日本蚕糸学雑誌
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41 巻, 5 号
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  • 飯塚 敏彦
    1972 年 41 巻 5 号 p. 327-332
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の人工飼料育ならびに無菌飼育5齢幼虫に Streptococcus faecalis AD-4を接種し, 中腸皮膜組織の細胞学的観察を行ない, つぎの結果を得た。
    1. 菌体は, 囲食膜内側に附着した状態で増殖を続け, 感染末期には囲食膜の溶解も観察された。その結果, 幼虫の栄養吸収の阻害が考えられた。
    2. 人工飼料育ならびに無菌飼育において, AD-4を経口接種した場合, 最初に組織学的変化を示したのは中腸の盃状細胞であり, ついで円筒細胞であった。
    3. 盃状細胞では, 核が肥大し, 細胞質は次第にピロニン好染性を失ない, 5日目をすぎると空胞化が観察された。
    4) 円筒細胞では, 5日目になると核の肥大が著しく, 染色質が集塊状からさらに分散化へと変化した。細胞質は5日目に膨化がおこり, ピロニン好染性が低下した。
    5. 円筒細胞の細胞質内には, 5日目になり, 球状体が出現した。本球状体は, 特にピロニン好染性を有さず, 大きさは7~15μであった。
    6. 人工飼料育において, AD-4を皮下接種した場合, 24時間後にすでに盃状細胞のピロニン好染性は失なわれ, 円筒細胞の核は肥大していた。3日目になると, 円筒細胞の細胞質部分も著しく退化し, 核内の染色質の分散化も観察された。しかし, 球状体は認められなかった。
    7. 桑葉育, 人工飼料育ならびに無菌飼育の健康蚕における細胞学的相違は観察されなかった。
  • 飯塚 敏彦
    1972 年 41 巻 5 号 p. 333-337
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. AD-4に感染した幼虫において, 感染が進むにつれて消化液のpH値は下がりはじめ, 同時に体液のpH値は上がりはじめる。以後, 6日目に一致した。
    2. 感染幼虫の体液では, 5日目まで生菌が分離されず, 6日目になって急に増加した。
    3. AD-4の死菌と培養滬過液には起病性が認められず, 生菌にのみ起病性が認められた。
    4. 以上の結果, AD-4の発病機作を考察した。経口的に消化管内に入った細菌は, 2日ないし3日の lag phase を経て増殖をはじめる。菌体は囲食膜の内側に附着して増殖する結果, 幼虫の栄養吸収は阻害され, 囲食膜は溶解し, 中腸皮膜組織は感染後6日目に空胞化が著しい。この時期には消化液ならびに細菌が体液中に流入し, 細菌が増殖し幼虫は敗血症にて死亡する。
  • I. ウイルスの精製と2・3の性状
    鮎沢 千尋
    1972 年 41 巻 5 号 p. 338-344
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ウイルス性軟化病のウイルス精製法として, CsClによる平衡密度勾配遠心分離法を用いたところ, 有効な結果を得た。これによって得られた精製ウイルスについて, 2・3の性状を調べた。
    1) CsCl液とウイルス液との混合液をN20D≈1.370として, SW39で94,300g, 24時間の遠心分離を行なったところ, 可視的なバンドが1本, まれに近接した下方にさらに1本, あるいは上方にさらに1本できる場合がみられた。この中央のN20D=1.370に形成されたバンドがウイルス分画である。
    2) ウイルスの直径は26±2mμであった。
    3) ウイルスの effective bouyont density (ρ25) は1.3755であった。
    4) シュリーレンパターンによる沈降定数 (S20) は183.0であった。
    5) 生物活性によるウイルスの収率は最高15.8%を示した。
  • II. 螢光抗体法による病蚕中腸皮膜組織の観察
    井上 元, 鮎沢 千尋
    1972 年 41 巻 5 号 p. 345-348
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    螢光抗体法によってウイルス性軟化病蚕の中腸皮膜組織を観察したところ, つぎの知見が得られた。
    1) 盃状細胞の細胞質に明瞭な特異螢光が観察された。円筒細胞の細胞質にも特異螢光が観察されたが, 螢光の強度ならびに観察頻度は盃状細胞のそれにくらべて極めて弱く, かっ非常に少なかった。
    2) 感染初期の中腸塗抹標本では, 感染盃状細胞が多数見出された。
    3) 円筒細胞の細胞質に1ないし2個の封入体が認められた。中腸皮膜組織をトリプシンで処理し細胞を分離した場合, 遊離の封入体が観察された。
  • 平林 潔, 塚田 益裕, 杉浦 清治, 石川 博, 安村 作郎
    1972 年 41 巻 5 号 p. 349-353
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    セリシンの熱分析をおこないD. S. C曲線に現われる吸熱ピークと構造の関連について検討し次のことが明らかになった。
