日本蚕糸学雑誌
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43 巻, 3 号
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  • 栗栖 弌彦, 姫野 道夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    軟化病ウイルス坂城株接種蚕から, 従来から軟化病ウイルスとみなされてきた180S, 27mμの球状粒子の外に, 135S, 22mμの球状粒子が分離されている。そこで, これらの両粒子の分離精製標品について接種実験を行ったところ, 両者の間には大差のない病原性が認められた。そして, 180S粒子接種蚕からは180S粒子が, 135S粒子接種蚕からは135S子が分離された。従って, 新しく分離精粒製された135Sの粒子はウイルスと考えられるが異種ウイルスなのか変異株なのかについては今後の検討に待たなければならない。
  • I. 低温処理蚕における中腸皮膜組織の感受性の変化
    阿部 芳彦, 鮎沢 千尋
    1974 年 43 巻 3 号 p. 200-205
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    低温処理したカイコの中腸皮膜組織の核多角体病に対する感受性の変化を病理組織学的に追求した。
    脱皮後無摂食のカイコを低温処理して核多角体を接種すると, 接種後24~48時間で体が縮少して死亡する個体が多数発現し, 同時期に中腸皮膜組織の円筒細胞および盃状細胞には本病ウイルスに起因する顕著な感染像が観察され, 低温処理によって両種細胞の核多角体病ウイルスに対する感受性が著しく増大することが示された。一方脱皮後摂食したカイコでは低温処理を行ったのち多角体を接種しても円筒細胞および盃状細胞における感染像は認め難く, また摂食させずに低温処理を行った場合でも, 多角体接種の前に長時間室温に保護すると, 両種細胞における感染像が認め難くなる傾向が示された。
  • 岩堀 修一, 返田 助光, 大山 勝夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 206-210
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. エスレル (2-chloroethylphosphonic acid) によるクワの落葉促進と葉柄の離層部におけるセルラーゼ活性の変化を調べるために実験を行なった。
    2. 3000ppmエスレル溶液の散布後, 一定時間ごとに離層部の切片をとり, 燐酸緩衝液中で磨砕, 遠心分離し, 上澄み液を粗酵素標品とした。この粗酵素標品と基質としてのカルボキシメチルセルロース溶液をオストワルトの粘度計に入れ, 降下時間の変化によって酵素活性を測定した。
    3. 切りとった葉をビンに密封して測定した, 葉よりのエチレン発生量は対照区では低かったが, エスレル処理区では処理3時間後に最高 (45mμl/g/hr) で, その後低下した。
    4. エスレル処理により落葉しない若い葉では離層部のセルラーゼ活性は低かった (実験2)。しかしエスレルで落葉が促進された成熟した葉 (実験1, 3) ではセルラーゼ活性が増加した。
  • III. 人工飼料育における日長条件が家蚕の化性に及ぼす影響
    高宮 邦夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉粉末50%を含む人工飼料を用いて, 卵催青中, 幼虫期および蛹期の各発育段階における日長条件が人工飼料育蚕 (蚕品種は宝鐘) の化性に及ぼす影響について調査した結果はつぎのようであった。
    1. 卵催青中および蛹期における日長条件は人工飼料育蚕の化性に対し影響しなかった。
    2. しかし, 幼虫期における日長条件は化性の変化に対して強い影響があり, 越年卵産下蛾歩合は短日条件の場合において長日条件の場合よりも高く, とくに8時間 (8L・16D) の日長条件で飼育された人工飼料育蚕による越年卵産下蛾歩合は非常に高かった。
    3. 越年卵産下蛾歩合の高低に関し, 人工飼料育蚕の日長条件に対する感受性は幼虫発育の全期間にわたるが, とくに4齢期に最高で, 5齢期では低くなった。
  • IV. 病原細菌の各種要因に対する抵抗力
    佐藤 守, 高橋 幸吉
    1974 年 43 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ縮葉細菌病の発生生態を知る手がかりとして病原細菌 Pseudomonas mori の各種要因に対する抵抗力を調べ, 次の結果を得た。
    (1) 5月・10月の太陽光線の30分間照射で, 本菌の大部分は死滅した。
    (2) 紫外線 (殺菌灯15W, 2537Å, 40cm) の40秒照射で本菌の大部分は死滅した。しかし細菌濃度が108/mlを越えると, 生残率は明らかに高まった。
    (3) 本菌の生育可能温度は, 2.5~34℃, 生育適温は28~32℃であった。湿熱10分間処理による死滅温度は, 細菌濃度によって異なり, 109/mlでは52℃, 103/mlでは46℃であった。乾熱による10分間死滅温度は, 110℃であった。殺菌蒸溜水中での本菌の生存は, 細菌濃度が高いほど, また低温ほど安定であった。
    (4) 本菌はカバーグラス上の乾燥状態で37日間生存した。
    (5) 本菌はpH 4~10の範囲で生育し, pH 5~7で極めてよく生育した。
  • V. Pseudomonas mori ファージの各種要因に対する抵抗力
    佐藤 守
    1974 年 43 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ縮葉細菌病菌 P. mori ファージの太陽光線, 紫外線, 温度, 乾燥およびpHに対する抵抗力を調べ, 次の結果を得た。
