日本蚕糸学雑誌
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44 巻, 6 号
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  • 平野 久
    1975 年 44 巻 6 号 p. 417-423
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ゲル等電点焦点法によってクワの栽培3品種, 国桑第21号, 一ノ瀬および剣持の葉身, 葉柄, 茎, 根および花穂におけるパーオキシダーゼアイソザイムの器官特異性を調べた。
    国桑第21号および一ノ瀬ではそれぞれ総計17本, 剣持では18本のアイソザイムバンドをザイモグラムで検出した。これらのバンドのうち4本のバンドはいずれの品種, いずれの器官においても共通して存在した。個々の品種ですべての器官に共通して存在するバンドの数は, 国桑第21号. 一ノ瀬および剣持のいずれの品種でも5本であった。それ以外のバンドは1~4種類の器官に特異的に存在するバンドであった。pI9.5Aのバンドは国桑第21号, pI5.2, 5.4のバンドは, 一ノ瀬, pI9.0, 9.1B, 9.5Bのバンドは剣持にしか現われなかった。またpI9.0から9.5Bに位置するバンドは一ノ瀬では全く認められなかった。これらのバンドはそれぞれの品種を特徴づけるバンドであろう。
    なお, これら栽培3品種の葉身のザイモグラムは齢特異性を示すものがあった。
    バンドの存否とその濃度をパラメーターとした不一致数法によってそれぞれの器官のザイモグラムの類縁性を調べたところ, 概して近接した部位にある器官のザイモグラムほど類縁度が高いことがわかった。ただし, 花穂と他の器官のザイモグラムに関してはこの関係が明瞭でなかった。
  • II 低温処理後に核多角体を接種して生じた縮小症状の病蚕
    阿部 芳彦
    1975 年 44 巻 6 号 p. 424-427
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    脱皮後低温処理を行ない高濃度の核多角体病の多角体を接種した場合に発生する縮小症状を示すカイコの病理組織学的な観察を行なった。
    縮小症状を示した個体のすべてにおいて, 中腸皮膜組織の円筒細胞および盃状細胞に本病ウイルスによる顕著な感染像が観察され, また, これら縮小症状を示すすべての個体の中腸腔, および大多数の個体の血液中に多数の連鎖球菌が観察され, いずれの個体においても中腸皮膜細胞の著しい崩壊および脱落が観察された。
    このことから, これらの縮小症状は, 中腸皮膜細胞の本病ウィルスによる顕著な感染により中腸腔内における細菌の侵入および増殖が行なわれやすくなり, また, 中腸皮膜細胞の崩壊および脱落が生ずるなど, 病勢が急激に進展することにより発生するものと考察した。
  • 小山 長雄, 滝沢 達夫, 大町 教子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 428-432
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコガ (No. 54) の蛹を室内 (日長: 約14時間, 温度: 24~28℃), 24D (恒暗, 温度: 24±1℃) および3L21D (明相: 18:00~21:00, 暗相: 21:00~18:00, 温度: 24±1℃) の光条件で保護した。羽化後成虫をそれぞれ恒明および恒暗のもとで free-run させ, 複眼網膜色素の移動状態 (M-index) を観察した。
    1. 恒明区では, いずれも網膜の内方移動リズムは起こらなかった。
    2. 恒暗区では, M-index 10%以下のかすかな自律移動日周リズムが現われた。しかし, これは2~3日で消失した。
    3. 網膜色素の自律日周リズムは, 蛹期に受けた光周条件によってわくづけされる。
    4. この近日周リズムのサイクルは, 現行品種のそれとほぼひとしく, 20~22時間であった。したがって, 複眼の細胞レベルで起こっている近日周リズムもまた個体発生集団リズム (卵ふ化・幼虫脱皮・成虫羽化) と同じペースで進行しているものと思われる。
  • II 冷蔵および枝条切断が呼吸速度におよぼす影響
    村上 毅
    1975 年 44 巻 6 号 p. 433-436
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    枝条を切断すると呼吸量が増加するが, この呼吸量の増加分は切断面の周長の増加分と比例し, 呼吸量の増加分Y (mgCO2/hr.) と切断面の周長X (cm) の間にはつぎの式で示される関係がみとめられた。
    Y=0.078X
    なお, この関係は切断直後の比較的短時間のものであって, 時間の経過とともに減少するものと考えられる。
    低温で冷蔵した枝条を急激に, 比較的高い温度条件の下に移すと, 枝条の呼吸速度は急速に高まり, その後徐々に低下して, 36時間位後には比較的安定した水準に達する。
    その後さらに時間が経過し, 72~96時間位後には再びゆるやかな増勢に転ずる。これは冬芽の発芽がはじまった結果ではないかと考えられる。
  • 土井 良宏, 筑紫 春生, 木原 始
    1975 年 44 巻 6 号 p. 437-439
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    死褐卵遺伝子 (l-br) の連関検索を行なった結果, l-brは第9連関群に属することが判明した。さらにI, I-a両遺伝子を基準に選び3点実験を行ない, l-brの遺伝子座を第9染色体18.1と決定した。
