日本蚕糸学雑誌
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38 巻, 4 号
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  • 小出 直人
    1969 年 38 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スズ (IV) 錯体 (ヘキサクロルスズ酸塩のアンモニウム塩ならびにカリウム塩) の水溶液処理によって得られた絹の熱的挙動を明らかにするため, 空気下において昇温による熱分析により検討した。得られた結果はつぎのとおりである。
    1. 示差熱分析での主な熱反応は, 吸湿分の脱水による吸熱ピークのほかはブロードな発熱反応を示す。スズ塩付加によりこの発熱反応領域はさらに高温側に拡大する。
    2. 熱重量曲線から, 熱酸化分解は280℃で最高となり, これはアミド結合の崩壊によることが推定される。
    3. アミド結合崩壊前後の減量速度と加速度 (dw/dt, d2w/dt2) を求めると, スズ塩付加によりそれらのピークが約10℃以上高温側に転移することが認められる。またSnCl4とスズ錯体とでは絹との結合機構が同じでないとする示唆が得られた。
  • 岩成 義才, 大野 功恵
    1969 年 38 巻 4 号 p. 307-315
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1966年は小金井農場の樹令18年の改良鼠返の夏切新梢の上位葉と中位葉, 府中農場の植付2年目の改良鼠返の全芽育成新梢の上位葉と下位葉の4区, 1967年は府中農場の植付3年目の改良鼠返および一の瀬の夏切新梢の上位葉, 中位葉および下位葉の6区につき, 9月中旬より11月上旬にわたり15日または10日おきに摘葉し, その乾燥粉末を主体とした人工飼料を用いて蟻蚕より15~20日間飼育し, その生育を見るとともに, 用いた桑葉中の糖とタンパクの含量を測定し, 生育との関係を見た。
    1) 蚕の生育は生長, 体重増加, 生存率とも上位葉のほうが中位葉あるいは下位葉にくらべて良く, また同一葉位では採葉時期の早いものほど良い。
    2) 桑葉中の水溶性糖は10月下旬~11月上旬までは増加するがその後は減少する。一方粗タンパクは採葉時期の早いものほど多い。
    3) 最も生育の良かった小金井農場9月15日採取の上位葉を用いた飼料 (A-1区) と同一の糖, タンパク含量ならびに比率となるように, 他の区のものにタンパク単独あるいは糖とタンパクを添加した飼料を作りそれで飼育した結果, 添加の効果は多少は見られたが, A-1区と同じ生育を示したものはなかった。
  • 水田 美照, 桑野 恒雄
    1969 年 38 巻 4 号 p. 316-320
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ドクダミの臭成分であるラウリンアルデヒドとカプリンアルデヒドが熟蚕の登蔟性に及ぼす影響について調べた。
    1. ラウリンアルデヒド, カプリンアルデヒドをキシロールとエタノールで250倍に増量したものをもみがらに吸着させて蚕座に散布したところ, 熟蚕の登蔟性に顕著な影響が認められ, 上蔟条件の悪い場合にも促進効果があることを知った。
    2. ラウリンアルデヒドを乳剤として使用してもキシロール・エタノール溶液と同じ効果を示した。
    3. 両剤を主成分とした溶液, 乳剤に対し熟蚕はよく反応し, 未熟蚕は反応を示さなかった。
    4. これらの薬剤を実用化するために上蔟時の気象との関係を明らかにする必要があることを考察した。
  • 渡辺 昭典, 押川 勝二, 近縄 清文
    1969 年 38 巻 4 号 p. 321-328
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ラウリンアルデヒドを希釈する一法としてラウリンアルデヒド1, 白灯油10, ワンダフルK4の割合に混合し, これに水100を加えて乳剤とした。この乳剤を使用して割愛後の雄蛾の行動を制止する実験を行ない, 次の結果を得た。
    (1) 実験容器33cm×44cmあたり使用する乳剤5~20mlの範囲では, 10~20ml (ラウリンアルデヒド成分量0.09~0.17g) で十分な制止効果を認めた。
    (2) 使用にあたり前もって乳剤を添加して準備しておくことについては, 開放状態でも1日程度は制止効果が失なわれないことを知った。
    (3) 開放容器と閉鎖容器では後者の制止効果が大きく, かつ持続性のあることがわかった。
    これらの実験結果から割愛後の雄蛾を静めるためにラウリン乳剤を利用することは, 交尾, 産卵等に関して生理的障害のないことが確認されれば実用化することは容易である。
  • 山下 興亜
    1969 年 38 巻 4 号 p. 329-339
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    The present study was carried out to determine the pathway of metabolic conversion of blood trehalose into ovary glycogen during the pupal-adult development of the silkworm. Trehalase, hexokinase, phosphoglucomutase, UDPG-pyrophosphorylase, UDPG-glycogen glucosyltransferase and phosphorylase were detected in ovary homogenates. The activities of these enzymes were linear within certain ranges of reaction time and protein concentrations of the enzyme preparations. The kinetics of these enzymes with respect to their substrates were typically as Michaelis-Menten type. The optimum pH was different according to each enzyme, ranging between 5.8 and 8.2.
