日本蚕糸学雑誌
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41 巻, 6 号
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  • 藤本 直正, 久保 脩, 古沢 史朗
    1972 年 41 巻 6 号 p. 399-401
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) od油蚕の緑繭は正常蚕の緑繭にくらべて濃度がやや低く, 集団で比較すると淡くみえる。
    2) 両者の繭色素は同種であり, 色調の差は色素の種類の違いによるのではない。
    3) od油蚕の繭は正常蚕の繭にくらべて繭層の量が少い。od油蚕繭の方が正常蚕繭よりも繭色が淡くみえるのは, 繭層の量が少く, 含有総色素量の少い繭が多いためと考えられる。
    4) しかし, od油蚕の単位繭層重当りの色素量は, 正常蚕のそれよりも多い。
  • (2) 側芽の発芽と成長に対する影響
    岩田 益, 中川 泉
    1972 年 41 巻 6 号 p. 402-406
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エスレルの高濃度液を桑の梢端に散布すると, 被散布葉は脱葉し, 梢端部も枯死する。その後における側芽の発芽は摘梢処理に比べて発芽は遅れかつ不斉となる。エスレルによる側芽の発芽処理にあたって, その発芽成長を促進するためにジベレリン (GA) の散布を併用して, 大要つぎの結果を得た。
    1. 対照I (摘梢), 対照II (摘梢摘葉), エスレル散布, およびエスレル+GA散布の4区を設け, あらかじめ+GAは100ppm液を上部1/2に散布し, エスレルは3,000ppm液を上部1/2に散布した。エスレルの散布部位では脱葉し, +GAはそれを助長する傾向を示して梢端部も枯死した。側芽の発芽は対照I, II区が早く, エスレル区は遅れかつ不斉となり, 発芽数では対照I区<II区<エスレル区<+GA区の順に多かった。再発枝の総枝長は+GA区が最も長く, その葉量は対照II区と+GA区が多く, エスレル区は少なかった。
    2. 対照 (摘梢摘葉), エスレル (1/4) 散布, エスレル(1/4) +GA散布およびエスレル (1/2) +GA散布の4区を設けたが, +GA区はあらかじめジベレリン200ppm液を全条に散布し, その後エスレル4,000ppm液を上部1/4, 1/2に散布した。エスレルの散布部位で脱葉枯死が観察され, +GAはそれを助長する傾向があった。側芽の発芽は対照区が早く, エスレル (1/4) 区はもっとも遅れかつ不斉となり, +GA区の発芽数は他の区の約2倍であった。エスレル (1/4) 区の再発枝の成長は最も劣り, その葉量は対照区に比べて+GA区は約80%であった。
    3. エスレルおよびジベレリンの濃度と散布部位は散布後における側芽の発芽所要日数, 発芽数などから, エスレルは3,000ppm, GAは100ppm以上を全長の上部1/4~1/2散布が適当であること, エスレルにジベレリンを併用した側芽の発芽処理による夏秋蚕期稚蚕用桑の全芽育成の実用化について若干の考察を行なった。
  • (1) 幼虫斑紋の着色および体色の発現に関与する内分泌器官の検索
    木口 憲爾
    1972 年 41 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の4齢催眠期での胸腹間結紮が幼虫の半月紋および星状紋の着色に顕著な影響をもたらすことから, 幼虫斑紋の色素形成に昆虫ホルモンが関与するものと考え, 頭部および胸部に存在する種々のホルモン分泌器官の摘出ならびに関連する2・3の実験を行なった。
