日本蚕糸学雑誌
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40 巻, 4 号
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  • 内海 進
    1971 年 40 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis (B. T.) およびその類縁菌においてある種の物理的あるいは化学的処理では, 解毒作用と殺菌作用が異った程度で進行することから. 殺虫活性を保持した状態下で増殖能を喪失せしめる処理を施し養蚕への影響の少ない, 一次作用のみの B. T. 殺虫剤の調製に成功した。すなわち B. T. に過酸化水素あるいはβ-プロピオラクトンの水溶液を添加, 24時間後, 遠心処理法で毒素体と死菌体を集め, 乾燥することにより調製品を得た。
    本調製品の殺虫活性は家蚕幼虫 (2齢蚕) に対し0.1%懸濁液散布桑給与で約3~4時間, 1%同液散布桑給与ではほぼ1時間で中毒死させる作用をもっている。また2%同液を飼料葉に散布して与えた場合, マツカレハ, モンシロチョウおよびイチモンジセセリの幼虫ではすべて2日間に中毒死する活性が認められた。したがって本調製品は, 家蚕の生育環境をさけて供用すれば二次作用をもたないので, 養蚕に影響の少ない状態で実用に供し得る殺虫剤と考えられる。
  • 渡部 仁, 有賀 久雄, 南村 春美
    1971 年 40 巻 4 号 p. 275-280
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体病ウイルスに感染したカイコにおける多角体の発育 (数と大きさの増加) について, とくに宿主が感染途上で眠に入った場合, 多角体の発育現象がどのように変更されるか調べ, 次のような結果を得た。
    1. 感染蚕が眠に入ると, それまで増加しつつあった多角体数は, 眠の期間増加が抑制されてほぼ定数を保ち, 眠離脱後再び急激に増加した。
    2. 感染蚕が眠に入ると, それまで増大しつつあった多角体の大きさが, 眠の期間中かなり抑制されて増大率は緩慢となり, 眠離脱後も多角体はゆっくり大ぎくなった。
    3. 3Hチロシンを用いた感染中腸のオートラジオグラムから, 宿主の眠中における多角体の発育抑制現象は, 宿主細胞における多角体蛋白質合成の低下に原因すると考えられた。
    4 3Hウリジンを用いた感染中腸のオートラジオグラムは, 宿主細胞におけるRNA合成が眠期にかなり低下することを示した。
  • 井口 民夫
    1971 年 40 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉および3種類の人工飼料について, アミノ酸組成を比較すると同時に, これら4種の飼料を食下した幼虫について血液遊離アミノ酸組成の比較を行ない, 大要次の結果を得た。
    1. 桑葉粉末を50%, 脱脂大豆粉末を20%の割合で添加したA飼料および脱脂大豆粉末を40%の割合で添加したB飼料は, いずれも必須アミノ酸が桑葉に比較して少なく, 特に後者においては Met が制限アミノ酸であることが示された。また非必須アミノ酸についても両飼料とも桑葉より含量の少ないアミノ酸が多く, したがってこれらの飼料はともに桑葉よりいくぶん低蛋白飼料であることが判明した。18種のアミノ酸混合物を窒素源としたC飼料では, 酸性アミノ酸が桑葉より少ないこと, および Met 含量の多いことが認められた。
    2. 桑葉および上記3種の人工飼料で5齢起蚕から4日間飼育した幼虫の体重はA飼料区が最も重く, 桑葉およびB飼料区がこれにつぎ, C飼料区は最も劣った。
    3. 家蚕幼虫血液の遊離アミノ酸組成は飼料条件によって強く影響されることが示された。特にA飼料区およびB飼料区では Orn 濃度が桑葉育幼虫の3.4倍以上の値を示した。
    4. 桑葉育幼虫に対する各種人工飼料育幼虫の血液遊離アミノ酸のパターン類似率はすべて0.775以下であり, 飼料アミノ酸の比較で得られた高い類似性は得られなかった。このことは血液遊離アミノ酸パターンが飼料中のアミノ酸組成のみならず他の栄養条件によっても強く影響されることを示唆している。
  • 須藤 千春, 川瀬 茂実
    1971 年 40 巻 4 号 p. 288-292
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ウイルス性軟化病のウイルスによる赤血球凝集反応について検討した結果, 次のことが判明した。
    1. ウイルス性軟化病感染蚕中腸の磨砕液の10,000g遠心上清は, マウス赤血球を凝集するが, ニワトリ, ラット, 山羊, 緬羊, ヒトの赤血球では殆んど, あるいは全く凝集を起こさなかった。
    2. 凝集反応の最適条件としては, ウイルス液および赤血球の調整に中性附近の燐酸緩衝生理食塩水を用い, 0.25~0.5%の血球濃度で室温で反応を行なうことである。
    3. この赤血球凝集素はウイルス性軟化病のウイルス自体である。
    4. 以上の結果から, 本法を用いてウイルス性軟化病の簡便な診断が可能であることが示された。
  • 1. 肉眼検査と測色値との関係