    (1) ファージの不活化は, 太陽光線の強さによって影響され, 4月の実験では180分照射によってもなお完全には不活化されなかったが, 5月中旬の調査では60分で完全に不活化された。
    (2) 一定の強さの紫外線 (15W殺菌灯・40cm下) 照射によるファージの不活化は, ファージ液の濃度によって影響され, ファージ濃度が高まるにつれて生残率は高くなった。
    (3) ファージの溶菌班形成温度は, 2.5~25℃であって, 適温は20℃前後であった。乾熱10分間処理による死滅温度は120℃であった。殺菌蒸溜水中のファージの生存は, 高濃度ほど, また低温ほど安定であった。
    (4) 乾燥状態で50日以上活性を維持した。
    (5) pH 5~9の範囲で活性を維持した。
    以上の結果を, P. mori と比較すると, pHに対しやや狭い適応力を示し, 乾熱および乾燥に対しやや強い抵抗力を示した。
  • I. 冬芽からの茎葉展開および器官形成に及ぼす生長物質の影響
    岡 成美, 大山 勝夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 230-235
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ冬芽の分離培養を行い, 冬芽からの茎葉展開および器官形成に及ぼす生長物質の効果を調べたところ次の結果が得られた。
    1. 品種「剣持」の冬芽をMURASHIGE and SKOOGの基本培地にベンジルアデニン (BA) 0.1~1.0mg/lを加えた培地で培養すると, 茎葉が展開してシュートが形成され, さらにシュートの基部に不定根形成がみられた。
    2. オーキシン (IAA) をBAに複合添加すると, BA単独添加に比べて, 芽の発育には効果がみられなかったが, 不定根形成の時期が早まった。
    3. BAを1.0mg/l以上の濃度で添加した場合培養中の葉の主脈上に不定芽の形成される場合があった。
    4. BAによる冬芽の発育には品種間差異がみられ, シュート形成の程度によって各品種は三つの型に分類された。
  • 藤井 実
    1974 年 43 巻 3 号 p. 236-240
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    種々の濃度のフッ素を添着した桑葉を3齢または5齢蚕児に給与し, 蚕児がフッ素中毒症状を発現するまでを経時的に調べ, 中毒発生原因の一部を知った。
    1. 消化管は中に桑葉食片が少なく淡緑色または黄褐色を呈するので, 体色が悪くなり, 蚕体の肥大成長や眠期が遅れて, 軟化病に似た症状を呈した。
    2. 添食したフッ素濃度の高いものから次第に食下量が減少し, 単位食下量に対する体重増加割合も減少した。しかし血液, 消化液のpHには差はみられなった。
    3. 食下されたフッ素は, 消化管, 消化液, 血液に蓄積した。
    4. 経口中毒原因は, フッ素による血液, 消化液とくに消化管組織における生理的障害が主であると推定した。
  • 勝又 藤夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    著者は父島産のオガサワラグワを調査した結果, その特性を一層明確にする必要ありと認めた。すなわち小泉 (1917) その他の学者によって報告された此の桑樹の特性に次の事項を追加する。(1) オガサワラグワの古木の外皮は松の木の外皮の如く剥離片となる特性がある。此の事実は津山 (1970) により始めて示されたが, 長野県下伊那郡のヤマグワ (?) についても殆ど同様な現象があった。(2) 拇花穂の外形があたかも小麦の花穂の如き外観を呈し, 一般の桑樹 (ヤマグワ・カラヤマグワなど) の拇花穂の外形と全く異る。(3) 一般の桑樹 (ヤマグワ・カラヤマグワなど) の場合葉縁の鋸歯の上縁には必ず中心点があるがオガサワラグワの場合にはそれがない。(4) 桑葉の巨大細胞は何れの場合でも表皮面に隆起し, 多くの場合突起がある。オガサワラグワの巨大細胞には隆起も突起もない。ハチヂョウグワの巨大細胞には突起がないが著者は此の如き巨大細胞の形を Type Aとした。オガサワラグワの巨大細胞の形を“Type A未発育型”と称したハチヂョウグワの巨大細胞は Type Aであるがオガサワラグワの巨大細胞はわずかに異ると言える。
    以上の如くオガサワラグワの特性は他の桑属植物とは著しく異る事実からオガサワラグワは桑属の集団ではその最も外側の位置にあると言える。
  • 倉田 啓而, 高橋 澄雄
    1974 年 43 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) ホルマリン散布した蚕室内のHCHOガスの測定方法を検討した。2-ヒドラジノベンゾチアゾール水溶液1mlはHCHOガス数mg敷を吸収でき測定値のばらつきも少なかった。
    2) 3%前後のホルマリンを散布した蚕室内のHCHOガスの消長を調べた。消毒直後のHCHOガス濃度はほぼ250~300μg/lの範囲であり, その濃度は経時的に減少し24~28時間後では40~50μg/lであった。
    3) ネオPPS燻蒸では, その直後のHCHOガス濃度は620μg/lであったが, その後急激に減少し1時間後ではホルマリン散布とほぼ同じ値となり14時間後では60μg/lであった。
    4) ホルマリン濃度とその飽和ガス濃度の関係を20℃, 25℃, 28℃で調べた結果, いずれの温度の場合もホルムアルデヒドガス濃度はホルマリン濃度の増加に伴い直線的に増加した。
  • 栗栖 弌彦, 松本 継夫
    1974 年 43 巻 3 号 p. 250-252
    発行日: 1974/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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