日本蚕糸学雑誌
Online ISSN : 1884-796X
Print ISSN : 0037-2455
ISSN-L : 0037-2455
44 巻, 1 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 山下 忠明, 堤 道雄, 吉成 修一
    1975 年 44 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉の生育にともなう, 光合成速度, RuDPカルボキシラーゼ, グリコール酸酸化酵素及び3-PGAホスフアターゼ活性の変化をしらべた。光合成的酸素放出速度及びRuDPカルボキシラーゼ, グリコール酸酸化酵素活性は若葉よりも成熟葉で高くなる。これとは逆に3-PGAホスフアターゼ活性は若葉の方が高い。
    光合成により14CO2を短時間固定させると成熟葉では14Cは主としてアラニン, グリセリン酸, 糖, グリシン及びセリンにとり込まれた。一方若葉ではこれらの14C-化合物に加えて, 3-PGAに最も多くの14Cがとり込まれていた。
    14C-セリン分子内での14Cの分布は若葉及び成熟葉の間で差はなくいずれも各炭素原子にほぼ均等に14Cが分布していた。短時間の14CO2固定でセリンが均等にラベルされることはセリンがグリコール酸を経て生成されることを示している。14C-アラニンでは主としてカルボキシル基へ14Cが分布しているがその程度は若葉の方で高い。このことはアラニンが3-PGAから生成されるとすればRuDPカルボキシラーゼによるCO2固定によって生成された3-PGAからアラニンの生成される割合が若葉で高いことを示していると考えられる。
  • 栗栖 弌彦, 松本 継男, 井上 佳彦
    1975 年 44 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢蚕を絶食させ, あるいは尾部結紮を行なった場合の中腸管腔内における細菌数を調べ, 次の結果を得た。
    1, 5齢蚕の中腸管内一般細菌数は齢の前半期には増加し, 齢の後半期では減少した。しかし腸球菌数には一定の傾向が認められなかった。
    2, 中腸管腔内容物を尾部結紮によって強制的に滞溜させたところ, 一般細菌数, 腸球菌数はともに激増したが, その推定分裂回数は腸球菌の方が遥かに大きかった。
    3, また絶食させると, 一般細菌数は指数函数的に減少した。しかし腸球菌数は絶食によって激増した。
  • 町田 勇
    1975 年 44 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの化蛾前の雌蛹 (減数分裂前期の後半の卵細胞) に2MeVの中性子線および200kVpのX線を照射し, その突然変異誘発頻度を比較した。中性子線では全体突然変異体および部分突然変異体ともに線量に正比例して上昇するが, X線では全体突然変異体において2ヒット的な線量効果関係が見られた。これはX線の低線量域では回復現象が存在することを示唆した。一方, 部分突然変異体頻度 (F) と全体突然変異体頻度の比率 (F/W) はいずれの遺伝子座でも約0.1であった。またpe座位とre座位についての変異頻度の比較を行ったところ, X線, 中性子線ともに全体突然変異体ではre座位の方が明らかにpe座位より高い結果を得た。一方, 部分突然変異体ではpe座位の方が明らかに高い結果が得られた。また2MeV中性子線の200kVp X線に対する生物効果比 (RBE) を求めると突然変異誘発率が0.5%のところで3.0, また1.5%のところで1.8であった。このように, 突然変異の水準でRBEが異なるのはX線の線量-効果関係が2ヒット的であることによるものと考察した。
  • I. 繭糸の応力-歪曲線について
    片岡 紘三, 坪井 恒, 青木 昭
    1975 年 44 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生繭の外層部からクリンプの形態を残したままの状態で繭糸を剥離し, そのS-S曲線を測定したところ, 2ケ所に屈曲点のあることを見つけた。その原因は繭糸の屈曲部における2本のブラン間の長さが交互に1.4%異なっているためであり, その結果, 2次降伏は繭糸の屈曲部の短い方のブランの1次降伏によってもたらされる。また, これは繭糸を構成する2本のブラン間の力学的な違い, および屈曲部と屈曲部間との力学的な違い等によるものではない。
