日本蚕糸学雑誌
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44 巻, 5 号
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  • 藤井 実
    1975 年 44 巻 5 号 p. 337-339
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    p-NPPを基質としてフッ素添食蚕の消化管アルカリ性フォスファターゼ活性を測定し, つぎの結果を得た。
    1. 中腸前部および後腸 (小腸, 結腸, 直腸) の酵素活性は低いが, 中腸中部および中腸後部における酵素活性は高かった。
    2. フッ素添食蚕では添食期間が長くなるにしたがい中腸中部および中腸後部の酵素活性は低下し, とくに中腸中部は後部より早く低下した。しかし他の部分の消化管では明らかではなかった。
    3. フッ素添食濃度が高くなるにしたがい生体重増加量は低下し, これと平行して酵素活性も低下した。
    4. F-による酵素活性の阻害は認められず, かえってNaF 102μM以上では賦活された。
  • 栗栖 弌彦
    1975 年 44 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1 軟化病ウイルスの皮下接種によって, 中腸皮膜組織に乳頭状細胞腫, 炎症性細胞腫と仮称した2種の腫瘍様病変が発現し, ともに細胞の異常増殖性が顕著であった。乳頭状細胞腫は賁門部周辺に現われやすく, 皮膜組織が体腔側に瘤状隆起していたが, 増殖堆積細胞は未分化で, 盃状細胞は認められない。また炎症性細胞腫は, 剖検的には狭窄異常として認められたが, 組織学的には大小不同の核が重積しており, 従来から腫瘍様病変とよばれてきたものにあたる。
    2 また軟化病ウイルス皮下接種後の頻死症状蚕の体腔内組織に, 癒着性細胞腫と仮称した細胞増殖性病変も認められた。これらは, 筋肉組織での核の異常増加, 筋肉, 気管皮膜周辺で認められた細胞の異常増殖, 由来不明の糸状組織の発現などの諸病変を総括したものである。
  • III. 極値特性推定のための標本細分法について
    嶋崎 昭典, 西岡 孝彦, 柳沢 昭男
    1975 年 44 巻 5 号 p. 345-350
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/10/29
    ジャーナル フリー
    Xiは生糸荷口からとられた大きさNの標本において, 最細繊度あるいは最太繊度から第i番目の繊度とする。ここで, Xiの平均値と分散をE[Xi]=μ(Xi, N), V[Xi]2(Xi, N)と表わすものとする。そこで, Zk(N)=∑ki=1Xi/kなるZk(N)の平均値と分散は
    E[Zk(N)]=∑ki=1μ(Xi,N)/k
    V[Zk(N)]=[∑ki=1σ2(Xi,N)+2∑i<j∑ρij(N)σ(Xi,N)σ(Xj,N)]/k2
    で与えられる。ここにρij(N), i<j≦kXiXjの相関係数である。実験結果からρijは高い正の値を示すことが知られた。それゆえに, Zk(N)は必ずしも極値特性を推定するよい統計量とはいえない。つぎに, 大きさNの繊度糸を大きさn(N>n, r=N/n)のの副次小集団へ分割した。X1j(n), Xnj(n)は, それぞれ, 小集団における最細, 最太繊度を示すものとする。ここに, j=1,2,…,rnは小集団の標本の大きさである。そこでU1(r), Un(r)
    U1(r)=∑rj=1X1j/r, Un(r)=∑rj=1Xnj/r
    なる値で荷口の極値繊度特性の推定を試みた。その結果, 例えば, もしもN=200の標本を標本数50以下の小集団に分割するならば, U1(r), Un(r)Z4(200)よりもよい推定値を与えることが知られた。
  • I. セリシンモデルポリ-α-アミノ酸の合成とその性状
    漆崎 末夫
    1975 年 44 巻 5 号 p. 351-356
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    アミノ酸をアミノ酸N-カルボキシル無水物とし, ジオキサン中トリエチルアミンを重合開始剤として用いて重縮合したあと, フッ化水素-アニソール処理により保護基をはずしてポリ-α-アミノ酸にもどす方法を採用してセリシンと類似のアミノ酸組成を有するモデルポリ-α-アミノ酸の合成を検討し, その性状をセリシンと比較検討した。
    1. グリシン, アラニン, セリシン, リジン, グルタミン酸およびアスパラギン酸を含み, アミノ酸組成の類似するセリシンモデルポリ-α-アミノ酸が合成された。