    1. セシリシは160℃付近から分解が始まり, 剥離セリシンは237℃, 熱水抽出セリシンは226℃で分解する。
    2. セリシンは延伸により配向, 結晶化しランダムコイルからβ構造に変化する。
    3. 剥離セリシンに見られる217℃の吸熱ピークは延伸により消失することからセリシンの非晶構造に起因するものと思われる。
  • 中島 誠, 中井 沢健二, 藤原 鎮男
    1972 年 41 巻 5 号 p. 354-358
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕卵における放射線傷害についての研究中に, 非照射卵にも多量のフリーラジカルが存在することがわかった。そこでこの非照射卵にみられるフリーラジカルがいかなる性質のものであるかを明らかにするために, 各種の卵を供試して, ESR測定装置により, フリーラジカルの定量を行なった。その結果は次の通りである。
    (1) 日106号×大造のF2卵のフリーラジカル量をみると, 越年卵では産下後4日目まで急激に増加し, その後は大きな変動がみられなかった。また不越年卵 (生種) では点青期以前には極めて少ないが, 点青期以後艀化にむかって急激に増加した。
    (2) pe・re/pe・re×pe・re/+・+から分離した休眠中の白卵, 赤卵および正常卵のフリーラジカルを測定したところ, トリプトファン系色素の多い正常卵および赤卵に多く, この色素を欠く白卵には極めて少なかった。
    (3) 緋紅の休眠卵をアルコールで固定してから分離した漿液膜中には, 多量のフリーラジカルが検出された。
    (4) 以上の結果にもとづき, 点青期以前の卵のフリーラジカル量の多少は, トリプトファン系色素量の多少と関係があり, また不越年卵の点青期以後のフリーラジカル量の多少は, メラニン量の多少と関係があるものと考察した。
  • 中島 誠, 滝本 照久, 都田 達也
    1972 年 41 巻 5 号 p. 359-364
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の発育に伴う体細胞突然変異に対する放射線線感受性の変動を明らかにするために次の実験を行なった。(日124号×Ps)×大造から分離した正常蚕とヘテロ黒縞蚕とを用いて卵末期から第3齢または第4齢までの各時期の個体に, γ線(60Co) 1000Rを急照射 (20分間照射) または緩照射 (72時間照射) して, 正常蚕およびヘテロ黒縞蚕からそれぞれ劣性形質の斑点として出現する油蚕斑および白斑の出現頻度を求めた。
    (1) 急照射の場合, 油蚕斑の出現頻度には, 各齢の20%経過時にそれぞれ1つのピークがあり, そのピークの高さは齢の進むにつれて低下した。
    (2) 急照射の場合の白斑の出現頻度をみると, 第1・2齢では齢の50-80%経過時に1つのピークがあり, 第3・4・齢では齢の20%経過時に1つのピークがみられた。このピークの高さも齢の進むにしたがって低下した。
    (3) 1つの齢の中でピークの現われる時期が2種類あることがわかったが, どの時期にピークが現われるかは, その齢にその変異斑の形質に対する優性形質が発現するか否かに関係があるようにみえる。
    (4) 第2眠中のヘテロ黒縞蚕に155R/minの線量率で各種線量を照射して, その白斑出現頻度を求めた結果から, 1500R以下の照射では, 頻度は線量の1.745乗に比例し, 白斑が2hitによって起こることがわかった。
    (5) 変異斑出現頻度についての急照射/緩照射の比は, 孵化時に小さく, 齢の進むにつれて増大した。
    以上の結果にもとずいて, 齢の進むにつれて放射線感受性の低下する要因について考察を行なった。
  • 伊庭 正樹, 井上 昭司
    1972 年 41 巻 5 号 p. 365-370
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒシモンヨコバイの越冬卵を, 産下直後以降いろいろな時期に採集して5-25℃で保護し, ふ化状態によって休眠期の有無ならびに休眠離脱後の発育経過と気温との関係を調べ, その結果から次のとおり考察した。
    1. 本種の越冬卵には休眠期が存在する。
    2. 越冬卵は秋期産下直後には休眠状態にあり, 京都府下綾部地方では, おそくとも1月上旬には休眠から離脱する。
    3. 産下直後の越冬卵は, 5℃で約30日間経過することにより休眠から離脱する。
    4. 休眠離脱後における越冬卵の発育は, 冬期から早春期にかけて徐々に進むが, 発育促進には旬間平均8℃前後以上の気温が, より有効に作用するものと推察した。
  • 古田 要二, 鮎沢 千尋
    1972 年 41 巻 5 号 p. 371-374
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ウイルス性軟化病のウイルス (FV) および核多角体 (NP) の経口接種時間の長短, 核多角体病蚕体液の遠心上清 (NV) の経皮接種の接種回数等と感染価との関係についての実験を行なった。