  • 今井 暹, 吉井(佐藤) 幸子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 440-443
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ヨウ素中毒とみられる異常蚕の発生した千葉県茂原市の工場群周辺から採った桑葉について汚染物質の検索, これら物質の蚕に対する毒性ならびに異常蚕発生との関連を調べ, つぎのような結果を得た。
    汚染桑から検出された全イオウ, 水溶性イオウの濃度は対照葉に比べてある程度高かったが, 全フッ素および全塩素の濃度は対照葉との間に差はなかった。しかし全モリブデンおよびヨウ素の検出濃度は対照葉に比べて著しく高かった。
    これら汚染物質のうち, 水溶性イオウおよびモリブデンについて人工飼料を用いて蚕に対する毒性を検定したところ, 5,000ppmのイオウおよびモリブデン化合物の種類によっては1,000ppmのモリブデンの連続摂取によって蚕は発育を多少阻害されることはあっても, ヨウ素中毒とみられる異常蚕の発生原因とは考えられない。
  • II 培養腋芽からの茎葉展開に及ぼす生長物質の影響
    岡 成美, 大山 勝夫
    1975 年 44 巻 6 号 p. 444-450
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワの葉腋腋芽の培養法を確立するため, 3つの実験を行った。実験Iの移植体の枝部着存量と緑色腋芽の生長を調べた試験では, 10~15mmの枝部をもつ腋芽, 3~5mmの枝部をもつ腋芽および枝部から分離した腋芽の種類の材料を用い, 実験IIでは age の異なる分離腋芽を用いて培養を行った。さらに, 実験IIIでは, 培養の途中で培地を交換して, それぞれの時期における生長物質の要求性を調べた。これらの実験から, 次のことが明らかになった。
    1. 緑色腋芽は10~15mmまたは3~5mmの枝部とともに培養すると茎葉を展開させることができ, 前者ではMS+NAA培地, 後者ではMS+NAA+BA培地で培養が可能であった。
    2. 緑色腋芽のみの分離培養は, 一ノ瀬では困難であるが, 剣持ではある程度可能であった。
    3. 頂点褐色芽, 完成芽など age の進んだ腋芽の分離培養は, 緑色芽にくらべて困難であった。
    4. 腋芽からの茎葉展開には, オーキシンとサイトカイニンの両方が必要であるが, サイトカイニンの方が比較的後期まで要求された。しかし, 数枚の葉が展開すると, 基本培地のみでも生長が可能であった。
    5. 枝をつけた腋芽の培養において, 少数の個体で花器の生長がみられた。
  • 布目 順郎
    1975 年 44 巻 6 号 p. 451-456
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中国山西省陽高県出土の漢代絹製品の繊維について調査し, 以下のことを知った。
    これらの絹繊維はすべて家蚕 (おそらく三眠蚕) のものである。そのいずれもかなりよく精練されているようにみえ, 中には強く搗練を施したと思われるものもある。繭粒付数は5, 10, 15などであり, 平絹の織目はいたって細かく, かつそのすべてに併糸を認めるところから, これらは〓とみなされる。いずれの繊維にもラウジネス繊維はみられない。出土のまわたは屑物を材料としたものである。
    楽浪漢墓および馬王堆一号漢墓の絹繊維での数値と比較した結果, 3者それぞれ違った特色をもち, 殊に陽高と馬王堆とは互いに対照的であり, かつ絹繊維の特色は, 華中 (長沙) にあっては戦国時代から漢代へかけて不変であるのに対し, 北方では戦国時代の値が漢代の陽高よりも楽浪のそれに近いことなどを知った。
    陽高県出土の一種の麻織物は苧麻を材料としたものである。
  • 水沢 久成, 笹原 重雄, 高山 善助, 河合 憲子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 457-461
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ピロカルピンによるカイコ蛾の産卵促進とアトロピンの産卵抑制について検討を加え, つぎのことを明らかにした。
    1. ピロカルピンは交尾蛾に対して散布後数時間以内にその産卵数を増加させる作用をもち, 未交尾蛾の産卵をも誘起する働きのあることを知った。
    また, アトロピンは交尾蛾では産卵をいくらか抑制する作用を示したが, 未交尾蛾に対してこのような抑制は認められなかった。
    2. 交尾蛾に対してピロカルピンとアトロピンの交互散布または混合散布を行なったところ, アトロピンはピロカルピンの産卵促進に対して明らかにこれを抑制する拮抗作用を示した。
    3. ピロカルピンを交尾蛾に注射しても, あるいはその頭部または尾部をこれに浸漬しても散布の場合と同様に産卵促進が認められた。
    また断頭された雌蛾は交尾蛾, 未交尾蛾ともに全く産卵しなかったが, 断頭後にピロカルピンを散布した場合には産卵する蛾がみられた。
  • 竹下 弘夫, 重松 孟
    1975 年 44 巻 6 号 p. 462-467
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    フェノチアジン系色素による生体染色によってとくに家蚕の絹糸腺の染色状況を観察し, 絹糸たんぱくの素材供給の問題を考察した。チオニンを投与すると幼虫皮膚と後部絹糸腺が染色するが, 後部絹糸腺の色素の移行はフィブロインの移行と一致していた。熟蚕時には皮膚からの後部絹糸腺への色素の移行が見られ, この時期のフィブロイン合成における素材の皮膚よりの移行と一致した。さらに, 皮膚より後部絹糸腺への色素の移行は5齢食桑期にもあると考えられた。一方, 4齢においては皮膚へとりこまれた色素はすべて新生皮膚へ移行していた。
