日本蚕糸学雑誌
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32 巻, 2 号
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  • 有賀 久雄, 吉武 成美, 大和田 道子
    1963 年 32 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体病ウイルス経口接種の前後に, 物理的, 化学的あるいは生物的刺戟をカイコに与えた場合における多角体病発生率の増加あるいは減少について研究を行なった。その結果発病率を増加せしめる処理としては, 低温処理 (5℃, 3~5時間), 高温処理 (37℃5時間), ホルマリン添食 (0.01~1%, 1回), EDTA添食 (粉末, 1回), ならびに酢酸添食 (0.1~0.5M, 1回) などがある。一方発病率を減少せしめる処理としては, 水酸化カルシウム (粉末, 1~5回) があった。
    上述のウイルス接種前後における種々の処理によって多角体病の発生率が高まる機構については,(1) 宿主中腸細胞へのウイルス侵入を容易にする,(2) 侵入したウイルスの細胞内における増殖を容易にする,(3) 種々の処理 (ストレス) によって, ウイルス接種による発病以外に, 多角体病が誘発されたのではないかといったいくつかの機構が考えられるが, ウイルスの注射実験その他の研究結果から, この原因を誘発のみによって説明することは困難であることについて若干の考察を行なった。
  • 有賀 久雄, 渡部 仁, 長野 ヒロ
    1963 年 32 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕の細胞質多角体病ウイルスを用い, 熱による不活化ウイルスとchallengeウイルスとの間で干渉現象が生起するか否かを調べた。不活化ウイルスとしては多角体ウイルスおよび多角体をNa2CO3で溶かして遊離させたウイルスを用いた。
    不活化多角体ウイルスでも, また不活化遊離ウイルスでもchallengeウイルスと干渉し, これらの不活化ウイルスを前もって蚕児に与えておくことによりchallengeウイルスによる発病率を低くした。不活化遊離ウイルスは不活化多角体ウイルスよりもchallengeウイルスとの干渉が普遍的で, その干渉程度も大きい傾向があった。
    不活化遊離ウイルスとchallengeウイルスとの干渉において, 両ウイルスの系統的関係が異種であっても, また同種であっても干渉が起こり, 両者間で干渉の程度に大きな差はなかったが, 幾分ヘテロすなわちT: HあるいはH: Tの場合に大きい傾向が見られた。
  • 有賀 久雄, 吉武 成美, 福原 敏彦, 大和田 道子
    1963 年 32 巻 2 号 p. 58-62
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体病ウイルスが中腸のいかなる部位から侵入するのかを明らかにするため, 結紮により中腸の種々の部位の細胞を破損せしめた蚕を用い, ウイルスの飲下並びに注射実験を行なった。その結果5齢蚕にウイルスを経口接種した場合, ウイルスの侵入部位は中腸後部であり, 体節からいえば第8体節以後に位置する中腸部位であり, また中腸後部に侵入し増殖したウイルスの中腸中部あるいは前部への移動は, 管腔を通してではなく中腸細胞を通して行なわれることがわかった。一方ウイルスを体液中に注射した場合には, 経口接種の場合とは異なり中腸のいずれの部位からも侵入し多角体が形成される。この場合経口接種し発病した個体と同様形成された多角体の大きさは, 中腸前部に形成されたものの方が後部のそれよりも大である。
  • 青木 襄児, 内山 公男
    1963 年 32 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    紫紋羽病菌が桑の根を侵害する様相について組織学的に観察した。
    菌糸の侵入部は周皮木栓組織か皮目のいずれかで, まず侵入部に侵入座を形成し, そこから出た菌糸群が木栓層および木栓形成層の各細胞縫合部を裂開して皮層に達する。
    皮層内に達した菌糸は柔組織の細胞膜を破壊して侵害するが, 形成層に近い細胞は早期に侵害を受けやすい。
    少量の菌糸は放射組織を通して木部へ侵入するが, 大多数の菌糸は束状になって皮層細胞を侵しながら, 根の上方に向かって発育する。その発育は根の表面に発育する菌糸束のそれと関連性が認められない。
  • 第1次発病源について
    西田 正
    1963 年 32 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    桑赤渋病の第1次発病源について実験を行ない次の結論を得た。
    1) 春期における第1次発病芽は, 病条の一定部位に集中する傾向がある。すなわち, 条長では61~120cm, 条径では3~7mmのものに多く, この傾向は桑条面病斑数の分布とよく一致する。
    2) 第1次発病芽の桑条における発生部位は, 条長60cm以下のものでは条先端より条長の約30%, 条長61~120cmのものでは同じく条長の約27%, 条長121cm以上のものでは同じく条長の約47%の範囲内にある。このことは年間条桑育における中間伐採条桑収穫法の実施と併行して本病越冬源除去に効果があることを示す。
    3) 第1次発病源は, 従来桑条面の病斑であると考えられてきたが, 第1次発病芽ならびに越冬中の病斑部を解剖観察して, これを冬芽鱗皮上病斑, 冬芽裏条病斑, 葉痕病斑の3種に類別した。
    4) 3種の発病源中, 冬芽鱗皮上病斑が最も多く60%以上を占め, 次が冬芽裏条病斑で27.0%, 葉痕病斑が最も少なく11.3%ôあった。3種はそれぞれ単一で, 或いは混在して発生する。
    5) 第1次発病源として従来認められていた桑条面病斑は, 冬芽裏条病斑にだけ限定される。
  • 布目 順郎
    1963 年 32 巻 2 号 p. 77-90
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) Movements of spiracles were observed through a small elongate window which was made on the sieve plate cutting transversly a part of it and the rates of opening of spiracle at different environments were calculated. The observations were carried out in a room air-conditioned and in a quite weak current of air. The fifth instar female larvae reared in autumn were used as materials.
