日本蚕糸学雑誌
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45 巻, 4 号
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  • 今井 暹, 吉井(佐藤) 幸子
    1976 年 45 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕に対するヨウ素の毒性が, 他の化学物質との混在によってどのように変化するかをみるため, 各種濃度のヨウ素にKI, MoO3およびK2MoO4を別々に人工飼料に加えてヨウ素の毒性変化を検定した。その結果, 最終ヨウ素濃度50ppmになるようにヨウ素にKIを添加したとき, ヨウ素の毒性は50ppmヨウ素のそれより低くなったが, 最終ヨウ素濃度が100ppmおよびそれ以上においてはKI添加の影響は全くみられない。また各種濃度のヨウ素にモリブデン濃度1000ppmのMoO3またはK2MoO4を添加しても, その濃度におけるヨウ素の毒性には全く変化はみられなかった。
  • II. 分光測色法による黄変絹の測定
    瀬戸山 幸一, 山口 雪雄
    1976 年 45 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 黄変した絹織物を分光測色法で測定する際, タテ糸を赤道面に平行にし, 背景を白, 織物の重ね枚数5枚とした場合, バラツキが少なくて安定な測色条件である。
    2. 黄変指数の差に1.7~2.3の差があるとき, 色差の1NBS単位に相当し, その値は肉眼で始めてその差を知覚できる最小の値である。
    3. 初期の熱処理 (160℃, 90分以内) で生じる着色は, 光黄変の色と同一主波長を持つが, その後の熱処理 (160℃, 90分間以上) によりその色相は光黄変の色と違ってくる。放射線照射による絹の着色は, 光照射, 熱処理等による色相と全く異なった主波長を持ち, 照射時間とともに主波長に変化なくその刺激純度が高くなってゆく。
  • 宮島 成寿
    1976 年 45 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の細胞質多角体病ウイルスの定量法を確立する目的で, 赤血球凝集反応, 各種沈降反応 (混合法, スライド法, 重層法) および螢光抗体法によるウイルスの検出感度を比較した。
    ウイルスに対する抗血清を用いて, あらかじめ階段稀釈した純化ウイルスの検出限界を調べると, 試みた方法の中では螢光抗体法が最も感度が高く, それに続いて重層法, スライド法, 赤血球凝集反応および混合法の順序であった。重層法によっては, ring 出現時間 (分) の対数値とウイルス量とから一定の直線関係が求められた。
    以上のことから, 血清学的方法では階段稀釈した被検液の検出限界を調べることにより, そこに含まれているウイルスの定量が可能であろうと考えられる。
  • 北野 実, 渡辺 昌
    1976 年 45 巻 4 号 p. 305-313
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Na-モンモリロナイトの分散性と吸着活性を応用し, セリシン水溶液あるいは精練廃液中からのセリシン吸着量と凝集体の沈降速度の変化を粘土サスペンジョンpHとの関係において明らかにした。さらに, その結果を基礎にして精練廃液の浄化法について検討した。
    1. Na-モンモリロナイトによる水溶液中セリシンの除去効果はpH 3.0から5.0の範囲で著しく, 多量の吸着セリシンによる凝集体の溶液からの分離がすみやかに進行し, 粘土サスペンジョンの残留濁度はほとんど0になる。また凝集体の溶液からの分離効果が現われる最小濃度はセリシン分子量が増すほど低濃度側に移る。
    2. 精練廃液にNa-モンモリロナイトを分散させることにより廃液の浄化が行われるが, 効果の著しいpH領域はpH 3.0から5.5の範囲であった。この結果は, セリシンと粘土粒子の電荷が異符号または同符号のいずれの場合も粒子へのセリシンの吸着と凝集が起こることを示している。また凝集体の沈降速度は粘土粒子:セリシンの重量比が1:1もしくはセリシンがこの比以下にこおいて速くなる。この現象はNa-モンモリロナイトの親水性挙動とセリシンの分子形状の特異性によるものと考えられる。
  • 清水 滉, 上甲 恭平, 坂口 育三
    1976 年 45 巻 4 号 p. 314-320
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹羽二重に吸着させた金属イオン (銅(II), クロム (III)) の影響を測色によって検討した。その結果次のことが認められた。
    1. 銅 (II) またはクロム (II) の吸着にこより, 分光反射率曲線の500nmに極大値が現われ, 青味づけの効果があった。
    2. 吸着された銅 (II) およびクロム (III) の量と, KUBELKA-MUNK関数との間に比例関係が得られた。