    2. 合成されたセリシンモデルポリ-α-アミノ酸はセリシンとかなり異った性状を示した。このことから, セリシンの構造特性はアミノ酸組成ではなくアミノ酸配列と密接な関係があると推察される。
  • 漆崎 末夫
    1975 年 44 巻 5 号 p. 357-359
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    共重合条件の異なる3種類のアミノ酸組成類似セリシンモデルポリ-α-アミノ酸の粉末活性炭への吸着を検討した。
    1. 共重合条件と関係なく, 得られたいづれのポリ-α-アミノ酸も280nm吸光度の測定により定量可能なことが明らかとなった。
    2. 共重合条件と関係なく, 得られたいづれのポリ-α-アミノ酸の吸着もFREUNDLICHの吸着等温式に従うことが明らかとなった。
    3. 3種類のポリ-α-アミノ酸の間には吸着され易さに差異がみとめられた。この主な原因は分子量によるのではないかと推察され, 高分子量のものほど吸着され易いことが推定された。
  • 山下 忠明
    1975 年 44 巻 5 号 p. 360-364
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉および蚕糞中のスルホリピドをECTEOLAセルロースカラムによるクロマトグラフィーにより分離した。35S-硫酸を24時間葉に与えて得られる35S含有の脂質はカラムクロマトグラフィーにより5つのピークに分かれた。そのうちスルホリピドはもっとも多くの35Sを含む脂質として分離された。一方35Sを含む桑葉を蚕に与え排泄される蚕糞中には35S-スルホリピドは認められなかった。これらのことから蚕は桑葉中でイオウを含む脂質として最も多量に存在するスルホリピドをすみやかに分解していると考えられる。
    桑葉から分離された35S-スルホリピドを蚕に与えると35Sは蚕体にはとり込まれずすべて排泄される。
  • 青木 襄児, 柳瀬 久良子, 串田 保
    1975 年 44 巻 5 号 p. 365-370
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    野外昆虫から分離し蚕にも黄きょう病症状を現わす4種の菌について, 白きょう病菌 (Beauveria bassiana 白きょう型) とともに, 孵化直後および5齢起蚕時に接種して, 蚕に対する病原性と症状を比較検討した。その結果, B. bassiana (白きょう型) が最も強く, B. bassiana (黄きょう型)がこれにつぎ, Paecilomyces farinosusBeauveria tenella は比較的弱かった。Paecilomyces canadensis はさらに弱く5齢蚕には感染が認められなかった。病斑の形成, 体色の変化, 分生胞子の形成状態などの点について各菌種によりそれぞれ特徴が示された。これらの菌種と過去の報告の中での和名および学名との関係を, 菌の形態的性状にもとずいて検討しつぎのように明らかにした。
    B. bassiana (白きょう型)=蚕の白きょう病菌 (B. bassiana); B. bassiana (黄きょう型)=黄きょう病菌 (Isaria farinosa), 新黄きょう病菌 (Botrytis sp.); B. tenella=赤色黄きょう病菌 (Botrytis tenella); P. farinosus=類似白きょう病菌 (Spicaria sp.); P. canadensis=稚蚕寄生硬化病菌 (Spicaria sp.)。
  • 阿部 芳彦
    1975 年 44 巻 5 号 p. 371-374
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    長時間絶食させたのち低温処理を行なったカイコ, および無処理のカイコの消化管内における核多角体の溶解について組織学的に観察し, 比較検討した。
    食下された核多角体はその表面の酸性色素に対する親和性が低下し, 表面に割目が生じ, これが次第に拡大することが示された。また, その割目内部は表面とは異なり酸性色素に対する親和性が著しく高くなる。食下された核多角体の消化管内における分布は, 無処理蚕では中腸前端部より前方のみに存在し, 中腸中部以降には存在しなかったが, 低温処理を行なったカイコでは中腸の中部より後, 後腸にもこれが認められた。しかしながら, これら中腸の中部より後に分布する核多角体はその内部が溶解されて空胴状となり, その表面も酸性色素への親和性を失なった膜状物として観察された。
