家蚕の人工飼料育ならびに無菌飼育5齢幼虫に
Streptococcus faecalis AD-4を接種し, 中腸皮膜組織の細胞学的観察を行ない, つぎの結果を得た。
1. 菌体は, 囲食膜内側に附着した状態で増殖を続け, 感染末期には囲食膜の溶解も観察された。その結果, 幼虫の栄養吸収の阻害が考えられた。
2. 人工飼料育ならびに無菌飼育において, AD-4を経口接種した場合, 最初に組織学的変化を示したのは中腸の盃状細胞であり, ついで円筒細胞であった。
3. 盃状細胞では, 核が肥大し, 細胞質は次第にピロニン好染性を失ない, 5日目をすぎると空胞化が観察された。
4) 円筒細胞では, 5日目になると核の肥大が著しく, 染色質が集塊状からさらに分散化へと変化した。細胞質は5日目に膨化がおこり, ピロニン好染性が低下した。
5. 円筒細胞の細胞質内には, 5日目になり, 球状体が出現した。本球状体は, 特にピロニン好染性を有さず, 大きさは7~15μであった。
6. 人工飼料育において, AD-4を皮下接種した場合, 24時間後にすでに盃状細胞のピロニン好染性は失なわれ, 円筒細胞の核は肥大していた。3日目になると, 円筒細胞の細胞質部分も著しく退化し, 核内の染色質の分散化も観察された。しかし, 球状体は認められなかった。
7. 桑葉育, 人工飼料育ならびに無菌飼育の健康蚕における細胞学的相違は観察されなかった。
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