    3. 光照射により未処理布, 金属イオン吸着布とも黄変するが, その色差は照射の初期に最も大きく現われた。銅 (II) およびクロム (III) を吸着させたものは, 未処理布における色差よりも小さかった。
    4. 明度は光照射初期の低下が大きかった。0.14mgのクロム (III) を吸着させたものの明度は未処理布の明度よりも高かったが, 吸着量が多いものでは未処理布よりも低かった。
    5. 黄変指数から吸着された銅 (II) は光照射による黄度を抑制し, クロム (III) は促進することが認められた。
  • 飯塚 敏彦, 小池 説夫, 水谷 純也
    1976 年 45 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本実験では, 人工飼料育蚕糞中の抗菌性物質について検討した。その結果, 抗菌力を有する物質として, caffeic acid を単離・同定した。また, 桑葉育蚕糞中の抗菌性物質の主成分であった protocatechuic acid ならびにp-hydroxybenzoic acid の存在も確認した。抗菌性物質の単離の過程で, 抗菌力を有さないものの, フェノール性化合物としては, もっとも量的に多く3-hydroxyanthranilic acid が単離・同定された。
  • 永田 昌男
    1976 年 45 巻 4 号 p. 328-336
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 4齢起蚕から5齢2日までの各時期に14C-ロイシン(0.5μCi/g生体重) を注射し, 4時間後に解剖し, 体壁および中腸のタンパク質への放射能の取りこみを調べた。タンパク質の比活性は幼虫脱皮とともに変化することが示されたが, 組織内のアミノ酸プールの比活性も異っておりタンパク質の比活性の変化を合成能の変動とみなすことはできなかった。そこでタンパク質の比活性とアミノ酸プールの比活性の比を求めた。その結果体壁ならびに中腸のタンパク質合成能は食桑期において高く眠期には低下しており, また眠期の段階によっても異なることが示された。
    2. 14C-ロイシン注射後の体壁および中腸のタンパク質の比活性の経時変化を調べた結果, 食桑期では眠期よりも早い時点で比活性が最大値に達することが示された。
    3. 14C-ロイシンの体壁および中腸への取りこみをラベル時間を20分にして調べた結果, タンパク質の比活性は食桑期に高く眠期に低いという結果が得られた。
    4. 幼虫体の全タンパク質への取りこみを調べたところ, 幼虫全体としてもタンパク質合成能は食桑期に活発で眠期に低下しているという結果が得られた。
    以上の結果から体壁, 中腸ならびに幼虫体のタンパク質合成能は食桑期に高く眠期に低いという変動をするが, 眠期においてもタンパク質合成は行なわれておりそれはまた眠の段階により異なっていることが明らかとなった。
  • 非休眠卵産生蛹における休眠卵の発現
    竹田 敏, 長谷川 金作
    1976 年 45 巻 4 号 p. 337-344
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    著者らは, 先きにある種の無機イオンの能動輸送の阻害剤であるウアバインを休眠卵産生蛹に注射し非休眠卵の産下されることを報告し, これは, ウアバインが中枢神経系に作用し, 休眠ホルモンの分泌を阻止した結果と推察した。ウアバインの作用をさらに追求するため, 非休眠卵産生蛹にウアバインを注射したところ, 前報とは反対に休眠卵が産下された。
    1. 10~20n mole のウアバインを化蛹当日, 2, 3日目の多化性系統のN4の蛹に注射するとその蛾の産下卵には50%以上の休眠卵が発現した。化蛹5日目の蛹ではまったく休眠卵は得られなかった。
    2. ウアバインの休眠卵産生効果は, N4に特異的にみられるものではなく, 他の品種の非休眠卵産生蛹でもみられた。
    3. ウアバインの注射時期と産卵順序における休眠卵の出現との関係を調査した結果, ウアバインの休眠卵産生効果は, 直接的には卵発育と関係がないことがわかった。
    4. ウアバインの休眠卵産生効果は, 化蛹当日に食道下神経節を除去した蛹では, まったく現われなかった。
    5. 以上の結果, 非休眠卵産生蛹においてウアバインは食道下神経節からの休眠ホルモンの分泌と放出を促進させることが明らかになった。さらに, 休眠卵産生蛹におけるウアバインの非休眠卵産生効果との差異について論議した。
  • IV. 発芽期における1年生枝条の呼吸速度
    村上 毅
    1976 年 45 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    冬芽に外観上の変化がみられない3月中旬から, 4月中旬までの1年生桑枝条について, 気温と呼吸速度を測定した。その結果を要約すれば次のとおりである。
    1. 枝条の呼吸速度と気温の間には密接な関係があるが, 気温と呼吸速度の変化を比較すると, 15~60分の時差がみとめられた。
    2. 発芽期の呼吸速度は冬期間のそれに較べ明らかに高くなっており, 発芽期と冬期間の呼吸速度の差は, 気温に大きく支配されている。