    フィブロインのフェノチアジン系色素による染色は両者の物理化学結合によっていることが, 差スペクトル, および, 繭糸の性状分析で示された。この結合には3位のイミノ基の存在が必須であると考えられた。
  • III 細胞質多角体病ウイルスのA系とC1系との干渉
    山口 邦友
    1975 年 44 巻 6 号 p. 468-471
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕細胞質多角体病ウイルスのA系とC1系との間における干渉現象について調べた。
    両系ウイルスを同時接種した場合は混合感染個体が多発したが, 病蚕中腸においてA系多角体とC1系封入体はそれぞれ異なった細胞に形成されている場合が多く, 細胞レベルでの干渉現象が認められた。しかし, 両系のウイルス濃度が高く, かつ相対的濃度差の小さい場合は, 両系ウイルスが一細胞中で同時に増殖したとみられる細胞が比較的多く認められた。同一核内に形成されたA系多角体とC1系封入体は, いずれも系統固有の形態を示した。
    A, C1両系ウイルスを時間をおいて接種した場合には, 先に接種されたウイルスが後から接種されたウイルスに干渉した。
  • 今井 暹, 吉井(佐藤) 幸子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 472-475
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕に対するヨウ素の毒性を人工飼料を用いて検定した結果, 100ppmのヨウ素食下によって蚕は完全に中毒死し, 50ppmでも多数の中毒蚕が発現して毒性のなお著しいことを示した。しかしそれ以下の濃度の毒性については明かでない。
  • 塩崎 英樹, 尾崎 晶子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 476-480
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    グルタルアルデヒドによるセリシン定着について実用的見地から検討を行なった。0.5~1.0%GA濃度, 常温浸漬という温和な条件下で完全なセリシン定着ができることを示した。GA濃度が高いほど処理生糸の応力ひずみ曲線は伸びの軸方向に偏って行き, 初期ヤング率が低下するが, 湿潤時の曲線は無処理生糸とほとんど変らなかった。GA処理生糸はかさ高性と柔軟性がやや増加し, 強伸度および吸湿性は余り変らなかった。処理生糸はGA反応の程度に応じて黄色味を帯びるが, 酸化漂白により脱色できた。アミノ酸分析の結果から, 定着効果は主としてリジリ残基との反応によって生ずるが, ヒスチジンおよびアルギニン残基にも反応が起ることが明らかにされた。
    電子顕微鏡による表面観察の結果から, GA処理生糸の表面はざらつきが増してはいるが, このような温和な処理では, 余り大きな変化はみられなかった。
  • 山本 俊雄
    1975 年 44 巻 6 号 p. 481-486
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭の収縮率に及ぼす営繭中の湿度の影響, ならびにその品種間差異を調べるとともに, 収縮率と解じょ率との関係を追究し, 次の結果を得た。
    1. 異なる2制御環境下で営繭させたとき, 収縮率は85%の多湿条件において高く65%で低かった。
    2. 繭の大きさは営繭初期の薄皮繭形成時には営繭中の湿度条件が異なっても相違しないが, 営繭終了時には収縮率が異なるために湿度85%の条件で営繭した繭が小さかった。
    3. 解じょ率は収縮率とは逆に湿度65%で営繭したときに高く, 湿度85%で低い値を示し, 収縮率と解じょ率との間には高い負の相関関係が観察された。
    4. 収縮率および解じょ率に対する営繭湿度の影響は品種によって相違したが, 湿度の違いによって収縮率の差異の大きい品種は解じょ率の差異も大きく, 小さい品種は解じょ率においても小さかった。
  • 田村 俊樹, 坂手 栄
    1975 年 44 巻 6 号 p. 487-490
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Giallo 油蚕の蛾尿中の顆粒物質の同定を薄層クロマトグラフ, 紫外部吸収スペクトル, および赤外部吸収スペクトルに基づいて行なった結果, その主成分はヒポキサンチンであって尿酸ではなく, 蛾尿乾物量の約25.6%がヒポキサンチンであることを確めた。
  • 栗栖 弌彦, 冨岡 慶信
    1975 年 44 巻 6 号 p. 491-492
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 今井 暹, 吉井(佐藤) 幸子
    1975 年 44 巻 6 号 p. 493-494
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 平野 久, 和田 実
    1975 年 44 巻 6 号 p. 495-496
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 渡部 仁
    1975 年 44 巻 6 号 p. 497-498
    発行日: 1975/12/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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