日本蚕糸学雑誌
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39 巻, 5 号
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  • 武井 隆三, 長島 栄一
    1970 年 39 巻 5 号 p. 329-334
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵における休眠性の変化に対して化学薬品の効果が報告されている。著者らは休眠性変化の機構をとらえようとして, 酸化的燐酸化におけるアンカップラーとしてのDNPを用い, 休眠性変化の実験を行なった。またDNPによってその合成が阻害されると考えられるATPなども用いて, 化蛹2日目の雌蛹に注射した。そして羽化後産卵した蛾区について非休眠卵の出現状態を調べた。
    1) DNPを注射すると非休眠卵産下蛾の出現がみられ, 非休眠卵のみを産下するものと, 同一蛾区内に休眠卵と非休眠卵を混合して産下するものがあった。
    2) DNP+ATP, DNP+ATP+MgHPO4・3H2O注射したものはDNPのみを注射したものより, 非休眠卵産下蛾の発現割合が増加した。
    3) DNP処理による家蚕卵の変化の状態を電子顕微鏡を用いて調べた。その結果, DNP処理卵ではミトコンドリアが膨化, 損傷している像を認めた。そしてこの現象と非休眠卵の発現との関係について考察を行なった。
    4) DNPを注射した供試系統のうち, 日124×支124F1から3:1の割合で正常卵と白ハゼ様死卵を分離する蛾区が現われた。この系統はDNPに対する感受性遺伝子をもっていたものと考えられる。
  • 轟 恒男, 竹内 好武
    1970 年 39 巻 5 号 p. 335-341
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑野が開発した4脚2輪型条払い機 (改良型) と著者らが簡易な機構に改造した試作機 (簡易型) とについて飼育規模の大きい養蚕現地で試験調査を行ない, 概要つぎの結果を得た。
    1) 条払い機への人員配置は3人が適正と思われる。また蚕種1箱分の条払いに要した作業延時間は改良型 (春蚕期) が約39分, 簡易型 (晩秋蚕期) が約33分で, 上蔟当日における総作業延時間 (蚕座片付けを除く) の約17%に当たり, 両機種の条払い作業能率はほぼ同等なことが認められた。
    2) 両機種とも軽量化や付属品の取り付けの必要が認められ, また改良型は払い落した熟蚕に蚕沙が混入すること, 中・下段ふるいの蚕沙だけを落す網目から熟蚕が落下することなどの欠点が認められた。
    3) この調査結果からこれらの条払い機を導入して条払い上簇を能率的に行なう場合に必要な作業条件, 適正と思われる人員配置, 作業能率および条払い機の構造のあり方などについて考察を行なった。
  • (IV) 変異系と考えられる新系統, BおよびC1
    山口 邦友, 鮎沢 千尋
    1970 年 39 巻 5 号 p. 342-350
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の中腸核多角体病ウイルスを用いた実験中に, 多角体の形成状態に異常を呈した個体が見出されたので, ウイルスの継代を行ない観察した結果, 本病ウイルスの変異系と考えられるつぎの2系統を発見した。
    B系; 多角体の形成過程に特徴のみられるもので, 病勢初期の円筒細胞の核内に多数の桿状構造物を形成し, 病勢の進行につれて核および細胞質に多角体を形成した。細胞質に形成された多角体の形は稜線が鈍化してかどは丸味を帯び, 大きさはA形のものより小さく, 大きなものでも1辺の長さが10μ内外であった。
    C1系; 円筒細胞の核内に封入体を緻密に形成し, 光学顕微鏡下では核が褐色を呈して観察された。病勢末期には, 円筒細胞の細胞質にも微粒状の封入体が形成されることがあった。
    これらの系統が見出されたことにより, 最初に発見された正6面体の大形多角体を形成する系統を中腸核多角体病ウイルスA系と称した。
    各系統とも病蚕の外観的症状には差異がなかった。多角体または封入体は, 中腸組織以外の組織では形成が認められなかった。B系多角体, C1系封入体は60℃の1N-HClで加水分解することによりプロムフェノールブルーその他の色素に好染した。
