日本蚕糸学雑誌
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42 巻, 5 号
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  • 桜井 進, 辻田 光雄
    1973 年 42 巻 5 号 p. 349-356
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 支124の第4齢蚕, 第5齢3日, 第5齢5日, 熟蚕期および吐糸期の体液と皮膚を用い, ジペプチダーゼならびにアミノトリペプチダーゼ活性を調べた。基質としてアミノトリペプチダーゼの場合にはロイシルグリシルグリシン, アラニルグリシルグリシンを用い, ジペプチダーゼの場合にはグリシルチロシン, アラニルヒスチジン, アラニルグリシン, グリシルグリシンならびにアラニルアラニンを用いた。体液あるいは皮膚抽出液と基質の混合液を37℃で1.5時間反応させ, ペーパークロマトグラフィーによりペプチダーゼ活性を調べた結果, 体液と皮膚抽出液の両方にジペプチダーゼとアミノトリペプチダーゼ活性を検出した。皮膚抽出液には体液と比較して極めて強いアラニルグリシンジペブチダーゼ活性が認められ, また皮膚抽出液および体液のペプチダーゼ活性は第5齢5日から熱蚕期にかけて増大することが観察された。
    2. 正常幼虫皮膚細胞内にはプテリジン顆粒が充満しているが, 熟蚕期―幼虫皮膚が半透明に変化する時期―に顆粒はその機能を失い, 顆粒内に貯蔵しているプテリジン・ポリペプチド複合体および尿酸ポリペプチド複合体は皮膚細胞や体液へと放出され, 体液や皮膚細胞中のペプチダーゼで切断されて遊離アミノ酸となり, これがタンパク合成の素材の一部分となりうることを考察した。
  • 鈴木 幸一, 山下 興亜, 長谷川 金作
    1973 年 42 巻 5 号 p. 357-362
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 家蚕蛹の卵巣標品について fructose-1, 6-diphosphatase (FDPase) 活性および卵巣発育にともなうその活性変動を調査した。
    2) 卵巣FDPase活性の至適pHは8.5で, その基質FDPに対するKm値は5.9×10-5Mであり, 0.12mM以上の基質濃度によって阻害された。またこの酵素の活性化にはMg++を必要とし, AMP添加によって活性は阻害された。なおATP添加によってその活性は影響を受けなかった。
    3) 卵巣FDPaseの細胞内分布を分別遠心法によって検討したところ, 主として卵巣の可溶性分画に局在していた。
    4) 卵巣のFDPase活性は, 卵巣発育の旺盛な中期後半に最大活性を示した。
    5) 以上のことは, 家蚕の卵巣にFDPaseが存在し, 生体内で作用していることを暗示している。
  • カゼイン, 溶液化したフィブロインおよび液状絹の分解
    江口 正治, 巌本 章子
    1973 年 42 巻 5 号 p. 363-367
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    末期の蛹の吸胃および蛾の吐出液中に含まれる蛋白質分解酵素は, カゼイン, 可溶化したフィブロインおよび液状絹を加水分解する作用をもつことが, 電気泳動および定量的研究によって明らかになった。
    このプロティアーゼは7.7および9付近に最適pHがあることがわかり, カゼインおよび可溶化したフィブロインを基質として, 反応時間あるいは基質濃度と酵素活性との関係などが調べられた。またセファデックスあるいはセファローズカラムでこの酵素を分離すると, 2つの活性の山がみられた。
    寒天ゲル電気泳動によって, 羽化直前の蛹の小顋に液状絹およびカゼインを分解するプロティアーゼ活性のあることが認められたが, この酵素活性は末期の蛹の中腸のプロティアーゼよりも弱いように思われる。
    これまでの実験結果から, 羽化, 脱繭時の繭溶解作用に対する蛹の中腸, 吸胃および小顋の役割について考察した。
  • II. 桑樹雄花器の培養
    関 博夫, 武田 正男, 中村 全夫
    1973 年 42 巻 5 号 p. 368-374
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    著者らは桑樹雄花器 (花芽) の培養を行ない, 次の結果を最た。
    1) 桑樹雄花器の培養に適当な培地は White 基本培地または White 基本培地+カイネチン1.0~2.0ppmが有効である。
    2) 培養芽は休眠芽でも可能であるが, 培養期間を短縮させるため室内で発芽を若干促進してから培地に植付けることが, 一層有効である。
    3) 花粉四分胞子の異常としては五~六分胞子, 異常四分胞子などが観察され, その割合は, 概して対照区に比べて, 培養区に多い傾向があった。ことにジベレリン添加区においてはその割合が大きかった。また充実, 非充実花粉粒の割合は対照区に比較して, 培養区は非充実花粉粒が多く, 充実花粉粒が少ない。したがって培養区は発芽歩合が劣る。また充実花粉粒の大きさは, 対照区に比較して一般に小さい傾向があるが, ジベレリン添加区はやや大きく, その変異が広い。
    4) 上記のように培養花粉粒が得られ, それが人工発芽床上で発芽したことは, 試験管内において, 育種の可能性を示すものと思われる。
  • 藤井 実
    1973 年 42 巻 5 号 p. 375-379
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ガラス室内に栽培した桑樹の葉に, フッ化ナトリウム液を塗布して, 一定の日数を経た後に蚕児に与え, 蚕児に対する経口毒性について調べ次の結果を得た。
    1. 塗布したフッ素液の濃度が低いほど毒性が低く, 死亡蚕が少なく, 蚕の経過が早く, 蚕体重は重い。同様に塗布後の日数が長いほど, フッ素の毒性が低下した。とくに蚕体重と, フッ素濃度あるいは塗布後の日数との間には有意な相関があった。
    2. フッ素濃度あるいは塗布後の日数と, 蚕体重との回帰方程式から, 塗布後の日時経過に伴なう1日当たりの毒性減少速度を, 塗布したフッ素液の濃度で算出した。
