日本蚕糸学雑誌
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44 巻, 2 号
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  • II. 接緒の分布関数について
    嶋崎 昭典, 川久保 八郎, 高橋 修
    1975 年 44 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    接緒回数の分布について, 以下に示すような, いくつかの結果がえられた。
    注目した緒内で空接緒を含む接緒回数の変化を示す確率をP(Z=k) とおくと, これは一般に
    P(Z=k)=a1p(a0+a1q)k
    で示される。ここにpは有効接緒効率 (比率) でqは1-pである。a1は取り出し効率 (比率) でa0は1-a1である。またkは有効接緒が生じるまで繰かえされる接緒数である。さらに, 接緒効率
    (1-λ), λ=a1pの分布f(λ) は,
    f(λ)=(α+β+1)!λα(1-λ)β/α!β!
    で与えられる。ここにαとβは分布のパラメータであり, λの平均値は (α+1)/(α+β+2) で, 分散は (α+1)(β+1)/(α+β+2)2(α+β+3) である。これらのことから, 工場におけるすべての接緒現象の分布P(U=k) は,
    P(U=k)=(α+β+1)!(α+k)!(β+1)/α!(α+β+k+2)!
    で与えられた。ここにα, βとkf(λ)での定義と同じであり, Uは接緒回数を示す確率分布である。ゆえにUの平均値は (α+1)/β, 分散は (α+1)(β+1)(α+β+1)/β2(β-1) となる。
  • 鈴木 幸一, 宮 慶一郎
    1975 年 44 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕休眠卵と発育卵を使用し, ホスホフラクトキナーゼの酵素化学的性質を検討した。その結果, 酵素活性の安定化に, SH基剤としてはジチオスライトール, キレート剤としてはジエチレントリアミン5酢酸が効果的であった。ATPに対するKm値は0.12mMであり, 高濃度のATPによって基質阻害を受けた。
    2. これまで休眠卵と初期発育卵においてホスホフラクトキナーゼ活性の存在が否定されていたが, 本研究は両ステージに高い酵素活性を確認した。
    3. グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼは休眠および発育中高い酵素活性を保っているが, 孵化直前に急激に減少した。フラクトース-1,6-ジホスファターゼ活性は発育中期から増加し始め, 孵化直前には最大に達した。
    4. 上記より, 休眠卵および発育卵の炭水化物代謝におけるそれぞれの酵素の役割を考察した。
  • VI. クワ組織内および土壌中での Pseudomonas mori (BOYER et LAMBERT) STEVENSとそのファージの生存
    佐藤 守, 高橋 幸吉
    1975 年 44 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) クワ縮葉細菌病菌 P. mori の乾燥罹病組織内での生存期間は, 保存条件によって異なり, 低温 (5℃) ならびに低湿 (デシケーター内) 条件で長く, 最長738日以上であった。
    2) 低温ならびに低湿に803日間保存した罹病葉から P. moriファージは, 高頻度に分離された。
    3) ビニール袋内に保った桑園土壌中の遊離ファージは, 5℃で728日以上活性が維持されたが, 30℃では105日以内に不活化された。20℃ではその中間であった。
    4) 土壌中の P. mori ファージの活性持続期間は, 土壌微生物の影響を受けず, P. mori が存在している場合にはファージは, 低温で高い活性を長く維持した。
  • II. 野蚕のセリシンのアミノ酸組成
    小松 計一, 山田 政枝
