日本蚕糸学雑誌
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44 巻, 4 号
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  • 上田 悟, 鈴木 清
    1975 年 44 巻 4 号 p. 259-266
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕の齢期別の飼育密度を推定する一方法として, 蚕の成長面よりこれに検討を加え, 概要つぎの結果をえた。
    1. 原種8品種, 現行指定交雑種2品種の体長, 体幅を測定し, これらの相互関係を解析した結果, 蚕の成長に伴う体長, 体幅の推移は蚕品種によって差が認められたが, いわゆる日本種, 支那種など地域種による一定の傾向は, 見出すことはできなかった。
    2. 蚕が正常に成長する範囲における飼育最大密度は, 蚕座面積に対する蚕体平面積の占める割合で定まり, その値は全齢を通じて一定であると仮定した。そして, 実験値から1~4齢の眠蚕および5齢の盛蚕において「体長×体幅」で蚕座面積に占める割合を71.5%と算出した。この密度は現行交雑種の普通育において, おおむね蚕座0.1m2あたり, 1齢12,200頭, 2齢3,200頭, 3齢1,250頭, 4齢400頭, 5齢110頭であった。
    3. 上記の仮定に基づいて推定された飼育密度について, 支131号×日131号および支131号を供試して飼育試験を行なった結果, 各計量的形質に及ぼす悪影響は認められず, この仮定は本試験の範囲では肯定することができた。
  • 室賀 明義, 中島 正雄, 青森 〓二, 小沢 洋一, 新村 正純
    1975 年 44 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    合成幼若ホルモン類縁化合物投与による繭重, 繭層重増大効果について, 桑葉育蚕への利用の立場より投与方法および飼料効率について試験した。
    1. 5齢桑付け48~72時間後に粉剤の形でJHを1頭あたり0.8μg桑葉添食することにより繭重, 繭層重が無添食のそれより9~14%増加した。
    2. JH添食蚕の繭層歩合は無添食蚕のそれと同じかやや高い傾向を示し, 減蚕歩合, 健蛹歩合など健康度の面においても, また, 発育経過のそろいの面においても, JH添食の有無による差は認められなかった。
    3. JH添食蚕の糸質は無添食蚕のそれに比べ繊度やや太く, 糸長やや長く, 生糸量歩合やや高くなったが, 他の実用形質には差が認められなかった。
    4. JH添食蚕の食下量に対する繭重, 繭層重の割合および5齢経過に対する繭重, 繭層重の割合は無添食蚕のそれとほぼ同じ割合を示した。
    以上の結果から, 桑葉育蚕へのJH利用はかなり有利であることがうかがえた。
  • 今井 暹, 鎌田 好二, 佐藤 幸子
    1975 年 44 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    茂原市郊外のヨード工場ならびにモリブデン工場周辺部の養蚕家に出現した異常蚕について研究した結果, つぎの成績を得た。
    工場群から特定方向の一定距離内の桑園が工場から出る有害物質の被害をうけ, その桑葉を食下した蚕に異常がみられた。この桑葉は50~100ppmという高濃度のヨウ素に汚染され, これを食下した蚕は特異な病状を呈しながら発育を阻害されることを明かにした。したがってこの異常蚕はヨウ素中毒によるものであり, その病状はヨウ素添食蚕と全く一致していた。また中毒死は, 蚕体内にかなり高濃度に留存しているヨウ素にその原因があるように考えられた。
  • II. 含水セリシン膜およびフィブロイン膜の乾燥速度にともなう凝集構造変化
    北村 愛夫, 柴本 秋男, 中島 茂
    1975 年 44 巻 4 号 p. 281-286
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生繭繭層より溶出させたセリシンから製膜したセリシン膜を種々の含水率に含水させ, これに乾燥速度を異にする乾燥処理を施して得られるセリシン膜の凝集構造について, 水分子の拡散挙動から明らかにしようとした。なお同様な処理をおこなったフィブロイン膜について, さきの水分子の拡散挙動からの追究の結果をさらに確認するため, 非晶領域における分子間結合の凝集エネルギーの密度の分布を FLORY-HUGGINS の溶解理論から導かれる水分子との相互作用パラメーターを基に解析した。これらの追究からつぎのような結果を得た。
    1. 乾燥条件を同一にして赤外線乾燥処理膜と熱風循環乾燥処理膜を比較すると, フィブロイン膜セリシン膜ともに赤外線乾燥処理膜の方が密な凝集構造をとることが水分子の拡散挙動より明らかとなった。
    2. 含水率を同一にして, 熱風循環乾燥, 真空乾燥, 減圧乾燥の各方法で乾燥方法を変化させて処理したセリシン膜の凝集構造はフィブロイン膜の場合と全く同様に, 乾燥速度の早い熱風循環乾燥に比し, 速度の遅い減圧乾燥のごとき乾燥方法ではセグメントの流動の余裕を得て密な構造を取ることがわかった。