    その結果, 頭部および胸部に存在する内分泌器官のうちで, アラタ体のみが他の器官の摘出にみられない顕著な斑紋の黒化をもたらした。また, アラタ体の摘出によっておこる斑紋の黒化の程度は, すでに知られている4眠期中の高温処理によって誘起される黒化より顕著であった。さらに, アラタ体摘出蚕への幼若ホルモンの注射は斑紋部の黒色色素の発現を抑制し, 幼若ホルモンの注射量を増すにしたがい対照蚕の斑紋より退色し, 同時に体色が黄褐色化することが明らかになった。同様な斑紋の淡色化ならびに体色の黄化現象は5齢初期のアラタ体を移植した個体においても誘起されたが, 5齢後期のアラタ体を移植したものではこのような黄化は観察されなかった。
    以上の結果から, 家蚕の幼虫斑紋ならびに体色の発現機構の一部にホルモンが関与し, とくに新皮形成期における幼若ホルモン量が両形質の発現と密接な関連をもつものと思考した。
  • I. 走化性と摂食に関与する嗅覚器の役割
    平尾 常男, 石川 誠男, 荒井 成彦
    1972 年 41 巻 6 号 p. 413-417
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの幼虫における走化性と摂食に関与する嗅覚器の役割について, 5齢幼虫を用いて行動実験を行ない, つぎのような結果を得た。
    1) においに対する走化性について, 触角と小顋肢の役割を明らかにするために, それぞれ一方または両方の嗅覚機能を不活性化処理することによって検討した結果, 触角の嗅覚機能を不活性化した場合においてのみ, においに対する走化性が示されず, 触角が走化性に主体的な役割をもっていることが確認された。
    2) においによる摂食促進効果について, 触角および小顋肢のそれぞれ一方または両方の嗅覚機能を不活性化した場合の影響を調べた結果, 触角の嗅覚機能を不活性化したカイコでは無処理と全く同様に, におい物質の添加による摂食促進効果が示されたが, 小顋肢の嗅覚機能を不活性化したものでは, 触角が正常な嗅覚機能をもっていても, においによる摂食促進効果はみられず, 摂食促進に関与する嗅覚器としては, 小顋肢のそれが主体的な役割を果たしていることが示された。
  • 久保村 安衛, 中山 賢三, 糸井 節美
    1972 年 41 巻 6 号 p. 418-428
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫紋羽病菌のリチャーズ改良培地および桑根皮層部培地培養ろ液のペクチン酸液化作用はpH 3と5.5の間で著しく, 至適pHは4.5付近にあった。
    リチャーズ改良培地に培養した10菌株のすべてが植物組織崩壊作用を示した。ジャガイモならびに桑根組織に対する崩壊作用では, pH 3.0付近と6.0付近にそれぞれ大小2つのピークがみられた。桑根皮層部培地に培養した16菌株のすべてがジャガイモ組織崩壊作用を示し, pH 3.0付近と6.0付近に2つのピークがみられた。
    リチャーズ改良培地を用いて培養前pHの植物組織崩壊作用におよぼす効果を調べた。30日および45日培養のろ液による作用pH 3.0における崩壊作用力は, 培養前3.5, 5.5, 6.5に対して, それぞれ3,200, 1,600, 400であった。ジャガイモ組織崩壊作用はpH 3.0付近と6.0付近にピークがみられた。
    感染桑根では罹病度の進行につれて組織の軟腐程度が著しくなり, 組織汁液のpHは健全の5.6から2.8に低下した。
    罹病桑根組織抽出液中に植物組織崩壊作用とペクチン酸液化作用がみられた。pHの低い組織の抽出液はpHの高い組織の7~133倍の植物組織崩壊作用を示し, 至適pHは培養ろ液の場合と同様であった。
    pH 5.6から2.8への組織pHの低下が植物組織崩壊作用を促進させ, 本菌の植物組織侵害を助長するものと思われる。なお, pH 6.0付近に至適pHをもつ崩壊作用は感染の初期における病原性において, 何らかの役割をもつものであろう。
  • (第1報) Nds蚕の繭層と絹糸腺内容物の二・三の性質について
    青木 一三
    1972 年 41 巻 6 号 p. 429-436
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    MOSHER法抽出セリシンと比較するため, 未変性セリシンとしてNds蚕の絹糸腺内容物と繭層を用い, 限外顕微鏡電気泳動, 赤外吸収スペクトル, X線回折, 示差熱分析などによって検討した。そして次の結果を得た。
