日124号×支124号より採取したウイルス性軟化病のウイルス (FV) を経口接種すると, 日124号では高い-log LD
50, 支124号では低い-log LD
50を示すことが知られているが, 支124号で継代して日124号に接種すると (支124号FV→日124号と略す) 支124号に接種した場合より低い-log LD
50を示す現象のあることが認められた。この現象の機構を知るために本実験を行なった。得られた結果の大要はつぎのとおりである。
1) 上記の現象は, 支124号×日124号FVを支124号で1代継代しただけでも認められる。また継代数によって, 支124号および日124号における-log LD
50の差が変化することはなかった。支124号FVを日124号で継代すると, 1代で再び元に戻った。
2) 接種試験において飼育観察期間を長くすると, 支124号FV→日124号の最終-log LD
50は他の組合わせのものと大差なくなるが, 斃死時期が遅延することには変りがなかった。
3) 日124号および支124号の健康蚕磨砕液と支124号および日124号のFVとをそれぞれ混合し, 日124号に接種しても, 混合しない場合の-log LD
50に比して差はなかった。
4) CsCl利用による平衡密度勾配遠心法で精製した支124号FVと日124号FV (以下それぞれ精製FVと略す) との間には, ウイルスの実効密度や大きさ等で認知できる差は存在しなかった。また, 精製ウイルスを用いた経口接種では上記と同様の結果が認められた。しかし, 精製ウイルスを用いた経皮接種では, 支125号FVと日124号FVとの間にはほとんど-log LD
50に差異が認められなかった。
5) 支124号FVと日124号FVとの間には, 供試条件の範囲内では干渉現象は認められなかった。
6) 支124号FVおよび日124号FVとをそれぞれの抗血清との中和反応では, 両FV間の抗原性にほとんど差異は認められなかった。
7) 支124号FVおよび日124号FVを接種した支124号および日124号の体内ウイルス増殖曲線は, 日124号×支124号を用いて生物検定した限りではほとんど差はみられなかった。
8) FVに対する感染抵抗性蚕品種として大造, 黒子および支103号, 感受性蚕品種として支7号, SOおよびmus-1を用い, それぞれ継代のFVを各品種の組合わせにより経口接種したが, 支124号×日124号FV→日124号と支124号FV→日124号との間でみられるような現象は認められなかった。
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