日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
37 巻, 4 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 小島 邦弘, 辻田 光雄, 桜井 進
    1968 年 37 巻 4 号 p. 263-273
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    4眠期から5齢5日目までのカイコの正常幼虫皮膚および皮膚細胞から分離した色素顆粒を材料としてフェノール法で核酸を抽出し, メチル化アルブミンカラム・クロマトグラフィにより分画して発育に伴うリボ核酸 (s-RNA=soluble RNA, r-RNA=ribosomal RNA) の増減を調べ, 色素顆粒の周囲に付着する粒子がリボゾームであることの同定を試みた。その結果は次の通りである。
    1) 4眠期, 5齢期を通じて4眠期は生の皮膚組織1g当りs-RNAおよびr-RNAの量が最高値を示した。
    2) 5齢1日目の生の皮膚組織1g当りのs-RNA, r-RNAの量は, 4眠期のそれに比し激減するが, その後増加して5齢3日目には5齢期間中の最大量を示し, 4日目より5日目に亘って著減する。
    3) 生の皮膚組織1g当りのs-RNAとr-RNAの最大量が5齢3日目に現われたのは, 5齢中期が蛋白合成能が最も高いことを暗示している。
    4) 5齢1日目, 3日目の幼虫皮膚より抽出し, 分析した核酸画分にはs-RNA, r-RNAとDNAが見られた。また単離した色素顆粒の核酸画分にも同じくs-RNA, r-RNAと僅少のDNA様の画分が現われた。それ故色素顆粒周縁に付着する粒子はリボゾームであることが明らかである。
    5) 5齢5日目幼虫より単離した色素顆粒の核酸画分には, r-RNAが検出できなかった。5齢末期の顆粒ではその周縁に付着するリボゾームは崩壊するかまたは顆粒より離脱するためであろう。
  • 諸星 静次郎, 大隈 琢巳
    1968 年 37 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    無機物質および酵素阻害剤の注射により化性が変化することは知られている。長谷川 (1943) は越年性が硝酸ウラニウムの注射により不越年性に変化することを報告し, また吉武 (1954) は化性が無機塩の注射により変化することを報告している。しかしながら有機物質により化性が変化することに関してはまだ報告されていない。アドレナリンおよびインシュリンは脊椎動物の炭水化物代謝に関与しているホルモンである。アドレナリンはインシュリンと拮抗し心臓搏動数を増加させ, 血中の糖および乳酸の量を増加させ, 骨格筋のグリコーゲンの消費を促がす。著者ら (1966) はアラタ体と食道下神経節の抽出物が蚕の幼虫の心臓搏動数に拮抗的に作用することを報告した。
    諸星 (1957) はアラタ体と食道下神経節が繭重, 繭層重, 経過, 化性などの計量形質に拮抗的に作用していることを報告している。アドレナリンまたはインシュリンの注射による化性の変化とアラタ体と食道下神経節の抽出物の注射による化性の変化を比較してみることは非常に興味深く思われる。そこで著者らは越年性および不越年性の雌の蛹にアドレナリンまたはインシュリンを注射することにより化性の変化を調査した。
    アドレナリンを注射すると羽化が遅れ卵数が少なくなり化性が変化する。大造×日106F1の品種で対照区は越年卵を産むのに対しアドレナリンを注射すると一部不越年卵を産むようになる。化蛹3日目にアドレナリンを注射した場合が最も効果的で不越年卵34.1%を生じ, 化蛹5日目注射区では不越年卵20.3%化蛹7日目では6.3%となる。大造×日106品種で不越年性の蛹にアドレナリンを注射しても化性の変化は見られない。一方, インシュリンの注射は越年性および不越年性の蛹のどちらに注射しても化性の変化は見られない。
  • 船田 敏夫
    1968 年 37 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    日本種3品種, 支那種3品種およびこれらの交雑種を用いて, 伝染性軟化病ウイルスに対する抵抗性の遺伝様式について究明を行ない, 次のことが推定された。
    1) FV抵抗性は感受性に対し劣性形質として遺伝する。かつその遺伝は主遺伝子に支配されている可能性がある。
    2) 実験の範囲内では, FV抵抗性に関する雑種強勢の効果はほとんど認められなかった。
    3) 抵抗性系統の選抜は, 蛾区選抜の方法で比較的容易に行なわれた。
  • (I) 窒素源の利用
    青木 襄児, 千種 薫
    1968 年 37 巻 4 号 p. 288-294
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    白きょう病菌, 黄きょう病菌, および赤きょう病菌について, アミノ酸17種, アンモニア態および硝酸態窒素11種を, それぞれ窒素源として加えた合成培地での, 発育状態を比較検討した。どの菌種でも, アミノ酸としてはグルタミン酸, アスパラギン酸などが, その他の窒素源では酒石酸アンモニウム, クエン酸アンモニウム, 蓚酸アンモニウムなどが, それぞれ良い発育結果をもたらした。その他のアミノ酸では, 菌の種類によって, 発育効果に相違が認められた。一方, 各種無機態窒素の効果は, 3菌種を通じて, 同様の傾向が示された。
    白きょう病菌と赤きょう病菌との培養滬液から, グルタミン酸とアスパラギン酸が, そして培養が古くなるにつれて, オルニチンも検出された。またそれらの菌体からは, グルタミン酸やアスパラギン酸を含めて, 前者で6種類, 後者では8種類のアミノ酸が, それぞれ確認された。
  • (I) 生菌数と分離培地について