    以上の結果から, 核多角体はその表面に内部とは異なった性質の外膜を有し, カイコに食下されて通常中腸の中部領域に達するまでの間にすみやかに溶解されるが, 低温処理を行なったカイコでは多角体表面の外膜が溶解されずに残存することが明らかにされた。
  • III. 小型軟化病ウイルスと伝染性軟化病ウイルスの血清学的差異
    古田 要二
    1975 年 44 巻 5 号 p. 375-380
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    小型軟化病ウイルス (以下SFVと略す) の抗血清が, 坂城株として継代保存されている伝染性軟化病ウイルス (以下IFVと略す) の病蚕磨砕液に反応する (古田, 1974) ことから, IFV病蚕磨砕液中に含まれるSFV抗原の存在を確認する目的で, 中和反応, 各種蚕品種より得たIFV病蚕を用いてOUCHTERLONY法による沈降反応および螢光抗体法によって検討し次の知見を得た。
    1. 抗IFV血清はIFV病蚕磨砕液にのみ反応するが, 抗SFV血清はSFV病蚕磨砕液とSFVに感染する蚕品種より得たIFV病蚕磨砕液とに反応し, SFVに感染しない蚕品種から得られたIFV病蚕磨砕液には反応しない。
    2. 抗SFV血清に反応するIFV病蚕磨砕液をSFVに感染しない蚕品種へ接種した場合や, 精製ウイルス液として用いた場合には反応しなくなる。
    3. SFVに感染しない蚕品種より得たIFVをさらにSFVに感染する蚕品種に接種してもその病蚕磨砕液は抗SFV血清へは反応しない。
    4. IFV螢光抗体で染色される標本はIFV病蚕のみであり, SFV螢光抗体で染色される標本はSFV病蚕とSFVに感染する蚕品種から得られたIFV病蚕とで, SFVに感染しない蚕品種から得られたIFV病蚕は染色されない。
    5. IFV螢光抗体によるIFV病蚕の染色像と, SFV螢光抗体によるSFVおよびIFV病蚕の染色像とは明らかに異なり, 観察される螢光細胞は前者では盃状細胞で後者は円筒細胞であった。
    以上の結果からSFVとIFVは抗原的に異なるウイルスであり, IFV (坂城株) として継代されているウイルス液にはSFVが混在していることが明らかとなった。
  • 絹および絹繊維の地域性
    布目 順郎
    1975 年 44 巻 5 号 p. 381-388
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    わが国に蔵される先秦時代の銅器に附着する繊維製品について調査した結果, 以下のことを知り得た。
    1. 殷代の矛 (京都大学人文科学研究所所蔵) に附着する房の繊維は大麻 (もしくは苧麻) のものと思われる。
    2. 春秋後期-戦国時代に属する剣の1つ (京都大学人文科学研究所所蔵) に附着する繊維製品および戦国時代に属する1対の壼 (白鶴美術館所蔵) に附着する平織物は明らかに絹繊維で作られており, 戦国初期の編鐘 (泉屋博古館所蔵) に附着する平織物もまた絹に相違ないと思われる。
    3. 上記の剣および編鐘に附着する平織物はともに後世「鎌」と称したものに相当すると考えられる。
    4. 上記の剣および壺に附着する絹繊維の断面計測値ならびに上記の剣, 壺および編鐘に附着する平絹の経, 緯糸の本数とその比を前報 (布目, 1973) に扱った長沙出土の戦国時代絹帛でのそれと比較することにより, 本報に扱った絹製品は前報のそれとは性格を異にし, 本報のものは北方的, 前報のものは南方的性格をあらわしているとみられる。
    5. 出土地不明とされる上記の剣は, それに附着する絹製品の性格からみて北方産の可能性が濃い。
    6. 先秦時代の南北平絹を特徴づける要素 (繊維の断面計測値ならびに平絹を構成する経, 緯糸の本数とその比) が判明したことは南北における蚕織の性格を考える上に興味あることであり, また先秦時代の絹常, あるいは絹帛を随伴する器物のうち産地もしくは出土地の不明なものについてはそれを明らかにする上に役立つものと思われる。
  • I. 呼吸速度表示法および気温と呼吸速度の関係
    村上 毅
    1975 年 44 巻 5 号 p. 389-394
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1年生桑枝条の種々の部位から採取した材料について, 気温を変化させながら枝条の呼吸速度を測定し, 呼吸速度を表示するベースと部位別呼吸速度, および, 気温と呼吸速度の関係について検討を加えた。その結果を要約すればつぎのとおりである。
    1. 枝条の呼吸速度を乾物重や容積をベースに表示すると枝条部位による差が大きく, 基部に近いほど呼吸速度が小さくなる。これに反し, 枝条表面積をベースに呼吸速度を表示すると, 枝条部位による差が消去され, 異なる部位から採取したサンプルについてもその呼吸速度がよく一致し, 気温と呼吸速度の関係は単一の実験式によって示すことができる。