    3. 含水率を変化させて含水させたセリシンフィルムに, 同一の乾燥方法で処理した膜の凝集構造はこれもフィブロイン膜の場合と全く同様に, 含水率の多い程セグメントの流動を充分ならしめ密な構造を取ることがわかった。
    4. 含水率を変化させて, あるいはこれにともなって乾燥方法を相異させて, 乾燥処理したフィブロインフィルムの非晶領域の凝集構造を分子間結合の凝集エネルギー密度分布から解析した結果からも, さきに水分子の拡散挙動から凝集構造の粗密を解析した結果と完全に一致することがわかった。
  • 久保村 安衛, 中山 賢三
    1975 年 44 巻 4 号 p. 287-293
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑園ならびに各種条件におけるクワの枯葉中のクワ縮葉細菌病菌 Pseudomonas mori の越冬と生存について調べ, 桑園に落下した枯葉中で越冬した本菌が, 本病の第一次伝染源となり得る可能性を検討し次の結果を得た。
    1. 本菌は桑園の枯葉中で越冬し, その生存可能な時期は松本市周辺ではクワの発芽後のほぼ5月中旬までであることが認められた。
    2. 枯葉中における本菌の生存は越冬前はかなり多く, その後漸次減少するが, クワの発芽前後の4月上旬~5月下旬では乾物枯葉粉末10mg当り, ほぼ102~103程度であった。
    3. 室内試験の結果, 本菌の生存期間は低温, 乾燥条件において延長し, 高温, 多湿においては短縮することがわかった。
    4. 桑園におかれた枯葉中における本菌の越冬ならびに生存数は乾燥条件によって延長されるものと推察された。
    5. 桑園内の枯葉中で越冬し, クワの発芽する前後まで生存する本菌は, 桑葉への感染力を有し, 本病の第一次伝染源の一つとなり得る可能性が示唆された。
  • 山下 忠明
    1975 年 44 巻 4 号 p. 294-300
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    光呼吸によるCO2放出の直接的な基質はグリシンと考えられている。グリシン-1-14C(10-2M) を桑葉ディスクに与えその脱炭酸反応をしらべた。グリシン-1-14CからのCO2放出速度は1.5μmole/dm2/hrであった。桑葉抽出液でのグリシン-1-14Cの脱炭酸はNAD, PALP及びTHFAの存在下でグリシン濃度0.58Mのとき9.5μmole/dm2/hrであった。この値は桑葉で赤外線ガス分析計をもちいて測定される光照射停止直後のCO2放出 (82~193μmoleCO2/dm2/hr) にくらべて著るしく少い。窒素中での葉ディスクによるグリシンの脱炭酸 (CO2放出) は空気中におけるよりも少くなるがグリシンからのセリンの生成は影響されない。
    桑葉にグリシン-1-14Cまたはセリン-14C(U) を与えるとすみやかに糖へ代謝される。グリシンからセリンへの転換は暗中で進行するがさらに糖への代謝には光を必要とする。グリシン-1-14Cから生成される14C-セリン及びアラニン分子中の14C分布はいずれも主としてカルボキシル基炭素原子に14Cが分布していた。
  • 町田 勇
    1975 年 44 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの卵母細胞 (prophase I) の発育段階におけるアルキル剤マイトマイシン-C(MC), TEM, EIおよびX線の突然変異誘発効果を卵色の特定座位法によつて調べた。化蛹3~4日目の卵母細胞はMCによる突然変異誘発頻度が著しく高く, その後順次低下した。つぎにこのような高い変異率を示し, しかも致死率の少ない化蛹5~6日目の蛹を用いて, MC, TEMおよびEIの濃度―効果関係を調べた。その結果, MCおよびTEMでは誘発された大部分の突然変異体が部分突然変異体で濃度に比例して直線的な上昇を示した。これに対しEIでは, 実験に供した濃度範囲では変異頻度が極度に低く, 全体および部分突然変異体の誘発率に差がみられなかつた。変異頻度を比較してみるとMCが最も高く, ついでTEM, EIは最も低い値で作用基数と突然変異誘発能とは明確な関係が認められなかった。ところで, X線の場合化蛹初期には突然変異誘発頻度は低く, 卵母細胞の発育段階が進むにつれて上昇した。またX線の場合には化学物質と全く逆に大部分は全体突然変異体であつた。
  • III. 絹および絹様合成繊維の水和・吸水能について
    北村 愛夫, 柴本 秋男
    1975 年 44 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹の水和・吸水能は絹らしさを最も表現する特性の一つであるが, この特性に焦点をしぼって, 絹様合繊, いわゆるシルキー繊維と比較して見た。
    この際, この水和・吸水能を表面層ないし内層のぬれ傾向を示すところの, 水分子の繊維組織内での分布の均一性ないし不均性を表示する尺度v/h3/2をもって検討を試みた。
    なおスチレングラフト絹のような化工絹がこのような尺度でどのような数値として表現されるかも, あわせて追究しつぎのような結果を得た。
    1. この尺度を適用すると, 絹は表面層よりも内層の方が“ぬれやすい”傾向を示し, 逆にシルキー繊維は表面層において内層よりも“ぬれやすい”ことがわかった。
    特に栄輝はこの傾向強く, ビロン, ピューロン, シノンの順に表面層のぬれ傾向は弱まる。
