日本蚕糸学雑誌
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24 巻, 4 号
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  • (III) 1953年山梨県下に於ける硬化病菌検索
    青木 清, 笹本 馨, 中里 泰夫
    1955 年 24 巻 4 号 p. 231-239
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    昭和28年山梨県下に於て蚕及び野外昆虫の硬化病菌々種を検索比較し, 蚕における硬化病の伝染経路の研究に資せんとした。
    1.蚕については5種の硬化病菌を認め, その大多数は黄彊病菌及びIsaria sp.であつた。
    2.約50種1424頭の野外昆虫の硬化病斃屍から6種の硬化病菌が分離され, 総数の約90%は黄彊病菌及びIsaria sp.によつて占められ, 蚕における場合と全く同一傾向を示した。
    3.野外昆虫における黄彊病菌及びIsaria sp.は共に蚕に対して特異の病原性を示し, 且つその病原性は, 蚕から分離された黄彊病菌及びIsaria sp.のそれと全く同様であつた。
    4.黄彊病菌及びIsaria sp.の侵害を受けた蚕児はその体表に黒点病斑を現わし, 白彊病菌の油浸状病斑と明らかに異る。而してその病原性は稚蚕に対しては強く現われるが壮蚕に対しては遥かに弱い。
    5.黄彊病菌及びIsaria sp.の侵害を受けた蚕の斃死までの時間は白彊病菌によるものよりも遥かに長く, 且つ一旦罹病するも中途病斑を消失して治癒するに至るもの (治癒性感染) がある。しかしこれらの一応治癒したとみられるものも, 営繭後繭中で斃死する場合が多く, これ自然の場合において, 繭中蚕に黄腰病の多い所以である。
  • 八尋 正樹, 富山 泰秀
    1955 年 24 巻 4 号 p. 240-247
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 我々は鹿児島大学農学部の桑樹を使用して花粉の飛散と風向との関係を見た。2) 1953及び1954年の4月の開花期に9回の試験を行つた。3) 花粉附着板としてスライドグラスを用い, これにワセリンを塗布し, 約1mの竹の上に挟み桑園を中心に約100mの範囲に配置した。4) われわれの実験範囲では最も遠いプレートである約100mの地点まではたしかに花粉が飛ぶことが認められた。5) 桑園内部, 桑園周辺部, 桑園外部を比較すると花粉飛散度は桑園内部が最大で, 桑園周辺部桑園外部の順に小さくなる。6) 花粉の飛散距離は風向に可成り密接な関係がある様に思われる。
  • 堀田 禎吉
    1955 年 24 巻 4 号 p. 248-252
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1.本研究は桑の人為的分布を現池踏査と1953年12月調査の農林省蚕糸局統計を資料として行つたものである。
    2.栽培桑の垂直分布の最高限界あたりや標高500m以上に栽培される品種数の比率をそれぞれ気温の区分毎に見るとその分布の状態は概ね年平均気温によつて区切られた平面分布の面積の比率と似通つている。
    3.桑の各系統内で年間平均気温別の面積分布をみるとヤマグワ系は11゜C以下, カラヤマグワ系は11-13℃, ロソウ系は15℃以上のところが最高であつた。
    4.標高500m以上の地帯のうちで, 13℃ 以下の比較的寒冷な地方において最も多く栽培されているものは, ヤマグワ系品種であつて, 13℃ 以上の比較的温暖な地方のうちで15℃ 以上の地域では改良鼠返と赤木が多い。
    5.本邦における人為的分布の最高限界は年平均気温の11-13℃ の圏内における長野県の安曇地方およびその近隣地方であつて, その標高は1, 400mに及んでいる。この地帯では小牧, 水内桑のようなヤマグワ系の品種が栽培されている。
    6.栽培桑の垂直分布最高限界を緯度別に見ると富士山以北は野桑の垂直分布の如く北進するにつれて, その標高は逓減の傾向にある。富士山以南においては一致しない。
    7.栽培桑の垂直分布の最高限界内における各地山岳 (山系) の垂直分布限界の標高を系統的に見ると, 垂直分布の標高の最も高いものはヤマグワ系の品種である。