    B系またはC1系ウイルスの罹病細胞についての電子顕微鏡的観察では, 両系とも円筒細胞の細胞質に球形のウイルス様粒子が認められた。
    TCおよび中腸核多角体病の各系統の多角体また封入体を免疫原とした免疫兎血清によるウイルスの中和反応は, 全く交叉的に反応が成立した。
    以上の結果から, 中腸核多角体病A系ウイルスはTCの変異系であり, さらにB, C1両系ウイルスはA系の変異系であると考察した。
  • III. カイコ蛹皮膚の表面構造
    田中 一行
    1970 年 39 巻 5 号 p. 351-358
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 頭部, 触肢, 眼, 肢, 翅など, 成虫原基細胞の発達によって新たに分化した部分におけるクチクルの表面には, S・U (クチクルの外面に刻まれた小区分で, 主として真皮細胞によるクチクル形成の区分) はほとんど認められないが, 幼虫の一般細胞からなる環節部クチクルの表面には, 不正六角形のS・Uが明瞭に認められる。
    2) S・Uは主としてその外面構造の差から4種に大別される。これらのうち1種類はすべての環節に, 他の1種類は動環節 (ただし環節前部のみ) を含むそれ以後の環節に, また残された2種類は動環節の後部に認められる。この場合異なるS・Uは混在することなく前後の位置に集まり, 特有の表面模様を構成している。
    3) S・Uの大きさは, これがもっとも小さい末端環節附近を別とすれば, 腹部よりも胸部, 腹部の中では中央部よりも前後の環節, 同一環節の中では背面よりも腹面, 環節後部よりも環節前部で小さい。
    4) 第8腹節以後の環節間においては体節間膜部は認められず, その部分におけるクチクルの表面構造は環節部クチクルの表面構造によく似ている。
    5) 剛毛は頭部, 触肢, 眼, 肢, 翅など, 成虫原基細胞の発達によって分化する部分においては全く認められず, また一般細胞からなる環節部においても, 着色の淡い腹面などでは全く認められない。
  • (I) 繰糸張力と生糸の強度, 伸度および収縮性との関係
    島田 潤一, 荻原 清治
    1970 年 39 巻 5 号 p. 359-362
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繰糸張力と繰製生糸の切断強度, 切断伸度および収縮度との関係を実験し, つぎの結果を得た。
    1) 生糸の切断強度は繰糸張力の増加とともに増加するが, ある限度をこえるとかえって減少することが認められた。最大の乾燥切断強度を示す繰糸張力は生糸繊度に関係なく約1g/dであり, 最大の湿潤切断強度を示す繰糸張力は約0.8g/dであった。
    2) ある限度以上の繰糸張力のもとに繰製された生糸の切断強度の低下は, 高い張力のためにフィブロイン繊維の微細構造に一部変化がおこるためと考察した。
    3) 生糸の伸度は繰糸張力の増加とともに減少することが認められた。
    4) 生糸, 精練絹糸の収縮度は繰糸張力の増加とともに増加する。また精練絹糸の収縮度は生糸の収縮度より大きい値を示した。
  • (V) 変異系と考えられる新系統, C2
    山口 邦友
    1970 年 39 巻 5 号 p. 363-370
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の中腸核多角体病ウイルスの変異系と考えられる新系統を見出し, 中腸核多角体病ウイルスC2系と称した。本系統による病蚕の病理学的所見はつぎの通りである。
    封入体は飼育温度が25℃~30℃の場合には, 1μ内外の不整形の微粒状をなして中腸の円筒細胞の核および細胞質に形成された。封入体は中腸組織以外の組織には形成が認められなかった。
    ウイルス接種後の飼育温度の相違によって封入体は形と大きさが異なり, 25℃より低温になるに従い粗粒状から大形化して様々の形状を呈するようになり, さらに20℃飼育では, 核および細胞質のいずれに形成されたものも球形を呈して観察された。球形封入体は核内では形成数が多く直径5μ内外の大きさを示したが, 細胞質では形成数が少なく大形で直径12μ内外を示すものがあった。