    1) Nds蚕の絹糸腺と繭層から抽出したセリシンの等電点は, ともにpH 4.05で, MOSHER法抽出セリシンとの間に顕著な差は認められない。
    2) Nds蚕と正常繭の生繭層のセリシン溶解度はほぼ等しい。
    3) Nds蚕の絹糸腺内容物の赤外吸収スペクトルは, MOSHER法抽出セリシンA, Bについて得られたものとほぼ一致した。
    4) Nds蚕の絹糸腺内容物のX線回折図は, MOSHER法抽出セリシンとほぼ同じ干渉図を示したが, 側鎖間隔に相当する干渉 (8.85A) の面間隔がやや大きい。また, Nds蚕の繭糸のX線図形は, 環状であるが若干繊維図形状を示した。すなわち, 背骨間隔 (4.57A) の干渉は赤道方向にやや強く現われ, polypeptide 連鎖が繊維軸方向に多く配列していることを示した。
    5) Nds蚕の絹糸腺内容物の示差熱曲線は, 82℃, 233℃, 272℃ (分解温度) に吸熱ピークを有し, MOSHER法によって抽出したセリシンとほぼ同じ挙動を示した。そしてその分解温度はセリシンAよりも高く, セリシンBにほぼ等しい。
  • 井上 元
    1972 年 41 巻 6 号 p. 437-444
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕体内における軟化病ウイルスの増殖様態を明らかにする目的で, ウイルス感染蚕の凍結切片標本を螢光抗体法で観察し, 得られた知見をもとにごウイルスの増殖様態をつぎのように考察した。
    1. ウイルスの標的器官は中腸皮膜組織の盃状細胞であり, 円筒細胞は主要な増殖細胞ではない。
    2. 感染末期の円筒細胞には大小種々の封入体が観察されるが, これらの封入体は盃状細胞がウイルスの感染によって変形縮小して円筒細胞に吸収されたものと思考した。
    3. ウイルスの第一次の増殖部位は若齢および壮齢幼虫の中腸前部ないしは中部の盃状細胞である。中腸皮膜組織におけるウイルスの伝播は主として体液や中腸腔へ遊離したウイルスによってなされ, また体液中へ遊離したウイルスが中腸以外の組織で中腸におけると同程度に増殖する可能性は少ない。
  • 金勝 廉介
    1972 年 41 巻 6 号 p. 445-451
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液アミラーゼ活性の測定法を検討し, また消化管におけるアミラーゼに関する実験を行ない下記の結果を得た。
    1. アミラーゼ活性単位の定義に従って, しかもカイコ個体間の消化液アミラーゼ活性を比較するに適した条件を確立した。また多数の個体を短時間で処理しうる簡易検定法の条件も設定した。さらに弱いアミラーゼ活性を測定するためにヨードデンプン反応を利用した条件を設定した。
    2. 消化液アミラーゼの活性は4齢, 5齢ともに盛食期において最高となり, 5齢起蚕で最低の値を示した。絶食により消化液アミラーゼ活性はいちじるしい減少をみた。これは再び食桑することによりある程度回復した。
    3. 5齢盛食期において+aeホモの消化液アミラーゼ活性は約40U/ml, +ae/aeヘテロのそれは約22U/mlそしてaeホモは約0.65U/mlと測定したが+aeホモと+ae/aeヘテロは個体変異が大きく, 相互に重なり合う分布を示す。+aeホモとaeホモの消化液を混合してもアミラーゼ活性の総量には変化は見られない。
    4. 中腸組織のアミラーゼ活性もH-系統はL-系統に比べて強い値を示したが, その程度は2倍弱であり, 消化液内のアミラーゼ総量に比べると非常に微弱な量であった。
    5. 人工飼料で飼育したカイコを用いた結果からL-系統消化液中の微弱なアミラーゼ活性は桑葉に由来することを示唆する結果を得た。
  • (1) 供試機の設計・試作
    田原 虎次, 藍 房和, 須藤 允, 渡辺 兼五, 伊藤 恭一
    1972 年 41 巻 6 号 p. 452-460
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    養蚕の機械化において, 桑を条で伐採した後桑葉を条より摘み取ることは, 重要な問題である。こき胴式摘桑機の設計について述べた。