    When the spiraculer valve was forced to close by some environment, there still remained a cavity unclosed. The rate of the remaining we called “a rate of opening at closed position”. And when it was forced to open, the rate of opening was called “a rate of opening at opened position”.
    2) Generally there are some irregularities in the rates of opening at both positions, opened and closed. However, sometimes the rates at both positions are fixed at some and a definit point at the time when the moving membrane stops its movement.
    3) The rate of opening in an individual varies with each spiracle and each spiracle shows peculiar reaction in such a case as the other spiracles were closed with a kind of Scotch tape. If the 1st thoracic spiracle is represented with thi and the 1st-8th abdominal spiracles with ab1-ab8 respectively, th1 is usually most liable to close and its reaction to the closure of the other spiracles appears more gradually and duller than that of remaining spiracles. While ab7 and ab8 are most liable to open, and their reaction to the closure of the other spiracles comes gradually. Usually the rate of opening of ab1-ab6 are smaller than those of ab7 and ab8 and the younger the number of spiracles is, the more the spiracle is liable to open, and all of ab1-ab6 represent remarkable reaction especially to the closure of the observing spiracle out of ab1-ab6 with transparent Scotch tape for the convenience of observation. As for the degree of reaction to the closure of spiracles, in both the cases of the closure of cuticular surface and of the removal of sieve plates, if anterior abdominal spiracles are compared with posterior ones, the former is more sensitive than the latter.
    4) Generally, the rate of opening of a spiracle increases when its relative spiracle of the segment is closed, and it more increases when only the observing spiracle is closed and it increases furthermore when both of the observing spiracle and its relative spiracle of the segment are closed.
    5) When more than two spiracles belonging to successive two to three pairs of spiracles including the observing spiracles ab3 or ab7, are closed, the rate of the observing spiracles becomes larger to some extent in many cases. This phenomenon shows that the lack of O2 and the excess of CO2occurred within tracheae belonging to the closed spiracle excepting the observing spiracle and within tissues to which those tracheae are distributed, effect on other spiraclesthrough the tracheae.
    6) The rate of opening of spiracles increases when the whole cuticular surface except spiracles is closed with vaseline. From this fact, it is supposed that silkworm is usually doing cutaneous. respiration to some extent.
    7) The rate of opening of spiracles increased by the closure of cuticular surface recovers gradually after some lapse of time hours when silkworms are kept in a fast condition, and the recovery is quicker in ab3 than in ab8. The spiracles again tend towards opening if thereafter they feed on fresh mulberry leaves.
    8) The rate of opening of spiracles at 24 hours after removal of the sieve plates is smaller than that at just after the removal. It is seemed that this fact owes to the function to prevent from metabolic unbalance caused by the removal of sieve plates.