    1975 年 44 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヤママユガ科 (Saturniidae) に属するテン蚕 (Antheraea yamamai), シナサク蚕 (Antheraea pernyi), インドサク蚕 (Antheraea mylitta), ムガ蚕 (Antheraea assama) およびエリ蚕 (Philosamia cynthia ricini) の繭層セリシンを熱水抽出してアミノ酸分析を行ない, そのアミノ酸組成を家蚕 (Bombyx mori) のそれと比較するとともに, 野蚕繭層セリシンの熱水やアルカリに対する難溶性の原因についても考察した。その結果は, 次のように要約することができる。
    1. Antheraea に属するテン蚕, シナサク蚕, インドサク蚕, ムガ蚕のセリシンにはアミノ酸組成に共通の点が多く, 家蚕セリシンに比べてGly, Pro, Thr, Tyr, Glu, Arg, Hisは多いがAla, Val, Ser, Lysは少ないことが指摘された。
    2. Philosamia に属するエリ蚕のセリシンには, 家蚕セリシンに比べてPro, Glu, Arg, His, Lysが多くVal, Serが少ない特徴はみられたが, 全体を通じてAntheraea 4種野蚕のセリシンよりも家蚕セリシンに近い点が多かった。
    3. 生物学的種属を異にする蚕のセリシンには極性側鎖をもつアミノ酸群に若干の相違があり, 野蚕セリシンにはオキシアミノ酸群が少なく酸性, 塩基性アミノ酸群が多い特徴が認められるがその差は僅少で, 主要な構成アミノ酸はいずれもGly, Ser, Thr, Aspでアミノ酸パターンに著しい相違はないとみられた。
    4. したがって, セリシンのアミノ酸組成には蚕の生物学的種属により化学構造, 高次構造を特徴づけるような著しい特異性はなく, 溶解性を支配する大きな要因とは考えられなかった。
    5. 野蚕繭層セリシンが家蚕繭層セリシンに比べて熱水やアルカリに溶解し難い原因は, 繭糸ロウ, 無機成分, タンニンなどの二次的成分の存在および繭層構造の相違によるところが大きいと考察された。
  • I. 分布算出のためのプログラムについて
    嶋崎 昭典, 藤田 史明
    1975 年 44 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    定繊繰糸工程における繭粒付数の理論分布を計算するための三つの計算機プログラムを開発し, それらのプログラムがいずれも満足できる結果を与えていることを検証した。しかし単純性と有用性を考える限りでは, つぎの仮定から導かれるプログラムが最も実用的であることが知られた。
    λnとμnは正規分布に従う生糸繊度の確率分布からえられるパラメータ
    λn=1/√2π√Kσ∫L-∞exp{-1/2(x-Kδ/√Kσ)2}dx
    μn=1/√2π√K-1σ
    ・∫Lexp{-1/2(x-(K-1)δ/√K-1σ)2}dx
    であるとする。ここにKn0が最小粒付数, nを確率変数とするときK=n0+nで示される繭粒付数である。δ, σは繭糸の平均繊度と繊度偏差でLは細限繊度といわれるもので
    L=〓-δ/2(1+(σ/δ)2)
    で与えられる。ここに〓は生糸の目的繊度である。そうすると確率変数nの確率p(n)
    p(0)=1/{1+λ010λ11μ2+……}
    p(n)=λn-1np(n-1)
    で与えられる。しかしながら, 本文にはフォートラン言語で書かれた三つのプログラムをのせた。上記の実用的なプログラムを用いると粒付分布の計算は1~2秒内に実行される。
  • 武井 隆三, 長島 栄一
    1975 年 44 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    産卵後1時間から120時間までの卵発育初期のものについて, 卵内諸器官の形態変化を卵の休眠性と関連させ電子顕微鏡を用いて調べ次の知見を得た。
    1. 漿液膜細胞は産下後20~24時間までにその形成を完了し, 休眠卵ではこの細胞と漿液膜外皮が常に密着していた。一方浸酸卵と非休眠卵では, 漿液膜細胞とその外皮との問に microvilli が発達すると, 外皮は剥離をはじめ空隙が生ずるようになった。また非休眠卵では卵発育にともなって空胞の増加が観察された。
    2. 受精前後の極めて初期の卵表層には多くの microvilli がみられるがやがて消失する。卵黄細胞は産下後20~24時間で形成がはじまり, 非休眠卵ではその形成の初期に細胞膜突起がみられた。ごく初期の休眠卵の卵黄顆粒にはP3などが多いが漸次P1顆粒が増加した。一方浸酸卵および非休眠卵ではP2顆粒が多くなった。また発育が進むに従って, 浸酸卵や非休眠では cytolysome や multivesicular body などがみられた。
