日本蚕糸学雑誌
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40 巻, 3 号
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  • (I) 養蚕地帯より分離した Aspergillus 属糸状菌のアフラトキシン生産と家蚕に対する毒性
    村越 重雄, 杉山 純多, 大友 俊允
    1971 年 40 巻 3 号 p. 167-175
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 神奈川県下の養蚕地帯から209株の Aspergillus 属糸状菌を分離し, そのうち98分離菌株について毒性物質生産の有無および分類学的位置を検討した。毒性物質生産の検定は人工飼料にクロロフォルム可溶区分を加える方法により行なったところ, 50菌株に毒性が見られた。毒性を示したもののほとんどは, Aspergillus flavus Link ex Fr. であった。
    2. 毒性物質の分離・同定を行なったところ, アフラトキシンB1, B2, G1, G2の存在を確認した。A. flavus と同定された37菌株におけるアフラトキシン群と他の螢光スポットの出現ひんどは変異に富んだものであった。しかし, 強い毒性を示した菌株では, かならずアフラトキシン群のスポットが見出された。また無毒株にはアフラトキシン群は見出されなかった。つぎに薄層クロマトグラフィー上の各螢光スポットについて家蚕に対する毒性を検定した結果, B1部分に強い毒性, G1部分にもかなりの毒性を観察した。
    3. アフラトキシンB1の家蚕に対する経口毒性を調べた結果, 1.5ppmでも6日後に全部死亡するほどの強い毒性を観察した。
    4. A. flavus のアフラトキシン生産と病原性, ホルマリン抵抗性ならびに色素産生能には正の相関が示唆された。
  • III. 不活化ウイルスを粉剤として用いた場合の干渉効果
    有賀 久雄, 渡部 仁
    1971 年 40 巻 3 号 p. 176-180
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線処理で不活化した細胞質多角体病ウイルス (HC) を粉剤とし, 増量剤に白陶土, ホワイトカーボン, 酸性白土, 消石灰および澱粉等を用いて両者を混合して蚕児に添食した場合の, 活性ウイルス (TC) に対する干渉について調べた。
    白陶土, 酸性白土などを増量剤として用いた場合には, 紫外線不活化HCウイルスは活性のTCウイルスに干渉し, 後者による本病蚕の発生率を低くするが, その程度は前に報告した蒸溜水に浮遊させた不活化ウイルスの干渉効果ほど顕著ではなかった。
    増量剤として消石灰を用いた場合には, 不活化HCの活性TCウイルスに対する干渉効果は, 上述の2者に比して低く, おそらく消石灰が蚕児のTCウイルスに対する抵抗性を高めるためと考察された。ホワイトカーボンと澱粉を増量剤として用いた場合には, これらの蚕児の食下が本病ウイルス感受性を高める働きがあり, ために結果的に干渉効果が弱められたものと考えられた。
  • 飯島 忠彦
    1971 年 40 巻 3 号 p. 181-191
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢4日目の後部絹糸腺を30分~8時間培養し, 培養細胞及び正常の絹糸腺細胞の微細構造を電顕的に比較観察した。
    培養細胞には輪状に変形したミトコンドリアがかなり高い頻度で観察された。このことは培養組織における呼吸機能の低下を示すものと考えられる。粗面小胞体は扁平な層状構造を呈し, 蛋白合成能の低下を示した。しかし, 3~8時間培養した細胞では一部の小胞体は肥大した。これは呼吸エネルギーの低下が蛋白合成に対するよりも小胞体からゴルジ体への分泌蛋白の移行に対して, より強く影響していることを示すものと考えられる。
    正常細胞のゴルジ体では, 小胞体から出芽したゴルジ小胞がゴルジ空胞と融合する像が多数観察されたが, 培養細胞ではゴルジ小胞は著しく少なかった。この差異もまた, 小胞体-ゴルジ体間の分泌蛋白の移行が不活発であることを示すものと考えられる。また, 培養細胞のゴルジ体では, ゴルジ空胞や小胞体と連続した特異な膜構造が頻繁に観察され, さらに, ゴルジ空胞と小胞体とが直接連絡している像も観察された。以上の知見から, エネルギー欠乏下においては小胞体からゴルジ体への分泌蛋白の移行は, 通常の出芽法以外に直接的にも行なわれうることが示唆された。
