蚕児の発育段階, 性, 品種, 育蚕期および飼育母集団の健康度等の差により, 体液の遊離アミノ酸含量および屈折率が, 相対的に如何に相違するかという点を解明する目的でこの実験を行つた。
(1) 体液中の遊離アミノ酸量は4, 5令共に同一令中では末期に最高値を示し, また3令と4令との最高値は略等しいが, 5令のそれは3, 4令よりも幾分低い。令全体の水準としても, 5令は4令のそれよりも低い。4令では食桑後直ちに増加するが, 5令では4~5日目になつてはじめて増加する。吐糸直後には一時著しく減少するが, 48時間目頃が最低で, その後再び増加し, 測定した範囲では最終の化蛹6日目に最高となつた。
(2) 体液の屈折率は令が進むに従つて次第に増加した。各令ともに同一令中では末期が最高となつた。また遊離アミノ酸とは異り, 眠中には殆んど減少することはなく, 次令の初期に最低となつた。
(3) 雌雄間の体液遊離アミノ酸量の差は5令中期までは殆んど見られないが, その後は雌が雄よりも常に多く, 吐糸開始後にはその差は顕著となつた。屈折率も略同様の傾向を示した。
(4) 育蚕期, 供試蚕品種および飼育母集団の健康度と体液遊離アミノ酸含量との間に相関々係は認められなかつた。体液屈折率についても同様に上記3項目との間に相関々係は認められなかつた。
抄録全体を表示