  • NH3中における蚕児の水分蒸散, 特に気門開閉との関連において
    布目 順郎, 松原 藤好
    1963 年 32 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    普通蚕座に含まれる範囲の各種濃度のNH3が蚕児の水分蒸散量と気門開閉とに如何なる影響を及ぼすかについて試験し, 蚕児における水分蒸散量と気門開閉との関係等につき考察した。
    蚕児のまわりの空気に含まれるNH3の濃度を変えるとそれにしたがって蚕児の水分蒸散量が変動し, 特に0.05%NH3において著しい蒸散量を示す傾向がある。その値は一部例外を除けば対照値の1.13~1.25倍である。他方, NH3濃度と気門開度との関係をみると, NH3濃度による水分蒸散量の変動は気門開度と関係があることが判明した。これらの関係はCO2での場合 (前報参照) に似ているが傾向としてはそれ程明瞭ではない。
    本試験に使用した濃度のNH3は気門の運動膜を極めて不規則に振動させる働きを有する。
  • 育成倍数性桑樹の組織形態学的観察
    関 博夫, 押金 健吾
    1963 年 32 巻 2 号 p. 97-107
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    著者等は人為倍数性桑樹の特性に関する基礎的研究として, 当研究室で育成した三倍性桑樹 (上桑305号) および四倍性桑樹 (上桑401, 402号) における葉・条および根の各部組織について観察を行ない, これ等の母樹である二倍性桑樹 (改良鼠返, 鼠返) と比較調査して, 次の結果を得た。
    (1) 葉部: 成葉における葉肉および葉脈の両組織は, 二倍体に比して三倍・四倍体とも巨大性を示し, 特に四倍体の海綿状組織層は極めて厚い。
    (2) 条部: 主条の皮部・木質部および髄部の組織別観察並びに各部の大きさの割合を測定した結果, 特に四倍体は二倍体に比して皮部が厚く, 髄部は著しく大となり, 木質部の割合は小さい。また四倍体は二倍体に比して木質導管は小形で数が多い傾向を示し, 木質柔組織の細胞は極めて大形である。
    (3) 根部: 三, 四倍体は二倍体に比して皮部及び木質部の各組織とも巨大性を示し, その割合は皮部が大きく, 木質部が小さい。また木質導管の大きさおよび数, 木質柔組織の細胞の大きさ等も条の場合と同様である。
  • 東城 功
    1963 年 32 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    桑樹の挿穂を用いて, 32pの水溶液が花粉母細胞の核分裂におよぼす影響を観察した。1) 5℃ に冷蔵しておいた枝条から約20cmの頂芽のみを持つ挿穂を調製し, 芽を2~6日間32p水溶液に浸漬後ポットに挿木した。2) 32p処理区は対照区に比較して初期の発芽および発育が遅延した。3) 花粉母細胞の核分裂は染色体の不対合を来たし, 各種の異常が観察された。したがって処理区は, 花粉4分子の形成も異常の場合が多く, 巨大花粉および小花粉を生じ不良花粉も多い。特に巨大花粉は3倍体生成の可能性を示すものといえよう。
  • 清水 滋, 堀内 彬明, 波島 千恵子, 安江 昇
    1963 年 32 巻 2 号 p. 113-115
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 中村 勉, 竹村 寿二
    1963 年 32 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 1963/04/25
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    まず未精練絹の紫外線による黄褐変についてOSTWALD表色法で測色して, 白含有量S' (%) と照射時間t (hrs)との関係について
    を得た。つぎにセリシン層の透過紫外線によるフィブロインの黄褐変について, 照射した未精練絹を精練した後測色したところ, 白含有量S'' (%) と照射時間t (hrs)との関係について
    を得た。これらの実験式の諸定数の意味を検討することによって, 未精練絹は絹に比較して黄褐変が少なく, セリシン層は紫外線に対し耐黄褐変性であるけれども, 透過紫外線によるフィブロインの黄褐変に対しては保護性が少ないことを知った。
    最後にセリシン層の蛍光物質を溶媒で抽出した未精練絹と未抽出のものとの紫外線による黄褐変について測色した結果, 未抽出のものは黄褐変が少なく, この蛍光物質の存在は未精練絹の紫外線に対する耐黄褐変性の一因であることが認められた。
  • 1963 年 32 巻 2 号 p. 123
    発行日: 1963年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
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