  • (I) スズ増量率測定法における灰化法に対する検討
    坂口 育三, 平林 潔, 掛川 栄弥, 三井 元子, 塚田 まき子
    1971 年 40 巻 3 号 p. 192-198
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スズ増量率の測定法としての灰化法を重量法と比較して検討した。
    1. 灰化法で測定した値は, 一般にバラツキが大きく, 重量法に比して小さい値がえられる。その理由は灰化の際, 酸化第二スズが繊維の熱分解物により, 還元されて, 金属スズになりやすいこと, スズ加工処理により, 繊維中に沈着したスズ酸ゲルは, 酸化第二スズが約10% (約1モル相当) の水を強く吸着したSnO2・H2Oに近い組成をもち, 灰化に際し, この水が失なわれることなどによると考察された。
    2. 灰化法により, 重量法による増量率に近い値を得るためには, まず, 試料を1~2滴の濃硝酸で潤して, 静かに焼き, ほとんど灰白色となし, 最後に赤熱して, 繊維に沈着しているスズ酸ゲルが金属スズに還元されることを防ぎ, 全部SnO2になるように灰化する。つぎに, この方法で得られた灰分量から絹フィブロイン固有の灰分量を差し引いたのち, 補正係数1.119を乗じ増量率を求めればよい。
    3. 灰分量からスズ増量率 (x) は, つぎのように, 増量試料の無水物量 (B), と灰分量 (C) および未増量試料固有の灰分量 (D) から, 式 (1) より未増量試料の無水物量 (A) を算出したのち, 式 (2) により算出する。
    A=B-C+D……(1)
    x%=(C-D/A)×100×1.119……(2)
  • 1. 休眠ホルモンと完成卵のTCA含有 ethanol 可溶性蛋白質
    甲斐 英則, 長谷川 金作
    1971 年 40 巻 3 号 p. 199-208
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵の休眠現象を蛋白質代謝の面から解明し, 休眠ホルモンの作用機構を明らかにするために, まず休眠性と卵の蛋白質量との関係について検討を行なった。
    1) 供試材料は蛾体内の完成卵で, 休眠卵産性蛹から食道下神経節 (SG) の摘出および非休卵産性蛹への休眠ホルモン抽出物の注射によって人為的に休眠性を変えた。これらの処理は蛹の成虫発育期間や卵の重さには影響しなかった。
    2) 卵の蛋白質を6分画にわけ, 各分画の蛋白質量を測定した。その結果, 休眠性の完成卵には卵1gあたり200mg前後の総蛋白質が含まれ, SGはこの量をほとんど変動させなかった。しかしTCAに不溶性で酸性 ethanol に可溶性の分画にはある種の蛋白質 (TCA含有 ethanol 可溶性蛋白質) が含まれ, この分画のみがSGの影響を受け, SG摘出においてその含量が大となった。これらの結果は, 非休眠卵産性蛹 (N4) への休眠ホルモン抽出物の注射実験によって確められた。N4の完成卵には卵1gあたり約150mgの総蛋白質が含まれていたが, 休眠ホルモン抽出物はこの値をほとんど変動させず, TCA含有 ethanol 可溶性蛋白質の含量を低下させた。
    3) 上述のTCA含有 ethanol 可溶性蛋白質はアルブミン様で, 分子量の小さい蛋白質であると考えられた。
    4) 以上の結果から, 休眠ホルモンは卵の蛋白質代謝にも関与し, 特にアルブミン様低分子蛋白質の完成卵内での含量を減少させる方向に作用するものと推察した。
  • VI. 斃蚕から出る有機ガスの検出ならびにこれらのガスに対する蚕児の抵抗力
    布目 順郎, 四方 正義, 村田 武, 松本 正
    1971 年 40 巻 3 号 p. 209-216
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフによって, ウイルス性軟化病および核多角体病による斃蚕から indol ならびに propionic acid, iso-valeric acid, n-butyric acid などの揮発性脂肪酸のガスが発生することを知った。これらのガスは斃蚕の腐敗が進むと増加する。