    球形封入体の形成されている病蚕を25℃に移して飼育したところ, 球形封入体は微粒状に変化した。
    封入体の染色性ならびにアルカリ液に対する溶解性は, 形状にかかわりなく, A, B両系の多角体およびC1系の封入体の性状と差異がみられなかった。
    罹病細胞の電子顕微鏡的観察では, 円筒細胞の細胞質に球形のウイルス様粒子が観察された。
    A, B, C1系およびTCの多角体または封入体を免疫原とした免疫兎血清により, C2系ウイルスは中和された。
  • 浜野 国勝, 向山 文雄
    1970 年 39 巻 5 号 p. 371-376
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    9種の蛋白質を基質としてKUNITZの方法にしたがって家蚕の消化液蛋白分解酵素の性状と, 同酵素による各種蛋白質の分解度を調べ, つぎの結果を得た。
    1. 最適pHは基質によって多少異なり, ハマステンカゼインでは11.5, グルーテンでは11.0, ゼラチンでは9.7であった。
    2. 酵素反応は一次反応式にしたがい, トリプシン単位は2.9×10-3であった。
    3. 酵素に対してCa++は賦活作用を示すが, Cd++, Co++, Mn++, Mg++, Cu++, Hg++はいずれも阻害的に作用した。
    4. 供試した9種の蛋白質のpH11.5における分解度はゼラチンが最も高く, 次いでハマステンカゼインであり, α-プロティン, 卵アルブミン, ゼインは最も低く, ミルクカゼイン, ビタミンフリーカゼイン, 大豆粉末, グルーテンは後の2群の中間に位した。
    5. この実験に用いた各種蛋白質の分解度の大小と, それら蛋白質の家蚕に対する栄養価の大小との間には一定の関係は認められない。
    6. 分解度の高い蛋白質と低い蛋白質を混合して基質とし, これらの分解度を調べたところゼインを混合すると分解度は著しく低下する。
  • VII. Streptococcus 属分離菌株の病原性発現経過に2つの型があることについて
    中筋 祐五郎, 小林 明, 児玉 礼次郎
    1970 年 39 巻 5 号 p. 377-381
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料で無菌的に飼育した5令健蚕を用いて, 病蚕から分離した Streptococcus 属菌株の添食法ならびに注射法による病原性を検討し, 次の結果を得た。
    1) 病原性があると判断された菌株の病原性発現経過には消化管疾病型および敗血症性疾病型の2つの様式のある事実が見出された。
    2) 消化管疾病型に属する菌株は増殖pH上限値が比較的に高く, ゼラチンを液化せず, 添食法だけで病原性を示す。
    3) 敗血症性疾病型に属する菌株はゼラチン液化性をもち, 増殖pH上限値が比較的に低く, 添食法よりも注射法で強い病原性を示す。
  • II. 蚕品種並びに接種間隔
    有賀 久雄, 渡部 仁
    1970 年 39 巻 5 号 p. 382-386
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    夏蚕期, 初秋蚕期および晩秋蚕期に日1×支108の蚕児を供試して, 紫外線処理により不活化された外観6角形多角体を形成する細胞質多角体病ウイルスと活性の4角形多角体を形成するウイルスとの干渉について調べた。その結果についてみると, 前者は後者に干渉し, 活性ウイルスによる細胞質多角体病発生率は対照区に比し低下したが, 腸内細菌によると考えられる軟化病が発生した。そのために健蚕率が蒸溜水を添食した対照区に比して高いという結果が得られなかった。このような結果を招来した原因として, (1) 化性と関係する蚕児の強健性, (2) 夏秋蚕期における桑葉質の不良, (3) 水に浮遊させた不活化ウイルスの食下の3者が考えられた。
    また2化性日本種と2化性支那種との交雑F1を供試して, 紫外線不活化ウイルスと活性ウイルスとの接種間隔が長い場合の干渉について調べた。2齢起に不活化ウイルスを接種し, 8日後に活性ウイルスを接種した場合や, 2齢期に不活化ウイルスを接種し, 5齢期に活性ウイルスを接種した実験でも, 前者の後者に対する干渉効果が認められ, 健蚕率は処理区のほうが対照区に比して高い値を示した。
