日本蚕糸学雑誌
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41 巻, 1 号
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  • 小林 正彦
    1972 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    A series experiments was conducted on the entry of the cytoplasmic- and the nuclear-polyhedrosis viruses into silkworm midgut epithelial cells cultured in vitro. The following stages of penetration of the CPV into a cell were postulated from the observations in electron microscope.
    The first stage of the penetration appears to be the attachment of the viral projection to the surface of the cell. In the next stage, the virus particles are attached much more closely to the cell surface, and penetrate through the projection into the cell. The final stage, the beginning of which is evident within 10 minutes after the inoculation of the virus, is characterized by the release of core substance into the cell.
    The core substance appeared to be released as a filament, and injected. This was also suggested by the presence of empty particles on the cell surface. Phagocytosis did not seem to play a part in CPV penetration. The projection through which the core substance entered the cell did not contract during the penetration stage. The inner shell or the core membrane appeared to play an important role in the transfer of core substance from virus to cell.
    On the entry of the NPV, a definitive conclusion could not be obtained, but a few micrographs suggested the possibility that the fusion of viral envelop with the plasma membrane is the mode of NPV penetration into the gut cells
  • (X) Gnotobiotic silkworm におけるウイルス性疾病の防除
    児玉 礼次郎, 中筋 祐五郎
    1972 年 41 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育の gnotobiotic (silkworm を用いてウイルス性疾病の発病を阻止する化学薬剤を検索し, 次の結果を得た。
    (1) Nalidixic acid (NA) の経口投与によってウイルス性軟化病ウイルス (FV) および核多角体病ウイルスの経口接種による発病が阻止された。しかし細胞質多角体病ウイルスの経口接種による発病は阻止されなかった。
    (2) FVを供試したとき
    a) 飼料に添加したウイルス液の濃度の増大とともに発病阻止に必要なNA添加量も増し, いちじるしく高濃度のウイルス液を添加したときにはNAの発病阻止効果は現われなかった。
    b) Streptococcus属の1株 S. faecalis-S. faecium intermediate G-27とこのウイルスとの共同作用下における発病はleucomycinとNAとの併用によって満足に阻止された。この場合leucomycinだけを経口投与しても, 致死率はかなり低下したが, NAだけを経口投与しても, 致死率はさして低下しなかった。
    c) 数はきわめて少なかったが, 供試したNA類縁化合物のうちではNAだけに満足な発病阻止効果が認められた。
