日本蚕糸学雑誌
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42 巻, 2 号
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  • 北野 実, 渡辺 昌
    1973 年 42 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    セリシンによる粘土粒子の凝集作用を応用し, 土壌改良剤として実際に開発する目的で, クワ栽培時の土壌処理の効果を主としてクワの生育状態から比較検討し, つぎの結果を得た。
    クワ種子播種時にセリシン水溶液で土壌を処理した場合, 無処理区での発芽, 生育にくらべ, セリシンA濃度が0.05%~0.01%の範囲で発芽, 生育が著しくすぐれた。またHz・PAやNa・PAによる最適濃度での処理と比較してもセリシンの効果はほとんど見劣りがない。
    クワ苗植付時でのセリシンによる土壌処理では, クワの生育が顕著になるのは0.02~0.01/の場合であり, したがって希薄な水溶液での処理による効果が期待できる。またセリシン処理ではとくに細根量の増加が顕著である。
  • 井口 民夫, 伊藤 智夫
    1973 年 42 巻 2 号 p. 105-116
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    農林省蚕糸試験場において純粋に系統保存されてきた家蚕の日本種9品種, 支那種9品種の5齢起蚕を供試し, 血液の遊離アミノ酸組成 (22種類のアミノ酸とフォスフォエタノールアミンならびにアンモニア) を, 蚕品種別および雌雄別に測定した。分析値については分散分析その他の統計学的解析を行なった。すなわち分散分析においては, 主効果 (系統または品種, 雌雄, アミノ酸の種類) およびその交互作用の両者が, アミノ酸濃度に及ぼす影響を明らかにした。
    遊離アミノ酸の全体の濃度 (合計値, ただしフォスフォエタノールアミンとアンモニアを含む) には, 日本種と支那種の間に有意差が認められ, 全体としては日本種が高い濃度を示した。両者間に有意差の認められたアミノ酸は8種類であり, 1種類を除きいずれも日本種において濃度が高かった。なおフォスフォエタノールアミンは支那種のほうが高い濃度であり, 有意差が認められた。
    また日本種系統および支那種系統のそれぞれの品種間において遊離アミノ酸濃度に有意差が認められた。日支両系統において, 最高濃度の品種と最低濃度の品種との間には, 2倍またはそれに近い開きがあった。
    日支両系統の品種を通じ, 遊離アミノ酸全体の濃度には雌雄間に有意差があり, 雌のほうが高い値を示した。雌雄間で有意差の認められたアミノ酸は17種類もあり, いずれも雌が高い値であった。なおフォスフォエタノールアミンとアンモニアの濃度も雌が高く, 雄との間に有意差があった。またアミノ酸パターンが雌雄間で異なっていることも, 供試品種すべてにおいて認められた。雌雄間におけるアミノ酸組成の相違の傾向は既報 (井口, 1972) のそれとよく似ていた。
    起蚕時に比較的多量に存在するアミノ酸は, ヒスチジン, ランチオニン, グリシン, グルタミン酸であった。またとくに少なかったものはシスチン, β-アラニン, フェニルアラニンであった。
    起蚕時の遊離アミノ酸濃度と当該品種の繭層重との間には相関は認められなかった。ただし, 日本種9品種の繭層重平均値は, 支那種9品種の繭層重平均値よりも高い値であった。
  • 重松 正矩
    1973 年 42 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    作業車による糸故障整理作業と従来の歩行による糸故障整理作業とを労働科学的に比較した結果次のことが認められた。
    1. 作業車による作業は歩行による作業のエネルギー代謝率で約70%, エネルギー消費量で約80%の消費カロリーで遂行される。
    2. 作業車による作業および歩行による作業とも慢性的に肩に疲労をきたし, 作業車による作業は腹部に, 歩行による作業は下肢に疲労部位が集中している。