  • 江口 正治, 古川 繁
    1970 年 39 巻 5 号 p. 387-392
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕中腸の蛋白質分解酵素作用は蛹後期に増加し, 羽化前において最高値を示し, 蛾になると激減することが明らかになった。
    2. 粗抽出液についてこの酵素の性質を調べると, 至適pHは9前後であり, 等電点約4.2, 反応時間2時間頃まではその活性は大体直線的に増加した。
    3. 蛹中腸の蛋白質分解酵素作用は家蚕幼虫あるいは蛹の体液を加えることにより強く阻害された。
    4. 多数の系統の材料について寒天ゲル電気泳動を行なうと, 最高5本の活性泳動帯が観察された。この酵素活性は大部分蛹の中腸の内容物に認められ, 羽化, 脱繭の時に出されるコクナーゼとは電気泳動像が異なっている。以上のような結果から, 蛹の中腸の蛋白質分解酵素とコクナーゼ (セリシナーゼ) との関係について考察した。
  • (III) 異常張力繭糸が生糸糸条の構成ならびに糸質に及ぼす影響
    有本 肇, 小西 孝, 青木 一三
    1970 年 39 巻 5 号 p. 393-398
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繰糸粒付中に異常な張力を有する繭糸が混入されるか, またはそれと同じ効果を有する異常張力粒付の生じた場合 (試験区), 生糸を構成する繭糸の集合性ならびに糸質に及ぼす影響につき正常な生糸 (対照区) と比較して検討した。えられた結果はつぎのとおりである。
    1. 顕微鏡下で生糸の横断面を観察した結果, 試験区の生糸は粒付中に混入または生じた異常張力繭糸を芯になるよう周囲から普通の繭糸が包むような形態をとるものが比較的多く見られる。
    2. 異常張力繭糸に起因する巻取繰糸張力の増大のもとで繰糸された試験区生糸は, 対照区の生糸に比して切断強度大きく, 伸度が小さい。また原繊度に対する切断時の繊度減少率は対照区のものに比較して小さい。
    3. 牽引による繊度の減少率ならびに単位伸度当り繊度減少率は伸度の増加とともに増大し, その値は対照区のものが常に試験区のものより大きい。
    4. 牽引による密度 (見かけ比重) の増加率は伸度0~5%の間において顕著に急増し, 伸度5%以上では大きな変化が見られない。単位伸度当りの密度増加率は伸度の増加に伴ない指数函数的に減少する。これらの増加率はいずれも対照区のものが試験区のものより大きい。
    5. 繊度ならびに密度より換算した生糸の断面積および断面を円形と見なした直径も当然伸度の増加とともに減少する。
    6. 上記の諸点より異常な張力を受けた繭糸が粒付中に存在することにより, 繭糸の集合状態は引揃えのよいしまった, 固い生糸となり, 繭糸間の空隙の減少することが考えられる。
  • 勝又 藤夫
    1970 年 39 巻 5 号 p. 399-404
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    マンダレイで改良鼠返は11月下旬に休眠期に入る。たとえ気温や土壌水分が適当であっても翌年2月未迄は発芽しない。3月上, 中旬に始めて発芽し, 休眠を終る。これに反しタイ桑は全く休眠しない。
    此の事実から桑の休眠は遺伝的性質のものでその期間の長さは桑の種類や環境によって異なり, 蚕児飼料としての桑葉の収穫に重大な意義を持つと考えられる。
  • 直井 利雄
    1970 年 39 巻 5 号 p. 405-408
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1970 年 39 巻 5 号 p. 409-410
    発行日: 1970/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    羊毛黄変の研究 (27) 螢光増白処理羊毛の光化学黄変への水の役割
    核多角体病に感染した Heliothis zea における血球変化
    アミノ酸, ペプタイドおよび可溶蛋白質の紫外線黄変の研究
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