    3. 休眠卵の卵黄核の形態は卵令によって変らなかったが, 浸酸卵や非休眠卵では卵の発育が進むとクロマチンや核質が核膜附近に集まり, さらに次第にそれらの存在が認められなくなり, 機能的に退化しているように思われた。このような時期になると, 核膜に接して極端な渦巻状や層状を示す小胞体がみられるようになる。
    4. 産下24時間後の胚子は少数の細胞から構成され, 細胞内には層状の小胞体やミトコンドリアが多数存在した。発育が進むと新しく形成された細胞が多く認められるようになる。この細胞の核は大きく, 仁も電子密度が高く大型となり数も増加した。
    以上の結果から, 胚子の発育には卵黄核の形態的変化が密接に関連しているように考えられた。また漿液膜における変化も胚発育と関連をもつことが推論された。
  • 飯塚 敏彦, 小池 説夫, 水谷 純也
    1975 年 44 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕糞中の抗菌性物質の検索を行ない Protocatechuic acid と p-Hydroxybenzoic acid を単離した。
    単離の方法は Fig. 1に示した。すなわち, 抗菌力の大部分は, 酢酸エチル可溶部に認められたので, まず, シリカゲルを吸着剤としてカラムクロマトグラフィーにより分画したところ, Benzene:MeOH:AcOH (88:10:2, v/v) 分画に強い活性が認められた。ついで, Polyamide C-200を吸着剤とするカラムクロマトグラフィーで分画し, 2つの主要な活性分画を得た。この分画は, 紫色線照射により紫色に発色するV1 (p-Hydroxybenzoic acid) とB1 (Protocatechuic acid) である。
    蚕糞から単離した2つの物質が, フェノールカルボン酸であったことから, 関連フェノールカルボン酸および類縁化合物の抗菌力試験も行なった。その結果, Hydroquinone, o-Vanillin, Pyrogallol 等は, S. faecalis AD-4に非常に強い抗菌力を有していることが明らかとなった。また, 桑葉中のフエノール成分としては, Scopolin にのみ抗菌力が認められた。
  • 西 寿巳
    1975 年 44 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    紫外線または日光で光黄変させた絹フィブロインから, 黄変の成分であるパラオキシフェニルビルビルペプチドを分離し, このペプチドの構造を明らかにするとともに, 黄変の機構を明らかにした。
    1. このペプチドはペーパークロマトグラム上で紫外線により黄緑色のけい光を発するスポットとして検出された。そしてこのペプチドの色はアルカリ溶液で黄変し, 酸性溶液で消失した。
    2. このペプチドのpH7における紫外吸収スペクトルはパラオキシフェニルピルビン酸のそれに符合し, その最大吸収は307nmであった。同じくpH10におけるスペクトルの最大吸収はpH7の307nmから335nmに移行し, また420nmに吸収が生じた。
    3. このペプチドの加水分解物から, その構成成分としてパラオキシフェニルピルビン酸およびアミノ酸, すなわちアラニン, グリシン, バリン, ロイシン, グルタミン酸が検出された。
    4. 絹フィブロインから紫外線または日光によるパラオキシフェニルピルビルペプチドの生成は, フィブロインのチロシン残基のアミノ基が酸化されてカルボニル基となり, アミド結合が切断されるときにおこる。その結果, パラオキシフェニルピルビン酸, アラニン, グリシン, バリン, ロイシン, グルタミン酸を含むペプチドが生成する。アルカリ溶液ではカルボニル基はエノール化して側鎖がフェノール環に共役し, このペプチドは黄変する。
  • II. 蛹期卵巣, 脂肪体, 血液の脂質成分及びグリセリドの脂肪酸組成
    一政 祐輔
    1975 年 44 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕蛹2-3組織の脂質含量と脂質組成及びグリセリドの脂肪酸組成を調べ, それらに及ぼす休眠ホルモンの作用を食道下神経節摘出実験から推定した。
    1. 家蚕蛹の脂肪体と卵巣の主なる脂質成分はトリグリセリドであり, 血液脂質の主成分はジグリセリドであった。