    3. 疲労の自覚症状として作業車による作業者は神経感覚的症状と蓄積された精神的症状が, 歩行による作業者は身体的症状と神経感覚的症状が認められた。
    4. 単調感を感じる程度は作業車による作業および歩行による作業ともかなり強いが, 作業車による作業者の方が歩行による作業者よりも強い。
  • (I) コブ状および扁平状異常繭糸の異常部の大きさと機械的性質
    有本 肇, 青木 一三, 高本 和治, 末松 雅延
    1973 年 42 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭綿に見られるコブ状および扁平状異常繭糸につき, 形態別大きさ, 出現割合および強力, 伸度につき調査した結果, 次の諸点を明らかにすることができた。
    1. bave の同一個所に同一異常部の出現する割合はコブ状部と扁平状部で若干の差はあるも約60~80%に達し, 残余は一方の brin のみに異常部の見られるものである。
    2. コブ状異常繭糸の断面は正常 brin の5~10倍の大きさで, その形状は円形または楕円形に近似している。扁平状異常繭糸の断面は正常 brin とほぼ同一の大きさであるが, 同一 bave にあっても各 brin の形状は不斉, 非対称である。
    3. コブ状異常繭糸は牽引の際正常部との境界部で切断するものがきわめて多い。扁平状異常繭糸はその異常部で70%以上のものが切断する。
    4. 異常繭糸の切断強力および伸度は普通上蔟, 高温多湿上蔟のいずれにあっても, 正常繭糸のそれより小さい。また正常繭糸および異常繭糸の強力, 伸度は, 普通上蔟のものは高温多湿上蔟のものより大きい。
    5. 牽引時の荷重―伸長曲線において, 異常繭糸はその弾性限界内で切断するもの, および塑性変形を伴なう領域に入って間なく切断するものが多い。
  • 上田 悟
    1973 年 42 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭の解じょ率を向上させる目的で, 蚕の吐糸営繭の期間中を高温多湿 (31℃, 85または92% RH) の不良環境下に保護した場合の気流と解じょ率との関係について試験し, 概要つぎの結果をえた。
    吐糸営繭中の微気象環境が相当な高温多湿であっても, 換気による気流によって解じょ率は著しく向上し, 区画蔟への風の当り方に関係なく風速が0~2.5m/secの範囲で早いほど解じょ率が高くなった。また同程度に解じょ率を高めるには高湿度の場合は低湿度より早い風速を必要とした。
    なお, 解じょ率が高くなるにつれて生糸量歩合も増す傾向が認められた。
  • 第1報 異常症状および症状発生桑園土壌の化学性と桑の無機組成
    高岸 秀次郎, 東野 正三, 飯塚 隆治
    1973 年 42 巻 2 号 p. 135-143
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    兵庫県下の蛇紋岩質土壌地域における桑の生育異常を栽培桑に関してはじめてニッケル過剰症と判定し, さらに現地桑園土壌および桑の化学組成の特徴を論じた。
    1. 桑のニッケル過剰症は通常夏切り後伸長した枝条の葉に発現しやすく, 特に7月中~下旬頃最も著しく, その後発育した桑葉は次第に健全な様相を呈する。7月中旬の症状は上位1/3葉位の葉が黄化, 中位1/3の葉の葉脈間に褐色ないし黒褐色のネクローシスを生ずる。下位1/3葉位は淡緑から緑色に漸移する。
    2. 同一桑園で亜鉛欠乏症, 鉄欠乏症および両者の複合症状を呈する桑株が見出された。
    3. 本桑園の表層土は強酸性で塩基飽和度も低いが, 下層土ほど酸性が弱くなる。塩基組成は下層土ほどマグネシウムの占める割合が高くなる。置換態ニッケル含量は3.0~34.2ppmで概して第2層で最も高含量を示した。
    4. 桑の葉身, 葉柄, 枝条について, カルシウム, マグネシウム含量は異常株の方がやや高い傾向を示したが明瞭でない。ニッケル含量は概して葉身で最も高く, 葉位, 障害程度によって異なるがおおよそ20~50ppmの範囲にあった。なお葉身中ニッケル含量は障害の激しい株ほど高く, これに対し亜鉛含量は逆に低かった。