  • V. 飼料組成を異にした場合の幼虫期の温度および光線が眠性および化性に及ぼす影響
    高宮 邦夫
    1975 年 44 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育蚕 (蚕品種は宝鐘) の眠性および化性に関して, 飼料条件のうち, 主として人工飼料に添加する桑葉粉末と大豆粉末の添加量をそれぞれ変えた場合の影響について試験を行なった結果, つぎのことがわかった。
    1. 飼料中の大豆粉末添加量を変えた場合, 3眠蚕は, 大豆粉末添加量の少ない飼料区では30℃恒明の場合 (62%) のみ見られたが, 大豆粉末添加量の多い飼料区では30℃恒明で100%, 30℃短日 (8L・16D) で4%出現した。また5眠蚕の出現は人工飼料に添加した大豆粉末量の多少にかかわらず20℃, 恒明においてのみ著しく高率であった。一方, 人工飼料育蚕の化性に関しては, 飼料に添加した大豆粉末量の多少および幼虫期の温度の高低にかかわらず, 短日条件で経過した蚕の蛾は越年卵のみを産下し, 幼虫期を恒明条件で経過した蚕の蛾は不越年卵のみを産下した。
    2. 飼料中の桑葉粉末と大豆粉末の添加量を種々変えた場合, 3眠蚕は飼料中の大豆粉末添加量の増加に伴いその出現率は高くなり, 大豆粉末添加量のきわめて少ない飼料区では全く出現しなかった。一方, 人工飼料育蚕の化性に関しては, 桑葉粉末と大豆粉末の添加比の大小にかかわらず, 幼虫期を恒暗および短日 (8L・16D) 条件で経過した蚕の蛾は越年卵のみを産下し, 長日 (16L・8D) および恒明条件で経過した蚕の蛾は不越年卵のみを産下した。
    3. したがつて, 人工飼料育蚕の眠性は, 人工飼料中の大豆粉末量および幼虫期の温度と光線により, 一方, その化性は, 幼虫期における日長時間によりそれぞれ顕著な影響をうけたが, 飼料中の大豆粉末と桑葉粉末との割合および幼虫期の温度が化性に与える影響は大きくなかった。
  • 宮川 正通
    1975 年 44 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ウイルス接種後の飼育温度が, 細胞質多角体病蚕における円筒細胞の核内封入体形成におよぼす影響について調査し, 次の結果を得た。
    1. ウイルス接種後の飼育温度が15~25℃の範囲においては, 飼育温度が低いほど核内封入体の形成細胞が高い頻度で見られ, 1細胞当りの封入体数も多かった。
    2. 核内封入体の形成細胞は中腸中部から後部前半にかけて最も高い頻度で見られるが, 前部前端および後部末端の20~30個の細胞では認められなかった。また, 円筒細胞が脱落した部位に新生された細胞においても核内封入体の形成が認められたが, 盃状細胞の核では見られなかった。
    3. 核内封入体の形状は形成初期は4角形6面体を呈するが, 時間の経過とともに外観8角形に見えるようになり, 最終的には外観6角形を呈した。
    4. 一般に核内封入体の形成が顕著である低温飼育条件下では, 核内封入体の形成が細胞質多角体の形成に先行した。しかし, 25℃区においては両者はほぼ同時に形成される場合が多かった。
    5. 核内封入体数の形成頻度, 形状, 形状の経時的変化, 封入体形成細胞の頻度等についてはウイルスの接種方法 (経口と経皮) および飼料の種類 (桑葉と人工飼料) による差は認められなかった。
  • 栗栖 弌彦, 岡内 哲夫, 真鍋 幸明
    1975 年 44 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    (1) 5齢蚕の幼若ホルモン分泌期にECD給与を行ない, 超過脱皮を誘起してみたところ, 多数の中部糸腺の縊れが発現し, ECD給与量の多い程総れの発現率が高まった。したがって中部糸腺の縊れは, 前胸腺ホルモン過剰の超過脱皮誘起のホルモン環境下で生じ, 中部糸腺中区の皮膜細胞層が退化するために生じると考えられた。
