日本蚕糸学雑誌
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38 巻, 6 号
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  • 佐藤 幸夫, 平林 潔, 石川 博
    1969 年 38 巻 6 号 p. 433-436
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹繊維の湿熱処理について物性と構造がどのように変化するか実験を行ない, 次のようなことを明らかにした。
    1. 湿熱処理温度の上昇につれ繊維の複屈折および平均屈折率は上昇する。これは配向性の劣る非晶部分の流失のためである。
    2. X線回折強度曲線より結晶化度を求めると, 同様に処理温度の上昇につれ結晶化度は増加する。
    3. 示差熱分析の結果も絹フィブロインの分解による第2の吸熱ピークは, 処理温度の上昇と共に高温側に移行し sharp になる。
    4. 強伸度の測定結果は, 強度は140℃まで上昇し以後下降した。伸度は処理温度の上昇と共に減少する。
    5. 重量減少率は処理温度の上昇と共に増大し, 180℃では40%以上に達する。
    以上の実験結果から, 湿熱処理による脆化現象は非晶領域の流出により起こるものと考える。
  • トリプトファン光分解増感作用ならびに生成起原について
    向井 純一郎, 武谷 立子, 稲益 正徳, 阿久 根了
    1969 年 38 巻 6 号 p. 437-443
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. さきに家蚕幼虫消化液から単離された赤色螢光蛋白質がトリプトファンの光酸化を増感せしめることがわかった。
    2. ヒスチジンや核酸塩基類 (アデニン, グワニン, シトシン, ウラシル, チミン) は同一条件下では変化しなかった。
    3. これらの結果を, この蛋白質が持っているウイルス不活化や稲苗枯死作用などの生理活性の機作との関連において考察した。
    4. 試験管内で桑葉クロロプラスト分画と幼虫中腸抽出液とを反応させることにより, 赤色螢光蛋白質と同一と考えられる物質が生成した。消化液にはこの作用がなかった。この蛋白質の生体内生成起源や体内での消長, 機能などについても考察した。
  • (III) 疎液性ゾルの安定度におよぼすセリシンとイオン強度の影響
    青木 一三, 渡辺 昌
    1969 年 38 巻 6 号 p. 444-452
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    正と負のヨウ化銀ゾルにおいて, 粒子濃度と電位決定イオンの濃度を一定に保って, 無関係塩を加えることによってイオン強度を増加させ, セリシンの凝集作用と分散作用を検討した。
    イオン強度の増加に伴う凝集範囲の変化は, 低分子のラウリル硫酸ナトリウムでは見られなかった。しかし凝集剤としてエパンやセリシンを用いた場合, ゾル粒子と凝集剤の電荷が異符号の領域で低濃度側への凝集範囲の拡大が見られた。そして凝集範囲の拡大の程度は分子量が大きいほど大である。また, 分子量が大きいセリシンBを用いた場合, 正と負のゾルともに, ゾルの粒子と凝集剤の電荷が同符号の領域でも凝集が生じた。
    ゾルの安定度 (W) の極小値は, セリシン, エパン, ラウリル硫酸ナトリウムともに, 電解質による急速凝集の安定度 (W=1) にほぼ等しい。しかしながら, 粒子と凝集剤の電荷が同符号の領域で生じる凝集では, 極小安定度は1よりも高い。
    保護作用の領域は, イオン強度を増加しても変わらなかった。これは, セリシンやエパンなどが粒子に吸着して, 系を親水性コロイドに変えているために分散作用が起こるのであって, 静電効果が関与していないからであると解釈できる。
  • (IV) セリシンによる疎液性ゾルの凝集に関する動電的研究
    青木 一三, 渡辺 昌
    1969 年 38 巻 6 号 p. 453-461
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    セリシンによる疎液性ゾルの凝集機構を検討するため, 正と負のヨウ化銀ゾルにセリシンを吸着させ, イオン強度を増加したのときのジータ電位の変化を顕微鏡電気泳動法で測定し, 次の結果を得た。
    1) セリシンとゾル粒子が反対の電荷を持つpH領域で, イオン強度を増したとき, ジータ電位はより低いセリシン濃度で減少し始めた。一方, ゾル安定度とジータ電位の関係はイオン強度に無関係であった。このことから, イオン強度の増加によるセリシンの凝集範囲の拡大は, 拡散二重層の圧縮によるものであると考えられる。