  • II. 可溶化したフィブロインおよび液状絹の分解
    江口 正治, 巌本 章子
    1973 年 42 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    羽化前の蛹の中腸に含まれる蛋白質分解酵素は銅-エチレンジアミンあるいは臭化リチウムで可溶化したフィブロインおよび液状絹を加水分解する作用をもつことが明らかになった。
    すなわち, 上記の蛋白質を基質に用いると寒天ゲル電気泳動によって, 蛹の中腸のプロティアーゼは陽極側に移動する1~数本の活性泳動帯として認められた。
    さらに, 酵素の性質を知るため最適pH, 反応時間-活性曲線, 基質濃度あるいは酵素濃度と酵素活性との関係などを調べた。またカラムクロマトグラフィーによって単一のプロティアーゼ活性のピークがみられた。
    前報およびこの論文において示した結果は蛹中腸のプロティアーゼの少なくとも一部は蛾の吐出液中の繭溶解酵素の起源になるのではないかという推論に対して根拠を与えるように思われる。
  • IV. 催青中の光周条件とカイコの成長
    平坂 忠雄, 小山 長雄
    1973 年 42 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    催青中の光周条件とカイコの成長との関係を, 無菌飼育によって研究した。
    1. 1サイクルを24時間とした6L18Dと18L6Dの光周条件を, 催青中と幼虫期にそれぞれ組み合せた4種類の実験では, 6L18D-6L18Dがもっとも経過が短縮し (23日6時間), 次いで18L6D-6L18D (23日12時間), 他の区はそれらより2日近くも遅れた。
    2. 催青中の光周条件を24L, 18L6D, 12L12D, 6L18D, 24Dの5種類とし, 幼虫期をすべて6L18Dで飼育した実験では, 6L18D-6L18Dの経過がもっとも短縮し (23日6時間), 他の区はそれより6~24時間も遅れた。
    3. 1サイクルを1日の時制である24時間と, それより短かい16時間, 20時間の光周条件下で催青し, それぞれ6L18Dで飼育した実験では, 6L18D-6L18Dが23日でもっとも短かく, 他の区はそれより12~18時間も遅れた。
    4. 催青―幼虫期の光周条件と繭質について調査したところ, 経過の短かくなった割りには繭重・繭層重に大差をみとめなかった。
    5. 催青―幼虫両期の光周条件の同調, 非同調が幼虫経過におよぼす影響とその原因について若干の考察を加えた。
  • 村上 毅, 武田 友四郎
    1973 年 42 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉の葉温をいろいろに変化させ光合成速度および呼吸速度を測定した。各葉ごとに葉温30.0℃で実測された光合成速度または呼吸速度を100として各葉温で実測された光合成速度または呼吸速度を指数化し, 葉温の影響について検討を加え次の結果を得た。
    1) 桑葉の葉温X(℃)と光合成速度の指数Y1の間には実験式Iで示される関係がみとめられた。
    実験式I: Y1=44.9449+5.0004X-0.1093X2
    2) 桑葉の葉温X(℃)と暗呼吸速度の指数Y2との間には実験式IIで示される関係がみとめられた。
    実験式II: Y2=18.4466e0.0544X
    3) 桑葉の葉温X(℃)と真の光合成速度の指数Y3との間には実験式IIIで示される関係がみとめられた。
    実験式III: Y2=28.5994+4.8038X-0.0818X2
    4) 実験式I, II, IIIはいずれも各葉温に対するみかけの光合成速度, 呼吸速度または真の光合成速度の相対的な大きさの関係を示しているので, いま, かりに葉温a℃で実測されたみかけの光合成速度をPaとし, 実験式IのXにaを代入して得られるY1の値をY1(Xa), また葉温b℃で期待されるみかけの光合成速度をPb, 実験式IのXにbを代入して得られるY1の値をY1(Xb)とすれば, PaとPbの間には次のような理論式が成立する。
