日本蚕糸学雑誌
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30 巻, 6 号
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  • 神岡 四郎
    1961 年 30 巻 6 号 p. 423-426
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    5令のかいこの生の中腸組織について, その自家呼吸における酸素消費量および呼吸商を測定し, つぎのような成績を得た。1) 中腸組織の乾物1g, 1時間の酸素消費量は7-12mm3で, 令の始めは小さく, 以後次第に大きくなって盛食期に最大となり, 熟蚕期に再び小さくなる。2) 呼吸商は5令期間中は常にほとんど同じく大体1.0であるが, その生理的意義については全く不明である。3) 起蚕を4日間絶食させたところ, 乾物1g当りの酸素消費量にはほとんど影響がないが, たとえ影響しても僅かであり, また呼吸商についても大体上と同じことがいえるが, その生理的意義についてはこれまた不明である。
  • (III) 卵期 (胚子発生) における尿酸量およびキサンチン脱水素酵素活性度の消長
    林 幸之
    1961 年 30 巻 6 号 p. 427-430
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕卵の発育に伴う尿酸量およびキサンチソ脱水素酵素の活性度の消長を調べた。
    1.胚子の発育に伴う卵の尿酸量の変動は前期に徐々に減少し, 反転期以後増加し, 孵化に到る。
    2.キサンチソ脱水素酵素の活性度は反転期まで徐々に上昇し, その後急激に増加し, 催青卵で稍々下る。
    3.以上の結果を基にして家蚕卵に常時存在する尿酸の生理的意義について考察した。
  • 島 保, 平尾 銀蔵
    1961 年 30 巻 6 号 p. 431-436
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    金子法, MOSRER法および近藤法によってセリシンを分別し, それらフラクションについてNaClプリズムによって赤外線吸収スペクトルを測定し, それぞれの吸収帯の変化を定性的に比較検討したところ次のことが判明した。1.いずれの分別法によるも, 2種セリシンの赤外線吸収スペクトルには差異がみられる。2.金子法のA, MOSHER法のB, 近藤法のEusericinはほぼ共通の赤外線吸収スペクトルが得られ, その間に著しい分子構造上の差異は認められない。3.金子法のB, MosHER法のA, 近藤法のPseudosericinはそれぞれ若干異なる赤外線吸収スペクトルが得られ, とくにPseudosericinは前二者と明らかに区別せられ, 分子構造上の差が認められた。
  • (XIII) 家蚕におけるグリコール酸からグリシンの生成
    福田 紀文, 亀山 多美子
    1961 年 30 巻 6 号 p. 437-441
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 蚕体内におけるグリシン生合成の主要な代謝径路の1つはグリオキシル酸-グリシソ径路である。本報ではこのグリオキシル酸がいかなる物質から由来するかを明ちかにする目的でグリコール酸-1-C14を用いて実験を行なった。
    2) 0.5μc/頭のグリゴール酸-1-C14を5令期の蚕に与え, これらの蚕が生産したフィブロイソからグリシソ等を, その体液からグリオキシル酸を2, 4-ジニトロフェニルヒドラゾソとして単離し, それぞれの放射能を測定した。分離したグリシンについては分子内のC14分布を明らかにするためDegradationを行なった。
    3) 放射性フィブロイソから分離したアミノ酸のうちグリシンがとくに強い放射能活性をもち, その放射能のすべてはカルボキシル基の炭素に存在していた。また体液から分離したグリオキシル酸にも強い放射能の存在を認めた。これらの成績は蚕体内でグリシソがグリオキシル酸を経てグリコール酸から生成されることを示している。
    4) グリコール酸はグリシンの生合成に関与するばかりでなく, アラニンおよびセリンの生合成にも関与している。
  • 岩渕 早雄