    8.栽培反別30町歩以上の桑品種の栽培面積を標高や傾斜度の関係から調べてみると, 標高100m未満における桑園反別の割合は圧倒的に多く, それより標高の増加と共にその比率は急速に減少する。傾斜度と栽培面積の割合においても同様の傾向を示し, 傾斜の緩である8度未満における栽培面積の比率は約60%となつて過半数を占めている。
  • I 品種及び卵殼の部分による透過性の差異
    高見 丈夫, 野口 和子
    1955 年 24 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1. 蚕卵の種々な部分の卵殻を切取つてその塩酸アルコールに対する透過性を定性的に調べた。2. 卵の各部を比較すると, 卵殻の透過性には, 後極部> 腹側部> 背側部> 水引部> 前極部の順位が認められ, 卵殻の薄いと考えられる部分程透過性が大であるが, 透過性の大小には, この他に, 気孔の分布や大小等も関係しているものと思われる。
    3.卵殻の透過性は蚕の品種によつても違いがある。
    4. 卵殻片をエーテルに浸漬した後実験すると, 透過性が増加し, その程度は品種によつて著しくなる。これも透過性に影響する条件の一つである。
    5. 生卵をアルコールや流動パラフィン中に浸潰した場合の卵殻の透明化は, 卵殻表面の孔隙に媒液が侵入して光線の反射, 屈折を変えるためで, 主として表面の構造に関係し, 透過性とは直接の関係がないものと考えられる。
  • 竹内 孝三
    1955 年 24 巻 4 号 p. 259-263
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    点青1日前から孵化迄の胚子の全体標本と摘出した消食管の透明標本並びに毛蚕のそれらを観察し次のことを認めた。
    (1) 消食管の内容は最初は卵黄粒であるが, 其の後消食管中に漿液膜色素を含む養液が充満するので, 消食管は極度に膨張する。催青が進むと内容物の大半は吸収消化されて孵化前には残部が黒い筋状に集結して観察される。
    (2) 前腸, 中腸後腸の長さの割合が大凡, 点青1日前は27: 44: 29, 点青期は45: 30: 25, 催青後期は28: 44: 28である。
    (3) 催青中, 後部消食管へ内容物が移つて来ないのは胚子の体躯が卵周より長く伸びて10環節以下の部分を折曲げるような姿勢をとることと幽門弁の存在に原因すると考える。
    (4) 孵化の際嚥下される卵殻片は大小種々の形があるが, その数は平均18片で, 表面の卵紋は食下前のものに比し多少乱れ気味で溝に囲まれた凸部に凹みが見られ, 又卵紋に密着して5-6角の亀甲模様の線が認められるものがある。卵殻片の裏面には孵化の際齧られたあとのあるものがあるが普通のものでは最内層に当るところに偏斜照明によつて卵紋が僅かに見られる。表裏の卵紋の形状から卵殻片が消食管通過によつて多少変化を受けると考える。
    (5) 卵殻片は食桑しないと排出されない。
    (6) 孵化4時間後に給桑し食下桑葉の消食管内移動と卵殻片の排出状態, 最初の鉾糞動作を観察した。
  • 稻神 馨, 須藤 芳三
    1955 年 24 巻 4 号 p. 264-266
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    d油蚕及び正常蚕における尿酸の行動を調べ, d油蚕では生成した尿酸は皮膚に沈着することなく, 直ちにマルピギー氏管及び腸管を通して排泄されることを知つた。そしてこれらの成績並びにd油蚕についてのその他の調査結果から, od遺伝子は外胚葉起源の組織細胞中のある種の蛋白質の多少を規制するもので, その蛋白質はいろいろの物質の吸着中心となる性質のものであると, 推論した。
    終に歩み懇篤なる校閲の労を執られた高崎恒雄, 高橋幸吉の両氏に心から拝謝する。
  • 梅谷 與七郎
    1955 年 24 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1. 白卵種の孵化不良の原因は吉川の説くように着色作用の生理的欠陥内的原因によるものであろうが, 川口白卵は着色卵に劣らないほど孵化良好であり, これに反して赤卵は着色していながら孵化きわめて不良である。
    2 春期の産卵後における夏期の高温接触は著しく蚕卵の生理を害す。他方われわれが慣例的に行う春期の25℃ の催青温度もまた高きに失して蚕卵の発育を害する。
    3.この観察では産卵後20℃ で60日間保護して夏期の高温接触をさける方が最も良好な結果を示した。しかし保護期間は60日は長きに失する。著者の体験から短期間で足りると思うからこの夏期の20℃ 保護後20日間で目的を達しうると信じる。しかしこの点の決定は後日の研究にまたねばならない。