    1. 桑葉は飼育様式によりいろいろな方式で利用され, 飼育様式にふさわしい採桑をしなければならないわけであるが, この試験においては, なるべく葉に損傷を与えずに, 全葉あるいは新梢の姿で脱葉でぎる摘桑機を試作することを目標とした。
    2. 本機はこき胴, 条送りロール, 原動機および動力伝達装置の三部からなっている。
    3. 試験結果は次のとおりである。
    (i) こき胴の回転速度を増してゆくと, 未脱率は減少し, 損傷率は増大する。
    (ii) V型脱葉歯は, 板型脱葉歯に比し, 脱葉性は劣るが損傷は少ない。作用速度が高速の場合は, どちらの脱葉歯を用いても未脱率10%, 損傷率50%付近になる。
    (iii) 脱葉現象を高速度カメラによって観察した結果, 衝撃切断の働きによって脱葉され, 振動によっては脱葉されないことが判明した。
  • 黒岩 久平
    1972 年 41 巻 6 号 p. 461-464
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 産卵後25℃に保護して48時間目に25℃~-2.5℃の各種温度に保護した休眠卵の漿液膜細胞の形態を120日間にわたって生体観察した。
    2. 25℃および20℃に保護した卵の漿液膜細胞には核・色素粒の移動がみられるのみであったが, 15~2.5℃に保護した卵の漿液膜には核・色素粒の凝集による黒斑が形成された。0°および-2.5℃に保護したものには核・色素粒の移動が全くみられなかった。
    3. 15~2.5℃に保護した卵の漿液膜に形成された黒斑の様相は温度によって異なり, 5℃では5~6個の濃色小細胞に核が凝集しているが, 温度が高くなるに従って濃色小細胞のほかに核・色素粒が細胞の一端に凝集したものがみられ, 15℃では越冬中の休眠卵の場合とほぼ同様の黒斑が形成された。2.5℃に保護したものには小形細胞による黒斑がみられたが核の移動は認められなかった。
    4. 15~2.5℃に保護した卵の漿液膜に形成される黒斑の形態変化から, 15℃は核色素粒集積の臨界低温であり, 2.5℃はその最低温度であることが認められた。
    5. 15~2.5りに保護した卵の漿液膜細胞にみられる核・色素粒の移動集積は, それらの卵の休眠離脱と一致していることから, 核・色素粒の移動集積はただ単に漿液膜細胞での変化にとどまらず, 胚子の休眠離脱との間に何らかの関係があるものと考察した。
  • 石坂 尊雄
    1972 年 41 巻 6 号 p. 465-469
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヒシモンヨコバイが萎縮桑樹液を吸汁すると成虫体蛋白質の成分にどのような影響をおよぼすかをディスク電気泳動法によって調べた。
    萎縮病桑樹液の吸汁をはじめてから25日以上経過したビシモンヨコバイの成虫体蛋白質のディスク電気泳動像は健全桑樹液を吸汁したヒシモンヨコバイの泳動像にくらべて, 雌・雄の各成虫とも蛋白質の一部成分が減少し, 一部の泳動帯の消失または不鮮明化がみられた。またこのように一部蛋白質成分の消失または減少の認められる個体は雌で71.1%, 雄で62.1%確認された。
    なおヒシモンヨコバイの成虫で蛋白質の減少を示す個体は萎縮病桑の樹液を吸汁開始後11-20日以上経過した場合に出現した。
  • 1972 年 41 巻 6 号 p. 470-471
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    セクロピア蚕の分離中腸によるアミノ酸の能動輸送
    家蚕および野蚕における卵殼の構成タンパク
    幼若ホルモンによるエステラーゼの誘導: 幼若ホルモン量の調節機構
    Bacillus thuringiensis のβ-exotoxins III. 昆虫系における高分子物質の生体内合成におよぼす効果
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