著者らはガンマ線照射が
Trogoderma glabrumおよびヒメカツオブシムシの発育, 繁殖能力等に及ぼす影響を究明している。
供試虫は80±2°F, 50±5%RHの条件下で, Purina laboratory chow mealで飼育した
Trogoderma glabrumの卵 (3~6日目), 幼虫 (3~4週間), 蛹 (3~5日), 成虫 (3~4日) およびヒメカツオプシムシ卵 (3~4日), 幼虫 (7~8月), 蛹 (3~5日), 成虫 (4~5日) を使用している。
各変態期の供試虫30個体宛を清潔なゲラチンカプセル (Lilly #000) 中に入れ, 一定のガンマ線に曝露して照射による各試験区の毎週の死亡 (率), 発育過程, 生殖能力等を調べた。
照射条件としては13.2K rad±10%, 17.5, 25, 45および100K rad, または13.2K rad±10%を1時間間隔で5回, 合計66K rad±10%の6条件を用いた。
これらの条件では, 各変態期の両種供試虫を直ちに死滅させることはできなかったが, 被照射虫はほとんど瀕死の状態となる。
両種の被照射卵からふ化した幼虫は, 蛹化前に100%死亡する。たとえば, 25K radの被照射卵 (
T.glabrum) のふ化率は50%で, そのふ化幼虫は照射後21日目に100%致死した。
また両種の被照射幼虫は, すべて完全な発育と蛹化, 成虫化は不可能となり, 被照射量の多いもの程早く死亡する。しかし, 被照射蛹は100K rad照射区を除いて, 多数の蛹が成虫化して, 中程度の被照射条件の蛹から羽化した成虫の寿命は, 対照区のものより長くなる。
この傾向は雌の方が雄よりも大きく, その理由は番 (つが) いと産卵が抑制されることによる。
Trogoderma glabrum成虫は13.2±10%と17.5K radの照射条件下においては生殖可能であるが, ヒメカツオブシムシ成虫は13.2±10%の低照射条件でも生殖は抑制される。
雄の成虫と蛹の被照射による生殖能力の低下は雌よりも少なく, 抵抗性が認められる。
被照射
Trogoderma glabrum蛹・成虫の無照射成虫との番いによるF1世代の数, 死亡率を調べた結果, ガンマ線照射の影響は高い死亡率負担と子孫の減少としてF
1世代に遺伝することが判明した。被照射ヒメカツオブシムシ蛹・成虫からは非常に少数のF
1個体しか得られなかったので, 放射線の性への影響は明瞭でない。
抄録全体を表示