繭層を剥離して, 前報の方法によりフィブロイン分解率を測定するとともに, 営繭中に外側の繭層をとり除いて, 中層および内層が繭の外部に露出されるようにして各層別別に営繭させ, 得られた繭綿 (毛羽), 繭層 (外, 中, 内層) と中層および内層に生じた繭綿状繭糸とについて分解率を測定し, 次の結果を得た。
1. フィブロイン分解率は繭層内外により相違し, 外層と中層ではその値は低いが, 内層では高く, 繭綿ではきわめて高かった。
2. 営繭中に外側に吐糸された繭層をとり除いて, 中層および内層をそれぞれ外部に露出させ乾燥されやすいようにして営繭させても, 中層および内層繭糸の分解率は低くならなかった。
3. 各層別営繭により, 中層および内層の外側に生じた繭綿状繭糸は, 繭綿と同様にきわめて高い分解率を示した。
4. 繭層内外におるる分解率を雌雄別に測定したところ, 外層と中層とにおいては雄が高い値を示したが, 内層では逆に雌のほうが高かった。雌雄による差異は繭綿状繭糸においても同様であった。
5. 繭層内外における分解率の差異は品種により多少相違し, 内層繭糸が高い値を示すもののほかに, 外層および中層とほぼ同じ値を示すものも観察された。
6. 以上の結果から, 内層繭糸が高い分解率を示すのは, 繭内部における多湿により繭の乾燥が遅いことによるものとみることはできず, 吐糸速度などの他の要因によるものと考えられる。また, 繭綿状に吐糸した繭糸が高い分解率を示すのは, 不規則な吐糸行動により形成された異常繭糸の存在によるものと考えられる。
7. 蛹襯に当たる最内層と対1,000m落緒回数との間には直接の関係はみられなかったが, 一般に内層部の繰糸のときに落緒の多いことからみて, 内層部繭糸における分解率は解じょ率と何らかの関係を有するものと推察される。
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