    2. 脂肪体と血液の各グリセリドの脂肪酸組成は互いに類似していて, 各グリセリドは主に, パルミチン酸, ステアリン酸, オレイン酸, 及びリノレン酸からなっていた。
    3. 卵巣トリグリセリドの主な脂肪酸組成は, パルミチン酸, オレイン酸及びリノレン酸であって全脂肪酸の約90%をしめていた。それに対して, モノグリセリドとジグリセリドの主な脂肪酸はパルミチン酸, ステアリン酸, リノール酸, 及び未同定のX1とX2であった。
    4. 食道下神経節の摘出は, 蛹の発育中期の脂肪体と卵巣の脂質含量を低下させたが, 中腸と血液の脂質含量には影響がみられなかった。これは休眠ホルモンが化蛹中期の脂肪体と卵巣の脂質代謝に影響することを推定させるものである。しかし休眠ホルモンが卵巣のグリセリドの脂肪酸組成に影響する結果は, SG摘出実験からは得られなかった。
  • 三枝 隆夫, 四方 久
    1975 年 44 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アニリンブルーを添加した培地で白紋羽病菌を培養すると菌叢の部分が黄色に変化することを見出したので, この現象の特異性および病菌検出に利用することの可否などについて検討した。その結果, アニリンブルーの青色が消失する段階まではかなり多くの細菌や糸状菌, さらに化学薬品等によっても進行させうるが, 次の段階である黄色の発現はきわめて限られた数種の糸状菌でしか認められない特異的な現象であることがわかり, 現在この現象を利用した新しい白紋羽病菌検出法について検討を進めている。
  • I. 中和試験
    栗栖 弌彦, 松本 継男, 姫野 道夫, 冨岡 慶信
    1975 年 44 巻 2 号 p. 151-153
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    沈降恒数を異にする2種の軟化病ウイルス (FVS I, FVS II) を抗原とした家兎免疫抗血清を作成し, 中和試験を行なったところ中和効果が認められた。また交差中和試験を行なったところ交差中和効果が認められ, さらに一次元の二重拡散法で寒天ゲル内交差沈降反応が認められた。したがってFVS IとFVS IIとは, その抗原性において共通な部位の存在が示唆され, 血清学的にみた場合にはたがいにきわめて近縁なものと思われた。
  • 有賀 勲, 村上 昭雄
    1975 年 44 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコにおける組換え事象は通常雄には生じるが雌には生起しないとされている。1齢から蛹にいたる種々のカイコ卵形成過程にDNA切断効果の強いマイトマイシンC (MC) を投与する実験を行なった。
    その結果, 熟蚕期の卵母細胞 (第1減数分裂前期の zygotene~diplotene) をMCで処理した区において組換え型の誘発頻度 (10.8×10-5) は対照区に比し明らかに高かった。この時期の卵母細胞は通常組換え事象の生起する生殖細胞と同様に, MCによって誘発されたDNAの切断を再結合しうることが示唆された。また, 対照区において189,007個体を分析したところ7個体の組換え型 (交叉型は6個体) が検出され, カイコ卵母細胞においても低い頻度ながら自然に組換え事象の起りうることが認められた。
    上記の実験結果に基いてカイコ染色体の組換え機構に関して2, 3の遺伝学的意義について論じた。
  • 武井 隆三, 長島 栄一
    1975 年 44 巻 2 号 p. 161-164
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    休眠卵, 浸酸卵および非休眠卵の卵黄細胞を中心として, その中に形成される顆粒の形態を電子顕微鏡を用いて観察した。その結果, 蛋白性顆粒を8種類, 脂肪性顆粒を7種類および dense body を3種類に分けることができた。またそれぞれの顆粒の形態ならびに存否と休眠卵, 浸酸卵および非休眠卵との関連についても記載した。
  • 石原 廉
    1975 年 44 巻 2 号 p. 165-166
    発行日: 1975/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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