蟻蚕 (即浸種) に硬化病消毒剤であるパフソール, セレサン石灰およびクライト石灰を同量同方法でそれぞれ撒布し, その撒布量および撒布後の防乾紙被覆時間が蟻蚕および掃立当初の蚕児にどのように影響するかについて試験し, 次のような結果を得た。
1. 蟻蚕の生存率: 薬剤をとり除いた直後の生存率は, パフソールの5.0g2時間区が劣るほかは, いずれも対照区と同様に良好であった。薬剤を取り除いて1~2日後に調査したものでは対照に比していずれも劣り, 特にパフソールの5.0gおよび2時間の各区は極めて悪かった。
2. 蚕児の蚕座内垂直分布: セレサン石灰, クライト石灰の各区は蚕児の上りが比較的良好であったが, パフソールは2.5g, 30分区のほかは蚕児の上りが悪く, 特に5.0g2時間区は極めて悪かった。
3. 初眠起までの蚕児発育経過: セレサン石灰およびクライト石灰の各区は対照区と大差は認められなかったが, パフソールは2.5g, 30分区のほかはいずれも経過がおくれ, その撒布量の多いものほど, 防乾紙被覆時間の長いものほど経過のおくれが甚だしく且つ不斉であった。
4. 以上の結果から, パフソールは蟻蚕消毒にあたりその使用法を誤ればセレサン石灰, クライト石灰に比して明らかに薬害の大きいことがわかった。
5. パフソールを蟻蚕消毒に用いる場合は, 30×30cm
2当り2.5g以内の量をムラなく撒布し, 掃立までの防乾紙被覆時間を30分に止めるべきである。
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