    松井 進治, 石井 昭衛
    1971 年 40 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    測色計を使用して生糸を光学的に測色し, 肉眼検査による色相程度の判定と比較検討し, 次のような結果が得られた。
    1. CIE表色系によれば当所で受検される生糸の色は主波長575~581mμ, 刺激純度5.6~12.0%, 明度53.9~71.2%の範囲にあり, 色名は yellowish Gray である。これに対し練糸は主波長574~580mμと生糸に比し変化なく, 刺激純度2.2~4.0%と無彩色に近く位置し, 明度も76.2~80.7%と生糸より大きくなる。色名は yellowish White である。
    2. 等色差表色系の Hunter L. a. bでは明度73.4~84.4%で, 肉眼判定の淡方向になるにしたがい明るさを増し, aは-1.1~+1.4で淡は (-) 側で帯緑色, 中, 濃は (+) 側で帯赤色にほぼ分類される。bは5.0~9.0を示し濃方向になるにしたがい黄味の度合が多くなる。すなわち, 生糸の色相は緑味から赤味を帯びた黄色である。
    3. 生糸の肉眼検査による色相程度と機械的な測色値との関連性が高く, 肉眼検査の正確性がうかがえる。
    4. 生糸の色相は黄色が主体であって, Hunter のbを測定することにより, 生糸の着色程度を判定することが可能である。ただし, 肉眼検査は心理的要素が多く加わるので, L, aの多少によって色相程度の判定に大きく影響をうけている。
    5. 生糸の白さは Hunter のLによって比較が可能である。
  • 飯塚 英策
    1971 年 40 巻 4 号 p. 300-306
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒゲナガカワトビケラの絹糸腺内容物を直接水に分散させるか, または一度乾燥したものを水に溶解分散させたものの二次構造を, 旋光分散, 円偏光二色性および赤外線吸収の方法によって研究し, 次のことを明らかにした。
    1. カワトビケラ絹タンパク質は絹糸腺のどの部位から採取されたものもその二次構造に明らかな差は認められず, カイコ絹タンパク質のようなはっきりと異なる二成分から成るのではなく, 単一成分であるか, あるいは二成分から構成されているとしてもその化学構造はきわめて類似していると考えられる。
    2. カワトビケラ絹タンパク質の中性pHにおける旋光分散は228mμと210mμの浅い谷, 190mμの山で, また円偏光二色性は217mμと208mμの負バンドでそれぞれ特徴づけられ, その二次構造は不規則構造を主体として5~10%のβ型構造を含むことを示している。
    3. その二次構造は家蚕絹セリシンのそれに酷似しており, カワトビケラ絹タンパク質のアミノ酸組成がセリン残基と長側鎖アミノ酸残基に富むという点でセリシンに類似していること, 絹糸腺の形がセリシン蚕のそれによく似ていることとも対応している。
    4. 水溶液中でカワトビケラ絹タンパク質がとっているβ型構造はクロスβであって, 8モル尿素または高いpHにおいては消滅し完全な不規則構造に転移する。
  • 服田 春子, 本間 慎
    1971 年 40 巻 4 号 p. 307-312
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前年に貯えられたクワ古条の貯蔵物質の多少と発芽初期ならびにその後の成長の関係について, つぎの結果をえた。
    1. さし木後約1カ月間における展開器官の成長は古条の貯蔵物質に依存する。
    2. さし木後1カ月間における大, 中, 小区の展開器官の成長量比 (1:0.68:0.32) とさし木時の古条の乾量比 (1:0.7:0.4) はほぼ等しい。
    3. 6月から8月までの期間における乾物増加量の展開器官 (葉, 新条, 根) およびさし木古条に対する分配率は区間に差がみられなかった。
    4. 展開器官の成長速度は, 各区ともほとんど等しかった。
    5. さし木古条の乾量は各区ともさし木後約2カ月まで同じ比率で減少し, さし木時の乾量の約15%を消費した。
    6. さし木古条の可動性炭水化物 (全糖+でんぷん) は各区とも発芽初期に75~80%を消費した。
    7. クワでは, ヘミセルロースは貯蔵物質として利用されていない。
  • 勝又 藤夫
    1971 年 40 巻 4 号 p. 313-322
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    著者は西部ジャワで桑葉の巨大細胞の形を調べそれが3種に分けられることおよびその形は桑の種類に特異的であることを知ったので, 日本と東南アジアの桑について確めるべく調査した。概要次の如くである。
    1. 桑葉の巨大細胞の形を調べるには, (A) 条の中部の最大葉について調査するがよい。(B) 葉脈に接した巨大細胞は一般のものより大きいからさける。(C) 桑樹発育場所により巨大細胞の形に変化がない。(D) 巨大細胞の形は桑種類に特異的であるがハチジョウグワでは条の中, 上部のものと基部地際のものとは異るので中, あるいは上部の最大葉で調べるのがよい。