    2. アクリルにカゼイン蛋白をグラフトしたシノンの値から絹に近づけようとしたことがよくうかがわれる。
    3. スチレングラフト絹についての数値は表面疎水化の傾向から相対的に内層のぬれ傾向が著大するという結果となったが, このような尺度の適用にはv値およびh3/2について, なおパラメターを工夫する必要があるように考えられる。
    4. これらの結果から水和, 吸水能の点でシルキー繊維と絹には大部隔たりがあり, 絹の複雑な構造がこの水和, 吸水能に効果的となっていることが科学的表示により明瞭となった。
  • 江口 正治, 巌本 章子
    1975 年 44 巻 4 号 p. 314-320
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕蛾の脱繭の時に出される繭溶解酵素の生成と利用に重要な役割を果していると考えられる蛹の中腸, 吸胃および小顋の役割について検討した。
    まず, 末期の蛹の中腸のブロテアーゼを精製し, これを抗原としてウサギに注射し, 抗体を得OUCH-TERLONY法によって, 上にあげた器官のブロテアーゼの関係を調べたところ, 蛹の中腸と吸胃液のプロテアーゼの抗原性は等しいことがわかった。また, これらの器官と小顋のプロテアーゼは抗原性が異なることが明らかになった。
    一方, 蛹の初期に中腸あるいは小顋を除去された蛾の吐出液中のプロテアーゼ活性を測定すると, 比活性で対照区の1/2~1/3のプロテアーゼ作用を持つことがわかった。しかし, 中腸あるいは小顋除去蛹を繭にもどし, 脱繭率を調べると, ごく一部の蛾しか脱繭できないという結果が得られた。さらに, 中腸および小顋をともに除去された蛾は全く脱繭できなかった。
    上にあげた結果は蚕蛾の脱繭に当って, 中腸, 吸胃および小顋の協同作用で繭溶解酵素の生成と利用が行なわれていることを示しており, これらの器官の役割と関係について考察した。
  • 大山 勝夫, 岡 成美
    1975 年 44 巻 4 号 p. 321-326
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    植物の休眠現象に関与している物質として知られるアブシジン酸 (ABA) およびジベレリン (GA3) が桑の冬芽の発育におよぼす影響を明らかにするために, つぎの二つの実験を行なった。
    第1の実験では桑の分離芽を用い, 培地にABAまたはGA3を加えて培養し, 芽の発育の状態を調べ, 第2の実験では桑の切枝をABAまたはGA3液に24時間浸漬したのち, 砂床に挿して発芽の状態を観察した。その結果, 大要つぎのことが明らかとなった。
    1. ABAを0.1~100mg/lの範囲で加えたMS+BA培地に, 鱗葉を取除いた分離芽を植付けて培養したところ, ABA 10mg/l以上の濃度で分離冬芽の発育は抑制され, ABA 100mg/l加えた場合, 茎葉の展開は全く認められなかった。
    2. ABA 10mg/lおよび1mg/lを加えた場合には, 分離芽の基部にカルスの形成が促進された。
    3. ABAと同時にGA3を加えて培養すると, ABAの抑制効果は部分的に打消されるようであった。しかし対照区に比較して, 葉重は少なかった。
    4. 桑の切枝にABAを1~100ppmの範囲で処理した場合には, ABA 100ppm区において芽の発育展開がややおくれる程度で, 分離冬芽の場合に比較して, ABAによる発芽抑制効果は低かった。
    5. これらの実験を通じて休眠していない芽にABAを与えることによって, 休眠芽を誘導することが可能であろうと考えられた。
    しかし, 分離芽と切枝の場合, ABAによる発芽の抑制効果に差異が認められた原因については, 処理方法と関連してさらに検討しなければならない。
  • 河上 清, 蛯原 富男, 月田 嘉辰, 森井 謙介, 小野 功一, 古沢 寿治
    1975 年 44 巻 4 号 p. 327-332
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    麹かび病菌の簡易検出法として, スタンプアガー法を案出した。本法は, ソーセージ状に封入したローズベンガル寒天培地を, そのまま調査対象物にスタンプし, スタンプ面を上にして約0.5cmの厚さに切断した培地切片を, 30℃で2日間培養し, 発育した菌集落によって麹かび病菌の多少を判定するもので, 現行の各検出法に比べ, 検出精度は同程度であったが, 省力化は著しく, 極めて簡便な現場検査法であることが解明された。
  • 杉山 浩, 重松 孟
    1975 年 44 巻 4 号 p. 333-334
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1975 年 44 巻 4 号 p. 335
    発行日: 1975/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の“Sappe”病に関する研究 I. 罹病幼虫から病原細菌の分離・同定
    家蚕の“Sappe”病に関する研究 II. 疾病発現に対する幼虫齢期の効果
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