    (2) 1~4齢を低温飼育した5齢蚕に対するECD給与によって, 前部糸腺の肥大癒合が発現し, 同時に絹糸腺に異常の認められない典型的な不結繭蚕も多発した。そしてこの発現は, 吐糸蛹化誘起のホルモン環境が幼若ホルモンの分泌によって著しく乱されるためと考えられ, 前部糸腺の皮膜細胞が超過脱皮的に感作しているのも認められた。
    (3) 吐糸蛹化誘起のホルモン環境が形成されつつある5齢後半期でのJH給与によっても典型的な不結繭蚕が多発し, 熟蚕期におけるJHとECDとの同時給与では前部糸腺の肥大異常が認められた。そしてこれらも超過脱皮的感作を前部糸腺に引き起こす様なホルモン環境異常によるものと考えられた。
  • 河上 清
    1975 年 44 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの麹かび病感受性の蚕品種間差異, 採取された各蚕品種幼虫体液中での麹かび病菌分生胞子の発芽率および発芽管伸長度を調査した。
    日124号, 支124号, 日134号, 支135号, および日131号 (限性品種) の5蚕品種の2齢および4齢の各幼虫に対する麹かび病菌接種試験では, いずれの場合も, 日本種幼虫は支那種幼虫よりも感受性であった。
    しかし, 上記各蚕品種の5齢3日~6日の幼虫から採取された体液中での麹かび病菌分生胞子の発芽率および発芽管長には差異が認められなかった。以上から, 体液による麹かび病菌分生胞子発芽試験法は, 麹かび病感受性の蚕品種間差異の検定に適用できないと結論された。
  • 清水 孝夫
    1975 年 44 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1968年長野県伊那市で発生した軟化病蚕から得た軟化病ウイルス (伊那株と仮称) について病原性, 中腸組織の感染像および抗血清による中和反応等について調査した。その結果
    1. 伊那株ウイルスは日124号×支124号, 日132号×支132号などの蚕品種には強い病原性を示したが, 春嶺×鐘月, 錦秋×鐘和および豊年×研白など一部の品種には全く病原性を示さない現象がみられた。
    2. 伊那株ウイルスを接種して感染発病した5齢蚕児の中腸皮膜を組織学的に観察したところ, 囲食膜が消失し, 円筒細胞の細胞質が崩壊し遊離した変性細胞が管腔内に離脱する像がみられた。
    しかし盃状細胞の細胞質は空胞化, 粗大化するが退化現象はほとんどみられず, また円筒細胞内のピロニン好染性球状体 (basophilic body) の形成も認められなかった。
    3. 伊那株ウイルスと従来から用いられている坂城株ウイルスの間においては交叉中和反応の成立が認められた。
  • II 極値近傍繊度の信頼性について
    嶋崎 昭典, 西岡 孝彦, 柳沢 昭男
    1975 年 44 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸繊度偏差の小さい荷口, 大きい荷口, 正規分布に従う荷口それぞれについて, 極値近傍生糸繊度の分布特性について考察した。その結果最細側あるいは最太側k個の平均繊度Xkの標準偏差はk番目の繊度Xkの標準偏差よりも大きいことが知られた。すなわち, 抜取検査の信頼性についてはXkの方がXkより優れていることが知られた。
  • 小山 長雄, 宮田 渡
    1975 年 44 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコガの種々な系統・品種の後頭形態を観察して, 次の結果をえた。
    1. カイコガの後頭部は側溝部, 縁毛帯および内側板の3部分からなり, その後頭型はAPAである。
    2. カイコガの後頭形態は各系統・品種間で大きな差異はない。ただ, 印度支那種の安南・マイソールの縁毛帯はいちじるしく狭く, これらが非常に特化したものであることを示唆している。
    3. カイコとクワコの後頭形態は酷似している。
    4. クワコの学名について検討し, いまのところ Bombyx mandarina MOOREがもっとも妥当であることを述べた。