    2. 桑の種類と巨大細胞との関係については, (A) 巨大細胞の形は4種あって ((1) 巨大細胞に突起のないもの, (2) 巨大細胞に小突起のあるもの, (3) 巨大細胞に中突起のあるもの, (4) 巨大細胞に大突起のあるもの) 桑の種類に特異的である。(B) この調査結果を従来の分類方法と比較すれば. (1) 西部ジャワでの調査結果と大体一致して, 桑の種類に特異的である。(2) 巨大細胞の形で桑種類の群を分けると大体小泉博士の花柱による分類と一致するが, なかには一致しないものがある。たとえば従来, 市平品種はある場合にはカラヤマグワに, ある場合にはヤマグワに属せしめていたが, この調査の結果によって市平の巨大細胞は多くのヤマグワ系品種と同様であることが知られ, 市平の所属する種が研究者によって異なる理由がおかった。
    3. 桑葉の巨大細胞の形は桑種類の群を分けるのに役立つ。とくに小泉博士の花柱による分類と組合せるときその利用価値は大である。
  • I. 飼料中のカドミウムおよび亜鉛が家蚕に及ぼす発育段階別の影響
    三好 健勝, 宮沢 福寿, 清水 治
    1971 年 40 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料にCdまたはZnを添加した飼料で蚕を飼育して, それぞれの濃度別および発育段階別の毒性を調べた。
    1. Cdの濃度が1齢試験 (掃立~上蔟までCd添加飼料を連続給与) では50ppm以上, 3齢 (3齢起蚕~上蔟まで連続給与) および5齢試験では200ppm以上になると化蛹する前にすべての蚕が中毒死した。
    2. Cdの濃度が10ppm以上になると3試験共に毒性の影響を受け, 繭質が悪くなった。さらにその他の試験による結果ならびに工場による汚染桑での飼育結果と化学分析との対比からCdの飼料中における最大許容量を5ppm (対乾物当り) とした。
    3. Cdによる慢性的障害を受けた場合の特徴の一つは経過のばらつきが極端になることである。
    4. Cdの濃度が高くなるにつれ, 繭層重の低下, 繭重の低下, 経過の遅れとばらつき, 蚕の中毒死蚕の増加といった障害が順次蚕に見られた。
    5. Znは, 1齢および3齢試験では200ppm, 5齢試験では400ppmから障害が現われ, 先ず繭層重の低下にそれが認められた。またCdの場合と同様な根拠に基づき許容限界量を100ppmとした。
    6. Znによる障害では, 経過のばらつきはほとんどなく, 同処理の蚕は揃って小さくなる (経過が遅れる) 現象が認められた。
  • 堀江 保宏, 井口 民夫, 渡辺 喜二郎, 柳川 弘明
    1971 年 40 巻 4 号 p. 330-334
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 14C-イヌリン稀釈法により家蚕の幼虫, 蛹, 成虫の血液量を個体別に測定した。幼虫, 蛹, 成虫の体重に占める血液量の割合は21~25%の範囲内であって, 雌雄差はほとんど認められなかった。
    2. 合成飼料の水分量を変えた場合の体水分量, 血液量を求め, 体重および体水分量に対する血液量の比率を算出した結果, 血液量は体重の約33%, 体水分量の約40%を占めていた。なおこの比率は飼料水分量の増加につれて比較的安定した値を示した。
    3. 幼虫の血液トレハロース含量および全トレハロース含量を定量し, トレハロースが特異的に血液に存在すると仮定して血液量を算出し, 14C-イヌリン法の結果と比較した。
  • VII. 数種鱗翅目昆虫蛹の雌雄間における真皮細胞の大きさとその数の比較
    田中 一行
    1971 年 40 巻 4 号 p. 335-338
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 真皮細胞の平面的大きさは, 種相互間の比較ではほぼ体の大きさに従って, クワコ<カサン<シンジュサン<ヒマサン<サクサン<テンサンの順に大きく, また雌雄間の比較では, カサン以外の昆虫蛹においては雌の方が雄よりも明らかに大きかった。
    2) 全体表面 (胸部腹面を除く胴部) を構成している真皮細胞数は, 種相互間の比較では蛹体の大きさにおおむね一致し, クワコ<ヒマサン<カサン<シンジュサン<テンサン<サクサンの順に多かった。一方雌雄間の比較ではいずれの昆虫蛹も雄より雌の側で多かったが, テンサンとサクサンとにおいては, その差はわずかであった。
  • 1971 年 40 巻 4 号 p. 339-340
    発行日: 1971/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    幼若ホルモン活性を有するペプチド類
    ウイルスに感染した鱗翅目昆虫における成虫器官の早期発育
    2つの発酵試験培地における Bacillus thuringiensis 変異株による芽胞・δ-endotoxin 複合体の産生
    組織培養系における milky disease 病原細菌の行動
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