    4. 春の催青温度もまた25℃ は高きに失する。故に23°-24℃ を目標にするを可とする。かく産卵後の夏期の保護温度と春の催青温度を充分考慮することによつて, 赤卵や白卵種の孵化不良をある程度補うことができる。
  • (I) 落緒回数とPoisson分布函数
    嶋崎 昭典
    1955 年 24 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    落緒生起数の分布論的特性を明らかにするため, 第1次近似としてPoisso分布を誘導した。次に処理方法並びに原料繭によつて落緒分布が異なることが考えられたので, 煮繭方法および原料繭をかえて, 夫々の落緒分布を求め, Poisson分布との適合性を検討した。その結果, 解じよの良い原料繭は煮繭条件が異つても比較的Poisson分布とみなされる。くかし解じよが悪

    くなるに従つてPoisson分布に一致する処理条件は限定され, これはいわゆる適煮附近を中心にする。従つて落緒歩合を減少させる処理条件が必じもPoisson分布への近似を良くするとは言えない。しかし如何なる原料繭でもPoisson分布に近似するとみなされる処理条件を求めることができた。また一定時間中に, 繰糸機1台あるいは1緒に生じる落緒数は解じよ糸長の分布9) に依存する。しかし結果的には, 蒸気煮繭により最外層落緒が多いか, または特に若煮の場合を除いて。すべてPoisson分布に近似することを知つた。これらのことはいずれも落緒管理を行うために必要は情報を提示しているものと考える。
  • (II) 落緒回数と復合PoissonあるいはPolya-Eggenberger分布函数
    嶋崎 昭典
    1955 年 24 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    原料荷口ならびに処理操作が均一であるという条件のものとに導かれたPoisson分布は落緒管理に一定の基準を与えるが, 対象が限られているので一般でない。原料荷口が非均質でありまた処理操作が落緒確率を増大される場合を考え, それぞれに対応した理論式 (i)-(v) を導入し, これの適否を実験によつて検討し, その正しいことを知つた。次にこの理論式相互の関係を考察し, 近似的に (iii) 式または (v) のPolya-Eggenberger分布式で, 多くの落緒生起が規定されることを明らかにした。
  • 土屋 茂一郎, 小池 良介
    1955 年 24 巻 4 号 p. 287-290
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1.繭層の硬さを測定する方法として次式を導き装置を試作した。
    E=Wr3I(π/4-2/π)
    但し, E;ヤング率 (kg/mm2) W;与えた荷重量 (kg) r;円環状繭層の半径 (mm) δ;荷重による伸長量 (mm) I;円環状繭層の慣性能率 (mm4)
    2.(1) の方法により営繭室の湿度を変えて営繭させた生繭層の硬さを測定した結果, 中湿区を対照として低湿区は柔軟, 高湿区は剛硬であつた。繭乾燥によつて高温乾燥処理を受けた乾繭層は全般に剛硬となり, 且各区の硬さの差異は生繭層に比較してより大なる結果を示した。
    これらの相違は繭層間隙の多少及びセリシンの性質によるもので, 殊に繭層間隙は繭層の硬さに大きな影響を与えるものであることを認めた。
  • 照井 陸奥生, R. BARER, T. ABE, M. KONO, K. K. NAYAR, G. W. BATTISTA, K. M. ...
    1955 年 24 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 1955/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    紫紋羽病菌及び白紋羽病菌の2, 3比較培養聖生質について
    生細胞の屈折率 (I) 基礎理論
    茶樹の白紋羽病に関する研究I
    アフリカバツタの側心体の構造
    マメコガネ (Popillia japonica Newman) の変態中に於ける脂肪量の変化
    多角体の内部構造
    張力変化による織物繊維の摩擦性の研究
    製糸薬剤に関する研究 (1) 界面活性剤の基礎的性質
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