硫酸ニコチン水溶液を桑葉に添加して5時間給与する方法 (添食法), ならびに純ニコチン水浴液を口器上に滴下して5分間程度飲ませる方法 (飲下法) によって家蚕幼虫に対するニコチンの毒性を調べ, つぎの結果を得た.
1.ニコチンによる蚕の中毒症状として, 不安, 苦悶, 嘔吐, 転倒, 縮小, 仮死状などがみられ, それら症状によって中毒程度を5段階に分類した.
2.蚕に種々の程度の中毒症状を起さす桑葉のニコチン量は齢期によって異なるが, 生葉重量に対する比で1~9×10-6程度であり, 1~6×10-6の範囲内では軽症, 3~9×10-6の範囲内では重症を示す.
1.ニコチンによる蚕の中毒症状として, 不安, 苦悶, 嘔吐, 転倒, 縮小, 仮死状などがみられ, それら症状によって中毒程度を5段階に分類した.
2.蚕に種々の程度の中毒症状を起さす桑葉のニコチン量は齢期によって異なるが, 生葉重量に対する比で1~9×10-6程度であり, 1~6×10-6の範囲内では軽症, 3~9×10-6の範囲内では重症を示す.
3.蚕が経口的に摂取して中毒症状を示す1個体あたりのニコチン最小量は齢期によりかなりの差がある.添食法の場合には蟻蚕が2.1×10-4ηg程度で最も少なく, 5齢盛食蚕は203×10-2η9程度で最も多い.飲下法の場合は3~5齢を通して3齢起蚕が1.4×10-2ηg程度で最も少なく, 5齢盛食蚕が64.8×10-2ηg程度で最も多い.
4.蚕が経口的に摂取して中毒症状を示す体重1gあたりのニコチン最小量は, 添食法の場合, 1~2齢期が3~50×10-2ηg, 3~5齢期が20~88×10-2ηgであり, 飲下法の場合は3~5齢期を通じて9~42×10-2ηgである.
5.中毒を起した蚕のその後の状態をみると, 中毒程度が中等症より軽い場合は後の影響が少ないが, 重くなると発育経過が遅れ, 死蚕数は増加し, 繭重・繭層重も劣化する.
6.以上の蚕の中毒特性を利用して, 桑葉中の微量ニコチン量を簡易に判定する方法を示唆した.
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