    蚕児におよぼす indol ガスの影響試験はすでに行なわれているので実施しなかったが, 一定濃度の propionic acid, n-valeric acid および iso-valeric acid のガスの接触に対する5齢蚕児の抵抗力について, 抵抗力が異なると思われる6品種を用いて試験したところ次のことがわかった。
    (1) propionic acid と iso-valeric acid の接触によって蚕児の受ける障害の程度はn-valeric acid の場合よりも大きい。
    (2) propionic acid の接触によってウイルス性軟化病が多発し, iso-valeric acid によって核多角体病が多発する傾向がある。
    (3) 齢中の発病は, 盛食期まではウイルス性軟化病が多く, それ以後は核多角体病とウイルス性軟化病の併発型が多くなる。
    (4) 蚕品種によって上記各種ガスに対する抵抗力に相異がある。
    (5) 核多角体病とウイルス性軟化病の併発型は日本種に多い傾向がある。
  • 有賀 久雄, 岩下 嘉光
    1971 年 40 巻 3 号 p. 217-220
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線不活化細胞質多角体病ウイルスの蚕児への添食が, 腸内細菌に原因する軟化病の発生にどのように影響するかについて調べた。細菌としては Streptococcus faecalis 類似菌 (球状乳酸菌) たるE5と, Serratia 属類似菌 (グラム陰性桿菌) たるE15との2種を用い, これら細菌の接種ならびに低温処理あるいは高温処理と細菌接種とを組合せた場合につき, 紫外線不活化細胞質多角体病ウイルス (水に浮遊あるいは粉剤) 添食区と対照区との間で軟化病発生率を比較したが, 殆んど差異が認められなかった。
  • 一場 静夫, 蒲生 卓磨
    1971 年 40 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭層を剥離して, 前報の方法によりフィブロイン分解率を測定するとともに, 営繭中に外側の繭層をとり除いて, 中層および内層が繭の外部に露出されるようにして各層別別に営繭させ, 得られた繭綿 (毛羽), 繭層 (外, 中, 内層) と中層および内層に生じた繭綿状繭糸とについて分解率を測定し, 次の結果を得た。
    1. フィブロイン分解率は繭層内外により相違し, 外層と中層ではその値は低いが, 内層では高く, 繭綿ではきわめて高かった。
    2. 営繭中に外側に吐糸された繭層をとり除いて, 中層および内層をそれぞれ外部に露出させ乾燥されやすいようにして営繭させても, 中層および内層繭糸の分解率は低くならなかった。
    3. 各層別営繭により, 中層および内層の外側に生じた繭綿状繭糸は, 繭綿と同様にきわめて高い分解率を示した。
    4. 繭層内外におるる分解率を雌雄別に測定したところ, 外層と中層とにおいては雄が高い値を示したが, 内層では逆に雌のほうが高かった。雌雄による差異は繭綿状繭糸においても同様であった。
    5. 繭層内外における分解率の差異は品種により多少相違し, 内層繭糸が高い値を示すもののほかに, 外層および中層とほぼ同じ値を示すものも観察された。
    6. 以上の結果から, 内層繭糸が高い分解率を示すのは, 繭内部における多湿により繭の乾燥が遅いことによるものとみることはできず, 吐糸速度などの他の要因によるものと考えられる。また, 繭綿状に吐糸した繭糸が高い分解率を示すのは, 不規則な吐糸行動により形成された異常繭糸の存在によるものと考えられる。
    7. 蛹襯に当たる最内層と対1,000m落緒回数との間には直接の関係はみられなかったが, 一般に内層部の繰糸のときに落緒の多いことからみて, 内層部繭糸における分解率は解じょ率と何らかの関係を有するものと推察される。
  • 宮島 成寿
    1971 年 40 巻 3 号 p. 227-230
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体病ウイルスに対する蚕児の感受性 (発病率の大小で示す) が, 蚕児の発育に伴ないどのように変化するかを調査した。すなわち, 一定濃度, 一定量のウイルス液を各種の発育段階の蚕児の同一部位に注射し, 25±1℃で120時間飼育後発病率を調べた結果はつぎのとおりである。