    3. 気温10~35℃の範囲では, 気温が10℃上昇することによって, 発芽期と冬期の呼吸速度の差は3~4倍に拡大する。
    4. 発芽期の呼吸速度の上昇は, 冬芽に外観上の変化がみられない3月中旬からはじまっており, この時期は樹液の流動が活発になる時期とほぼ一致している。
    5. 発芽期であっても, 10℃以下の気温が10時間以上連続すると, 呼吸速度も低下し, 冬期と同水準に達する。しかし, 気温が10℃以下であっても, 低温の時間が短かければ, 呼吸速度は低下しても, 冬期間の水準までは低下しない。
  • III. 黄変に及ぼす水の影響と黄変絹のアミノ酸組成の変化
    瀬戸山 幸一
    1976 年 45 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本実験では, 絹の光黄変における波長依存性, 光黄変に及ぼす水の影響, および光黄変に関与するアミノ酸について研究を行ない, 次のような結果を得た。
    1. 黄変を起こさせる波長領域は, 200~331nmでその影響が最大の波長は, 279~292nmである。また湿潤状態での絹布への照射では, 253~386nmの波長領域が黄変を著しく促進し, その影響が最大の波長は292~305nmである。すなわち, 水の存在は, 黄変を起こさせる有効波長を長波長側へとシフトすることである。
    2. 単色光 (296~305nm) 照射においては, 絹は著しく黄変し, トリプトファンは著しく減少するのに対してチロシンはほとんど減少しない。
    3. 光黄変の波長依存性は, 絹そのものの紫外線吸収スペクトルと良く対応し, トリプトファンの光分解に対するチロシンの光増感作用が考えられる。
    4. 光劣化はその波長依存性とラジカルの量子効率とよく対応するが, 黄変の波長依存性は対応しない。
  • 誘引物質としてのジメチルチオエーテルについて
    林屋 慶三, 矢嶋 正博, 広瀬 節子
    1976 年 45 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉凍結乾燥粉末を水と練合した場合に生成する“におい”にカイコ幼虫が誘引されることを確認した。しかしてその誘引成分の決定に, ヘッドスペースベーパーを濃縮する新しい方法を採用し, つづいてガスクロマトグラフィーによって分析した。低沸点溜出部中の一ピークに注目して, この溜出成分をジメチルチオエーテルと推定した。またヘッドスペースベーパーを昇汞水中に導入し, 水銀塩をえて, ジメチルチオエーテルの存在を証明した。しかるのち, 生物テストを通じて, ジメチルチオエーテルがカイコ幼虫の誘引物質であることを認めた。
  • 交尾蛾の産卵リズム
    山岡 景行, 平尾 常男, 高野 幸治, 荒井 成彦
    1976 年 45 巻 4 号 p. 365-374
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    交尾蛾の産卵行動の日周性を個体レベルで追究する目的で, 様々な光条件の下で産卵を抑制あるいは数日間に引きのばすことにより, その消長を追跡して検討した。その結果,
    1. 自然の光条件に近い明暗サイクルの下ではそれに同調した双頭のピークをもつリズムが4日間程持続した。第1ピークは日没前後に, 第2ピークは真夜中から日出の間に極大値を示した。
    2. 第1ピークの時間帯の一部が産卵不可能または一定程度産卵を抑制された雌蛾は, 第1ピークの残りの時間帯の産卵を活発に行なう, あるいは第2ピークの産卵を活発に行なう傾向を示した。第1ピークの産卵が完全に抑制されると第2ピークが明瞭に大きくなると同時に, 第2日目の産卵ピークも活発になった。
    3. 蛹期に24時間サイクルの自然状態に近い光条件を与え, 成虫期には全明条件の下においた雌蛾も, いわゆるフリーランの条件下であるが, 一定の産卵リズムを示した。
    4. 蛹期全暗, 成虫期全明の条件下におかれた個体も, 暗から明への切り変え時刻に同期した産卵リズムを示した。
    5. 化蛹以後全明条件下におきつづけた個体は羽化がばらつくとともに, 羽化時刻にかかわらず, 交尾, 割愛後ただちにリズムのない, 一過性の産卵を行なった。
    以上の結果から, 交尾蛾においても先に報告した無交尾蛾の場合と同様に, 外界の明暗サイクルを同調因子とする体内時計の支配の下に, 産卵行動の日周リズムを示すことが明らかになったと同時に, 交尾によって高まると考えられる「産卵衝動」の蓄積と解放が, 体内時計の支配を受ける可能性が示唆された。
  • 平林 潔, 荒井 三雄
    1976 年 45 巻 4 号 p. 375-376
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 山口 邦友
    1976 年 45 巻 4 号 p. 377-378
    発行日: 1976/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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