    1. FVの桑葉塗布による接種では, 10分間添食による感染価に比し, 24時間添食では差がなく, 5日間添食でもわずかな上昇にとどまった。NPの桑葉塗布による接種では, 10分間添食による感染価に比し, 5日間添食してもほとんど差はみられなかった。
    2. FVの催青卵塗布によっても高い感染価を示し, この方法も接種法として有用であることが認められた。
    3. 一定量のNVを2-4回に分けて, 12時間間隔で経皮接種した場合の感染価は, 累積ウイルス量を一度に接種した場合の値と一致した。
    4. 以上のようにウイルスを連続的に接種した場合の発病に対する影響が, 経口接種と経皮接種とによって異なる理由について考察した。
  • 新村 正純
    1972 年 41 巻 5 号 p. 375-382
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 蟻蚕を一斉に, かつ速かに人工飼料に食いつかせるためには, 桑葉粉末または桑葉抽出物のような嗜好性物質を飼料に添加すれば有効であることがわかった。
    2. 蟻蚕は嗜好性物質を含まない基本飼料Bを殆んど食下しなかった。即ち, 給餌後24時間以内に1頭も正常に摂食しなかった。齢が進むに従って食下する蚕の割合が多くなり, 5齢蚕は大部分が摂食した。このことから蚕は発育するに従って狭い嗜好性から広い嗜好性へと変化していくように見える。
    3. 上記1と2の現象を利用して1齢中は桑葉粉末含量を10%とし, 2齢以後含量を順次減らしていき, 5齢で0%にする桑葉粉末漸減法による馴致飼育を研究して成功した。
    4. 発育に伴う嗜好性の変化について考察した。また桑葉粉末漸減法の利点についても考察した。
  • (IX) 家蚕緑繭色素の前駆物質について
    藤本 直正, 林屋 慶三
    1972 年 41 巻 5 号 p. 383-386
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉粉末およびフラボノイド系物質を全く含まない人工飼料にあらたにフラボノイドあるいはその関連物質を1種ずつ添加して緑繭種蚕を飼育し, その繭の色素をペーパークロマトグラフで調査して緑繭色素の前駆物質を探求した。
    1) 何も添加しない上記の人工飼料のみを与えた場合は, 作られた繭は白色であった。
    2) イソケルシトリン, ルチンあるいはケルセチンを添加した場合は, 作られた繭は黄緑色を呈し, 繭層中には桑葉を与えた場合にみられる緑繭色素がすべて認められた。故に, それらの物質は緑繭色素の前駆物質であり, 蚕は桑葉中のそれらを材料にして消化管細胞中で緑繭色素を生成することが判った。
    3) 関連物質のプロトカテキン酸あるいはβ-レゾルチル酸を添加しても作られた繭は白色で, 繭層中に色素は認められなかった。すなわち, これらの物質は前駆物質ではない。
  • 勝又 藤夫
    1972 年 41 巻 5 号 p. 387-395
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 一般的にヤマグワの花柱は長く, カラヤマグワとロソウの花柱は短いか無い。併しそれには相等の範囲で例外がある。例えばヤマグワの花柱は0-2.35mmの間で変異した。
    2) 一般的に中庸突起の巨大細胞はヤマグワ系品種に多く, 小突起の巨大細胞はカラヤマグワ系およびロソウ系品種に多い。
    3) 仮令ヤマグワ系品種でも短 (無) 花柱品種には小突起の巨大細胞を持つ品種が多い。
    4) カラヤマグワ系品種の中でイチベイ品種群, タコワセ品種群は何れも中庸突起の巨大細胞を持ち, その群に属する品種間に特別の遺伝関係があることを示す。
    5) 長花柱群のヤマグワ系品種のほとんど全部のものは中庸突起の巨大細胞を持ち, 短 (無) 花柱群のカラヤマグワ系品種のほとんど全部および短 (無) 花柱群のロソウ系品種の全部のものは小突起の巨大細胞を持った。すなわち花柱の長さと巨大細胞の形との間には密接なる関連がある。
    6) 以上の事実からヤマグワ系品種で短 (無) 花柱で且つ小突起の巨大細胞を持つ品種, カラヤマグワ系品種およびロソウ系品種で中庸の花柱を持ち且つ中庸の巨大細胞を持つ品種は2種類間あるいは3種類間の雑種であると考えられるがその確定のためにはなお研究を要する。
    7) 多くの植物学者によって指摘されたごとく花柱の長さは桑樹の分類にもっとも有用な形質の1つである。併し乍ら著者によって確められた巨大細胞の形も同目的に対して有力な形質の1つである。
  • 1972 年 41 巻 5 号 p. 396-397
    発行日: 1972/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    高温で培養した Polyoma virus 感染細胞におけるウイルスDNAと宿主DNA
    Bacillus thuringiensis (BT) 製剤の力価基準: 被検昆虫として Pieris brassicae を供した新生物検定法
    Aedes taeniorhynchu から得られたRおよびT系統 Mosquito iridescent virus の物理的・血清学的研究
    Pseudaletia unipuncta 幼虫の高温飼育下における核多角体病ウイルスの感染
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