    理論式: Pb=Pa×Y1(Xb)/Y1(Xa)なおこの関係は, 呼吸速度, 真の光合成速度においても成立する。
    5) 実験式I, IIまたはIIIと理論式を用いれば, ある葉温で実測されたみかけの光合成速度, 呼吸速度または真の光合成速度を他の葉温で期待されるみかけの光合成速度, 呼吸速度または真の光合成速度に自由に補正することができる。
  • 白田 昭, 久保村 安衛, 糸井 節美
    1973 年 42 巻 2 号 p. 164-172
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 桑叉沽病菌は15~25℃でよく生育し, 最適温度は20℃付近であった。最低温度は5℃よりやや低いところにあり, 30℃では全く生育しなかった。
    2) 本菌はpH4~10で生育し, 最適pHは培養前pH4.3~5であった。
    3) 本菌の分生子形成は2.5~25℃で行なわれ, 15℃で最も良好であった。
    4) 3細胞胞子は5℃の条件下約1日で分生子柄上に形成された。15℃の湿室に保った場合, 本菌の分生子形成は2日のうちにピークに達した。
    5) 本菌の分生子発芽の最適温度は25℃付近であった。最低温度は10℃よりやや低いところにあり, 30℃では発芽しなかった。
    6) 本菌の分生子は25℃に保った場合, 4時間後に発芽がみられ, 発芽率は15時間で最高に達した。
    7) 15℃の暗黒条件下の湿室で形成させた分生子をもちい, 20℃のもとで胞子の発芽を調べたところ, 明区では33%の発芽率を示したが, 暗区では発芽しなかった。
    8) 本菌の分生子はpH4~7で発芽し, 最適pHは5付近であった。
    9) 本菌の分生子は1~8細胞から成り, 4細胞胞子の比率が圧倒的に多かった。分生子の発芽率では, 2~3細胞の胞子が著しく高く, また, 胞子の端にある細胞の発芽率は, 中間にある細胞のそれより著しく高かった。
    10) 3月下旬以前に桑枝条に傷をつけて菌糸を接種したところ, 接種部から感染がおこり, 楕円形の病斑が現われ, その上に分生子が形成された。
  • 新村 正純
    1973 年 42 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) カイコの人工飼料の物理性を示す一指標として, 人工飼料の硬度をカードメーターで測定し, カードメーター硬度 (g/cm2) として具体的な数値で表わすのが便利であることを知った。
    2) 大工飼料中の寒天含量, 水分含量または糖の含量を変えたり, 飼料の加熱時間を変えることによって, 人工飼料のカードメーター硬度は変化する。このようにして得られたカードメーター硬度の異なる飼料でカイコを飼育した結果, カードメーター硬度とカイコの摂食および成長との間に密接な関係があることを知った。
    3) 人工飼料として適正な硬さはカードメーター硬度200~4,000g/cm2の範囲にあることを見出した。
  • 布目 順郎
    1973 年 42 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1972年に中国で出版された「絲綢之路」に, 新疆維吾爾自治区・巴楚の古城趾で発掘された唐代蚕繭2個の記載がある。写真でみるこれらの繭は押し潰されているので, 筆者はその復元を試みると同時に, 復元された繭形その他から蚕品種を同定しようとした。その結果, 出土の繭はおそらく四川三眠の黄繭種 (もしくは山東三眠) のものであろうと推定された。
  • 1973 年 42 巻 2 号 p. 184
    発行日: 1973/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ウイルス外被と microvillus membrane の癒合による in vivo での昆虫ウイルスの侵入
    NPV抵抗性 Cotton Bollworm の選抜
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