    2) ゾル粒子がセリシンによって十分被覆されると, ジータ電位は可成り低下する。このような低いジータ電位で観察された保護作用は, 吸着したセリシン分子の水和によるものであろう. 高いイオン強度において, ジータ値の低下は著しいが, 保護作用の濃度領域はそれによって影響されなかった。
    3) セリシンとゾル粒子が同じ電荷を持つpH領域で, セリシンAとBのジータ値の低下はほぼ等しいが, セリシンBを加えたときにのみ凝集が生じた. それ故このとき見られる凝集は, 電荷の中和によるものでなく, いわゆる架橋によるものである。
  • 第6報 希酸処理にともなう膨潤ならびに溶出作用と表面構造の特異性について
    待田 行雄, 渡辺 忠雄, 桑原 昂
    1969 年 38 巻 6 号 p. 462-470
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高温多湿条件下に上蔟した家蚕繭の毛羽部分に見られる異常絹糸を, その延伸状態によって3種に分類し, それぞれ強力伸度を測定すると共に, 希酸処理による膨潤・溶解と表面構造の特異性との関係などから, 異常絹糸の生成・内部構造について考察した。
    1, 3種の異常絹糸の中で, 強力は典型的異常絹糸部分が最も小さい。これはこの部分の延伸が最も不十分なためと考えられる。
    2. 異常絹糸部分の希酸による溶出量は処理4時間までは直線的に増加するが, その後の溶出量は漸次減少する。
    3. 典型的異常絹糸部分はいわゆる非結晶領域が多く, 又フィブリルは繊維軸と30~40°の角度をもっていることが多い. これは不十分な延伸のため部分的に繊維化した後, 未繊維化部分の収縮のために生ずるものと考えられる。
    4. やや延伸された異常絹糸部分は光学顕微鏡的には横縞を示さないが, 希酸処理にともなって電子顕微鏡的に横縞を示すようになり, この部分の結晶化が不整一であることは明らかである。
    5. 横縞の見られるやゝ延伸された異常絹糸部分はその内部構造においても顕著な横縞を示し, 結晶化の不整一は明らかである。
    6. 希酸処理が10時間以上になると3種の異常絹糸部分の表面構造の相違は殆んど認められず, いずれもフィブリルがかなり乱れていることは明らかである。
    7. 以上のことから高温多湿条件下に上蔟営繭した家蚕繭毛羽に見られる異常絹糸部分は, カイコが毛羽部分を吐糸する時の牽引力, 牽引速度および延伸率などの不均衡のために生ずるものと考えられる。
  • (V) グラム陰性桿菌の分類学的研究および無菌飼育蚕にたいする病原効果
    中筋 祐五郎, 児玉 礼次郎
    1969 年 38 巻 6 号 p. 471-480
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    各地の病蚕からグラム陰性桿菌26菌株を分離し, それらの分類学的ならびに病理学的研究をおこなった。その結果:
    1. これらの菌株はBERGEYの分類書における次の10種に分類された。
    Proteus vulgaris HAUSER 1菌株
    Proteus morganii (WINSLOW et al.) RAUSS 1菌株
    Proteus inconstans (ORNSTEIN) SHAW et DLARKE 2菌株
    Serratia piscatorum (LEHMANN et NEUMANN) BREED 5菌株
    Serratia marcescens Bizio (無色素株) 2菌株
    Aerobacter aerogenes (KRUSE) BEIJERINCK 3菌株
    Aerobacter cloacae (JORDON) BERGEY et al. 6菌株
    Alcaligenes bookeri (FORD) BERGEY et al. 類縁菌 1菌株
    Achromobacter superficialis (JORDAN) BERGEY et al. 類縁菌 1菌株
    Pseudomonas ovalis CHESTER 類縁菌 4菌株
    2. 人工飼料で無菌的に飼育した5令健蚕にたいする病原効果をしらべた結果:
    i) S. piscatorum, S marcescens (無色素株), P. vulgaris P. morganii および P. inconstans は添食ならびに注射のいずれの方法によっても病原効果を現わし, とりわけ注射法によっては例外なく100%の致死率をしめした.