    5. カイコガ科各属の類縁関係を後頭形態に基づいて図示し (Fig. 10), Bombyx属がきわめて特化したグループであることを示した。
  • II 供試機の脱葉特性
    田原 虎次, 藍 房和, 渡辺 兼五, 伊藤 恭一
    1975 年 44 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    扱胴式摘桑機について, 脱葉歯の種類および配列と脱葉性能に対する総合評価の関係を考察し, 次のような知見を得た。ただし, ここでは脱葉性能に対する総合評価は脱葉率とそのときの無傷率の相乗積で示す。
    1. 脱葉歯速度を増していくと, 脱葉率は増大し, 無傷率は減少する。したがって, 脱葉性能 (脱葉率×無傷率) が最大となる点, すなわち扱胴の最適回転数を求めることができる。
    2. 脱葉歯速度の変化とこれに対する脱葉率の変化との関係は, 実用脱葉率を70%以上ということにすれば, 脱葉歯速度の範囲は鋼板歯では3 (m/sec) 以上, 鋼線歯では5(m/sec)~8(m/sec) 以上である。
    3. 脱葉歯速度の変化とこれに対する無傷率の変化との関係は, 実用無傷率を60%以上ということにすれば, 脱葉歯速度の範囲は, 鋼板歯では 4(m/sec) 以下, 鋼線歯では 5(m/sec) 以下である。
    4. 脱葉性に対する総合評価すなわち脱葉性能の変化と脱葉歯速度の変化との関係をみると, 最適脱葉速度の範囲は, 鋼板歯では3~4(m/sec), 鋼線歯では脱葉歯の配列法によってかなり差異がある。
  • 須貝 悦治, 神徳 興甫, 香川 敏昭
    1975 年 44 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    雌蚕における化蛹後の高温密閉環境と不着色死卵の発現について実験し次の結果を得た。
    1. 雌蛹を高温密閉環境に保護すると, 化蛹5日目頃までは不着色死卵は発現しないが, その後の経過にしたがって増加し, 特に蛹末期および蛾で処理したものでは産下卵のほぼ100%が不着色死卵となった。
    2. 蛹末期に35℃で24時間密閉処理した場合, 蛹体重1g当りの空気容量が150cm3以上であれば不着色死卵はほとんど発現しないが, 80cm3以下になると産下卵の大部分が不着色死卵となった。また, 処理温度が25℃以下では不着色死卵は発現しないが, 30℃を境に増加し, 35℃を越えると産下卵のほぼ100%が不着色死卵となった。
    3. これらの不着色死卵は, 受精して核分裂も行なわれているが, 完全な胚盤葉または胚形成までには至らずに致死する初期死卵であることが観察された。
  • 吉武 成美, 武井 隆三
    1975 年 44 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    インドネシヤ種多化蚕にみられる着色非休眠性について, 2, 3の実験を行ないつぎの結果を得た。
    1. 着色非休眠性 (pnd) 遺伝子と従来休眠性に関係あるとされていた遺伝子との連関関係を調べた結果, すべて独立であった。
    2. アンドロジェネシスによって着色非休眠性形質が発現した。
    3. +pnd並びにpnd遺伝子をそれぞれ有するアイソジェニック系統間で, 繭形質に差異は認められなかった。
    以上の結果から, インドネシヤ種多化蚕にみられる非休眠性と, 他系統にみられる非休眠性とは異なった要因にもとづいて生ずることがさらに明確となった。
  • 1975 年 44 巻 1 号 p. 78-79
    発行日: 1975/02/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    キイロショウジョウバエ (Drosophila melanogaster) の変態に伴うエクディゾンの変動
    カイコの成虫化に伴なうエクディゾン量の変化
    DNAのハイブリッド法により分析されたカイコのゲノム
    カイコの精子と血球 (粒) におけるDNA含量
feedback
Top