    1. 3齢起蚕にウイルスを注射した場合の発病率 (-log ED50) と3眠中のそれを比較した場合, また4齢起蚕と4眠中での発病率を比較すると, いずれも起蚕は眠蚕よりも1,000~5,000倍程度の高い発病率を示した。しかしながら, 3眠中と4眠中の蚕児では発病率の差は認められなかった。
    2. 3, 4, 5の各齢起蚕に一定量のウイルスを注射した場合には, 蚕児の齢が進むにしたがって-log ED50値の差が1.0~1.4程度ずつ下がり, 蚕児のウイルスに対する感受性は低下する傾向が認められた。
    3. 5齢の蚕児については, 5齢起蚕より除々に発病率は低下し, とくに5~8日目の蚕児では急速な低下が認められた。
  • VI. カイコの成長に伴う体表面積増加に関する一考察
    田中 一行
    1971 年 40 巻 3 号 p. 231-235
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの発育に伴う体表面積の増加につき, 主として既に公表した皮膚の表面構造ならびに組織学的構造の見地から検討し考察した。
    1) 起蚕と盛蚕 (5齢幼虫) の間にみられる剥離クチクルの面積比は, ほぼ1:2である。
    2) 起蚕と盛蚕 (4・5齢幼虫) の間にみられる真皮細胞幅の比は, 部位に関係なくおよそ1:1.5を示す。したがって1) の齢期中にみられる体表面積の増加は, 逐次分泌表面積を増しつつある真皮細胞によって分泌形成されるクチクルの量的増加により, 行なわれることが明らかである。
    3) 体表面にみられる真皮細胞によるクチクル形成の区分 (不正六角形) は, 主として表面に存在する彫刻状の微皺によってつくられた微領縁ないし微凹線の配列の差により表わされているが, この配列は真皮細胞の大きさの増加に伴う分泌面の広がりと, 側面細胞膜の伸びの方向にそれぞれよく一致しており, しかもこれらの微皺は盛蚕ではほとんど消失している。
    4) 眠期, 真皮細胞は外面に向って長く伸びる。しかしその伸び率が部位によってかなり相違するため, この時期の細胞層は著しく褶曲する。真皮細胞 (層) にみられるこのような形態的変化は, 脱皮後体内諸器官の発達につれ, 逐次伸展しうるしわ (肉眼的なしわ) の多い皮膚の形成に対し, きわめて重要となるものと思われる。
    5) 4) にみられる真皮細胞 (層) の形態的変化は, 同時に新クチクルの表面積を旧クチクルの表面積よりかなり増す結果となる (3齢盛蚕1:4齢起蚕1.3~1.4)。このような新クチクルにみられる表面積の増加は, 脱皮現象 (ぜん動運動) と密接に関連したものと思われる。
  • 新倉 克巳
    1971 年 40 巻 3 号 p. 236-239
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    鹿児島県熊毛郡屋久町付近の海岸に自生するきく科植物ホソバワダン Lactuca lanceolata Makino を宮崎原蚕種試験所の圃場に移植または種子を播種して栽培し, そのホソバワダン葉で秋から春にかけて数回の蚕児飼育を行ないつぎの結果を得た。
    1) ホソバワダンで全齢を飼育した場合または桑葉育で経過した蚕児を5齢からホソバワダンで飼育した場合のいずれにおいても蚕児の成育は桑葉育に比してはなはだしく劣り, 蚕児は軽度の油蚕状体色を呈し, 結繭に至らない場合もあったが, 飼育時期によっては少数ながら結繭し, さらに発蛾, 産卵するもののあることが認められた。この場合繭の計量形質は桑葉育に比して著しく劣り, また半化蛹蚕が多数出現した。
    2) 葉質の分析の結果, ホソバワダンの葉は桑葉に比して水分と還元糖は著しく多く, 粗蛋白質と全可溶炭水化物は少なかった。
  • 1971 年 40 巻 3 号 p. 240
    発行日: 1971/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    昆虫培養細胞の増殖速度におよぼす昆虫ホルモンの影響
    昆虫ホルモン活性を有する天然物質および合成物質 5. 鎖式セスキテルペン類の特異的幼若ホルモン効果
  • 1971 年 40 巻 3 号 p. 268
    発行日: 1971年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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