    ii) Aer. aerogenes の1菌株および Aer. cloacae の5菌株は添食法によってだけ弱い病原効果を現わし, 逆に Achr. superficialis 類縁菌は注射法によってだけ病原効果を現わした。
    iii) Alc. bookeri 類縁菌および Ps. ovaris 類縁菌は病原効果を現わさないか, またはほとんど現わさなかった。
  • 小林 勝, 山口 定次郎, 横山 好範
    1969 年 38 巻 6 号 p. 481-487
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコのNPVの感染機構を研究する目的をもって, 経口感染に対して抵抗性系統の大造と感受性系統の春月および日124号を用い, 同一齢内の発育に伴なう感染抵抗性の変化を第1齢, 第4齢および第5齢で調べた。また, ウイルス粒子を用いて, 経口および経皮接種の場合の抵抗性が発育時期によってどう変化するかについて, 第5齢期と蛹期において調べ, つぎの結果を得た。
    1). NPVに対する感染抵抗性は起蚕時接種の場合に低く, 食桑すると高まり, 餉食後24時間目と1部48時間目接種の場合に再び低下する時期があった。その後の抵抗性は齢および系統によって異なる点があったが, 第1, 第4齢期では催眠期に近づくにつれて高まる傾向を認めた。第5齢期でも再び抵抗性を増し, 76時間目から96時間目接種の間に1時期低下して, 全体としては抵抗性の高い系統は熟蚕に近づくにつれて感染しにくかった。
    2). ウイルス感受性を異にする供試系統の間で経口感染抵抗性を感染力価で比較すると, 日124号に比較し大造が第1齢期で5倍, 第5齢期で15倍高かった。齢別では起蚕ウイルス接種で比較すると第5齢期が第1齢期に比較し大造が399倍, 日124号で129倍高かった。
    3). ウイルス粒子を第5齢起蚕に経皮接種した場合の感染抵抗性は, 経口接種に比較し大造で1/7.6×104倍, 日124号で1/9.3×103であった。一方, 発育時期別の抵抗性は経口接種の場合に両系統間に抵抗性の差がみられた。同濃度の多角体ウイルスとウイルス粒子とでは, 後者の場合が罹病しにくかった。
  • 川上 圭司, 飛山 永男, 清水 仁子, 山田 たけを, 山崎 寿, 尾沢 あつ子, 片岡 平, 室賀 信俊
    1969 年 38 巻 6 号 p. 488-492
    発行日: 1969/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    When silkworms are fed with mulberry leaves taken from a mulberry field adjacent to the egg production plant, they grow normally and very healthy in the spring season, while most of them usually suffer from the infectious flacherie (F) disease in the early and late autumn. This fact indicates that in the latter two seasons mulberry leaves are attached with the moth scales polluted by the infectious flacherie germs as the egg production begins and a lot of the scales are sent with the wind to mulberry field, consequently the larvae eat the polluted leaves. Such a tendency is confirmed by exchange of the larvae or of mulberry leaves between the egg producing place and non producing place. If we rear young silkworm larvae with the leaves polluted by the scales, the majority of the die of the flacherie (F) disease even though they are reared with non polluted leaves in the later stage. Meanwhile when young silkworm larvae are fed with non polluted leaves, the disease hardly occurs even if they eat the polluted leaves in the older stage. This might be due to the difference in the resistance for the flacherie germ between growth stages.
  • 1969 年 38 巻 6 号 p. 494a
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1969 年 38 巻 6 号 p. 494b
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1969 年 38 巻 6 号 p. 494c
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1969 年 38 巻 6 号 p. 494d
    発行日: 1969年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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