    d) NAの発病阻止効果はこの化合物をウィルス接種前および接種後を通じて投与し続けたときに顕著に現われ, かつ投与期間が長いほど大きかった。
    e) 発病阻止に必要なNA量は fructosazine の共存下では低減した。
  • 服田 春子, 本間 慎
    1972 年 41 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    さし木後の初期成長過程について, 明処理区と暗処理区の乾量成長, 呼吸量, アミラーゼとインベルターゼ活性の経時的変化を比較しながら検討した。結果は以下のとおりである。
    1. さし木後約20日間における展開器官の成長は, おもに貯蔵物質に依存している。その期間中は古条皮部のアミラーゼ活性が高く, また, 展開器官のインベルターゼ活性も急激に上昇した。
    2. さし木後20日目頃から, 展開器官の成長はおもに光合成産物によっておこなわれるようになるが, さし木古条の乾量はさし木後40日目頃まで減少を続けた。一方, 酵素活性についてみると, さし木後20日目頃から40日目頃まで, 古条皮部のアミラーゼ活性が急激に低下し, 展開器官のインベルターゼ・アミラーゼ活性も低下した。古条の呼吸量は明処理区の方が暗処理区よりも高い値をしめした。
    3. さし木後40日目頃から, 古条の乾量は増加しはじめ, 展開器官の成長は光合成産物のみによってまかなわれた。古条皮部のアミラーゼ活性はおよそ40日目以降, 低い値が続いた。一方, 明処理区のさし木古条の呼吸量は徐々に上昇した。
  • 滝沢 義郎, 吉田 治男
    1972 年 41 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの産下直後の卵の第一成熟分裂期から卵割初期にいたるまでの種々の時期における紫外線感受性の変動を究明し, また第一成熟分裂期ならびに卵割初期での紫外線障害の光回復効果を究明し, 次の結果を得た。
    1. 紫外線誘発突然変異は第一成熟分裂期には高い出現率を示すが, この期以後は急激に減少した。一方, 致死率を指標とした場合には, 第一成熟分裂期は比較的感受性が高いが, 第二成熟分裂期に入ると低下し, さらに発生が進むにつれ, しだいに高くなる傾向を示した。
    2. 第一成熟分裂期の卵では, 突然変異を指標とした場合も, 致死を指標とした場合もともに光回復効果が認められた。ところが, 卵割初期での紫外線誘発致死障害はほとんど光回復は示さなかった。
    3. 紫外線によって誘発される突然変異体のうち低線量では fractional-body mutation が圧倒的に多いが, 高線量になると全突然変異出現数に対する fractional 型の比は小さくなった。また fractional 型の方が whole-body mutation よりも光回復しやすかった。
    以上の結果から, 第一成熟分裂期における紫外線感受性の target は卵核に存在し, 致死および突然変異という異なった障害の生成過程の中に部分的には同じ分子レベルの損傷が含まれていると考えられる。一方第二成熟分裂期以後の感受性の target は periplasm 中に存在する。紫外線により誘発された突然変異体のうち, fractional 型は卵核DNAの single-strand に生じた障害であり, whole-body mutation は doublc-strand の両方に生じた障害である可能性が強いことを考察した。
  • 吉田 正英
    1972 年 41 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 前額神経球摘出蚕を桑葉粉末を含む人工飼料で飼育した結果, 桑葉育のときとは異なってほとんどすべての個体は正常蚕と同様に成長した。
    2. 人工飼料で飼育すれば前額神経球を摘出しても摂食の際に吐液しない個体が多く, また吐液する個体が若干あっても, その吐液量は少量であった。
    3. 人工飼料で飼育した場合, 前額神経球摘出蚕の消化管の形態には異常は認められなかった。また摘出後2~3日経過後においても, 消化液および血液の採取は正常蚕と変わりなく行なうことができた。
    4. 中腸皮膜の組織学的観察結果では. 前額神経球摘出蚕の中腸皮膜にしわの多い例が観察され, 皮膜細胞の幅が狭く, 隣接細胞との境界ならびに核が不明瞭で, 組織全体が不鮮明と化した場合, さらには goblet の形が不規則になり盃状細胞の核もほとんど消失した場合などの変化が認められた。また囲食膜の部分的肥厚もしばしば観察された。
  • 塩崎 英樹, 田中 芳雄, 飯田 紘, 仁科 勝海
    1972 年 41 巻 1 号 p. 33-43
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹繊維の性能改善と染色とを同時に行なうことを目的として, 無機電解質塩と染料とを含む水溶液に織物試片を浸漬して約90%になるように脱液した後, 水不溶性の有機媒体中でエポキシン化合物によって処理する方法につき検討した。塩は絹繊維への染料 (反応, 酸性) の吸着を助長すると共にエポキシ化合物と絹との反応を促進する働きを示した。そして, 小規模実験において, 均一で堅牢な染着と繊維性能の著しい改善が達成されることがわかつた。エチレングリコールシジルエーテルによって染料とSCN-とを含有する絹を70℃で90分間処理した時, 洗濯堅牢度5級 (汚染, 変褪色), 耐光堅牢度3級を有する織物が得られ, しかも耐アルカリ性と防しわ性も著しく向上した。ギ酸-ピリジン抽出やアルカリ処理に染料が耐えることから, 染料はエポキシ化合物, 絹のいずれかあるいは双方と化学結合するものと推察した。
