カイコの品種 (原種) 間および原種とその交雑種間にみられる体の大きさの相違に対し, 真皮細胞の大きさやその数が, どのような関係にあるかにつき知るため, 蛹クチクルの表面にみられる不正六角形の小区分を, 真皮細胞の表面像とみなし, その点を究明した。用いた品種および実験の範囲内では, 結果はおよそつぎのとおりであった。
1) 動環節における環節前部 (前半部) と環節後部 (後半部) の面積比は, 品種によってかなり相違しており, 一般に体形の大きい品種ほど環節前部の面積は大きい。
2) 真皮細胞の大きさは, 環節前部と環節後部とで品種によって著しく相違し, 環節前部で小さい品種 (体形大) は環節後部で大きく, また環節前部で大きい品種 (体形小) は環節後部で小さい。
3)1)と2)の結果から, 真皮細胞の大きさを環節平均値でみれば, 環節の大きい品種において逆に小さいことが知られた。
4) 真皮細胞数は, 環節の大きい品種において明らかに多いが, この品種的相違は, 主として1)および2) に示した環節の部位による面積や, 真皮細胞の大きさの品種的特異性による。
5) 原種と交雑種との間においては, 真皮細胞数は前者よりも後者において明らかに多く, またその大きさは後者の側で若干大きい。
6) 交雑種にみられる真皮細胞数は, その数の少ない品種を母体としたものよりも, その多い品種を母体としたものの方が明らかに多い。
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