    3. 葉分析ではフッ素量に大差がなかったことからみて, 日時経過による毒性減少は, 主に化学的変化によるフッ素の質的変化によるものと推定した。
    4. 工場周辺における蚕児に対するフッ素中毒について考察を加えた。
  • I. 蛹の卵巣と蛾の完成卵の脂質に及ぼすホルモンの影響
    一政 祐輔, 長谷川 金作
    1973 年 42 巻 5 号 p. 380-392
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の休眠ホルモンの作用機構を明らかにするため蛹期の卵巣, 蛾の完成卵の休眠性と脂質量及びその成分の変化について検討した。
    1) 催青条件を変えて得た大造の休眠性卵の脂質量は, 非休眠性卵のそれに比べて高かった。
    2) 休眠ホルモン抽出物を多化性N4品種の蛹に注射して休眠性を変化させたところ, 休眠性卵の脂質量は非休眠性卵のそれに比べて増加の傾向がみられた。
    3) 各種の交雑種を用いて, 蛾の卵巣と完成卵の脂質量の変化を調べたところ, 休眠性卵の脂質量は必ずしも非休眠性卵のそれより大とは限らない, 一方休眠ホルモンは化蛹6日目から8日目の卵巣の脂質量の増加を促進させるように作用した。
    4) 蛹発育の中期に蓄積した脂質は蛹の末期において減少するが, この減少の程度の差によって, 休眠性卵と非休眠性卵における脂質量に差のある場合と差のない場合が生ずる。
    5) 休眠ホルモンは, 蛹の発育中期における卵巣のトリグリセリドの増加を主に促進させた。
  • 佐々木 清文, 難波 征太郎, 出山 貞夫, 石坂 弘子, 柿木 英夫
    1973 年 42 巻 5 号 p. 393-397
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    スチレンとGMA比を1:0, 3:1, 1:1, 1:3, 0:1, MMAとGMA比を1:1として絹糸のグラフト重合加工を行ない, グラフト絹糸の摩擦帯電圧および帯電電荷の半減期を測定し, つぎの知見を得た。
    1. S-GMA共グラフト絹糸の帯電圧はスチレンとGMA比によらずGMAグラフト絹糸に等しい。
    2 各種グラフト絹糸の帯電圧は, S>GMA>MMAの序列になる。
    3. 付着ポリマーを抽出除去した場合のグラフト率と帯電圧の関係は, 除去しない場合の見かけのグラフト率と帯電圧の関係と, 特に低グラフト率において著しく異なる。半減期に関してはグラフト率と見かけのグラフト率に著しい相違はない。
    4. S-GMA共グラフト絹糸の半減期はスチレンとGMA比によらず, GMAグラフト絹糸に等しい。また, MMA-GMA共グラフト絹糸の半減期は, S-MMA, MMAグラフト絹糸の場合と一致する。
    5. 含GMAグラフト絹糸のグラフトポリマーに水酸基を導入すると半減期は短くなるが, スチレングラフト絹糸の場合より長い。
    6. 種々のグラフト絹糸の半減期は, S-MMA, MMA, MMA-GMA>MMA-GMA(-OH)>S-GMA, GMA>S-GMA(-OH), GMA(-OH)>Sの序列である。
  • 第2報 水酸基含有化合物の効果
    柿木 英夫, 石坂 弘子, 佐藤 荘助
    1973 年 42 巻 5 号 p. 398-402
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前報 (柿木ら, 1973) で加工用樹脂による絹の黄褐変への影響についての実験で, PVAのみが特別な抑制効果を見せた。水酸基の影響であろうと推定し, それを確認するためCMC, アルギン酸ソーダ, 澱粉およびソルビット等構造の異なる水酸基含有化合物でしかもそれ自体日光により黄変しないものを選び羽二重に含浸させ, 黄変の実験を行なった結果つぎの結論を得た。
    1. 水酸基を持つ化合物は絹の黄変を防止する効果を有する。それは多分ペプチド鎖における共役二重結合の生成を抑制するためと考えられる。
    2. 水酸基含有化合物の効果は付着率に左右されず, 0.5%位でよい。
    3. 可溶化澱粉のように, 酸性で還元性のものは, 絹の最初の黄変の原因と見られるチロシン, トリプトファン等芳香族側鎖の発色を抑制し, さらにその水酸基によって, 前項のようなペプチド鎖の発色をも抑制するものと推測される。
    4. 分子内に水酸基のほか, 可溶化のためカルボキシル基が存在しても黄変防止効果を抑制することはない。
  • 岩成 義才
    1973 年 42 巻 5 号 p. 403-405
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    10月中に採取した桑葉乾燥粉末より揮発性中性成分を抽出し, ガスクロマトグラフで検討した結果, 10月1日および16日採取のものでは誘引物質と考えられているブチルアルコール, イソアミルアルコール, α-β-ヘキセナール, trans-β-γ-ヘキセノール, cis-β-γ-ヘキセノールが得られたが, 10月31日採取のものではわずかにα-β-ヘキセナール, trans-β-γ-ヘキセノールが認められたにすぎない。
  • 1973 年 42 巻 5 号 p. 406-407
    発行日: 1973/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis のβ-exotoxin IV. 昆虫の培養細胞株における高分子の in vitro 合成に及ぼす影響
    尿素または塩酸グアニジン溶液におけるフィブロインの分子量測定とそのサブユニット構造
    Pieris Brassicae の楕円小体病におよぼす準合成飼料中の成分制限の影響
    野外土壌よりの Bacillus thuringiensis var. thuringiensis の回収
  • 1973 年 42 巻 5 号 p. 410
    発行日: 1973年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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