  • 井口 民夫
    1972 年 41 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢幼虫の血液遊離アミノ酸を発育階梯および雌雄ごとに分折し, つぎの結果を得た。
    (1) 必須アミノ酸のうちArg, Ileu, Leu, Val, Thrは脱皮後食桑によって急激に増加するが, その後発育に伴って減少する。しかしPhe, Met, His, Lysはそれぞれ特徴ある消長を示した。
    (2) 絹糸蛋白質の主要アミノ酸の中で, Gly, Ala, Ser は吐糸中の減少が急激であったが, Tyrの消長にはこのような特徴ある現象はみられなかった。
    (3) Cystaは雌では発育に伴って増加するが, 雄では次第に減少し, 吐糸後再び増加する。このことから含硫アミノ酸の代謝活性は雌雄差のあることが考えられる。
    (4) 血液遊離アミノ酸組成は5齢の前半では雌雄間に大きな差異は認められないが, 5齢後半, ことに吐糸期に大きな差異を示すことが判明した。
  • 須貝 悦治, 花岡 明
    1972 年 41 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高温環境によって発現する雄蚕の不妊化について大造および金色種を中心に12品種を用いて実験しつぎの結果を得た。
    1) 高温環境 (32℃, 96時間) による雄蚕の不妊化は, 孵化後の全発育過程の中で上蔟から化蛹初期にいたる期間が最も顕著であり, ついで蛹期に認められるが幼虫期では全く発現しなかった。
    2) これらの不妊化は, 上蔟後の高温接触時間の延長にしたがって増大し, 大造種では72時間, 金色種では96時間でほとんど完全に不妊となった。また上蔟から高温接触開始までの時間の経過にしたがって不妊化は減少し, 特に大造種ではこの傾向が顕著であった。
    3) 吐糸開始より化蛹初期の高温環境によって発現する雄蚕の不妊化は, 使用したほとんどの品種において認められたが, その程度にはかなり顕著な品種的差異があった。
    4) 不妊雄蛾と交尾した雌蛾の交尾嚢内に包含される精子は, 量的にも少なく運動力も緩慢であり, 受精嚢まで到達できるものは皆無であった。さらに雄蛾の貯精嚢内精子に対する摂護腺の賦活作用をしらべた結果, 不妊化の主因をなすと考えられる精子の運動力減衰は, 摂護腺の機能低下ではなく精子自身の異常化に起因していることがわかった。
  • 第7報 扁平状異常絹糸の2, 3の性状について
    桑原 昂, 渡辺 忠雄, 待田 行雄, 庄野崎 直子
    1972 年 41 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高温多湿条件下に上蔟した家蚕繭の毛羽部分に見られる扁平状異常絹糸の位相差顕徴鏡, 電子顕微鏡による観察, 強伸度, 染料吸着量の測定を行なった。その結果はつぎの通りである。
    1) 扁平状異常部分はその他の異常部分と比べると強伸度, 染料吸着量の相違, 位相差顕微鏡, 電子顕微鏡観察から, かなりよく延伸されていると思われる。
    2) 扁平状異常部分が生糸に含まれると小節 (neatness defects), 大中節 (Cleanness defects) の要因になり得る。
    3) 扁平状異常絹糸の生因6),8,)9),10)などとしては, 高温多湿条件下における吐糸運動の変調, 吐糸後の絹糸の乾燥, 収縮, あるいは左, 右絹糸腺からのフィブイン圧出量のアンバランスなどが考えられる。
  • (II) 高温期間の長短と発病率ならびに中腸のウイルス吸着能の検討
    宮島 成寿
    1972 年 41 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕細胞質多角体病の発病が高温により抑制されることはすでに報告したが, 今回は更に進めて次の結果を得た。
    1. ウイルスの接種方法が経口, 経皮の別なく, 接種後の飼育温度が35℃から25℃にかわる場合には35℃の期間が長い程, また25℃から35℃にかわる場合には25℃の期間が短かいほど発病率は低下する傾向を示した。
    2. 中腸のウイルスに対する吸着量を調べるため, 健康な蚕児の中腸にウイルス液を加えて25℃あるいは35℃で作用後, 低速遠心の上清液を別の蚕児に接種してウイルス量を求めた。その結果, 25℃および35℃における中腸への吸着の差は認められなかった。また, 赤血球凝集反応で調べた場合も同様で, 差は認められなかった。
    3. ウイルス注射後, 25℃あるいは35℃で飼育した蚕児から血液と中腸を採取してウイルス量を調べたが, 血液と中腸において, 温度の相違によるウイルス量の差は認められなかった。
