面積の比率と似通つている。
3.桑の各系統内で年間平均気温別の面積分布をみるとヤマグワ系は11゜C以下, カラヤマグワ系は11-13℃, ロソウ系は15℃以上のところが最高であつた。
4.標高500m以上の地帯のうちで, 13℃ 以下の比較的寒冷な地方において最も多く栽培されているものは, ヤマグワ系品種であつて, 13℃ 以上の比較的温暖な地方のうちで15℃ 以上の地域では改良鼠返と赤木が多い。
5.本邦における人為的分布の最高限界は年平均気温の11-13℃ の圏内における長野県の安曇地方およびその近隣地方であつて, その標高は1, 400mに及んでいる。この地帯では小牧, 水内桑のようなヤマグワ系の品種が栽培されている。
6.栽培桑の垂直分布最高限界を緯度別に見ると富士山以北は野桑の垂直分布の如く北進するにつれて, その標高は逓減の傾向にある。富士山以南においては一致しない。
7.栽培桑の垂直分布の最高限界内における各地山岳 (山系) の垂直分布限界の標高を系統的に見ると, 垂直分布の標高の最も高いものはヤマグワ系の品種である。
8.栽培反別30町歩以上の桑品種の栽培面積を標高や傾斜度の関係から調べてみると, 標高100m未満における桑園反別の割合は圧倒的に多く, それより標高の増加と共にその比率は急速に減少する。傾斜度と栽培面積の割合においても同様の傾向を示し, 傾斜の緩である8度未満における栽培面積の比率は約60%となつて過半数を占めている。
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