    1961 年 30 巻 6 号 p. 442-444
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    考察の対象とした期間は少なからぬ変動のなかにも, 長期的にみて繭と米麦等の競争作物とは生産における均衡をほぼ保っていたと思われる。すなわち1930年を中心として繭価と米価の比価 (繭1貫対米1石) をみると前半は平均して0.229, 後半は若干低くなったが平均して0.171の水準にほぼ保たれ, またこの期間に農家における生産技術やその他経営条件を考慮して特に均衡を著しく失するような事情は見当らないように思う。また養蚕にとって前半は拡張期, 後半は縮少期にさしかかっており, したがって繭の価格一厳密には相対価格-の高低は他作物との競合関係をより強めたであろうと推察される。
    農家は生産計画をたてる場合, 必ずしも価格条件のみを考慮するわけではないが, しかしこれが基本的なものであることは大方の認めるところであろう。農業生産においては自然に依存するところ大であり, このためしばしば生産計画の達成を阻害し, 生産要素の計画的投入量の変化の効果を減少させる。この点養蚕は栽桑過程の外に建物等の保護設備の下での育蚕過程があるので, 一般の作物栽培に比較すれぼ自然の変化による影響をある程度緩和しうる。
    一般に農家は工企業とは異なり価格の高低に即応して, 直ちに生産量を増減することは経済的にも技術的にも困難である。養蚕もまた例外ではない。このことについては農業が競争的構造をもっていること, 生産要素の雇用量が大体一定していること, 生産が季節的で相当な期間を要する等, その他多くの要因をあげることができるが, ここでは一般的なことは省く。養蚕の場合価格の変化に対しごく短期的には掃立量の増減, 桑園肥培管理の集約性の調節等が考えられるが, その効果は極めて期待し難く, 根本的には桑園面積の増減に依存するのであって, これには永年作物の性質上ある程度相当の期間を要するわけである。しかして養蚕農家がある年次にある価格に対応した場合, 当年のみならず1~2年の考慮期間をおき, 価格やその他の諸事情を勘案して養蚕計画の方針を決め, それが規模の拡大あるいは縮少であるときは, それに基づいて遂次桑園の増加, あるいは整理に着手し始めその結果が2~3年後にあらわれるものと思われる。
    繭の価格の高低に対しその生産量への影響は少なくとも短期にはあらわれ難く, 数年の遅れを伴うこと以上の如くである。なおこの問題については更に統計的吟味と一層立入った研究が心要と思われる。
  • 鮎沢 啓夫, 佐藤 文子, 村上 昭雄
    1961 年 30 巻 6 号 p. 445-450
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 蚕の体液の透析外液にはfibroblast形成の助成成分が存在する.
    1) 蚕の体液の透析外液にはfibroblast形成の助成成分が存在する.
    2) 蚕体液の透析外液をアルカリまたは酸などで処理したところ, fibroblast形成の助成成分の著しい破壊はみられなかった.
    3) 透析外液中のfibroblast形成の助成成分は活性炭非吸着のようである.
    4) WYATTの無機塩, 糖液にラクトアルブミン水解物, Difco酵母抽出物のみを加えた培地を用いて良好な結果がえられた.
    5) WYATTの無機塩および糖液にラクトアルブミン水解物, 蚕体液の透析外液を添加した培地で, 幼虫期から蛹期にわたって卵巣, 卵管のfibroblast形成をしらべたところ, 踊の卵管がもっとも良好であった.
    6) ハチミツガGalleria mellonella卵管組織の培養法について検討したが, fibroblast様の細胞の形成がみとめられた.
  • 鮎沢 啓夫, 高須 敏夫, 倉田 啓而
    1961 年 30 巻 6 号 p. 451-455
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    静岡県, 群馬県, 茨城県および山形県下の養蚕家の塵埃中からBacillus thuringiensisが分離され, これが違作原因の1つとなっていると考えられる例にも遭遇した.また塵埃中からBacillus thuringiensisを検出する方法についても記載した.