    Trehalase and UDPG-glycogen glucosyltransferase were mainly concentrated in the particulate fractions at subcellular fractionation by differential centrifugations. But hexokinase, phosphoglucomutase, UDPG-pyrophosphorylase and phosphorylase remained in the soluble part at 105, 000g.
    The activity of these enzymes, except phosphorylase, has been increased progressively reaching the maximum at about the middle pupal age and then decreased gradually until the adult emergence. Among the enzymes, trehalase was less active than the others throughout the development. But phosphorylase activity increased steadily to reach its maximum in the mature ovaries.
    Referring to the biosynthetic activities of glycogen in pupal ovaries and as a result of the present study, trehalase, hexokinase, phosphoglucomutase, UDPG-pyrophosphorylase and UDPG-glycogen glucosyltransferase were the enzymes which convert blood trehalose into ovary glycogen. It is also suggested that trehalase is a rate-limiting step in the glycogen synthesis in pupal ovaries.
  • (III) CaCl2-H2O-R・OH3成分系溶液による絹フィブロインの溶解
    味沢 昭義
    1969 年 38 巻 4 号 p. 340-346
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    CaCl2-H2O-R・OH (R: CH3, C2H5) 3成分系溶液によるフィブロインの溶解について検討し, つぎの結果を得た。
    1. フィブロインの最大溶解量を示す溶液組成はCaCl2-H2O-R・OH=1:8:2Mであった。
    2. フィブロインを溶解するときの見掛けの活性化エネルギーは約28~29KCal/Mであった。
    3. CaCl2-H2O2成分系溶液にR・OHの適量を添加すると, フィブロインの溶解は微細構造に影響されなくなり溶解はいちじるしく促進される。その理由は, 溶液の滲透性の増加によることが考察された。
    4. フィブロインを中性塩類溶液で処理することによって, 稀酸加水分解速度恒数が増加し, 結晶性を低下して非晶化することが認められた。また, 吸湿性, 染料吸着性の増加からも結晶性の低下によることが考察された。
    5. 中性塩類溶液がアルコールを含むか否かに関係なく等しい溶解量となるように処理したフィプロインは, 稀酸加水分解量, 加水分解速度恒数, 結晶性構造各領域量, 吸湿性, 染料吸着性がほぼ同じであることから, 中性塩類溶液によるフィプロインの溶解機構はアルコールの存否にかかわらず同じと考えられる。
  • 水田 美照, 渡辺 昭典
    1969 年 38 巻 4 号 p. 347-355
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    脂肪族高級アルデヒドまたはアルコールに属する薬品のうちn-ヘプチルアルデヒドn-オクチルアルデヒド, ノニルアルデヒド, カプリルアルデヒド, n-ウンデシルアルデヒド, ラウリルアルデヒド, n-トリデシルアルデヒド, ミリスチルアルデヒド (三量体), 10-ウンデシレンアルデヒドおよびドデシルアルコールの10種につき, これらの希釈液を上蔟期の蚕体, 蚕座に散布して登蔟促進効果の有無を比較検討して次の結果を得た。
    (1) 水散布または無処理区に対し各薬液とも登蔟促進効果が認められた。
    (2) 10種類の薬液中特にドデシルアルコール, ラウリルアルデヒドおよび10-ウンデシレンアルデヒドを含むものの登蔟促進効果が顕著であった。
  • 新倉 克己
    1969 年 38 巻 4 号 p. 356-358
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 黒岩 久平, 宮下 民雄, 荒井 五助
    1969 年 38 巻 4 号 p. 359-362
    発行日: 1969/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蟻蚕 (即浸種) に硬化病消毒剤であるパフソール, セレサン石灰およびクライト石灰を同量同方法でそれぞれ撒布し, その撒布量および撒布後の防乾紙被覆時間が蟻蚕および掃立当初の蚕児にどのように影響するかについて試験し, 次のような結果を得た。
    1. 蟻蚕の生存率: 薬剤をとり除いた直後の生存率は, パフソールの5.0g2時間区が劣るほかは, いずれも対照区と同様に良好であった。薬剤を取り除いて1~2日後に調査したものでは対照に比していずれも劣り, 特にパフソールの5.0gおよび2時間の各区は極めて悪かった。
    2. 蚕児の蚕座内垂直分布: セレサン石灰, クライト石灰の各区は蚕児の上りが比較的良好であったが, パフソールは2.5g, 30分区のほかは蚕児の上りが悪く, 特に5.0g2時間区は極めて悪かった。
    3. 初眠起までの蚕児発育経過: セレサン石灰およびクライト石灰の各区は対照区と大差は認められなかったが, パフソールは2.5g, 30分区のほかはいずれも経過がおくれ, その撒布量の多いものほど, 防乾紙被覆時間の長いものほど経過のおくれが甚だしく且つ不斉であった。
    4. 以上の結果から, パフソールは蟻蚕消毒にあたりその使用法を誤ればセレサン石灰, クライト石灰に比して明らかに薬害の大きいことがわかった。
    5. パフソールを蟻蚕消毒に用いる場合は, 30×30cm2当り2.5g以内の量をムラなく撒布し, 掃立までの防乾紙被覆時間を30分に止めるべきである。
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