    滝沢 義郎, 飯塚 敏彦
    1968 年 37 巻 4 号 p. 295-305
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本実験では蚕の腸内における好気性細菌を数種の分離培地を併用して分離し, 得られた菌株を分類学的に検討し, 以下の結果を得た。
    1. 生菌数は1個体105-107 (/ml) の範囲にあり, 食桑後1日目より急激な増大を示して上簇まで多少の消長を示しつつ5齢期間分離された。
    2. 生菌数を多く得るための培地としては, 単一培地では普通培地が優れているが, グラム陽性球菌選択培地であるPEA培地を併用することが効果的であった。
    3. 分離した菌株を分類学的に検討し, Micrococcaceae, Bacillaceae, Brevibacteriaceae, Lactobacillaceae, Enterobacteriaceae, Pseudomonadaceae, Achromobacteriaceae の7科に属する細菌を同定した, これら細菌種を出現頻度 (20%以上), 生菌数 (5齢期通算106/ml以上) から検討して10種を優位細菌とした。即ち, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus spp., Bacillus cereus, Staphylococcus aureus, Klebsiella ozaenae, Alcaligenes metalcaligenes, Aerobacter cloacae, Pseudomonas fairmontensis, Pseudomonas riboflavina, Achromobacter parvulus である。
    4. 一般にグラム陰性菌は齢の初期に多く分離されるが, グラム陽性菌は5齢中常に分離される傾向が認められた。
  • (I) ヒマ蚕糸のスズ増量加工 (その1)
    会田 源作, 清水 滉
    1968 年 37 巻 4 号 p. 306-310
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒマ蚕ペニーのスズ増量加工における増量率におよぼすピンキング条件について検討した。その結果次のことが認められた。
    1) スズ液の濃度は42°Twで増量率のピークが得られた。これは家蚕糸に対するものより約10°Tw低濃度である。
    2) 累積増加の傾向は家蚕糸同様ほぼ直線であった。しかし直線の傾斜は家蚕糸のそれよりかなりゆるい。
    3) 活性剤の使用は必ずしも効果的とはいえない。ただ, 可溶化された脂肪分が残存不純物としてフィブロインに付着している場合, 最初のピンキングのスズ浴に用いたときは有効であった。
    4) スズ液への浸漬時間は, 多通加加工を前提とした場合60分が適当であると判断した。
  • 小林 英子, 佐藤 文子, 鮎沢 千尋
    1968 年 37 巻 4 号 p. 311-318
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高度さらし粉 (200倍) とホルマリン (2%) とを混合した場合の消毒効果が, 単独使用よりもとくに勝ることのない理由についての考察の一つとして, 混合後の有効塩素量およびpHの消長の観点から検討した。
    (1) 現在, 市販されている高度さらし粉剤としてのクロール石灰, クライト, 養蚕ライト, テトライトおよびクラチンの有効塩素量はいずれも58~64%であって, 無蓋のまま室温 (約23℃) に放置しても42時間以内ではその値は変らなかった。
    (2) 終末濃度をそれぞれ200倍および2%となるようにクロール石灰とホルマリンとを混合する方法を変えても, いずれも, 混合後有効塩素は速かに激減し, pH値も同じく速やかに低下した。
    (3) クロール石灰液に重曹あるいは塩酸を混合した場合, 有効塩素量は12時間経過頃より漸減し6時間で8.5程度まで低下した。
    (4) クロール石灰液を保存する場合, 密栓しても開放しても, 温度が10および20℃では有効塩素量は変らないが, 30℃では開放すると24時間頃より低下の傾向が見られた。
    (5) クライトとホルマリンとの混合液 (200倍と4%, 400倍と2%, 800倍と1%) の各液に蚕の細胞質多角体を20時間浸漬しても多角体の溶解は認められなかった。
    以上の結果から, 上記の方法による混合を行なった場合, 高度さらし粉に由来する有効成分は減少すること, 同時に生起するであろうホルムアルデヒドの消費を考えると混合液の消毒効果が単独使用よりもとくに勝る理由は見当らない。
  • 渡部 仁, 小原 隆三, 保坂 政子
    1968 年 37 巻 4 号 p. 319-322
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕に核多角体病ウイルスを経口接種し, 罹病後期の体液蛋白をアガロース・ゲルを支持体とする電気泳動にかけて, その泳動像を正常体液の泳動像と比較した。
    正常蚕の体液蛋白の泳動によって3つの主蛋白分画を含む7つの蛋白分画が分離された。罹病後期の体液蛋白では, 病気の進行に伴い主蛋白分画のうち移動度の低いものから高いものへ順次減少し, 末期になるとその他の蛋白分画も全般的に減少した。また一部の蛋白分画では移動度の低下が認められた。これらの結果から核多角体病蚕の体液蛋白量は罹病末期になると著しく減少し, 一部の蛋白分画では質的な変化も生ずるものと推論された。
  • (3) 桑葉の切断抵抗について
    須藤 允, 藍 房和, 田原 虎次
    1968 年 37 巻 4 号 p. 323-330