    4. ウイルス接種, 高温飼育した蚕児からインターフェロン様物質の抽出を試み抑制効果を検討したが, 本実験の方法によっては発病率に差は認められなかった。
    5. 前報および以上の結果から, 本病の高温による発病抑制機構はウイルスの細胞吸着の過程ではなく, 脱殻以後の増殖過程で影響されるものと思われ, インターフェロン様物質の生成による可能性はさらに検討を必要とするが現段階では一応少ないものと考えられる。
  • III. 約1日光周期とカイコの成長
    平坂 忠雄, 小山 長雄
    1972 年 41 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    約1日光周期とカイコの成長との関係を無菌飼育によって研究した。1光周期は18, 20, 22, 24, 26, 28時間とし, 各区にそれぞれ明暗時間の組み合わせを異にする7~9の光周期処理区を設けた。実験の結果はつぎのように要約される。
    1) カイコの経過は18時間光周区では, 4L14Dがもっとも短かく (24日9時間), ついで1L17D (24日12時間), 7L11D (24日21時間) の順であり, これ以外の明相時間の長い区はいずれも経過が1~3日長びいた。
    2) 20時間光周区でのカイコの経過は4L16D, 7L13D (24日7時間) がもっとも早く, ついで1L19D, 10L10D (24日18時間) であった。これ以外の長日条件区はいずれも経過が1~3日遅延した。
    3) 22時間光周区におけるカイコの経過は, 5L17D, 8L14Dがもっとも短かく (23日), ついで2L20D (24日), 11L11D (24日6時間) の順であった。これ以外の長日条件区はいずれも経過が長びき, 約25~26日を要した。
    4) 24時間光周区におけるカイコの経過は, 6L18D (22日) がもっとも短かく, ついで9L15D (22日12時間), 3L21Dと12L12D (約23日5時間) の順であった。その他の長日条件区では, 15L9D (23日9時間) 以外はいずれも経過が長びき, 約24~25日を要した。
    5) 26時間光周区におけるカイコの経過は, 4L22D, 7L19D, 10L16Dがもっとも短かく (23日12時間), ついで1L25D (24日), 13L13D (24日6時間) の順であった。これ以外の長日条件区ではいずれも経過が長びき, 約25~29日を要した。
    6) 28時間光周区におけるカイコの経過は, 8L20D, 11L17Dがもっとも短かく (23日12時間), ついで5L23D (24日), 2L26D (24日9時間), 14L14D (24日12時間) の順であった。これ以外の長日条件区ではいずれも経過が長びき, 約26~27日を要した。
    7) 正常の時制 (24時間) においては, 明相: 暗相の比が1:3 (6L18D) のとき, 経過は最短であったが, この比率は他の区にはあてはまらなかった。すなわち, 1光周期が24時間をこえると比の値が高くなり, 20時間以下だと低くなる傾向を示した
    8) 幼虫経過の短縮したものと他のものと比較すると, 前者は繭重が若千軽い以外, 繭層重, 繭層歩合にもほとんど差を認めなかった。
  • 西 寿已
    1972 年 41 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線照射によつて生ずる絹フィブロインの黄色色素の構造を明らかにする目的で, 著者は3種の色素を黄変フィブロインから分離し, その構造の概略を知り得た。
    1. 色素1は黄色油状の物質で, ベンゼン環を含み, その側鎖にカーボニル基をもつ化合物である。なおこれにはハイドロオキシル基, カルボキシル基および窒素原子は含まれない。
    2. 色素2は, 赤色の結晶で, C=OとC=Cの著しく共役した鎖状分子である。
    3. 色素3は黄色油状の物質で, ベンゼン環は含まず, C=CとC=Oの共役による鎖状構造の分子と考えられる。
    4. インドール酢酸, インドールプロピオン酸の紫外線照射により生ずる色素の中に色素1の紫外スペクトルと全く似ているものがある。したがって色素1はインドール化合物の光酸化分解によって生ずるとも考えられるが, これについては検討の余地が多分に残されている。
    5. この他分子の大きさ, 構造の異なる種々の分解過程の色素がペプチド鎖上に存在すると考えられる。
  • 1972 年 41 巻 1 号 p. 84
    発行日: 1972/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    黄変原因にかかわらない羊毛の光学的漂白
    幼若ホルモン作用と昆虫生長率
  • 1972 年 41 巻 1 号 p. 88
    発行日: 1972年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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