  • 渡部 仁
    1961 年 30 巻 6 号 p. 456-462
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    支106号とそれから劣性突然変異として現われた支106号油蚕とを交配した結果, 交雑F1にはヘテローシスが全く現われず, 支106号と支106号油蚕の遺伝的組成は支106号油蚕遺伝子座位を除けば全く同一であり, 両系統にみられる諸形質の差は支106号油蚕遺伝子の多面的作用によるものと判断された.すなわち支106号油蚕遺伝子には, 卵色を淡くし, 卵のチロシナーぜ作用力を強くし, 不受精卵の発現に関与し, 幼虫体重, 全繭重および繭層重を軽くし, また産卵数を少なくするとともに幼虫皮膚の尿酸量を減少させ, 5令期の化蛹ホルモソ臨界期を早めるなどの働きのあることが明らかになった.
  • 渡部 仁
    1961 年 30 巻 6 号 p. 463-468
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    単交配雑種 (二元雑種) と複交配雑種 (三元および四元雑種) との間で5令起蚕体重および全繭重における変異性を比較した.
    5令起蚕体重の変異を雌雄別あるいは雌雄混合集団でみると, いずれの場合も単交配型く複交配型の関係が存在したが, 雌雄混合における両交配型の変異の差は雌雄別の場合の差よりずっと小さくなる例が多かった.また全繭重の変異については雌雄別集団で単交配型く複交配型の関係があったが, 雌雄混合集団では逆に単交配型>複交配型の関係が認められた.
  • 牛島 忠広
    1961 年 30 巻 6 号 p. 469-474
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    この研究は1954年以来田崎らによってはじめられたクワの水経済と乾物生産の研究の一環として, 両者の関係を明らかにする第一歩として企画されたが, 未解決の部分が多くのこされた. 実験は2つの部分からなっている.
    (1) 発芽後40日ごろの6~7枚開葉したクワ苗を7月20日に地表下3cmのところで主根を切断し, 乾燥にしたがって葉含水量を測定した結果, 下位の葉から枯れはじめしだいに上位へ進んだが, 致死含水量以下にならない範囲では夜間には相当回復し, 午後にはしおれがひどくなるという現象をくりかえす. この時期の葉の光合成能力は2, 3葉位だけが5mg CO2/50cm2/hr以上で他より圧倒的に多いことから, これらの葉が乾燥に強いことは物質生産の維持に大いに役立つことになる. 下位の葉が上位より枯れやすい原因は, 致死飽差が少ないことと浸透圧が低いことによると考えられる.
    (2) 2年生の実生苗を夏切り後, 約20枚開葉した高さ60-70cmのものを鉢植えのまま給水を断った結果, 下位の葉はやはり枯れやすかったが, 上位の最も生産活動のさかんな葉位に極端なしおれが現われた. この時期の下位の葉は気孔閉鎖能力を持たない“dull leaf”であり, そのため非常に乾燥しやすい性質があるが, 上位の異常な現象は浸透圧・蒸散量・致死飽差などから考えてもなっとくのいかないままであった. 秋になるとすべての葉が“dull leaf”となり, 含水量のへりかたにも差がなくなることがわかった.
  • 浜田 成義, 長谷川 聖人, 坪井 優
    1961 年 30 巻 6 号 p. 475-479
    発行日: 1961/12/20
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    一の瀬の鉢植え苗を用いて冬季間中の凍害温度の時期的な変化をしらべた. 材料は凍害発生装置によって, 低温度にそれぞれ2時間接触させ, その前後は圃場においた.
    枝条が伸長を停止した10月なかば頃から桑は次第に低温に耐えるようになり, 約2ヵ月後の12月15日には-19℃で処理しても全く影響が現われなかった. 翌春の脱包時4月18日には-5℃で被害をうけたが, 脱包20日前3月27日には-15℃に耐えた.
  • 1961 年 30 巻 6 号 p. 480
    発行日: 1961年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
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