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    摘桑機開発のための基礎資料として, 葉柄を切り離す場合の切断抵抗値を実験室内で切断装置を用いて測定した。その結果は次のようである。
    (1) 切断抵抗値は葉重の増加とともに大きくなる。また, 葉位との関係をみると, 切断抵抗値の傾向は11~35葉位の間では葉位が進むにつれて上昇し, 35葉位を過ぎるとほぼ水平になる。しかし, 切断抵抗値は条長の長短とは無関係である。
    (2) 葉柄を片端で支持した場合の切断抵抗値は両端で支持した場合の切断抵抗値の2分の1以下と小さくなる。
    (3) 葉柄を片端で支持し, 切断位置を変えると切断抵抗値は異なり, 葉柄のつけ根から10mmの点が最小で, 次が葉柄の中央点, 最大は葉柄と葉身の境から, 5mmの点である。
    (4) 葉柄を片端で支持し切断方向を変えると切断抵抗値は異なり, 条に平行で上から下方向に切断する場合が最大で, 次が, 条に直角で横方向, 最小は条に平行で下から上方向に切断する場合である。
    (5) 桑葉の切断特性は葉柄の逃げに起因するから, 切断刃の形状は楔角ができるだけ小さく, しかも, 切断機構に適正な速度をもたせることが必要である。
  • 横山 忠雄
    1968 年 37 巻 4 号 p. 331-332
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    In the dorsal vessel of the silkworm hatched from the hybernating eggs of a variety J. 107, an abnormal structure was observed. A muscle band connecting the dorsal and ventral wall of the vessel was found in 2 individuals among 35, i. e., the frequency of occurrence being 6%. The locality of the abnormality was at the anterior part of the sixth abdominal segment in one case (Figs. 1, 2) and at the anterior part of the eighth abdominal segment in the other (Fig. 3).
  • 飯塚 敏彦, 滝沢 義郎
    1968 年 37 巻 4 号 p. 333-336
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    A number of bacterial cells in the midgut of the larvae of silkworm have been microscopically counted on the smear samples.
    The preparations were obtained by aseptically dissecting the midgut of larvae, 0.01ml of preparations was taken out with a micropipette and smeared with the needle on a glass slide, the space measuring 1cm2. Glass slides were dried for 5 minutes on a waterbath heated at 50°C, and then, they were instantly dipped into Newmann's staining solution. The result of microscopic observation in these smear samples, morphological characteristics of bacterial cells could be slightly distinguished.
    By using the same preparations and isolating bacteria with nutrient agar and PEA medium, viable cells were counted. Numbers of bacterial cells were from 105 to 107/ml and numbers of viable cells were less than the former. There was a large difference between the numbers of bacterial cells on samples and that of viable cells on isolating media.
  • 八尋 正樹, 林 満
    1968 年 37 巻 4 号 p. 337-338
    発行日: 1968/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    休眠期前後における桑樹冬芽のエーテル抽出による生長抑制物質の量的変化を, アベナ・テストにより測定した。休眠の深い10月中旬から11月下旬までは生長抑制物質が多量に存在し, 休眠が解除しはじめる12月中旬頃から生長抑制物質の量が少くなる。
  • 1968 年 37 巻 4 号 p. 341a
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1968 年 37 巻 4 号 p. 341b
    発行日: 1968年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
feedback
Top