    2. 1年生桑枝条の呼吸速度Ra(mgCO2/100cm2/hr.) と気温 (T, ℃) の間には
    Ra=0.4705e0.0718T……I
    で示される関係がみとめられた。実験式Iから得られるΩ10の値は2.05であった。なお, この呼吸速度は, 長期間冷蔵した枝条での測定結果であり, そのまま, 自然状態での冬期間の呼吸速度とみることはできない。
    3. 各サンプルごとに, 気温20.0±1.1℃での呼吸量を100として求めた各気温での相対呼吸速度 (Rr) と気温 (T, ℃) の間には,
    Rr=19.9898e0.0733T実験式II
    で示される関係がみとめられた。この実験式IIを利用すれば, 枝条の呼吸速度の気温に関する補正係数を求めることができる。
    4. 桑枝条の呼吸速度の気温に関する補正係数は, 実験式IIのTに, t1, t2を代入して得られるRrの値, Rr(t1) とRr(t2) の比として与えられる。したがって, 気温t1での呼吸速度Rt1が得られれば, 他の任意の気温t2での呼吸速度Rt2は次式によって求めることができる。
    Rt2=Rt1・Rr(t2)/Rr(t1)
  • VI. 幼虫期の日長条件が化性の異なる蚕品種の眠性および化性に及ぼす影響
    高宮 邦夫
    1975 年 44 巻 5 号 p. 395-399
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    化性の異なる蚕品種 (支14号 (旧), 宝鐘, 支134号, カンボージュおよびマイソール) を供試して, それらの眠性および化性と人工飼料育における幼虫期の日長条件 (恒暗: 24D, 短日: 8L・16D, 長日: 16L・8Dおよび恒明: 24L) との関係を調べた結果, 蚕品種によって大きく異なることがわかった。すなわち2化性の宝鐘と支134号においては, 恒暗および短日条件で越年卵が100%産下されたのに対して, 長日および恒明の各区では3眠蚕の出現と不越年卵が100%産下され前報 (高宮, 1974) と同じであったが, 1化性の支14号 (旧) の場合には, 各区から越年卵が産下され, その産下蛾歩合は幼虫期の恒暗, 短日および長日の各区で100%であるに対し, 恒明区で96%が不越年卵となり, 越年卵産下蛾歩合はわずか4%であった。一方, 多化性のカンボージュとマイソールの場合には, 幼虫期の日長の長短にかかわらず, すべて不越年卵のみが産下された。
  • 上田 悟, 木村 良二, 長楽 勇, 高橋 澄雄
    1975 年 44 巻 5 号 p. 400-406
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 人工飼料の調製時に微生物由来のある種のリパーゼで処理すると, 蚕の摂食は良好になることが認められた。しかし動物の膵臓あるいは小麦胚葉由来のある種のリパーゼではこの影響を認めることはできなかった。
    2. リパーゼ処理の人工飼料が蚕の摂食に及ぼす影響は若齢ほど鋭敏であって, 4齢に至るとその効果は不明になった。また1齢においてはこの酵素処理飼料を食下すると, 飼育経過がやや短縮し, 1眠蚕体重は軽くなった。
  • 阿部 禎
    1975 年 44 巻 5 号 p. 407-410
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑園における総合防除体系確立のための一環として, 1968年5月から1969年5月までの1年間, 岩手蚕試構内の桑園でクモ類の採集をおこなった結果, 9科38種を得るとともに, 個体数の多い5種についての季節的な消長を明らかにした。
  • 白田 昭, 高橋 幸吉
    1975 年 44 巻 5 号 p. 411-412
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 大山 勝夫, 川北 弘
    1975 年 44 巻 5 号 p. 413-414
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1975 年 44 巻 5 号 p. 415
    発行日: 1975/10/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis のδ-endotoxin V. 体液中における毒素分画の出現について
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